ニューイヤーズパーティーINフンドーシ
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■ショートシナリオ
担当:葉月十一
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:01月13日〜01月16日
リプレイ公開日:2007年01月29日
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●オープニング
新たな年を迎え、聖夜祭も間もなく終わりを告げようとしていた頃。
とある貴族の屋敷では、執事や小間使い、給仕係とその家に仕える者達総出で飾り付けの準備に大忙しだった。
というのも、年が明けてからのマーナの一声から始まっていた。
「無事に新しい年を迎えられた事ですし、大勢の皆様をご招待して盛大なパーティーをしましょう」
娘を溺愛する父親に彼女の言葉に対する否はなく、急遽パーティーを執り行う事が決定したのである。
招待状に記したパーティーの日は六日。あまりの準備期間の短さに、おかげで全員が不眠不休の働きを強いられる形になった。
勿論、それを黙って見ている程、マーナの心は冷たくはない。
「わたくしにも何か出来ることを」
そう言って彼女が向かった先は屋敷の厨房。
夜通し働く者達の為にせめて夜食でも、と簡単な食事を作ろうとした。
「さすがマーナお嬢様」
いたく感心するリュート。
だが、彼は知らなかった。マーナが厨房に立ったのは、実は今回が初めてだったということに。
「――で?」
「‥‥ええ、お恥ずかしい話ですが‥‥」
場所は変わって冒険者ギルドの中。受付の机を挟んで内側には係りの者、反対側に立つのはフンドーシをこよなく愛するマーナお嬢様。
珍しく供の者も連れず、一人でやってきた彼女に受付係の男は怪訝な顔を浮かべたが、事情を聞いてなるほどと納得した――溜息とともに。
「まさか家の者全てが倒れてしまうとは思いもよらず‥‥おかげでパーティーは中止せざるをえなくなりましたの。ですが折角ここまで準備してきたものを無碍にも出来ず」
困惑の表情で溜息をつくマーナ。
生まれて初めて作った料理は、どんなモンスターも真っ青なくらい強烈な一撃を放ってしまった。おかげでいまだ準備は途中のまま。
そこで彼女がギルドへ持ってきた依頼というのが、
「お詫びの意味を込めて改めてパーティーを開きたいのですが、冒険者の方々にその準備を手伝っていただけないでしょうか? 勿論そのままパーティーの方へも参加して頂ければ」
「なるほど、人手が欲しいという事か」
「ええ。急なお願いで申し訳ありませんが、如何でしょう?」
「了解しました。さっそく募集をかけてみましょう」
「ありがとうございます。もしよろしければ、貴方もパーティーへご招待致しますわ」
にこりと微笑む少女は、紛れもなく貴族の娘。
これであんな趣味さえなければ‥‥。
丁寧なお辞儀をして退席するマーナの後姿を見ながら、受付の男はそんな事を考えていた。
さて依頼書の準備をするか、と立ち上がった彼の目に留まる一枚の招待状。思わずニヤけそうになった男の顔は、そこに記された一文を読むなり引き攣ったまま固まった。
『――今回のパーティーでは、女性は正装のままで構いませんが、男性は殿方のシンボルでもあるフンドーシで限定させていただきます。
こちらで更衣室を準備致しますので、是非とも各々の素晴らしいフンドーシをお披露目下さい。また、お手持ちにフンドーシがない方へは、こちらから貸し出し致します。わたくしが世界中より集めた品々やお手製のものまで、あらゆるご要望にお応え致します。
それでは皆様、今年もどうぞよろしくお願い致します』
●リプレイ本文
●準備
パーティー前日。
その日の厨房は、まさに文字通り戦場だった。
そして、その場を取り仕切っているのは、何を隠そう――いや、普段からあらゆる意味で隠そうとしない――葉っぱ男ことレイジュ・カザミ(ea0448)である。
普段は実家を手伝う関係上、彼の料理の腕前はぐんぐんと上達し、いまやプロ級だ。まさに人は見かけによらないとはこの事か。
「本当に葉っぱ男様、素晴らしいですわ」
「困ってるお嬢様をほっとけないからね」
感心しきりのマーナに対し、ニッコリと微笑み返すレイジュ。その間も手はしきりに動き、次々と料理を作り上げていく。
今回のパーティーで彼がイメージしたのはジャパンの料理。折角の褌パーティー、ならば発祥の地であるジャパンの料理を振舞えば、より盛り上がるのではないかと考えたのだ。
