Thanatos――死と、喪失――Lost

■ショートシナリオ


担当:葉月十一

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:11 G 38 C

参加人数:5人

サポート参加人数:3人

冒険期間:06月09日〜06月17日

リプレイ公開日:2008年07月07日

●オープニング

 ――――誰もいない。
 あの人はいなくなってしまった。私の目の前で。
 最期の言葉が耳から離れない。
 どうして‥‥どうして、一緒に逝けなかったんだろう。何故、あの人は私を置いて逝ってしまったんだろう。
 あの人の下に共にいたあの子もいない。
『――折角助かったんだ。オレは試練を乗り越えたんだ。だから、一人でも生きてくよ』
 そう言って去っていった。試練なんて――あの人と共にいられればそれでよかったのに。
 そっと見上げれば、月の光が私を照らしていた。誰もいないと思っていたのに‥‥見つけたのは黒い小さな影。
 しわがれた鳴き声が耳に心地いい。あの人と共にあった時、よく耳にした鳴き声。
「そう‥‥貴方もここにいたの?」
 伸ばした腕に擦り寄ってくる小さな躯。覗き込んだ目は、月と同じように金色の光。
 ふと、湧き起こる衝動。
 ああ、そうね。あの人がいなくなったのなら、あの人の代わりを私がすればいいのよね。
「あの人が出来なかったことを私が叶えてみせれば、きっと――――」

 月のない夜。
 鳴き声が一つ、闇の中にこだまする。

●ワスレモノ
 オクスフォード――キャメロットより北西に位置するその都市は、広がる長閑な田園風景とは裏腹に、数ヶ月前までは内乱の危機に直面していた。
 試練という名の粛清を行う者達――『黒』き神を崇める『調停者』と名乗る者達によって。
 だが、元冒険者であり、現オクスフォード領主である劉飛龍(リュウ・フェイロン)と助力した冒険者達の手によって、なんとか波乱の芽は摘むことは出来た。
 北の地で起こりかけた暴動は、騎士団が乗り込んだことで急速に鎮火した。
 元々、風聞に扇動されただけの民衆に過ぎない。領主であるフェイが確固たる存在である事を示せば、自ずと結果は明白だ。
 こうしてオクスフォードは束の間の平穏を得た。
 しかし、その根はいまだ彼の地のどこかに蔓延っている。そして、今回の首謀者である『神父』の教えを受けた種子らは、今回の難を逃れて何処へと姿を消したのだ――彼らの言葉を借りるならば、『試練』を乗り越えて。

