はにはに村始末

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:08月25日〜08月30日

リプレイ公開日:2006年09月02日

●オープニング

●はにはにのお手伝い
 ここは山間にある村。水晶の加工を主な産業とする、平和な村である。この村では、ご先祖供養に埴輪を治める風習があり、以前、その埴輪達が、観音像に触発されて、目覚めてしまった経緯がある。
 ところが、そこに再び、ちょっとした問題が起こっていた。
「はにはにー」
「おう、なんだまた寝れないのか」
 村人の家で、仕事から帰ってきた家人を出迎える、前掛け姿の埴輪。身長30cmと、シフールより少し小さな彼らは、こくんと頷いている。そして、家の奥の方を指した。
「お。飯作ってくれたのか」
「はにはに☆」
 見れば、お昼ご飯らしき雑穀粥が、美味そうな匂いを漂わせている。
「しかし、困ったもんだなぁ。いや、俺はむしろ歓迎なんだが‥‥。これじゃ、旅人も呼べん」
「はにはにー‥‥」
 1人暮らしらしい彼、炊事洗濯その他を、一生懸命やってくれる埴輪達を、とても重宝している。
「おーい、五作どんいるかー」
「おう。どうした六助」
 と、そこへ、隣の長屋の住人が、皿に料理を持ってきた。
「うちの埴輪が、煮物作りすぎちまったんで、おすそ分けだ」
「そいつはすまねぇな。えーと、昨日作ってくれた漬物が、まだ残ってたな‥‥。余りモンですまねぇが」
 どうやら、埴輪がいるのは、その五作さん家だけではなく、六助の家にもいるらしい。
「いや、良いって事よ。しかし、お前さんトコは良いよなぁ。一人もんだと重宝して」
 そのまま世間話に突入する2人。話題は、村中に溢れた埴輪の事だ。
「六助ン所は、嫁さんが不機嫌になってねぇか?」
「俺ン家は、まだマシなほうさ。連中がメシ作ってくれる分、仕事やガキの面倒見れるし。だけど、新婚の七蔵さん家は、毎日大喧嘩だって聞いたぜ」
 五作のような、1人暮らしの若者には、重宝されているが、埴輪達は、どこの家にも潜りこんでいる。おかげで、家の台所事情を預かるおかみさん達と、仲が悪くなる時もあるそうだ。
「かと言って、埴輪達は悪意があってやってるわけじゃねぇしなぁ」
 野郎連中は、頭を抱えている。嫁姑問題なら、知らぬ存ぜぬで好きにさせるのだが、相手がご先祖供養の埴輪では、そうも行かない。
「そういや、村長が今度寄り合いを開くって言ってたなぁ」
「相談してみっか‥‥」
 村長の八兵衛さんも、問題視はしていたらしく、話はあっという間にまとまり、村の男達は、村長宅で、埴輪達の事で、話合う事になった。
「聞いて見ると、どうやら村中に蔓延しているようじゃのう‥‥」
 ひとりづつ、埴輪の様子を聞いたところ、ほぼ村中の家に、埴輪がいるらしい。数はまちまちで、1匹の所もあれば、5匹くらい巣を作っている家もあるそうだ。
「そんな、流行病じゃねぇんスから。埴輪、特に悪さしてるわけじゃねぇんですし」
「問題は、埴輪達には、その家の都合ってのが、わかんねぇ事だと思うだよ」
 埴輪達、暴れたりする事はなく、家の掃除や炊事の手伝いと言った、ささやかな事ばかり。ただ、埴輪のペースでやるので、人間様のペースとは、合わないと言う事が多いだけだ。おまけに、一応怪物の範囲内なので、外から来たお客は、驚いて逃げてしまう。
「「「うーん‥‥」」」
 考え込む村人一同。しかし、良い案は中々見付からない。
「とりあえず、ギルドに頼んで見るべ」
「そうするだ」
 こうして、はにはに達の事件は、ギルドへと丸投げされるのだった。

