【ラーンス依頼流出】存在意義
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■ショートシナリオ
担当:葉月十一
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:13 G 3 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:01月10日〜01月17日
リプレイ公開日:2007年01月20日
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●オープニング
●止まらぬ流れの中で
「ラーンス様!」
深い森の中を捜索していた騎士は、見つけ出した円卓の騎士を呼んだ。ラーンス・ロットは振り向くと共に深い溜息を吐く。
「またか‥‥いくら私を連れ戻そうとしても無駄です」
「連れ戻す? 私どもはラーンス様と志を同じくする者です。探しておりました。同志はラーンス様の砦に集まっております」
「砦だと!? 志を同じく?」
端整な風貌に驚愕の色を浮かべて青い瞳を見開いた。
騎士の話に因ると、アーサー王の一方的なラーンスへの疑いに憤りを覚えた者達が、喜びの砦に集まっているという。
喜びの砦とは、アーサー王がラーンスの功績に褒美として与えた小さな城である。この所在は王宮騎士でも限られた者しか知らないのだ。
状況が分らぬままでは取り返しのつかない事になりかねない。ラーンスは喜びの砦へ向かった。
――これほどの騎士達が私の為に‥‥なんと軽率な事をしたのだ‥‥。
自分の為に集まった騎士の想いは正直嬉しかった。しかし、それ以上にラーンスの心を痛めつける。
もう彼らを引き戻す事は容易ではないだろう。
「ラーンス様、ご命令を! どんな過酷な戦となろうとも我々は立ち向かいましょう」
――戦だと? 王と戦うというのか?
ラーンスは血気に逸る騎士達に瞳を流すと、背中を向けて窓から覗く冬の景色を見渡す。
「‥‥これから厳しい冬が訪れる。先ずは物資が必要でしょう。キャメロットで食料を補給して砦に蓄えるのです。いいですね、正統な物資補給を頼みます」
篭城して機会を窺う。そう判断した騎士が殆どであろう事に、ラーンスは悟られぬように安堵の息を洩らした――――。
「アーサー王、最近エチゴヤの食料が大量に買い占められていると話を聞きました。何やら旅人らしいのですが、保存食の数が尋常ではないと」
円卓の騎士の告げた報告に因ると、数日前から保存食や道具が大量に買われたらしい。勿論、商売として繁盛した訳であり、エチゴヤのスキンヘッドも艶やかに輝いていたとの事だ。
「‥‥王、もしやと思いますが、ラーンス卿の許に下った騎士達が物資を蓄えているのでは‥‥」
「あの男は篭城するつもりか‥‥」
苦渋の思いに眉を戦慄かせるアーサー王。瞳はどこか哀しげな色を浮かべていた。そんな中、円卓の騎士が口を開く。
「冒険者の働きで大半は連れ戻しましたが、先に動いた騎士の数も少なくありません。篭城するからには戦の準備を進めていると考えるのは不自然ではないでしょう」
――戦か‥‥本気なのか。出来るなら戦いたくはないが‥‥。
「ならば物資補給を阻止するのだ! 大量に買い占めた者から物資を奪い、可能なら捕らえよ!」
難しい命令だった。先ずはラーンスの許に下った騎士か確かめる必要があるだろう。全く無関係な村人や旅人が聖夜祭の準備で買う可能性も否定できない。保存食というのが微妙だが‥‥。
それにこれは正しい行いなのか? 否、そもそも王を裏切ったのだから非はラーンス派にある。王国に戦を仕掛けるべく準備を整えるとするなら、未然に防ぐのは正当な行いと言えなくもない。
「それともう一つ」
王は暫し考えた後、再び口を開く。
「ラーンスに割り振っていた依頼を冒険者ギルドに委任する」
ラーンスほどにもなると、ギルドを仲介せず直に解決すべく依頼が任される場合もある。リストは円卓の騎士により管理されていた。これらの依頼をギルドに委任する事で、ラーンス派の糧を失わせ、資金難に陥らせる訳である。
――なぜ戻って来ないラーンスよ。おまえの信念とは何だ? なぜ話せぬ‥‥。
聖夜祭の中、王国の揺れは終わりを迎えていなかった――――。
●攫われた令嬢
――時は、数週間ほど遡る。
とある貴族の館へ突如飛び込んできた火急の報。それは、その家の令嬢が馬車で帰宅の途中、賊に襲われ攫われたという内容だった。
