【探求の獣探索】試練――未来の騎士として

■ショートシナリオ


担当:葉月十一

対応レベル:3〜7lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 4 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月28日〜12月03日

リプレイ公開日:2005年12月06日

●オープニング

●号令
「神の国アヴァロンか‥‥」
 宮廷図書館長エリファス・ウッドマンより、先の聖人探索の報告を受けたアーサー・ペンドラゴンは、自室で一人ごちた。
 『聖人』が今に伝える聖杯伝承によると、神の国とは『アヴァロン』の事を指していた。
 アヴァロン、それはケルト神話に登場する、イギリスの遙か西、海の彼方にあるといわれている神の国だ。『聖杯』によって見出される神の国への道とは、アヴァロンへ至る道だと推測された。
「‥‥トリスタン・トリストラム、ただいま戻りました」
 そこへ円卓の騎士の一人、トリスタンがやって来る。彼は『聖壁』に描かれていた、聖杯の在処を知るという蛇の頭部、豹の胴体、ライオンの尻尾、鹿の足を持つ獣『クエスティングビースト』が封じられている場所を調査してきたのだ。
 その身体には戦いの痕が色濃く残っていた。
「‥‥イブスウィッチに遺跡がありました‥‥ただ」
 ただ、遺跡は『聖杯騎士』と名乗る者達が護っていた。聖杯騎士達はトリスタンに手傷を負わせる程の実力の持ち主のようだ。
「かつてのイギリスの王ペリノアは、アヴァロンを目指してクエスティングビーストを追い続けたといわれている。そして今度は私達が、聖杯の在処を知るというクエスティングビーストを追うというのか‥‥まさに『探求の獣』だな」
 だが、先の聖人探索では、デビルが聖人に成り代わろうとしていたり、聖壁の破壊を目論んでいた報告があった。デビルか、それともその背後にいる者もこの事に気付いているかもしれない。
 そして、アーサー王より、新たな聖杯探索の号令が発せられるのだった。

●小さな勇者達
 アーサー王による聖杯探索の報は、数日遅れてここ、ケンブリッジにも届いていた。
 当然、血気逸る生徒達は騒然となった。
 自分の力を試したい。王に忠誠の証を見せたい。遺跡そのものの神秘に触れたい。想いは様々なれど、少しでも腕に覚えのある者は、勢い勇んで遺跡を目指す。
 FORに在籍するガラハット・ペレスもその一人だった。

「だからみんなで行けば大丈夫だって!」
「しかし、危険すぎる」
 『クエストリガー』の受付所。そこで生徒会長のユリア・ブライトリーフと押し問答をするガラハット。周囲の視線がハラハラと見守る中、互いに一歩も引く様子はない。
 生徒会長である彼女の心配もあながち杞憂ではない。
 実際、すでに単身で乗り込んだ数名の生徒は大怪我を負い、たまたま先行で調査していた円卓の騎士らに辛うじて助けられたのだ。今では「襲ってくる‥‥黒い群れが‥‥」と、何度もうわ言を繰り返している。
 更に救出した騎士の話では、暗闇の中に猫の姿を見かけたとも言うが、ハッキリした事は不明だ。
 ただ分かっているのは、自分達が王の命で遺跡を調べようとするのと同じように、他にも遺跡を調べようとしている者がいるということだ。
 だが、そう諭す彼女に対し、ガラハットはあくまでも決意を曲げない。
「アーサー王の号令なんだぜ! 国を挙げて探しに行くってのが、騎士としての礼儀だろ!」
「だが、まだ未熟な身で赴き、もしものことがあればどうする?」
「だからパーティを組んで行くんだろ。例え一人一人の力は小さくても、みんなで協力し合えば、どんな困難にも立ち向かうことが出来る。そう学園でも教えてる筈だぜ」
「それはそうだが‥‥」
 まっすぐに強いガラハットの視線。
 そこに揺るぎない信念を感じるのは気のせいではないだろう。
「それにさ、王様が協力を求めてるんだぜ。今ここで助けにならなくて、何のための騎士だってんだよ! それこそ騎士道に反するんだと俺は思うぜ」
 だが、自分より年下の相手に騎士道について諭されても、彼女の心が揺さぶられる事はなかった。それこそが、彼女が生徒会長を任されるに足る強い心の持ち主に他ならない証明だ。
「わかった。では君個人で、今回の遺跡探索の依頼を出せばいい。ただし、生徒会は馬車の用意をするといった協力は一切しないから、万全の注意をするように。いいな」
 あくまでも生徒会は、今回のおふれに際して一切の関与をしない方針を採るようだ。
 さすがに憮然としつつも、とにかく依頼を受理してもらえる事にガラハットはホッとする。
「まあ、任せとけって。立派に役立つところを見せてやるぜ!」
 勢い腕を振り回し、ニカッと笑うガラハット。
 その笑顔がなんとなく円卓の騎士の誰かを思い出すのだが、深く考えることなくすぐに気にするのを彼女は止めた。
 そして、彼の提示する依頼書の中に、怪我を負った生徒達が掴んだと思われる情報の一文を最後に書き記した。