『村中に溢れている家事好きな埴輪を、どうにかする知恵をお貸しください』

 なお、悪い事をしているわけではないので、強制排除は出来れば避けたいらしい。

●今回の参加者

 ea1467 暮空 銅鑼衛門(65歳・♂・侍・パラ・ジャパン)
 ea3947 双海 一刃(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea4744 以心 伝助(34歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea9938 レイル・セレイン(29歳・♀・僧侶・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb0862 リノルディア・カインハーツ(20歳・♀・レンジャー・シフール・イギリス王国)
 eb2277 レイムス・ドレイク(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb3087 ローガン・カーティス(22歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb4757 御陰 桜(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●サポート参加者

サラサ・フローライト(ea3026)/ 無双 空(ea4968

●リプレイ本文

 その日、村へ向かう冒険者達に、ローガン・カーティス(eb3087)は同じ村で観音像が動き出した時の事を話した。それと共に、埴輪についても、モンスターとしての知識を伝えている。
「なるほど。そんな事が‥‥。埴輪達の目覚めと、彼らの思い、感慨深い者が有りますね」
 レイムス・ドレイク(eb2277)がそう答えた。そうしているうちに、景色は変わり、件の村が見えてくる。
「ここが噂の埴輪が大量発生した村でござるか。なんとか平和に解決したいでござるな〜」
 そう言う暮空銅鑼衛門(ea1467)。とりあえずは村長の家に行くと、既に事態は深刻な状況となっていた。
「動く埴輪ってのが見たかっただけなんだけど…、か、可愛い〜♪ これ、持って帰っちゃダメなのかしら?」
 周囲には、埴輪が手に手に野菜だの魚を持って、『早く早く〜』と言った調子で、囲いを作っている。そんな埴輪達の様子を見て、黄色い悲鳴を上げる御陰桜(eb4757)。
「眠れなくなってしまった埴輪さん達‥‥。悪い事はしていないようですけれど」
 一方、リノルディア・カインハーツ(eb0862)は、ちっちゃな埴輪達を、不思議そうに眺めて、観察している。
「家事を手伝ってくれる、ちっちゃいハニワさん‥‥。ああ、うちの住処に2、3人欲しいわ〜」
 その一方で、レイル・セレイン(ea9938)は、埴輪を抱えて、すりすりすり。ペットのシルムが主の口調を真似、モルトも同意するかのように啼いていた。
「埴輪って、結構ひょうきんというか、和み系の顔してるっすよね‥‥。ご先祖様供養でなければ一体頂きたい所なんすけども」
 以心伝助(ea4744)も埴輪達が気に入ったらしく、両腕に抱え込んでいたり。
「埴輪がいれば、家事しなくてもいいんだな。ペットにも齧られたりしないだろうし‥‥」
 いや、彼らばかりではない。普段、愛嬌のない双海一刃(ea3947)まで、羨ましそうにしているのだった。