「な、なんということだッ!? 警護の連中は何をしていた!!」
「それが――」
護衛の者達はすぐに賊を追いかけた。当然、相手に気付かれぬよう細心の注意を払って。
そうして賊が逃げ込んだ先を特定し、意気込んで追い詰めようとした彼らが見たのは。
「‥‥既に彼らは息絶えておりました」
「なに?」
「わ、私達の前には、二メートルは越える背丈の‥‥ミノタウロスが」
言いかけ、御者は一瞬身震いする。
「賊が逃げ込んだ洞窟はミノタウロスの巣だったようで」
「む、娘はどうした? もしやそのモンスターに‥‥ッ?!」
「‥‥いえ、お嬢様は無事でした、が」
救出しようとした警護の者達。
だが、彼らはミノタウロスによって悉く薙ぎ払われた。最後に生き残ったのは自分一人。全滅だけは避けなくてはという思いから、ここまで方々の体で走り続けたのだ。
そこまでの経緯を聞き、主は低く唸った。
娘の警護につけたのは、彼の部下の中でも歴戦の手練ばかり。それが敵わぬとあっては、今手持ちの兵を無闇に差し向けても結果は同じだろう。
(「‥‥む、待てよ?」)
脳裏に浮かぶ一人の騎士――そうだ、あの方ならば。
「疲れているお前には悪いが、もうひとっ走りしてもらうぞ」
「ど、どこへでしょうか?」
「王宮だ。あの方ならば娘の事をよく知っている。以前も助け出してくれたのだ、今度もきっと助けに来てくれる筈」
「あの方とは?」
「ラーンス殿だ」
●依頼の意味
円卓の騎士より手渡された依頼書。
まだ新米のヒューイットは、かなり緊張した面持ちでそれを受け取る。
「そう緊張するな。この依頼をギルドへ手配してくれればいいだけだ」
「は、はい」
「元々はラーンス卿への依頼だ。当然危険の度合いもいつもと違う」
「ラーンス様の、ですか‥‥」
ヒューイットの脳裏に過ぎる、先日の冒険者達とのやりとり。
危うく騎士としての道を踏み外しかけた自分を引き戻してくれた。あの方を信じるならば、あの方が守るこの地を守るべきと諭され、今自分はここにいる。
あの方を信じ、帰ってくるその日まで。
(「‥‥そういえば」)
あれほどラーンス様の事を尊敬していたガラハッド。
だが、久しぶりに出会った彼は、ラーンス様に対して侮蔑すら抱いていた。その豹変振りに目を疑った程だ。
「――ペレス殿の」
「え?」
聞き覚えのある名前に、ヒューイットは思わず声を上げた。
「どうした?」
「あ、い、いえ、何でもありません」
「そうか、ならば続けるぞ。オクスフォード領の貴族であるペレス伯爵からの依頼は、ミノタウロスに攫われた娘のエレイン嬢を無事に救出することだ。本来ならば、領内での事件とするのだが、たまたまエレイン嬢とラーンス卿が顔見知りであった事からこちらへ依頼が舞い込んだ次第だ」
「ペレス家‥‥」
聞き覚えがある名前、どころではない。
今、まさに自分が考えていた彼の名だ。
「あの‥‥これ、俺‥‥じゃなかった私も同行してよろしいでしょうか?」
「ああ、構わんぞ。だが、くれぐれも慎重にな」
逸る気持ちに胸騒ぎがするのを堪えて申し出たヒューイットに、円卓の騎士はあっさりと同行を許可した。
或いは、新人に少しでも経験を積ませたい気持ちがあったのか。
「それともう一つ。この依頼を受けて、既にかなりの日数が経過している。だからなるべく急ぐように冒険者達に伝えてくれ」
円卓の騎士の言葉に深く頷くと、ヒューイットはすぐさまギルドへと向かった。
●リプレイ本文
――耳に届く絶え絶えの呼吸に、いまだ息のあることを自身で知る。
閉ざされた暗闇の中、すでに幾日が経過したのか。数えることすら無駄だ、とすぐに諦めた。
時折響く獣の唸りに混じって、掠れた呟きがぽつりと零れた。
「‥‥ラーン、ス‥‥さ、ま‥‥」
●選択
「あそこか?」
「ええ。そうです」
問い質すルシフェル・クライム(ea0673)に、リアナ・レジーネス(eb1421)が小さく頷いた。
彼の視線の先、剥き出た岩山の先に大きな洞穴が見える。さすがに奥まで覗く事は叶わないが、リアナのブレスセンサーは確実のその奥に呼吸する存在がある事を示した。
「目撃されているのは一匹とのことだが」
「それも確認済みです。ミノタウロスと思われる大きさの存在は一つだけ、後一つはおそらくエレイン嬢のものでしょう」
ただ、さすがに彼女の状況までは読み取れず、感知した呼吸が弱々しいぐらいの反応である事を付け加えた。
「急いだ方がよさそうだね」