『閉ざされし闇の中 眠る獣は世界を示す道
 心弱き迷い子の声を聞け
 疑えし者 大いなる闇の顎に飲まれ
 冷たき者 荒ぶる黒き踵の礎とならん
 全ては心正しき者 心清き者 心優しき者のため かの道は開かれん』

●今回の参加者

 ea5684 ファム・イーリー(15歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea7435 システィーナ・ヴィント(22歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea9937 ユーシス・オルセット(22歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 eb3117 陸 琢磨(31歳・♂・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb3450 デメトリオス・パライオロゴス(33歳・♂・ウィザード・パラ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●道中――錯綜する情報
「ねえ。探求の獣ってどんな獣なのかな?」
 騎士として精一杯がんばらないと。
 遺跡へ向かう道中、ふとそんなことをシスティーナ・ヴィント(ea7435)が呟く。それを聞いた同じ後列で隣を歩いていた陸琢磨(eb3117)は、下らないとばかりに嘆息した。
「騎士道などどうでもいい。相手が何であろうと関係ないな」
「じゃあ、どうしてこの依頼を?」
 思わずムッと聞き返したシスティーナに、琢磨は淡々と切り替えした。
「自分を試したい‥‥ただ其れだけだ」
 抑揚のない一言に、場は一瞬だけ沈黙する。
 その雰囲気を切り替えようと、ユーシス・オルセット(ea9937)が今回の敵について話題を変えた。
「そういえば、生存者が言ってた黒い群れって気になるよな」
「あたし、ちょっとだけ聞いてきたよ」
 それに乗るようにファム・イーリー(ea5684)が言葉を続けた。
「怪我をした人達に出発前に少し聞いてみたんだけどね、幾つもの黒い影にいっせいに纏わりつかれたみたいだったの」
「‥‥遺跡のことを考えたら、コウモリや蟻なのかな?」
「ううん、そんな小さいモノじゃなくて、もう少し大きかったみたいよ」
「やっぱり悪魔って事かな」
「多分、そうだと思うなー」
 システィーナが声を挟むと、ファムは頼りなさげに頷いた。
「あのさ‥‥遺跡で見たっていう猫のことなんだけど」
 デメトリオス・パライオロゴス(eb3450)がそう切り出すと、ファムとシスティーナがすぐさま反応した。
「そんな遺跡に危ないよね。見つけたらすぐ助け出さなきゃ」
「うん、迷い猫だったら保護しないと」
 遺跡で迷う可哀想な小動物だと信じて疑わない二人。
 だが、今回のメンバーの中では唯一、デメトリオスだけがそこにデビルの疑いを持っていた。とはいえ彼はそれを口に出さず、もう一度他の生徒から聞けた遺跡の構造を確認する。
「ここが入り口みたいだけど‥‥他にはないのかな?」
 そこへ、先頭を歩いていたガラハッド・ペレス(ez0105)の声が上がった。
「そろそろ遺跡に着くぜ! みんな、準備はいいか?」