 数時間後。村外れの神社を、講習会場に借り受けたカーティスの頼みで、借りた太鼓を片手に、村中を練り歩くリノルディアの姿があった。
「えー、村の埴輪さん達にご連絡しまぁす。御用がありますので、神社までお集まり下さいー」
 そう声をかける彼女。決して大きな声ではなかったが、太鼓の音に引かれて、埴輪達がはにはにと顔を出した。
「こんにちは。他のはにはにさん達にも、伝えていただけますか?」
 彼女がにっこりと笑ってご挨拶すると、埴輪達は頷いて、仲間を呼びに行く。その結果、村の大路には、あちこちから出て来た埴輪達で、行列が出来ていた。
「結構数が多いのう。むむ、埴輪愛好会委員の我が強敵が、こんな時いればよかったでござるな〜」
 その埴輪達を一箇所に集めていた銅鑼さんは、にょきにょき生えている埴輪達に、閉口している。
「一列に並んで、この馬についていけ。ほらそこ、列からはぐれるなよ」
 一刃が、丸を伴い、その列を誘導している。何匹かはぐれそうになった埴輪を、拾い上げては、列に戻す一刃。埴輪達は、なんとなく誘導されているのが分かったのか、大人しくついて来ている。
「はにはにさんが、こちらの言う事を理解してくれるようで、助かりましたねー」
 ほっとした様にそう言うリノルディア。おかげで、彼らの後ろには、埴輪が長蛇の列を作っていた。
「そうだな。おっとと、落とさないようにしないと」
 もっとも、中には横着をして、馬から下りない埴輪達もいるのだが。苦笑しながら、それでも大切そうに腕の中に収める一刃。こうして、埴輪達は、時間こそかかったが、無事、村外れの社に集合する運びとなった。
「えぇと、集めたは良いけれど、仲良しになる為にはどうすれば良いのでしょうか‥‥」
 さて、その山ほど集まった埴輪達を前に、首を傾げているリノルディア。一方の埴輪達は、これから何が起こるのだろうと言わんばかりに、はにはにと言っている。と、その一匹に向かって、レイルがこうきり出した。
「あなた達がそうなのね、私はレイル、冒険者やってるわ、よろしくね」
 にっこりと微笑みながら、その手を取って握手する彼女。妖精さんが真似をして、同じ様に埴輪達とおててを繋いでいた。埴輪達も、なんだか楽しそうな様子に、やっぱり悪いもののけではないなーと判断した一刃、リノルディアにこう頼んだ。
「まずは埴輪と人間がどの程度ずれているのか、調べないとな。すまないが、通訳を頼む」
 頷く彼女。細かいところは、通訳に任せる事にして、一刃ははにはにで囲まれた周囲を見回し、おもむろにこう呟く。
「さて、講義の前に、茶請けを用意しないといかんのだが‥‥」
 が、埴輪達はてんでばらばらにおしゃべり中。どうやら、自分の興味のある事は進んでやるが、それ以外はお構いなしと言った性格らしい。試しに、村長の家から調達してきたなすを、埴輪達の真ん中においてみるが、埴輪達は突付くのとそうでないのと、半々だった。その様子を観察した一刃、彼らを立派な住人にする為には、もう一工夫必要だと悟る。
「なるほど。見ていると、埴輪語と言うのが存在しているようであるな。ミーも会話して見るでござる」
 銅鑼もそう言って、おそらく挨拶であろう台詞を口にすると、埴輪さん達、ちょっと驚いたように、びくうっと身体を振るわせた。
「はに〜はにはにはにはに、はにはにはにー。はにーはにはには、はにはには〜にはにはには〜」
 そのまま、とりあえずテキトウにはにはに続ける銅鑼の旦那。反応を見ると、どうやら埴輪達は、とても驚いているようだ。リノルディアがテレパシーのスクロールで、話している埴輪達の会話を確かめると、こうだった。
「えーと、何々。僕にはお嫁さんがいるので、あなたの愛にはお答え出来ないはに? ですって」
 大笑いする銅鑼の旦那。誠意を持って話せば、分かり合えると思っての行為は、とんでもない方向に転がってしまったようだ。
「先ず教え込むのは常識‥‥。というか、人の細かい感情の機微見たいなものかしら? 問題は、教える事は出来るけど、教えられるモノがないわ」
 レイルがそんな埴輪達を見て、どう教えるかを決めたようだ。だが、教授できるものがないと嘆く彼女。と、教えたいものはあるが、細かい事を考えていなかったらしいリノルディアが、こう申し出る。
「私には家事の事をお教えする位しかないので、希望される埴輪さんがいればお教えしたいと思いますが‥‥」
「ならば、二人で埴輪達に、料理を教えてやってくれ」
 事態を見守っていたカーティスがそう言った。あれこれ相談の結果、時間割を決めた冒険者達は、銅鑼さんの提案で、埴輪達にその趣旨を話して聞かせるのだった。