 ――コンコン。
「‥‥どうぞ」
「失礼します」
 扉が開き、その向こうで男が一礼する。顔を向けたフェイは、そこにいるのが騎士団長レオニードと知って一つ小さく息を吐いて肩の力を抜いた。
 元々は庶民の生活の中で過ごしてきた彼にとって、慣れたとはいえ城内での生活はやはり堅苦しいものだ。貴族相手もそうだが、使用人達もやはり領主が相手では対応が仰々しい。たとえその出自を知っていたとしても、だ。
 その点、レオニードが相手だと身構える必要もなく、従来の人見知りな性格もあってフェイの心をホッとさせてくれた。
「レオニードか。どうした?」
「フェイ様の指示で調査していました先日の事件で逃亡した者達の、その後の足取りの調査結果がようやく纏まりましたのでそのご報告を」
「――で、どうだった?」
 意気込むフェイに対し、レオニードの顔色は暗い。
「あまり芳しくありませんな。現在、騎士団を数名の部隊に分けて領内を調査しましたが、有力な手掛りは掴めていません。幾つかの目撃情報はあったのですが、それも空振りに終わっています」
 抑揚なく報告しているが、彼の声にも幾分落胆の色が聞き取れる。
 その後、もう一度事件の起きた区域の周辺捜索をもって一先ずこの件を打ち切る旨が告げられると、フェイは思わず目を見開いた。
「ちょっ、ちょっと待てよ! まだ結局何も掴んじゃいないんだ! 連中が本当は何をしたかったのか、なんで俺を狙ったのか‥‥」
「お気持ちは分かります。ですが、これ以上騎士団の人員を割くことは難しいのです。事件はこれ一つではないのですから」
「‥‥だけど‥‥連中が俺を狙ったんなら、ひょっとしたら父さんと母さんは」
「フェイ様!」
 言いかけた言葉を、レオニードは慌てて遮る。
 その大きな声にフェイもまたハッと顔を上げてレオニードを見た。互いの双眸の中に浮かぶ悔しさの色。それが見て取れたことでフェイ自身、気持ちをゆっくりと落ち着かせた。
「‥‥悪りぃ‥‥俺」
「――忘れろ、とは言いません。ですが、もう少し‥‥ほんの少しで構いません。領主として広い視野と前を見据えてください」
 苦言を呈するレオニードの姿に、やはり他の貴族や騎士達とは違う温かみをフェイは感じる。どこかくすぐったくもあり、それを振り切るように僅かに苦笑を浮かべた。
「分かった。なんとか、努力するさ‥‥それで、後はどこを調査するんだ?」
「ウッドストックの森と、北の砦周辺です。一度調べた場所ですが、やはり今回の事件と密接な関わりがある場所なので、再度調査を行おうと思っております」
 レオニードの説明に一瞬考える素振りをみせるフェイ。
 嫌な予感に慌てて言葉を続けようとした、が。
「分かってるとは思いますが――」
「騎士団の皆にばかり負担をかけるのも悪いだろう。レオニードも言ってるように他の仕事もあるんだからな。再調査なら別の人員に行かせた方が、視点も変わっていいんじゃないか?」
 口を挟む隙もなく、ニヤッと笑みを浮かべたフェイ。
 こういう時の顔は本当に父親によく似ている。そう思い、レオニードは深く溜息をつく。
「‥‥解りました。ギルドの方へ冒険者達の要請を行いましょう。ただし」
 一旦、言葉を切る。
 待つ事、数秒。
 そして。
「それぞれの同行者には、騎士団の者を付けますので。フェイ様においては、執務の方を優先させていただきます」
「――なっ!? ちょっと待てよ、俺も」
「これは決定事項です。それでは依頼の準備もありますので、これで失礼します」
「待てって!」
 声を荒げるフェイを後目に、レオニードは居住まいを正すと、丁寧にお辞儀をしてそそくさと部屋を出ていった。


 ――――ふぅと小さく息を吐く。
 周囲を見渡し、誰もいないことを確認する。既に日は暮れて、薄暗いこんな場所に居る者はいない。
「‥‥ま、当然だよな。こんな場所、誰も来るわけが」
 一人、紡ぎかけた言葉を切る。感じた気配を探して、視線を闇の向こうへ向ける。
 最初、そこには何もなかった。
 が、凝視する少年の前でうっすらと白い靄のようなものが見えたかと思うと、すぐにそれは人影だとわかった。
 思わず身構える少年。
 しかし、人影が振り向いた瞬間、ハッと息を呑む。直後、先程までの警戒すら少年は解いてしまった。
「神父様!?」

 ――嘘だろ?
 神父様はあの時、死んだ筈じゃあ‥‥え、ひょっとして生き返ったのか?
 それってやっぱり神様のおかげなのか、やっぱ神父様はすげぇや!

