キャメコレ1002INフンドーシ
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■ショートシナリオ
担当:葉月十一
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月30日〜01月04日
リプレイ公開日:2008年01月15日
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●オープニング
そこは、とある貴族の邸宅のサロン。一段上がったステージや色とりどりの飾り付けが、屋敷中の人間を総動員して進められている。
いつもならば同じ趣向の持ち主同士、小さなパーティー程度で集まり披露していたものを、今回は招待主であるマーナ嬢の一声によって彼女の作品を主とした一大発表会が企画されたのだ。
聖夜祭も兼ねた集まりでもあるから、屋敷に従事する人々は主の失態だけは避けようと、それぞれに発奮している。中には一部やりすぎではないかと思われる企画を提案した者もいたが、そこはおおらかでお祭り好きの主、面白そうの一声で次々とセッティングがされていく。
が、さすがに人手が足りない。
そう感じたマーナの使いを受け、リュートは久し振りにギルドの扉を叩くことになった。
「――ほう、発表会か」
「あ、はい。マーナお嬢様の新作発表も兼ねて、お屋敷でコレクションの展覧会をする事になったんです」
少し言い難そうに語るリュートに、事情を知るギルド員もまた苦笑する。彼女の新作ということは、例によって例のモノだろうと想像すら不要だ。
そして。
「ただ、今回はお嬢様自身のものだけじゃなくって、他の人達が作ったものも発表しようってお嬢様が」
「他の者?」
「ええ。『フンドーシ愛好連盟』の皆さんや、『フンドーシ推奨委員会』会長さん、それにジャパンから来たっていう『本家・褌を愛する友の会』の人たちとか‥‥他にも何人かいるんだって」
たらり。
冷や汗が背筋を伝う。
「それでね、やっぱりというかモデルさんとかお手伝いの人たちが足りなくなっちゃったみたいで。特にモデルさんがなかなか集まらないから、出来たら冒険者の人たちにお願いしたいってお嬢様が」
「そうか。まあ、確かに彼らなら多分嬉々として‥‥いや、困ってる者を放っておけないだろうな」
苦笑する彼に、リュートもまた同じ顔を返す。
実を言えば人数が足りなかった場合、リュートもモデルとして舞台に立たなければならないのだ。なんとかそれを回避する意味も込めて、そんな内心を隠してマーナへ今回の依頼をお願いしようと提案したのだ。
「それなら早速依頼を貼り出しておくな。まあ、うまく人が集まればいいんだが‥‥」
溜息とともに呟かれた一言を、リュートは切実な思いで聞いた。
●リプレイ本文
●同志達との再会
「マーナお嬢様、ひさしぶり〜♪ 元気にしてた?」
「マーナさん、おひさしぶり!」
キャメコレ会場であるマーナの屋敷を訪れた冒険者達は、工房兼控え室となっているマーナの部屋へと案内された。先の科白は、扉を開けるなり開口一番にチップ・エイオータ(ea0061)とレイジュ・カザミ(ea0448)が発した挨拶だ。
針糸を忙しなく動かしていたマーナは、彼らに気付くなりその手を止め、笑顔で迎えてくれた。
「まあ皆様、お久し振りです。このたびはお忙しい中、わざわざ来て下さってありがとうございました」
道中、リュートから聞いた話では、コレクション開催日が近付くにつれ、かなり根を詰めているらしいのだが、自身の疲れなど微塵も見せずに客を出迎えるところはさすがは貴族といったところか。
そう思い、半ば感心する来生十四郎(ea5386)。
「お嬢様の褌コレクションが開かれると、年の瀬を感じるな」
「ええ。これを期に、是非とも慣習化していきたいとわたくしも考えていますわ」
「‥‥まあ、なんにしろ無理をせぬことだ。その為の手伝いだからな」
「そうですわ。折角のご招待ですから、私も受付でも給仕でも雑用でも、お手伝い致しますわ」
そう語るリオ・オレアリス(eb7741)。
その言葉の裏には、『フンドーシのモデルは絶対に無理ですからそれ以外ならなんでも』といった真意が見え隠れしていた。他の面子と違い、彼女はヘンタ‥‥もといフンドーシのエキスパートではない。
そんな彼女の自己主張とは裏腹に、がっつり自己主張するヘンタ――コレクターが一名。
「マーナたん、お久し振りんぐ! 不肖龍一、フンドーシを愛する全ての方のために頑張ってモデリングします!」
元気な裸、フンドーシ愛のために一肌脱いじゃいます!
