突撃! メイド温泉

■ショートシナリオ


担当:橋本昂平

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:4

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月26日〜09月05日

リプレイ公開日:2008年09月14日

●オープニング

 この世には仙人という人間を極めた者がいる。
 高い山の上や仙島、天上や仙郷に暮らし、神の奇跡・デビルの災厄のごとき様々な仙術を操る不老不死の人物である。
 呼吸法や歩行法、食事に住居の選択までもが修行の一つとして行っている仙道を志す者たちは、心身を清浄に保ち、気を練り精を練り、更に仙人に鳴るための仙丹を練るという。
 流派によってはそこから術を唱えたり細部が違ったり、そもそもの手段が違ったりするのだが‥‥‥書物を紐解くと仙人になるには困難を極めるらしい。
 だがそれも当然だろう。
 仙人といえば普通の人間にとって神に等しい超越者。霞を食べて生きていけるような相手を前に、人間の抱える常識が通じる訳もない。知恵にしろ武力にしろ足元、影にも及ばない。存在そのものが違うのだ。
 ジャパンの伊豆。人里はなれた温泉宿。
「メイドさんサイッコーーーーォウ! 女将とメイドさんの合わせ技一本でメイド女将さんじゃわい! メイド仲居さんも良し! こうなれば女の子をたくさん調達してメイド温泉宿でくんずほぐれつハァハァじゃぁぁぁぁぁ!!!」
 轟き唸る暗黒闘‥‥‥神仙力? 九十代も軽く突破しているようなお爺さんで、眼は軽くイッている。
 仙人さまというよりアレなおじいちゃんと言った方が間違ってない気もするのだが、このお年より、これでも仙道を学び数多の仙術を身につけた徳の高い仙人さまなのだ。
 修行時代、仙道を身につけようと厳しい修行に耐えてきた。
 やりたい事も我慢し食事も限られたものしか食べられなかったお爺さんは、知らず知らず内にストレスが溜まっていたのだ。
 というよりこのお爺さん、かなり俗っぽかった。
 かつて英国で親切にしてくれたメイドさんたちの笑顔が忘れられない。年寄りという外見を活かし、セクハラに近いことをやり続けた日々が懐かしい。
 あの、白と黒の布に包まれた膨らみが忘れられない。倒れたフリして顔を埋めたことも何度もある。
 ジャパンに渡ってきても忘れられない。
 メイドさんという宝を。妖仙ごときお胸さまを。
 そして今弟子として、ねね子という娘がいる。ネコミミ尻尾のメイド属性がこれでもかと似合うケモノ娘だ。
 騙くらかすにはサイコウの逸材だ。
 全ては萌え滾るメイド魂の為。メイドさんを侍らせるために全てを捧げてみせよう。
「それではねね子よ。次はメイド女将スキルを授けよう!」
「はい! おねがいします仙人さま!」
「第一温泉は混浴、男女別など風情もないし萌えもない! 儂はダンコ認めん! 混浴でフラグでキャッキャウフフのイベントじゃぁ! 邪魔が入ろうが儂の仙術で必殺なのじゃぁ!」
 ダメだコイツ、何とかしないと‥‥‥!
 色々突っ込む所があるのだが、それはそれ。
 大事に大事に育てられたねね娘は、その教育の賜物で人を信じて疑わない無垢な娘に育った。
 とはいえこう見るとアタマの弱い娘かと疑いそうである。
 教えられたことを忠実に真似しようとアクション中。
 お爺さん、メイド仙人が教えているのは完全にセクハラだった。





 メイド喫茶柳亭。かつて閑古鳥が大合唱していたこの店は、冒険者たちの手により大きく姿を変えた。
 和風の内装は和洋折衷に。出される飲食物は洋風のそれ。甘味処だった名残は、店の外見とメニューに載っている和の甘物のみ。外観は改装の折にそれなりに手が加えられたのだが、内装の方に力を入れた為に極端に変わったということはない。
 女性を多く雇い、メイドとして客をもてなすこの店にはたくさんの濃い常連が付き更なる隆盛を迎えている。
 これは、そんな柳亭のアルバイト店員の一言から始まった。