 駆け出した少年の思考がぐるぐると回る。
 疑問と、驚嘆と、歓喜で。
 もう間もなく、その思考が途切れることを夢にも思わずに。

●今回の参加者

 ea0424 カシム・ヴォルフィード(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea1364 ルーウィン・ルクレール(35歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5635 アデリーナ・ホワイト(28歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb2628 アザート・イヲ・マズナ(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・インドゥーラ国)
 eb9943 ロッド・エルメロイ(23歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

クル・リリン(ea8121)/ 木下 茜(eb5817)/ ヒルケイプ・リーツ(ec1007

●リプレイ本文

●出立
 城門の脇、一人静かに佇むアザート・イヲ・マズナ(eb2628)。
 先程からチラチラと視線を投げかけてくる番兵がいたが、彼は特に気にせず仲間達を待つ。ハーフエルフの彼にとって、そんな目を向けられるのは日常に過ぎないからだ。
 不意にざわめきが近付いてくる。
 アザートが視線を上げた先、開いた門に出立の準備をした一群が姿を見せた。
「それではフェイ様、行ってまいります」
 艶やかなベールを巻いたアデリーナ・ホワイト(ea5635)が、中心に立つ少年――オクスフォード領主劉飛龍に向かって軽くお辞儀をする。
 どことなく拗ねた表情の彼を見て、アデリーナは小さな微笑を浮かべた。
「今回は領主としての執務を全うして下さいね。また次の機会に一緒に足を運びましょう」
「わかってる」
「――事件の詳細、俺がしっかりと引き継ぎましたから。お任せ下さい」
 今回の依頼で初見でもあるロッド・エルメロイ(eb9943)が、自信ありげにとんと自らの胸を叩く。聞き及んだ事件の内容は、彼にとって顔を顰めるようなものだった。
「これ以上、『試練』の名の元に誰かが死ぬことだけは止めなければ‥‥」
 ならばこそ、新たな被害をなんとしてでも食い止めねば、そう意気込む様子だ。
 微かに洩らした小さな呟きに、カシム・ヴォルフィード(ea0424)も同意するよう頷く。
「この一連の事件、まだわかっていないことの方が多いです。だからこそその解明のため、これ以上犠牲になる命はあって欲しくないから」
 これまでに関わった依頼が思い出され、その顔がすこし憂いを帯びる。
 元が整った顔立ちをしているからか、そんな時の彼は目を惹く異性のようで、付き添いの騎士の顔が僅かに赤くなったのを、アデリーナは見逃さなかった。クスリと笑う声に、慌てて顔を背ける青年騎士。
「‥‥あの?」
「いえ、なんでもないですわ。ね、そうでしょ?」
「は、はい!」
 そんな二人を、当のカシムは不思議そうに見返した。
 ちょうどそこへ合流してきたアザートにルーウィン・ルクレール(ea1364)が気付く。
「‥‥出立か? どっちに?」
「ええ。結局、私達の総意でウッドストックの森へ向かう形になりました。北の砦には騎士の方を数名編成にして、私達より遅れて出立するそうです」
「そうか‥‥」
「アザート殿も一緒に来ればよかったでしょうに」
 どこか遠慮がちなアザートに対し、ルーウィンがふと疑問だったことを口にする。
 が、それに対し、彼はゆっくりと首を横に振った。
「いや、俺は‥‥いい」
 その生い立ち故か、長年染み付いた性は冒険者になってもなかなか拭えない。それが卑屈に思えるならともかく、今の彼はそれが自分と割り切っていた。
 ならばこれ以上他人が口を挟む問題ではない、そう考えてルーウィンはそれ以上の追求を止めた。
 そして。
「それじゃあ皆、どうかよろしく頼む!」
 響くフェイの言葉に、冒険者達は引き締めた顔で静かに頷いた。