そんな浮かれた発言をした龍一歩々夢風(eb5296)は、まさに言葉どおり今すぐ服を脱ごうとして、十四郎から速攻鉄拳を喰らって撃沈した。
「場を弁えろ」
「‥‥し〜ません‥‥」
目の前で繰り広がるドツキ漫才に、マーナは思わず肩の力が抜ける。思わず笑い声を零したのを見て、彼女がここ暫く張り詰めていたものがようやく緩んだ事を冒険者達は感じた。
「折角の褌コレクションは、僕らだって待ち望んでいたんだよ。だから喜んでお手伝い引き受けるよ」
ポンと軽く肩を叩くレイジュ。
いつになく真面目な顔を見せる彼。それはフンドーシを愛する者として、同じ趣向を分かち合える仲間への思い。
「レイジュ様‥‥」
「素敵なコレクションになるよーに、おいらも精一杯頑張るね」
チップの言葉で感極まったマーナは、深々と頭を下げた。
「皆様‥‥ッ! どうぞよろしくお願い致します」
●準備
「うん、こんなものかな?」
一口、小皿に取って味見をするレイジュ。
料理人としての腕の見せ所だとばかりに、彼は会場で出す食事の準備を手伝っていた。内容は、やはり冬場ということで温かいスープ類をメインにした料理だ。
「きっとお酒も入るから、おつまみも必要だよね」
慣れた手付きで鍋を振るう姿は、まさに料理の達人だ。
‥‥が、惜しむらくは彼の出で立ちが裸エプロンならぬ葉っぱエプロンなところが、葉っぱ男が葉っぱ男である所以か。
コレクション会場のあちこちが飾り付けられていく。
その一角には、主催であるマーナの秘蔵コレクションと称して彼女が集めたフンドーシの数々が展示されている。当然、中には貴重なフンドーシもあるが、それらを警備しているのは、かつてそのフンドーシを求めて強盗紛いのことを仕出かした連中だ。
「‥‥なるほど。ようやく改心したということか」
そんな彼らの様子を眺め、しみじみと十四郎は頷いた。
気がかりだった連中の更生した姿に、彼は一つ思いついたことを彼らに持ちかけた。
「どうだろう。折角お前らが考えた褌だ。俺がその中の一点のモデルとして使ってくれないか?」
「い、いいのか?」
「ああ。お前らの努力の成果を、存分に観客へ見てもらえ」
歓喜したのは、褌愛好連盟の者達だ。まさに咽び泣くといった態で、ここに漢達の熱い友情が芽生え‥‥たかどうかは、定かではない。
――ちなみに、フンドーシコレクション展示場には、葉っぱ男として名高い彼がそれぞれの褌を実に付けた肖像画も一緒に展示されている。
その光景はいっそ壮観だった、とは事前に下見をしたリオの言葉だ。思わず倒れそうになりながらも懸命に会場準備を手伝う彼女に、出品者達の熱いまなざしがあったとか、なかったとか。
そうして、キャメロットコレクションはいよいよ当日を迎えた。
●運命の日
「お集まりの紳士淑女の皆様、貴族の嗜みであるフンドーシコレクションをいよいよ開幕です!」
早々たる顔ぶれを前に司会を務めるのは、思いっきり緊張した面持ちのリュートだ。
当初、足りない手を補うようマーナに頼まれていたのだが、冒険者達が自分達で精一杯頑張るから、との発言を受け、なんとかフンドーシ姿になるのだけは免れたのだ。その代わりにコレクションの司会をする事となったのだが。
「‥‥それにしても、本当にヘンタイの都なのね‥‥」
しみじみといった感じで溜息をつくリオ。
あくまで一般的な感性の持ち主である彼女。おそらく今この会場でそんな感想を持つのは、リュートと自分の二人ぐらいなのだろう。そんな彼女は、リュートをサポートするべくその隣に控えていた。
「まあ、雑事ぐらいはしっかりやらないとねえ。さ、キミ、これを読み上げるわよ」
立派に仕上がった舞台の上、先陣を切ったのは十四郎だ。
「まずは『フンドーシ愛好連盟』の皆様による作品です!」
リュートの紹介とともに姿を見せた十四郎。一針一針丁寧に仕上がった作品を身に付けた彼は、その屈強の身体を惜しむことなく晒して、堂々と花道を歩く。
その美しい立ち姿に、観客達はおお〜と感嘆の声を上げる。
「どうだ、これがお前達が作った作品だ。努力すれば、必ず実るものだ。さあ、お前達も来い!」