「ねぇねぇお牧ちゃん、ちょっとイイ?」
 今日のシフトが終り控え室に向かう前、事務所に立ち寄った御陰桜(eb4757)は店長のお牧の姿を認め尋ねた。
 お牧。メイド喫茶という新たな商売を持ち込み成功させた、優秀な女性経営者である。
 御陰桜。ナンパの技を極めた忍者であり、魔性を放つ乳とくびれた腰。桃のようなお尻を持つ、男ならず女ですら問答無用で誘惑される、サキュバスが間違えて人間に生まれたような女性だ。
 メイド服だろうが何だろうが、全てがえちぃく見える桜は、無意識に誘惑オーラを放っている。
「暇だから信人ちゃんと一緒に旅行に行くつもりなんだけど、久し振りにねね子ちゃんに会いたいから伊豆に行ってみようかなって思うのよね。それで、お牧ちゃんはねね子ちゃんの修業先のめいど仙人とかいうヒトの住んでるとこってわかるかしら?」
「ええ。この間届いた手紙に詳しい住所かいてたわ。それにしてもねね子ちゃん、修行頑張ってるみたいだから、江戸に帰ってきた時楽しみだわ」
 知らぬが仏とはこのことだ。身体は大人、心は童女を悪戯できるのはある意味本望かも知れないが、メイド仙人は素でタイホ対象。これで仙人と名乗れるのだから世の中不条理だ。
「朝も言ったけど、この暑さで材料の購入先、仕入れが上手くいってないらしいの。この際しばらく店は休みにしておくからゆっくり楽しんでくるといいわ」
「ありがと。ああ、それとお店のコでめいど修行したり温泉を楽しみたい人がいたら、一緒に連れてってあげるわよ」
 話しはしておくわ、と目配せをする。もう出て行けといっているらしい。店長には色々面倒な仕事があるのだ。
「それじゃあ、行きたい人は明日の朝お店の前に集合ね♪」





「俺たちも集合するぜ!」
 柳亭のとある一角。盗み聞きしていた男は、仲間たちの下へ戻ると一部始終を伝えた。
「メイドさんと一緒に温泉。きっと混浴に違いない!」
「いつもお店ではつれないあの娘も、温泉という解放的というかマッパで全開の空間では身も心も素直になるのだ」
「いじわるな態度は照れ隠し。本当は愛を伝えたいけど出来ないから、今回ばかりはついにデレがお目見えさ!」
「その通りじゃ! メイドさんは『奉仕者』という立場から、儂らご主人に好意を伝えられないが、温泉という神域の前にその垣根は取り除かれる。ついにメイドさんパラダイスが訪れるのじゃっ!」
 例によって例のごとく暗黒闘気を迸らせる変態達。周りに雲を漂わせている老人も一緒に、いつの間にあら荒れた老人に一通り共に暗黒闘気――というか欲望を放って気付いた。
「うぉっ! あんた誰ていうかいつの間に!?」
「儂はメイド仙人。仙術を極めし者にして萌えという冥府魔道を突き進む者。メイドさんのいる所儂あり、メイドさんの語る所儂ありじゃっ!」
 轟き吼えるメイド仙人。見た目九十代にしか見えないのだが、まるで思春期真っ只中の変態だ。
「事情は聞かせてもらった。お主ら儂の宿に来るがよい。桜たんたちが行くという温泉宿は儂の持ち宿じゃ。同じ冥府魔道を突き進む者同士、後輩たちに手を差し伸べよう!」
「マジか爺さん!」
「勿論じゃ。それにろりきゅあも来るのじゃからな」
「ろりきゅあだと!?」
「真偽のほどは判らぬが、幼女好きの変態らしいからのう。ロリは眼で愛でるものであって手を出すものではないというのに」
「その通りだ! おのれろりきゅあめ!」
「ああろりきゅあめ!」
 怒りに憤る変態達。自分らも同類だ。
「話しは纏まったな。ではこれより伊豆の地へ案内しよう! ろりきゅあを潰すため、メイドさんに突撃するため、妄想戦士達よ、儂に続くがよい!」