そんな調理の様子をマーナともう一人、感心した眼差しで眺める女性がいた。アデリーナ・ホワイト(ea5635)だ。
「葉っぱ様のお料理、楽しみですわ。わたくしもお料理を頑張ってはいるのですが、どうしても爆発炎上してしまって‥‥」
「まあ、アデリーナ様も? わたくしも精一杯頑張ってみたのですが」
「そう思うと、料理の出来る方は本当に素晴らしいと思います。そういう方にこそ、あのような立派な褌を身に着けて欲しいものですわ」
「そういえば展示品、如何でしたか? 熱心に御覧になっていましたね」
「それはもう! 素晴らしいコレクションの数々でしたわ。本当に‥‥なんと素晴らしいのでしょう」
すっかり褌談義に花を咲かせるマーナとアデリーナ。
うっとりする彼女に、酒樽を抱えて傍を通った来生十四郎(ea5386)は、どこか引き釣り気味な笑みを浮かべている。
「‥‥あーそろそろ飾りつけの方を手伝ってくれるか?」
「あ、そうですね」
何時間でも語っていそうだった雰囲気の中、十四郎がかけた声にアデリーナはハッと気付く。
マーナと二人、慌てて会場の方へ移動していく。
入れ違いに藤村凪(eb3310)が厨房へ入ってきた。
「茶器の準備の方、終わったや。あ、来生さん、人数のほうありがとね」
「まあな。どうせ見舞ったついでだ」
事前にリュート達使用人を見舞った十四郎。
その際、凪から頼まれていたパーティー人数の確認をしたのだが、それが凪の予想以上の人数だと知り、その事に対する礼だった。ある程度多めには準備していたのだが、結局それらを足してもギリギリの人数であった。
「数が足りへんかったら、折角のパーティーも台無しやからな」
「凪さん、十四郎さん、今度はこっちの食器をお願い〜」
「任せとき」
「了解した」
レイジュの指示する声に、二人の返事が大きく響く。
そのまま厨房を出て行く後姿を見送ったレイジュ。そのまま振り返り、また声を上げた。
「ティファナさーん、そっちの仕度はどう?」
「順調だよ! 後は盛り付けるだけだしね」
今回が初依頼となるティファナ・クロード(eb9931)。
折角持ってる料理の腕前を見せるのはここだ、とばかりに頑張ろうと気負う彼女に、レイジュは自分が初めて依頼を受けた時の事を思い出す。
僕もあんなだったかな〜とは少々感傷しすぎか。
「レイジュさん、こっちの材料はどう切ります?」
「えっと、それはね」
見た目的には同じ年の二人。
が、冒険者としてはまだ未熟なティファナは、ベテランともいえるレイジュに教えを乞う。そんな光景を第三者的に感じるレイジュの心中は、どこか誇らしげでもあった。
やがて、夜も更けた頃。
燦々と煌びやかな飾り付け。
その中にあって、少し独特な雰囲気で並んでいるのは、マーナが世界中から集めた褌コレクションの数々。レイジュや十四郎の友人が貸した褌や置物も並び、いっそ壮観ともいうべき風景だ。
そんな会場の中を、龍一歩々夢風(eb5296)は気を引き締めながら歩く。
ここに並ぶのは、一部の者にとっては垂涎ものの一品ばかり。かくいう龍一自身、喉から手が出る程に欲しいものばかりだ。
そんな輩から褌達を守る為、彼は夜通しの警護を買って出たのだ。
「俺に出来ることなんてこれぐらいダシネ! ああ、でもすっごいよなーこのコレクション。うう、俺も早く集めたいナ」
「ほら無駄口を叩いてないで。僕は向こうの方を見るから、キミはあっちをお願いね」
「了解!」
同じ警護についたユリアス・ヘスペリデス(eb5166)の言葉に、龍一は瞬く間に駆けて行った。
その場に一人残ったユリアスは、改めてその褌の山を見る。
「ホント壮観だよね。いい土産話にはなりそうだな〜」
それにしても‥‥ユリアスは思う。
(「ワザワザ邪魔しに来るような暇人――もとい悪人っているのかな」)
甚だ疑問だが、ともあれ仮にも貴族のパーティーだ。警戒するに越した事はないだろう。
「さーて、明日のパーティー、僕はどんなフンドーシ姿を披露しようかな」
なんだかんだ言いつつも、結構乗り気なユリアスであった。
●開催
次々とやってくる招待客達。
女性客は見事なドレスに身を包み、殿方が着替えを終えるのを控え室で待つ。そして現れた褌一丁の男に手を引かれ、パーティー会場へと向かう。
一般常識から見ればどこか頭の痛くなるような光景だ。
「どうか最後の一線は死守しますよ」
受付に座るリオ・オレアリス(eb7741)。