リアナの報告を黙って聞いていたジョセフィーヌ・マッケンジー(ea1753)が、小さな溜息を零す。
今回の依頼を受ける際、ギルドは本来ラーンス卿宛の依頼だと説明した。
今の彼と、それを取り巻く現状を見れば、文句の一つも付けたい。だが、だからこそこの依頼に対して最悪の結果だけは避けなければ。
そんな彼女の胸の内に賛同するように、マリウス・ゲイル(ea1553)の決意が言葉に出る。
「ラーンス卿の名前をこれ以上汚す訳には参りません。なんとしても遂行し、彼の面子を保てれば」
「‥‥それは解るけど、あなたは何の準備をしてるのかな?」
作戦の準備に取り掛かる彼の様子を、ジョセフィーヌは訝しげな視線で見やる。
気付けば、他の仲間達も一歩下がった状態でマリウスを眺めていた。
「ああ、これですか? 囮用の奥の手ですよ」
「奥の手?」
「何しろ相手はミノタウロスですから。これならうまく囮として引き寄せられるかと――」
「お待たせ。ヤツを誘き出せる場所、探してきたぜ」
なおも続きかけた説明に割って入ったのは、ライル・フォレスト(ea9027)だ。
一旦仲間から離れていたライルは、周辺で戦いに適した場所を探していた。大体の目星をつけて戻ってくれば、なにやら場の空気が重く感じる。
「ん、どうした?」
「ああ、ちょうどよかった。ライルさんも一緒にしませんか?」
「は? 何を?」
「ですから、囮用の『女装』です」
キッパリと言い切ったマリウスにライルもそれ以上二の句が告げない。
暫しの沈黙の後、
「では、私はそろそろ移動しよう。ライル、待ち伏せる場所は向こうでいいのか」
ルシフェルが口火を切ったのを皮切りに、冒険者達は何事もなかったようにそれぞれの準備へ入る。
「あ、ああ。向こうに空き地がある。そこなら十分戦える広さだぜ」
「ではこちらも救出の準備に潜むね。リアナ、伝達の方よろしくだよ」
「任せてください、ジョセフィーヌさん」
各々が事前に決めた作戦の為に動く中、一人ぽつんと立ち尽くすマリウス。
そんな彼に、一人落ち着き払った態度で山本修一郎(eb1293)がぽんと肩を叩いた。
「囮役、頑張ろうか」
‥‥結局一人だけで女装のまま、男三人は洞穴へと向かった。
●凶刃
手に持つ鶏の首を一閃。
途端、鼻につく血の臭いにライルは思わず顔を顰めたが、これも囮の為だと割り切って自らの腰にぶら下げた。
彼の後に続く形でマリウスと修一郎。結局マリウスは、女装姿のまま潜入していた。
洞穴は思った以上に深く、視界は徐々に闇へと続く。
「大丈夫ですかね。あまり奥へ行ってしまえば‥‥」
過ぎる不安に周囲を注視するマリウス。
解ってる、とばかりにライルは一旦足を止めた。背中に冷たい汗が伝う。闇の中、目を凝らすよりも早く感じたのは、獰猛な殺気。
「――ゥルル!」
「うわぁっ!?」
思わず上げた悲鳴は、予め用意したもの。
だが、彼が後ろへ下がろうとするよりも早く、闇を切り裂いて巨大な斧が頭上より降ってきた。腰の鶏が吹き飛び、同時に裂かれた傷からも血が噴き出した。
「ライルさん!」
マリウスの叫びが洞穴にこだました。慌てて抱き起こそうとした彼にもまた、その凶刃は容赦なく襲う。
が、痛みを堪えてライルの手を引き、彼はすぐさま外へと走った。
人間を認識したミノタウロスの目は好戦的に光る。まして血の臭いが、更にモンスターを興奮させている。
殿を修一郎に任せ、ここは一先ず目的の場所まで相手を誘導する事が肝心だ。
「つぅ‥‥まいったなぁ」
「いいから早く!」
苦笑するライルに、マリウスの檄が飛ぶ。
更には修一郎も、簡単に付け加えた。
「後で回復させる、それまで我慢しろ」
三人を追ってミノタウロスが迫る。
第一段階成功に息つく暇もなく、彼らは一気に洞穴を抜け出した。
●救出
「ミノタウロス、動きました。出てきます」
静かに告げるリアナの声に、救出組として待機している女性達はハッと緊張を強くする。
ある程度距離が離れるのを待つ間、システィーナ・ヴィント(ea7435)は今回の依頼人であるペレス家の事に思い巡らせていた。
(「‥‥どっかで聞いた名前だと思ったら、ガラハッドくんか。親戚なのかな?」)
ここに来る途中、王宮騎士であるヒューイットにも聞いてみた。
同じ騎士学校だった事もあり親しくもなれたが、彼の家族についてまで言及した事はなかった。どうやらヒューイットも同じだったらしく、分からないという答えだった。
「‥‥暫く会ってないけど元気かな」