 ちなみに、夜十字信人(ea3094)は昼間なのに妙な悪寒を感じたという。

●今回の参加者

 ea3094 夜十字 信人(29歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea4927 リフィーティア・レリス(29歳・♂・ジプシー・人間・エジプト)
 eb1276 楼 焔(25歳・♂・武道家・ドワーフ・華仙教大国)
 eb4462 フォルナリーナ・シャナイア(25歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb4757 御陰 桜(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ec3527 日下部 明穂(32歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 ec5122 綾織 初音(26歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ec5298 イクス・エレ(24歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

 神秘と温泉の土地、伊豆。三嶋大社を始めとする大神社と星の数ほど軒並みを連ねる温泉街によりこの土地は全国有数の観光地として名を馳せていた。
 お宮参りの帰りは温泉に、そんなキャッチコピーがあるほどだ。
 神社も温泉も他の同業者に客を持ってこられないよう日々サービスと名物を研鑽する毎日。土地柄争いとは縁があまりなく、軍事関係もそれほど活発に活動してないあたり珍しく平和と呼べる土地だろう。
 その裏ではとある者たちがとある目的の為暗躍しているのだが‥‥‥そんな事情は日々を平凡に生きている人たちにとっては無縁なこと。
 キャッキャウフフなイラストが描かれた、とても入るのに抵抗がいる温泉宿へ一行は辿り着いた。
「お帰りなさいませ、ご主人さまお嬢さま!」
 悪い意味での伊豆名物、メイド温泉。その看板娘兼メイド女将のねね子が一同を出迎えた。
 メイドが女将なのかよく判らないカスタム仕様のメイド服を着たネコのケモノ娘の彼女は御陰桜(eb4757)の姿を見るやいなや、衆目があるにも構わず抱きついた。
「お久しぶりです桜おねーさん!」
「ええ。久しぶりでねね子ちゃん」
 優しく抱きとめる桜。まるで母親か姐のように抱き、ねね子はふくよかというか豊かというか魔王的なお胸さまに顔を埋めてすりすりと気持ち良さそうに喉をごろごろ鳴らす。
 こういう時同性って羨ましいですね。倒錯的な光景にどきどきするもイクス・エレ(ec5298)は一つ咳払い。
「実は温泉にはまだ行ったことがなくてな。ジャパン文化の勉強も兼ねて楽しませてもらおう」
「私も温泉ははじめてだから楽しみだわ。食事も取れたての材料を使うって聞いてるから、期待させてもらうわ」
「任せてくださいばっちりです!」
 フォルナリーナ・シャナイア(eb4462)にびしっと親指立てるねね子。こんな仕草のひとつひとつがとても可愛らしい娘だ。
 ねね子はメイド業界期待の星へ向くとにこっと慢心の笑みを浮かべる。
「リフィせんぱいもいっしょにしゅぎょうがんばりましょう! 仙人さまもおっしゃってました。せんぱいこそメイドになるために生まれてきた百年にひとりの逸材だって!」
 百年に一人の逸材ですか。リフィーティア・レリス(ea4927)は軽く引いた。
「いやいや。今更メイド修行なんて必要ないしつかする意味がわかんねぇし、好き好んでメイドやってるわけじゃねーっての。今回はメイドのことなんか綺麗サッパリ忘れて普通に温泉旅行を楽しむんだ」
「いやよいやよも好きのうちです。仙人さまはくちではいやといってもほんとうはしてほしいっていう、つまり『つんでれ』だとおっしゃってました!」
「誰がツンデレだ! ていうか日本語間違ってるし、つーか俺は男だ!」
 空に流れるシルバーブロンド。煌くエメラルドの瞳。処女雪の汚れのない白い肌。
 線も細く唇小さく、抱けば壊れてしまいそうな‥‥‥それでいて守ってあげないといけないと思わせるその雰囲気。強気なまなざしなそれを加速させる、女の子にしか見えない青年。
 そう、リフィーティア・レリスは彼を構成する全てのパーツが少女のソレなのに生物的には男なのだ。
 御陰桜の人外、既に人ではない魔性を放つ、淫魔が間違えて人間に生まれてきてしまったんじゃないかという魔性と魅惑と色気を持つように、リフィーティアは少女が性別を間違えたんじゃないかというほど、もう女の子にしか見えないぐらいの美少女なのだ。
 桜が淫魔ならリフィはピクシーかシルフか、そっち方面の容姿である。
 だがそんな事はどうでもいい。ねね子と一同は一笑した。
「またまた。仙人さまもおっしゃってましたよ? そういうのはキャラ作りだって」
「ショタっ子メイドか、それも良し!」
「お前は黙れ!」
 萌えという名の冥府魔道。暗黒闘気を放つ妄想世界のルーキーの楼焔(eb1276)は肉食獣の瞳でリフィたんを嘗め回す。性的な意味ですかそれが何か?
 旅行先でハイになるのはよくあること。楽しげなやり取りを眺めるも夜十字信人(ea3094)はどこか冷ややかに場を見ていた。
「‥‥‥‥‥‥」
「しばらく見ないうちに大きくなったわね。ハイ、これおミヤゲ♪」
「ありがとうおねーさん!」
 ちりんと大きな鈴がなる。
 微笑ましい光景だ。
 だが、それでも信人は斬魔刀を握る力を緩めずにいられなかった。
「何故だろうな。何の危険も無い響きなのに‥‥‥俺の中の警鐘が先ほどから鳴りっぱなしだ‥‥‥」
 冷や汗が滝になって止まらない。
 彼は何の根拠もへったくれもないのだが、致命的な変態として一部世間ではひどく名が知られている。
 そして伊豆の地に足踏み入れた時から、信人は数え切れない凄まじい殺気を叩きつけられ続けていた‥‥‥