力強く響く彼の声に導かれ、彼の後を意を決した男達が次々列をなして歩いてくる。十四郎を先頭に、男達のたなびくフンドーシがまるで垂れ幕のように見えた。
「さすが十四郎さん。凄いよね。でも、おいらが選んだものだって負けちゃいないよ」
袖に引っ込む彼の姿を見送って、チップもまた意気込んで拳を握る。
「続いての作品は、『本家・褌を愛する友の会』です!」
リュートの紹介を受け、客席に潜んでいたチップがそのマントをバッと脱ぎ捨てる。彼が見につけていたのは、幾つもの色を重ねた褌だった。
ジャパンからの参加者ということで、まさに本場ならではの色使いに客席のあちこちから溜息が零れる。
「今住んでるジャパンらしさを強調してみたよ」
彼が歩くにつれ、白い褌の上に重ね着されたような色布が揺れる。それが透けて下の色と折り重なり、様々な色合いを見せているのだ。
続くモデル龍一の登場方法は、かなり奇抜だった。
「え〜続きまして、『フンドーシ推奨委員会』会長直々の作品です。テーマは‥‥ラブ?」
思わず説明をつっかえたリオ。
そんな解説と同時に会場の中央には、巨大なプレゼント箱が登場する。それらを引っ張ってきたのは、褌姿の委員会の面々だ。
そして。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」
バッと開かれた箱から姿を現した龍一、以下数名。全員がハートを散りばめた褌を締め、奇妙な組み体操をしている。どうやら『ラブ』を演出したいようだが‥‥。
「フンドーシラブゥ〜♪」
ラブー!
彼の言葉を受けて、観客が応える。思いの外好評で、会場中が熱くなる。その様子を見ながら、リオとリュートは軽く頭を押さえた。
とはいえ、次がいよいよ真打ち登場とあって、すぐに気を取り直す。
湧き上がる会場の興奮の中、彼女は彼を紹介した。
「続きまして、本日のコレクションの主催でもあるマーナさんの作品です。モデルはご存知――」
葉っぱ男!!
一際高いコールの後、ステージへ姿を現したレイジュ。彼の股間を覆う褌は、眩い程の純白の中でゴールドの刺繍が葉っぱの形に施されたものだった。彼をイメージしてマーナが作り上げた、まさに世界で一つきりの作品だった。
時折、光の反射でキラキラと輝く様は、まさにゴージャスと呼ぶに相応しい。
「見て! これがマーナさんが僕をイメージして作ってくれた褌だよ! 彼女こそフンドーシデザイナーとして素晴らしい腕前の持ち主さ!」
やんやの喝采。
その拍手が鳴り止まぬうち、すぐさま次のフンドーシが発表される。当然、モデルが足りない事もあり、その時は制作サイドがモデルを務めたが、殆どの作品を冒険者達がモデルとして堂々と会場を渡り歩いた。
彼らにとって己の肉体を曝け出す事には、なんら躊躇もない。むしろ身につけた褌を見てもらうことこそが至上だった。
●舞台挨拶
全ての発表が終了し、モデル達とともに舞台に上がったマーナ。
その表情は幾分緊張していたが、後ろを見れば冒険者達がにっこりと笑顔で安心を与える。当初は遠慮していた彼女。
だが。
「主催者が最後に出ないとね。貴女の名前を、ここで皆に知らしめてあげるんだよ!」
レイジュの言葉が後押しとなり、今彼女はこの舞台に立っている。
そんな彼女の元へ、龍一とリオが花束を持ってやってきた。白薔薇と南天を合わせた紅白をイメージする造花は、チップが丹精込めて作ったものだ。
「マーナたん、キャメコレ主催アリガトウゴザイマシタ!! 感謝の気持ちとフンドーシ愛が永遠に続きますように!」
「おめでとうございます。立派なコレクションでしたわ。新しい年もどうぞよろしくお願いしますね」
「‥‥あ、ありがとうございます!」
花束を受け取り、感涙に頬を濡らすマーナ。
そうして、彼女は一歩前へ出る。
「――このたびは、こうして多くの皆様に集まっていただき、本当にありがとうございました。今後ともイギリスにフンドーシの火を絶やす事なく精進してまいりますので、どうぞこれからもよろしくお願いします!」
深くお辞儀する彼女。
直後、盛大な拍手が会場中を包み――コレクションは無事、成功を収めたのだった。