●森で待つ者
 森へ足を踏み入れた途端、それまでの行楽的な雰囲気は消え、全員が真剣な表情で気を引き締めた。
 積み重ねてきた冒険者としての勘、とでもいうのか。感じる森の雰囲気が彼らに警鐘を鳴らすのだ。
 事実、森に棲む獣達もいつも以上に殺気立っており、容赦なく彼らに襲い掛かってきた。
「――風よ!」
 突然の襲撃にバランスを崩しながらも、カシムは魔法を唱えた。真空の刃が襲ってきた影を弾くと、待ち構えたルーウィンの剣によって一刀のもとに斃される。
「‥‥大丈夫ですか?」
「うん。でも‥‥やっぱり前に来た時に比べると、すこし変だね」
 助け起こさながら、首を傾げるカシム。
「前はもう少し静かなイメージがあったんだけど」
 森へ入って一時間。
 カシムとロッドのブレスセンサーによって、呼吸を感知しては移動を繰り返していたが、その間モンスターに襲われた回数はすでに二桁に近い。飛び抜けた強さこそないものの、さすがに回を重ねてしまえばこちらも疲労が溜まる。
「やっぱり呼吸を探索するだけでは難しかったかな」
 森の中で呼吸をするのは人だけではない。
 命ある者――即ちモンスターでも呼吸はするのだ。だから、呼吸するほうへ向かえば必然と遭遇する率が上がる結果となる。
「――そんなこと、ありませんわ」
 気落ちするカシムに、周辺の調査を終えて戻ってきたアデリーナが声をかける。
「村の人の話でも、森へ入る少年を見かけた、という情報以外ないのですから。少ない手掛りではそれも致し方ありません」
「そちらはどうでした?」
 ルーウィンの問いかけに、苦笑を浮かべつつ彼女は静かに首を振る。彼女を守るように居た青年騎士の表情からも、あまり芳しくない結果だと察せた。
 やはりこの広大な森を短い時間で探索するのは不可能か、とその場の全員が落胆しかけたところへ、息せき切ったロッドの声が届く。
「皆さん、こちらに来てください!」
 ハッと顔を合わせる四人。
 急ぎ、声がした方へ駆けつけると、ロッドとアザートが木陰に身を潜めるようにして立っている。その視線の先に目を向ければ、そこには一人の少年が地面に倒れ付していた。
 その姿に見覚えのあるカシムとアデリーナは、ハッとアザートを見る。その視線を受けて、彼は力強く頷いた。
「彼、ですか?」
「ああ」
 確認するロッドに、アザートが簡素に答える。
 様子を窺うように遠巻きに眺める二人に、他のメンバーもその場に立ち留まった。ピクリとも動かない様に、もしや死んでいるのか、との疑念も過ぎる。
「‥‥とはいえ、このまま手を拱いて見ているわけにもいきませんよね。それなら」
 そこまで言いかけたアデリーナだったが、次の瞬間、思わず身を硬くする。
 何故なら――彼女の指に嵌められている指輪の蝶が、ゆっくりと羽ばたき始めたのだから。