「‥‥‥? 初音さんじゃないのか?」
 浴衣に着替えて温泉に向かう途中、イクスはメイド仲居さんの仲に見知った顔を見つけた。
 綾織初音(ec5122)である。
 黒曜石のような黒髪。メノウ色の瞳。侍という職業柄鍛えなければいけないものの白色の肌。男装を好み中性的な顔立ちがそれを際立たせる友人は、珍しく女性の恰好――性別的に当然だが――をしている。
 初音はイクスを見ると楚々と、それこそ普段の彼女からするとありえない淑女っぷりを発揮した。
「水音綾葉と申します。初音さまは部屋で休んでおられますが」
 ウェーブのかかった長い髪。フリル満載で更に仲居カスタムの訳の判らないメイド服。初音さんがこんな女性の服を着るわけがない――とかなり失礼なことを考えて、そして着たらこんな感じだろうなと、
「とても似合っている」
 心からさらりと言ってのけた。初音はちょっとだけ頬を染めてありがとうございます、と。
 狙ってたのならかなりのナンパ師。ペット同伴OKと聞いたイクスは子狐のセブルスを連れて温泉へ向かった。
 そして大量の鼻血を噴いた。




 その少し前。
 メイド温泉仙道部屋。メイド仙人は引き連れてきた変態を従え、囲ませ、訪れた焔を睥睨する。
 妄想世界に思いを馳せ、冥府魔道を突き進むメイド仙人。萌えの為に仙術を駆使し開発しセクハラに命を賭ける老人であっても仙人だ。仙人的なアイテムや巻き物は部屋を締めている。
「ほほぅ。お主が音に聞く楼焔か。この部屋を見つけるとは大したもんじゃ。何用じゃ?」
「焔? 違うな、俺は‥‥‥」
 ぎらりと光る両眼。口から煙。全身から解き放たれる暗黒闘気。
「俺はセク道を歩むもの、セク魔神Zだ! 今日はセクハラの為、ろりきゅあを潰す為、キサマらの協力を得たい!」
「かつて伊豆をセクハラとセクハラとセクハラの渦に叩き込んだ(変態の)英雄、焔。儂らの味方に付くのは頼もしい限りじゃがのぅ」
 神社と温泉の土地、伊豆。かつてそこに変態の嵐を巻き起こした焔。彼の偉業は地下に潜りし変態には英雄視されているものの、一般市民、特に女性からは敵対視されている。
 それ以降、伊豆では覗きや下着泥棒、セクハラ行為に対し厳重な規制がかかったのだ。
 以降の伊豆においてセクハラ活動は困難を極めた。メイド仙人たちも、セクハラを完遂する為に警戒を厳にしなければいけない。
 故に彼らが焔をこうも危険視するのも無理はなかった。
「ククク‥‥‥。奴が光なら影、ろりきゅあならボインきゅあ。常に対極だ‥‥‥。俺は幼女にあんまり興味はない! ボイン最高だ! ろりきゅあ滅すべし!」
「目的は一緒か。それなら――」
「おいこらメイド仙人! さぼってないで仕事手伝え!」
 がらりと襖を開けたメイド仲居のリフィたん。客はかなり多い。やはり例のよって例のごとくメイドさんをやらされているリフィたんはもう投げやりで、仙人を呼びにきたのだがこの面々では強制イベントバトル発生だ!