僅かに顔を顰めつつ、にこやかに客を見送っていく。当然彼女が心配してるのは客だけではない。問題は、自分達冒険者の側にもある事を彼女はよーく知っていた。
「どうだ、招待客の方は」
「ええ。これで最後みたいね」
後ろから十四郎の声。
リオは振り向き、そして思わず卒倒しかけた。
更衣室への案内係を行っていた十四郎。その姿は黒褌一枚に首にお情け程度の蝶を模したリボンのみ。褌も黒一色ではなく、白いラインが入ってまるで執事風だ。
「ふぅ‥‥どうやら甘かったようねえ」
「どうした?」
「いえ、なんでもありませんわ」
彼を常識人だと信じていたのは、些か間違っていたようだ。認識を新たにするリオであった。
そして開かれた華やかなパーティー。
「どうぞ皆様、心ゆくまでご堪能下さい」
招待主のマーナの一声の後、各自面々と歓談が始まる。
運ばれてくる食事は、レイジュとティファナが作り上げた渾身のジャパン料理。当然手に入らない材料も多々あったが、何とか手に入る品で代用しつつ、和の心を練り込んだ一品に仕上がっていた。
「こちらの料理は、このお二人の手によるものですわ。どうぞ皆様、盛大な拍手を」
「えっへん、どんなもんだい!」
「あ、どうも〜」
マーナの紹介にレイジュが自慢げに胸を張る。
ティファナもぺこりと頭を下げるが、彼女の場合、目に付く褌姿の男達にかなりドキマギしていた。てっきり自分も褌を着けなくてはならないのかとも思ったとか。
「でもこんなパーティー開くお嬢様って凄いよね」
「ホントにそうだよね。僕も頑張らなくっちゃ」
ちなみにレイジュが身に着けているのは、白鳥の羽を集めて作った褌。軽さと手触りの気持ちよさが売りのそれは、彼がマーナに頼んで仕上げてもらったもの。
最初その褌に命名しようとした時、「ウェザーではなくフェザーでは?」とマーナに訂正される一場面があったとかなかったとか。
「さあ、ここで褌クイズ、いっちゃうよ! 優勝者にはレイジュ特製焼き菓子を贈るからね!」
途端、集まった客一同から一斉に歓声が上がった。
「ああ、なんか面白そうなクイズが始まった。どーしよー」
マーナの前で少し慌てる龍一。
彼女に挨拶をしようとした矢先の出来事だ。
「龍一さんも参加してみてわ? わたくしへの挨拶は何時でも構いませんわ」
「そ、そう? じゃあお言葉に甘えて――えっとこれだけは言わせて。こんなすてきんぐなぱーちーを開いてくれて、ほんとにありがとーね。こういう貴族様のぱーちーもあるなんてすっごく嬉しかったよ!」
フンドーシは永遠だ〜と叫びながら、ステージへ駆ける龍一。
彼の後を追うようにはためく白い褌には、富士と鷹と茄子の絵柄がくっきりと書き込まれていた。
場所は、会場から少し離れた一角。
パーティーの喧騒が遠くから聞こえる中、警護を務めるユリアスの元へ凪が料理と茶を持ってきた。
「お疲れ様やな、小腹減ったやろ? これ食べて警護頑張ってなー」
「わざわざありがとう。助かるよ。‥‥うん、美味い」
「おおきに」
真正面から堂々と褒められ、さすがの凪も頬を僅かに赤く染める。もっともそれは、今のユリアスの姿が褌一本だけからかもしれなかったが。
マーナへ一風派手なものを、という希望を出したら、見事に金銀彩られた豪奢な褌が手渡された。それを躊躇することなく彼は身に着ける。
こんなものに羞恥していては、将来ビッグになれないからな。それが彼の持論だ。
「一人で大変やね」
「まあね。でももうすぐ十四郎さんと交代の時間だし‥‥あ、来た」
「――待たせたな。じゃあこっちは俺に任せて、会場の方を頼む」
「了解」
十四郎と交代したユリアス。
そのまま堂々と大股歩きで会場の中へ入って行った。
やがて宴もたけなわとなり、終盤へと近付いた。
「これで最後ですわ」
アデリーナの一声に、宝石のような水の煌きが宙に形作る。
それは花のようで。奏でる音楽のようで。
そして――フンドーシへと姿を変える。誰もの心にある麗しのフンドーシ。
レイジュも龍一も、十四郎もユリアスも、凪やリオやティファナ、そして集まった貴族達やマーナまでもがその光景に目を奪われる。
一瞬静まる会場。
「‥‥楽しんでいただけましたか?」
直後、鳴り響いた拍手喝采。
そして、褌を愛してやまない者達の宴は、静かに幕を閉じたのである。
●余談
冒険者達は、見事な手腕でパーティーを盛り上げた。
そのおかげで貴族達の間でのギルドの噂は良好なものとなったであろう。
が、パーティーが終わって数日。ギルドはおろか酒場にすら姿を見せなかった者が何人かいたという。
噂では、依頼主が振舞ったお礼の為だという話だが、真相は定かではない――