●死の眠り
「デビル‥‥っ!」
 ぽつりと呟いたアデリーナに、全員の視線が集中した。
「近くに?」
 問うアザートに、彼女は慎重に首を振る。
「それはまだはっきりとは解りません。ですが‥‥彼を様子を調べてみれば」
「わかりました。それなら、警戒を怠らないように近付きましょう」
 カシムの意見に全員が同意すると、円陣を組んで彼らは移動を始めた。中心を魔法を使う者達で固め、周囲を前衛を務める者らを配置する形だ。
 倒れ伏す少年へ近付くにつれ、アデリーナの指で蝶の羽ばたきが強くなっていく。その反応に冒険者達の緊張は、いやが応にも高まる。
 そして。
「息は‥‥していますね」
 少年を抱き起こしたカシムは、すぐに掌を口元に当てて呼吸を確認して安堵した。だが、その顔色は青褪めていて、ひどく衰弱しているのが誰の目にも明らかだった。
 その時、少年の唇が僅かに動いた。
「‥‥しん、ぷさま‥‥」
 どこか恍惚とした、親愛を含んだ呟き。
 ロッドの中で一つの解が閃く。
「ひょっとして、インキュバスに憑依されている‥‥?」
「まさか。だって、連中が魅了するのは通常異性ですよね?」
 聞きかじりの知識があるルーウィンが、ロッドの言葉に苦笑する。
 が、彼の表情はいたって真剣だ。ふと思い立って、視線をちらりとアデリーナに向ける。
 その意図を、彼女はすぐ理解した。一つ頷くと、今までで一番強く、彼女は足元に魔法の水鏡を展開する。
 アデリーナにしか見えない鏡の向こう――映る少年の姿が仄かに光っている。ハッと顔色を変えた彼女だが、更に凝視した先に彼を取り巻く靄のような存在を見つけた。
 当然様子を窺っていた仲間も、アデリーナの変化に疑惑を確信へ変える。
 だが、彼らの中に憑依を退ける力を持つ者はいない。
「どうする?」
 アザートの静かな問い。
 そこに込められた意図は明白だ。少年にもダメージを負わす覚悟で憑依したデビルを誘き出す方法を、彼は仲間に確認しているのだ。
 だが、その方法は衰弱している少年には命の危機を伴うもの。
「ちょっと待って下さい。確か――」
 ハッと何かを思い出したアデリーナが、バックパックから取り出したのは六芒星が刻まれた護符。デビルに対して影響を与える結界を作るため、彼女は一心に祈りを捧げた。
 どれだけ時間を費やしたのか。
 痺れを切らしかけたロッドが何かを言おうと口を開いた途端、少年の身体から白い霧のようなものが現れてきた。
「やれやれ。折角のお楽しみのところを邪魔しやがって」
 低く乱暴な声色は、その霧から聞こえてくる。冒険者達が身構える中、それはゆっくりと男の形を取った。その姿にカシムとアデリーナ、アザートは思わず息を呑む。
「‥‥やはりインキュバス‥‥その姿は‥‥」
 カシムの呟きを聞きとがめ、相手はニヤリと笑む。
「ふん。折角こいつが望んだんだ。それ相応に相手をしないとな」
 その言葉を聞き、アザートは思わずカッと剣を抜いた。弱くなった心の隙間に入り込む連中に、冷徹を装いつつも内心はかなり憤っていた。
「貴様ッ!」
 周囲が止める間もなく、彼の剣がインキュバスの腕を凪ぐ。一瞬霧散し、すぐに復元した。
 だが、アザートの剣はデビルスレイヤーを冠する魔剣だ。予想以上のダメージが自分に与えられた事を、インキュバスは瞬時に察した。
「くっ‥‥」
 加えて、周囲にはアデリーナが張った結界がまだ生きている。
 己の不利を悟ったインキュバスは、すぐに少年の身体から離脱すると、一目散に逃走を試みた。
「待ちなさい!」
「逃がしません!」
 相手の反応に一瞬の遅れでカシムがウィンドスラッシュを放つ。それを追いかける形でロッドが詠唱に入った。
「炎の精よ、これ以上悲劇を増やさないで下さい!」
 狙いすましたように地面から炎の柱が立ち上がる。その強烈な炎の紛れるようにして、人の形をした霧は彼らの前から消えた。
「‥‥倒しましたか?」
「いえ、はっきりとは‥‥」
 ルーウィンが駆けつけた先で、その存在を確認することはなかった。振り返ると、アデリーナもまた首を振る。彼女の手の蝶は、その羽ばたきを既に止めていた。
 デビルの気配は消えた。
 少年を抱き起こすと、アデリーナは急いで手持ちの回復薬を与えた。とはいえ怪我と違い、あまり効果に期待は出来ない。
 駆け寄った騎士に、彼女はすぐ申し出た。
「すぐにお城の方で手当ての方をお願いします。この子は今のところ唯一の手掛りですから‥‥」
「了解した」

 こうして、一行は一人の少年を無事に保護することが出来た。
 だが、城へと帰還した彼らは、もう一つの結末を知る事になる――北の地へ赴いた者達が全滅したという報せを。