システィーナの小さな呟き。
それに被るようにジョセフィーヌが告げる。
「そろそろ行くよ」
目視でも離れているのを確認する。リアナの方を向くと、
「洞穴には一つだけです」
聞くや否や、ジョセフィーヌの先導の元に彼女らは洞穴へと向かった。
「エレイン嬢の身が心配ですわ」
急ぐ身なれど、極力の注意を施しながら九紋竜桃化(ea8553)が心配そうに呟く。ミノタウロスの習性について事前に聞き及んでいる事柄がある。
それは女性にとってとても耐え難い屈辱。
だからこその女性だけの救出班。
洞穴に潜り込んだ時点で、まずジョセフィーヌは一旦止まった。ナイフを片手に周囲の気配を探る。その後に続くシスティーナ、桃化。
なるべく物音を立てずに奥へと進む。やがて暗闇に目が慣れようとした頃。
感じた気配。荒い呼吸音。
そして。
「‥‥だ、‥‥れ‥‥」
掠れた声。
ハッと凝視すれば、地面に横たわる黒い影。人だと判明した途端、システィーナは慌てて駆け寄った。
「エレインさん!」
抱き起こし、その衰弱に目を瞠る。
急いで回復させようとしたのを、ジョセフィーヌが止めた。
「え?」
「手当ては後回しだよ。一刻も早くここから出ないとね」
「でも」
「まずは安全なところへ運ぶのが先決ですわ」
システィーナの言い分もわかるが、まずはエレイン嬢の安全の確保を。そう考えた桃化は持っていた毛布で彼女の体を優しく包む。
「さあ、急ぐよ」
毛布に包まれて体を抱え上げるジョセフィーヌ。多少ふらつきながらも、桃化やシスティーナの助けを駆りながら、出来るだけ急いで洞穴を抜けた。
「‥‥あ、あなた‥‥たち、は‥‥」
「助けに来たのが麗しの騎士様でなくて残念だけど、まあ、安心はしてよね」
弱々しく尋ねる女性に、ジョセフィーヌは優しく語り掛ける。運びこんだ場所の安全を確認したら、今度こそとシスティーナの放つ光がゆっくりとエレインの体を癒していく。
「もう大丈夫です。ですから、心静かに落ち着けて下さいな」
いまだ茫然なまま。
それを見て桃化は、彼女の心が解れるにはしばらく時間がかかるだろうと予想した。
桃化の予感は正しく、結局囮班の仲間が帰ってくるまで――いや、合流してからもしばらく彼女の震えが止まる事はなかった。
「大丈夫。ここでの出来事は、全て闇に葬りますから」
何度となく繰り返し、誓うようにエレインを励ます桃化。
その様子を見守りながらジョセフィーヌとシスティーナは、体力回復の為のスープ作りに励んでいた。
●狂乱
「くっ!?」
振り下ろされた斧。突き出す角。
盾で避け切れなかった衝撃が、ルシフェルの脇腹を掠める。傷は大した事なかったが、やはり動きが鈍り始める。
「これでどうじゃん!」
傷をおしながらも放ったライルの掠めるような一撃が、敵の僅かな急所を貫く。
が、狂乱に暴れるミノタウロスには効果が薄い。
効いていない訳ではなかったが、なおも暴れ続けて斧を振り回す。近寄る事すら困難だ。
マリウスは既に行動の策がなく、どうしようかと攻めあぐねている。
修一郎も同様で、囮を果たした後の行動を何も考えていなかった。それでも彼は回復のアイテムを手に右往左往している。
「下がってください」
凛と響くリアナの声。
ほぼ同時に彼女の掌から強烈な稲妻がミノタウロスに向かって放たれた。幸いライルが探し出した見通しのいい場所だったため、遮られることなく直撃する。
「グォォォゥッ!!」
大気を揺るがす悲鳴。
攻め入るなら今だ、とばかりにルシフェルが突っ込む。
致命傷ではない、だが確実にダメージとなる肩口の薄い箇所へ、手にする魔剣が深々と突き刺さる。ガランと音を立てて持っていた斧が落ちた。
「今だ、ライル!」
「おう!」
声は、ルシフェルの前――ミノタウロスの背後より聞こえた。
敵が振り向くより早く、ライルの一閃が首筋を切り裂いた。勢いよく血飛沫が上がり、彼の体を濡らしていく。
声のない断末魔。
二人がゆっくりと剣を引けば、やがてその巨体は力なく地面へ倒れていった。
「‥‥少しは役に立てたんじゃねーの?」
ニッと笑うライルを見て、誰もが依頼を終えた事に全身の力を抜いた。
暗闇の中、ずっと待ち続けた。
やがて届いた光の中、気付けば囲んでいるのは冒険者の方々。
こちらを見て、皆一様に安堵の表情。その中にあの人はいない。
何故、と思う。私に会いに来てくれないの、と。
「せ、っかく‥‥あの子も‥‥大きく、なった‥‥のに‥‥」
呟きは、誰にも届かず風へ消えた――――。