●遺跡――最初の試練
 前列に立つガラハッドとユーシスの先導の元、彼らは遺跡の中へ入っていく。
 当初、明かりは先頭のガラハッドが持つ事になっていたが、襲われた時の状況を考えて、三列に並んだそれぞれの一人が持つ事にした。
「罠とか、大丈夫かな?」
 後方でランタンを掲げながら、システィーナが手頃な長さの棒で壁のあちこちを探る。カンカン、と静かな空間に音が響く。
 思わず顔を顰めたのは、彼女の友人でもあるユーシスだ。
「し、システィーナ、あんまり物音を立てるのは‥‥」
「え、でもこうしないと罠が解らないんじゃ?」
「その前に『敵』に気付かれる可能性があるな」
 周囲の気配を注意深く観察しつつ、殿を務める琢磨が静かに告げる。その一言はさすがに彼女を落ち込ませた。
 暗闇の中、果てなく続く遺跡は、長年人の手が入っていない事もあり、それほど荒れた様子はなかった。所々に崩れた部分はあるため、多少空気が澱んではいたが。
「――こっち、かな」
 澱んだ空気相手に情報を得たデメトリオスが、とある方向を指差す。彼曰く、数十の群れが一直線に進んでいったそうだ。そして、その群れを率いるモノの存在も。
 その時、不意に別の場所から物音が響いた。
「え?」
 すかさずファムがサウンドワードを唱えた。
 そして。
「‥‥泣き声? 誰かが泣いてるよ。小さな子供みたいだけど」
「来るぜ」
 彼女の声にガラハッドの警告が被る。すぐさまユーシスが盾を身構えて矢面に立つ。
 そのまま注意深く進むと、ぽっかりと開けた空間に出た。その一行の前に現れたのは、床や壁を這い回る鼠に似た生物の一群。
 十体はいるだろうか、それらがクルードと呼ばれるデビルであると、後に彼らは知る。
 普通の鼠と明らかに違う人の子供ぐらいの大きさに加え、耳まで裂けた醜い口。長い尾が鞭のように撓っている。
「なにこれ!?」
 思わずシスティーナが声を上げる。彼女の声に反応して、無数のデビルの目がジロリとこちらを向く。明らかに獲物を捕らえる時の目だ。
 その時、ユーシスが先ほどの物音の正体に気付く。
「あ、あそこ! 子供がいるよッ」
「‥‥ひっくひっく、た、助けて‥‥」
 泣きじゃくる子供を見つけ、彼らは互いに目を合わせた。
 罠かもしれない。
 だが、ここで見捨ててしまえば、騎士としての名に劣る。それはある意味、ユーシスやシスティーナ、ガラハッドのように騎士を目指す者からすれば当然の決意。
「好きにしろ」
 殿は務めてやる。
 暗にそんな意図を込めて、琢磨が剣を身構えた。その気配を感じたのか、クルード達がいっせいに襲い掛かる。
「させないよ!」
 すかさずデメトリオスが、前方にバキュームフィールドを発生させる。真空の衝撃が彼らの侵攻を一時的に食い止めた。
 その隙に琢磨の振るう刃が、迫り来るクルードを受け止める。
「急げ!」
 その声に促され、三人が泣きじゃくる子供の下へ駆ける。
 ユーシスとガラハッドがクルード達の攻勢を防ぎながら、システィーナのGパニッシャーでことごとく押し潰していく。勿論、相手が虫ではないので、そうそうトドメまではさせずにいた。
 それでも、なんとか子供の下へ駆け寄りって保護する。
 その間にも、クルード達は次々と冒険者に向かってくる。二、三体はスリープで眠らせたファムだが、さすがの数の多さに焦りも生まれる。
「このままじゃ押されるから、みんなの応援もしなきゃ」
 流れるメロディー――竪琴の音楽に合わせて彼女が歌う。どんな困難にも挫けない心を持つように、そして相手に対しては、気持ちを鎮める戒めの歌を。
 やがて、デメトリオスの放った雷の一撃を最後に、その場で動くデビルは一つもいなくなった。

●守護――心弱き者と悪魔の誘い
「こっちだよ」
 子供に手を引かれるまま、ユーシスはその後を付いていく。
 その足取りに迷いはなく、真っ暗な道を怖がる事無く進む少年。先程泣きじゃくっていたのが嘘のように。
「なあ、いったい何処へ行くつもりなんだ?」
 さすがに訝しく思い、ユーシスが尋ねると、幼い子供はにっこりと笑って答えた。
「僕を助けてくれたお礼だよ」
 そのまま彼は、闇の中をどんどんと進んでいく。
「‥‥問いかけ、なのかな?」
 デメトリオスが小声で話せば、
「どうなんだろ?」
 システィーナは軽く小首を傾げる。
 確かにこんな場所に子供が一人でいる方が不自然だ。むしろデビルの罠である可能性の方が高い。
「ファムちゃんはどう思う?」
「うーん、とりあえず付いていってみよっか。今は少しでも手掛りが欲しいしね」
「それに例の一文にあっただろ。『心弱き迷い子』の声を聞けってさ」
 ユーシスの言葉は、確かに一理ある。
 一言も口を挟まない琢磨は、どうやらパーティーの決定に黙って従う方針のようだ。
「とにかく追ってみようぜ」
「ああ」
 ガラハッドが声を上げると、ユーシスもそれに同意して子供の後を追いかける。
「こっちだよ」
 暗闇の中、子供の声だけが響く。
 だから彼らは気付かなかった。足に当たった小石が一つ、何度か跳ねた後にそのまま闇の顎の向こうへ音もなく吸い込まれていったのを。
 それは、奇しくも少年が呼ぶ声とは逆方向であった。