 メイドさんがあらわれた! どうする?

 コマンド

 セクハラする
 おさわりする
→とつげきする

 選択肢は全て同じだ!
「リフィたん萌えーーー!!!」×たくさん
 突撃する変態群。迎撃するリフィたんも、
「もう定型文だが俺は男だー!」
 サンレーザーが轟き唸る。





『修行はひとまず中断して、温泉に浸かってきてはどうかのぅ?』
 何故か黒コゲになったメイド仙人に薦められ女子脱衣場内のメイドさんたち。伊豆といえば温泉、温泉といえば伊豆というように、温泉が楽しみで来た彼女らは嬉々とメイド服を脱いでいる。
 仲居カスタムされたそれは、洋服なのか着物なのか中途半端に折衷されすごく着にくく脱ぎにくい。だがそれも温泉という楽しみを倍化させるスパイスだ。
 だけどスーパー美少女(外見が)のリフィーティアは死にそうな顔をしている。
「伊豆で温泉、なかなか魅力的な響きね。御陰さんと夜十字さんのせっかくの旅行に水を差すことにもなりそうで悪いけれど、せっかくだから楽しませてもらうわ」
 真紅の長髪メノウの瞳。柳亭では巫女メイドとして登録されている日下部明穂(ec3527)。
 服などという無粋な(?)なシロモノの上からでも判る神如き大双球。するりするりと布がはだけられ、ヒミツの先端突起が見えそうだ。
 それは――そう。神が御力が込められた、そこだけ現人神のようである。
 西洋ではミカエルという大天使がいるらしく、名の意は『神如き者』だとかなんとか。
 明穂のお胸さまも神如きシロモノ。つまり――そのお胸さまの真名はミカ乳か。
「メイド修行も仕事でもご主人様たちは突撃してきたから、温泉ぐらいはゆっくり楽しみたいわね」
「半分はそれが目当てだからねぇ」
 神如き(乳的に)明穂たんの隣に悪魔というか淫魔的な超絶美貌と誘惑波動。桜は湯浴み着でねね子の着替えを手伝っている。
 ねね子も、なかなかにご立派にお育ちにありましているようだ。
 純粋培養そのもののお子様オーラ。だが育つべき所はしっかり育ち、くびれるところもくびれ、ケモノ娘よろしく実にしなやかかつ豊満だ。
「‥‥‥‥‥‥」
 何だかんだで自分のスタイルを気にする初音とフォルナリーナ。二人は何故か前かがみになっているリフィたんに、
「強く、私たちは強く生きましょう‥‥‥!」
「だ、だから俺は男‥‥‥」
 比べる対象が間違っているが初音とフォルナリーナもそれなりには豊か。桜と明穂たんがおかしいぐらいにビッグなだけなのだ。
「ていうか、なんで男だって信じてくれないんだよ」
 始めは男子脱衣場に行こうとしたが止められたリフィたん。
 性別上は男なのに美少女のパーツで構成されているリフィたん。女子脱衣場に叩き込まれましたですよ。
「それでは皆さんいきましょう! おせなかながしてあげますです!」
 ねね子が先導し温泉に続く扉を開ける。
 人の気配に気付いたイクス。
 目の前に広がるギリギリ全開の女体群。
 イクスは盛大に鼻血を噴いた。