「ただいまより、はにはに寺子屋を開講する」
 並べた埴輪に、カーティスがそう言っている。一方の埴輪達は、わかっているのか居ないのか、返事だけは元気だ。銅鑼さんが『まずは元気良く』と教えた賜物だろうか。
「始めに、学び舎の清掃だ」
 そう言って彼は、埴輪達に小さな箒を配った。不思議そうな顔をして、はにはにはにはに言っている彼らに、カーティスはこう続ける。
「どうした? 家事はお前達の得意とする所だろう」
 そこへ、リノルディアが見本を示してみせる。それを見た埴輪達、とりあえず真似をして、手近な所を御掃除し始めた。もっとも、同じ所ばかり掃除していたが。
「あいちょっとごめんなさいよ」
 と、そんなはにはにさん達の一部に割り込んで、伝助が掃除し始める。自分のやる事をとられ、不思議そうに周囲を見回す埴輪に、伝助さんはこう言った。
「こんな感じに、もし自分の仕事を横取りされたら、困るでやんしょ? 埴輪さん達がしているのも、村の奥さんにしてみれば、同じなんでやんすよ」
 うなだれる埴輪さん。こうして、基本的なご挨拶を覚え、部屋を綺麗にした埴輪達。そんな彼らに、今度はカーティス、がらがらと何かが記された板を運ばせてきた。
「次は、人間と埴輪の違い。この国でよく見かける種族やペットに付いての講義だ」
 それには、人の姿と、埴輪の姿の比較表等が書いてある。他の冒険者が連れているペット達を前に出し、彼はその違いを、埴輪達に説明してくれる。埴輪達はと言うと、興味深い顔をしているもの、ただ乗って遊んでいるもの、様々だ。そんな彼らを、遠巻きに見守っている村人達に気付き、カーティスはこう続ける。
「君達を見慣れていない人も多く、怖がられることもあるかもしれないが、誤解も解けるはずなので笑顔で許してあげてほしい」
 埴輪達がはにはにと御返事をする中、そのペット達を連れてきたレイルが、こう言う。
「まあアレよ。人間って、色々とややこしい事、考えてるもんなのよ」
 埴輪達には、良くわかっては居ないようだ。と、そんな彼らを見て、今度の講師は桜ちゃん。
「あたしが言っておきたいのは一つだけなんだけど、たとえ好意から手伝っていたとしても、らぶらぶな人達の邪魔をするのは野暮って事ね」
「はにはに?」
 らぶらぶ? と言う口調の埴輪に、カーティスさんが『王様とお妃様みたいな関係』と説明すると、どうやら納得した模様。
「例えば、相手の為に美味しい料理を作ろうとか思っても、貴方達が作ってたら、腕の振るいようがないし、いちゃつく口実がなくなるのは大問題なのよ」
 先ほどのカーティスの講義で、人間と言うのは、そう言う事をするんだと習った埴輪さん達、ちょっぴり反省しているようだ。それを受けて、リノルディアが、今度はその『人の事情を考えて』の部分を説明が、流石にそのあたりは、まだ難しい様子。
「仕方ないわね。じゃあ見本を見せてあげましょう。そこの貴方、ちょっと付き合ってくださる?」
 そう言うと、桜さんは、その講義を見守っていた村人の1人をちょいちょいと手招きする。そして、戸惑う彼に、すっと腕を差し出して、頬をつつぅっと撫でて見せた。生贄になった村人くん、桜の手腕に、すっかり顔を赤くしてしまっている。いや、村人ばかりではない。埴輪達も、なんだか表面が赤くなっているようだ。
「こう言う時には、邪魔しないようにするのが一番よ。わかった?」
 回れ右をする事。と、そう教えてくれる桜。しかし、埴輪達は、きょとんとしている。
「まだ良く分かっていないようですから、紙か板に書いて、仕事の役割分担が出来るようにした方が、無難そうですね」
 そんな彼らを見て、レイムスはいそいそと手近な木簡に、『諸注意』を書き記すのだった。