 子供に促されるまま、彼らが連れてこられた場所は、一切の光も届かない遺跡の最深部。
 途中、何か罠があるか、あるいは敵が襲ってくるか、と注意を払っていたが、そのような気配はなかった。まるであらかじめ決められていた道筋のように。
「ここ、すっごく広いね〜」
 しっかりとした石造りの空間は、今までの通り道と違ってかなり広大だ。
 その広さにファムが思わず空を飛ぶ。あたり一面真っ暗なため、ランタンの灯りだけが頼りだったが、彼女は背伸びをする感覚で飛び回った。
「おい、危ないぞ」
「平気平気〜」
 ガラハッドが注意するも、久々の自由な空間を満喫してるおかげで聞く耳持たない。
 その時、彼女は視線の先に動く影を見た。
「‥‥あれ? ひょっとして、猫?」
 ほぼ同時に他のメンバーも、暗闇にひっそりと立つ猫の姿に気付く。
「やっぱり迷い猫だったんだ」
「‥‥この保存食、食べるでかな?」
 ガサゴソと懐を探り、手持ちの食料をデメトリオスが猫に向かって投げる。宙を浮いていたファムも地面に降り、自らの保存食を取り出した。
 その間にシスティーナが怖がらせないよう、ゆっくりと手を伸ばしてみる。
「ほーら、怖くないよ。ちゃんと地上に帰してあげるからね」
「何か情報があったら、教えて欲しいな」
 ファムがテレパシーを使いかけた、まさにその時。
「駄目だよ!」
 突如、制止の声が上がる。全員の視線がいっせいに子供の方を向いた。
 まさにその一瞬で、黒猫だったモノが別の存在に変わっていく。コウモリに似た黒い翼を持つ大きな黒豹の姿に。
 驚きで全員身構えるのが遅れる。
 その隙を突くように、その体躯が淡い黒く淡い光に包まれた。そして次の瞬間、同じように黒く、だが今度は激しい光が前衛に位置していたユーシスの身体を包み込んだ。
「うわあぁぁっ!?」
「ユーシス!」
 咄嗟に飛び出そうとしたシスティーナ達の前に、どこから現れたのか再びクルードの群れが襲う。それを庇うように琢磨が群れを切り崩せば、今度は彼に向かって黒豹が魔法を放ってくる。それをデメトリオスが雷を放って牽制する。
 突如起こった混戦の中、冒険者達はなんとか隊列を整える。辛うじてシスティーナのリカバーで重傷を免れたものの、この時点ですでにボロボロの状態だった。
 それでも引けない理由。
 黒豹の視線が、自分達の後ろに庇う子供を明らかに狙っていたから。
『――そこを、どけ』
 しわがれた声が静寂に響く。
 だが、彼らに退く意思はない。
 力弱き者を守る――それは彼らにとって、ごく自然なことだから。
「ここを退く気はねぇ!」
「同じく!」
 先頭の二人が負けじと声を張り上げる。
「ここは通さないよ」
「当然だね!」
 中列の二人が精一杯の虚勢を張る。
 そして。
「私だって騎士だもん」
「‥‥その力、試してみるか?」
 殿の二人が強い視線で黒豹を睨む。
 そのままどれだけの沈黙が流れただろう。その静寂を破ったのは、幼い子供の――子供らしからぬ低く響く声。
『‥‥ありがとう、心優しき者達よ』
 驚き目を瞠る彼らの前で、幼い子供の姿がみるみるうちにジャイアントの如き巨体に変わる。そして、おもむろに手にした杖を勢いよく振り下ろした。
『我、守護せし番人。穢れし悪魔よ、この場より立ち去れ!』
 呆然と見守る中、何度目かの攻撃がぶつかり合う。やがて不利を察した黒豹は、クルードの発する霧に紛れて姿を消した。

●聖印――未来への道標
「これが‥‥封印された探求の獣なのか?」
 『それ』を渡されたユーシスは、訝しげに尋ねた。
 番人――今は子供の姿に変わっている――は、ただ静かに頷く。
「でも、これって‥‥なんだか人の右足っぽいんだけど」
 システィーナが不気味がるのも無理はない。渡されたのは水晶のような箱とはいえ、その中心に存在するのはどうみても若い女性の右足だった。
 だが、番人はなんでもないことのように語る。
「‥‥クエスティングビーストが封印された時、その力の悪用を恐れて人の姿のまま封印が施されたんだよ」
「へえ〜」
 どこか感心したようなデメトリオス。
 ファムも封印の箱の回りを回りながら、不思議そうに中を覗き込んでいる。
「当然、そのままだとクエスティングビーストには成りえない。だから、その姿を元に戻す為に聖杯が必要なんだ」
「二重、三重の用心か」
 ぼそりと琢磨が呟く。
「んじゃ、これをさっさと持って帰ろうぜ!」
「そうだね」
 ガラハッドの掛け声とともに、彼らは箱を抱えてケンブリッジに向かうのだった。

 その場に残るのは、番人ただ一人。
 そして。
「僕の役目も‥‥これで終わりかな。後は、君達の手で築いていけばいいよ――未来を」
 闇の中。
 ひっそりとした呟きは、やがて静寂の内に沈んでいった。