「え、混浴?! ジャパン人は貞操観念というものが欠如しているのかしら‥‥‥」
 先に温泉に入っていた男冒険者たちと先発の変態たち。何故かフォルナリーナは変態たちに接近されている気がしてじりじりと後退している。
 いや、実際に接近されている。
 ケダモノが獲物を見つけたら? 突撃するのがファイナルアンサーでございます。
「これでは、あまりゆっくりと楽しむことができないわね‥‥‥」
 温泉に入っているということは、湯浴み着が水分を吸うことです。
 つまり水を吸った衣服は肌に引っ付くわけで、湯浴み着はフォルナリーナのなだらかな曲線を形作っている訳で‥‥‥
「あまりジロジロ見ないで‥‥‥」
 恥かしくて俯いて、そんな男にとって誘惑ポーズと誘惑ワードを仰いましたですよ。
 瞬間、暗黒闘気が温泉を吹き飛ばす。
「フォルナリーナたぁ〜〜〜ん!!!」
 突撃する変態たち。
「いやぁ変態! 近づかないで!」
「はっはっは。照れてるだけなんだネ!?」
「いやよいやよも好きのうちだよ。さあ、俺らに(アレ的な意味で)ご奉仕を!」
「オレには見える。真のメイドさんはメイド服を着なくてもメイドさんオーラが全身を包み込み、メイド服型のオーラを形成しているのを!」
「っていうより触らないで!」
 千手観音の手のように分身じみた連打を繰り返す変態たち。スタンアタックやブラックホーリーで迎撃して、入り口へ逃げ込もうと同じく逃げて来たのだろう。入り口があった場所に佇むリフィたんは声を荒げた。
「入り口がない!?」
「当然じゃ!」
 雲に乗って現れ出でたメイド仙人。やはり仙人。偉大としかいえない強烈な眼力を二人に叩きつける。
「儂の必殺仙術で空間を捻じ曲げたわい! 儂らがセクハりきるまで逃さんぞい!」
 何もかも犯罪だ。
「そういう訳でリフィたん! おぬしと‥‥‥合体したい!」
「いい加減にしろアホ仙人! サンレーザー!」
「アウチ!」




 一方その頃、
「やっぱり伊豆! 大好きだぁぁぁ!!」
 轟き唸る暗黒闘気。どこぞの拳法使いみたく暗黒闘気を纏わせ飛翔する焔。あまりにありえないがエロ魂はこんな事まで可能にするのか。煩悩って偉大だネ♪
「ククク、ろりきゅあめ。温泉なのに刀を持ち込むとは何と物騒な! 柄の紐とか腐れるぞ!」
「邪魔だろうが、何故か手放すなと俺の本能がな‥‥‥」
「本能? そうか刀で幼女を脅してあんなこととかこんなこととか強要する気かこの犯罪者め!」
「おのれろりきゅあ! キサマのようなやつがいるからセクハラが難しくなるんだ!」
「犯罪者に制裁を!」
 お前らが犯罪者だ。こうまで言われたら信人も哀れすぎる。
 ちょっとナミダがほろり。
「おかしいな。何故か今の俺は、地獄の鬼でも焼き殺せそうに‥‥‥腹の中が熱い」
 斬魔刀をするり。彼の怒りを表すためか刀身、黒く眩く。
「ろりきゅあには死の制裁を!」
「KILL!」
 黒い刃が暗黒闘気と衝突する。






「はい、あ〜ん♪」
 温泉の決戦が終っていざ食事。豪勢な食事を出されたものの、戦いにあけくれた多くの冒険者たちはのども通らず箸でつついたりしていえるだけだった。
 だが桜は疲れも何もない。忍者である彼女は、達人越えした忍者スキルで気配を消し、ことごとくセクハラを回避し続けたのだ。
「あ、あ〜ん‥‥‥」
 今世紀最強と呼ばれる信人も桜にはなすがまま。変態どもに手こずった、というのもあるのだが断ったら男が廃るというものですよ。それ以前に断る理由なんてありませんが。
 だけど幸せ気分には浸れない。変態どもには襲われて今現在、ねね子から親の仇でも見るような超眼光。七代祟られそうだ。
「うぅ〜」
 首の鈴のチョーカーがちりん。
「ふははー! メイドさーん! 儂にしっかりご奉仕するんじゃい!」
「はいはい仙人様‥‥‥」
 明穂たん、メイド仙人を神胸にかき抱き、
「私、ご奉仕の心を徹底的に身につけて、そして修行の恩をたっぷりとお返ししたいんです。心ゆくまでお付き合い願えます?」
「もちろんじゃ! では早速――」
 ごきぃっ!
 曲がったらいけない方向に曲がる仙人さまの首。
 こうして伊豆の夜は深けていく。