 そして。一通り教育の終わった冒険者達は、埴輪達と村人とを交え、お茶会を兼ねて、今後の事を話し合っていた。
「埴輪さん達には、一箇所に集まっていただいて、適時必要なところに赴いていただくと言うので、いかがかしら」
 お手伝い出張所や、茶屋、宿泊施設なんかどうかと、リノルディアは提案する。
「なるほど、はにはに出張所というわけっすね。お客さんには、はにはに旅館というわけっすか」
 伝助がそう言って頷いている。必要な家に埴輪を派遣し、それぞれの家庭事情に合わせて、埴輪達にお手伝いしてもらおうと言うわけだ。旅館は、外のお客さん対応なんだなーと、彼は理解していた。
「要するに、やる事をこっちで提供してあげれば良いのよ。専用施設とかは、この子達がもう眠らないって保証がないと大変な事になりかねないけど、夜の見回りとかも良いかしらね?」
「牧場でも良いんじゃないかな。牧場の家畜達の面倒を見る事で、村人や、訪れる人達と仲良くなれる交流の場が出来ると思うんだが」
 レイムスがレイルの意見を聞いて、そう答えた。人でも動物でもない彼らだが、和むのはレイルの愛馬を見ても一目瞭然だ。そこで、人の手には中々大変な、牧場の仕事を手伝い、家畜の面倒を見ることで、距離を縮められないかと言う。
「埴輪さんの数次第では、両方並行出来るかもしないっす。ただ、急に埴輪さんが寝ちゃう可能性も0ではないので、そこも若干考えないとっすけど‥‥」
 伝助が周囲を見回してそう言った。村の衆や冒険者達に、飲み物やお茶請けを運ぶ埴輪達は、結構な数がいる。その全てが、ずっと動き続ければ、村も便利になるのだが。何かのきっかけで、再び眠ってしまうとも限らない。
「それならば、あまり大掛かりなものではなく、埴輪が動かなくなってからも人間が使えるようなものにすればいいだろうし」
 一刃がそう言った。人と埴輪、両方が使えるモノにすれば、埴輪達は、村の象徴として、長く付き合えるだろうと。
「せっかくゆえ、埴輪まんじゅうとか、埴輪人形とか村おこしになりそうな土産物も考えてみるでござる。時代は埴輪でござる。ここで一発当てるでござる。将来、江戸ではにはにぐっずが、なうなやんぐに馬鹿受けするでござるよ〜」
 一刃の台詞に、銅鑼の旦那は、それにちなんだ売り出し方法を考えている。まぁ、それが当たるかどうかはさておき、埴輪のお菓子は、中々楽しいかも知れない。他にも、『埴輪の茶店』や『埴輪特製漬物』等が考案されていた。それら埴輪土産の売り上げは、村にもしもの事があった時の蓄えにするとの事。
「先ほど、王様に会いに行ってきたが、原因は良く分からないらしい」
 眠らない原因を探る為、村長の許可を得て、古墳の王様に会いに行ったカーティスがそう言った。バラバラになった王妃を丁寧に埋葬し、酒と花を供えて祈った所、王様が出て来たらしい。彼に事情を話すと、何らかの要因が重なった結果、埴輪達は、単なるモンスターではなく、土の妖怪化したのだろうとの事。九十九神や、長生して化けられるようになった動物達と同じような現象だ。
「いずれにせよ、王様も村人との共存繁栄には賛成らしい。土産物屋で水晶の勾玉を売る埴輪‥‥も良いと思うぞ」
 彼は、今まで出た家事埴輪、売り子埴輪、御土産埴輪、の他、村の特産物である水晶も売り物にしようと提案した。
「じゃあ、埴輪達の訓練施設を、埴輪達が住める家として改築し、其処を、はにはにランドの拠点としましょうか」
 レイムスが、はにはに寺子屋に使っていた建物を見回し、そう言った。と、伝助もこう言って、どこからか板切れを拾ってくる。
「どこまで役に立つかわからないっすが、看板でも作ってみやしょうか」
 村の面々が、字を読めるかどうかは分からないが、埴輪の絵を描いて矢印をつけ、『村名物・はにはにさん』と書き記す。下の方に『動きますが、特に危険はありません』と注意書きされていた。
「では、俺は村の入り口担当だな」
 カーティスが立て札を作り始める。それには『水晶と埴輪の村』と大きく書かれ、やっぱり下の方に『埴輪が歩いている事もありますが、悪い埴輪ではありません』と記されている。
 こうして、眠らない埴輪達は、村の看板埴輪として、はにはに王国を作る事になるのだった。