imitation〜虜囚救出編〜

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 0 C

参加人数:10人

サポート参加人数:2人

冒険期間:09月15日〜09月20日

リプレイ公開日:2004年09月21日

●オープニング

 さて、依頼者がギルドに、真犯人探しと言う、表向きの依頼を出した日の夜。
「みんなに集まってもらったのは、他でもない‥‥。実は、ギルドを通してじゃ頼めない事があるからなんだ‥‥」
 その依頼者の家に、冒険者が数人呼び出されていた。皆、ギルドから真犯人を探す依頼とは別に紹介してもらった者達ばかりである。
「実は‥‥弟をこっそり牢屋から出して欲しい」
 確かに、正規の手続きを経て捕らえられた者を、こっそりと救出するとなれば、確かにギルド経由では依頼できない。そんな考えのよぎった冒険者達に、彼は事情を告白する。
「とられてる貴族の野郎、地元だと激しい性格で有名でな‥‥。今回も、可愛さ余って憎さ百倍なのか、拷問してから処刑するとか言い出しやがった‥‥」
 多くの荘園では、狩猟用の大型動物を許可なく殺した場合、処刑が妥当とされている。私有地は、その獲物も当然貴族の私物という考え方だ。地域によっては拷問もありうる。彼の所もその例に漏れなかったのだろう。
「うちの村も、他のキャメロット住民と同じように、処刑は娯楽さ。拷問ともなれば、さらし者決定だろ。無実だって分かってるあいつを、そんな酷い目に合わせるわけに行かない‥‥」
 真剣な表情でそう訴える依頼者。ごく一般の人々にとって、処刑は一代スペクタクルショーである。皆、罪人の最後を肴に、手弁当エール持参で見物するのが慣わしだ。
「前務めてたから分かるんだが、あいつ、実はサディストなんだ。そんな奴に、拷問なんてされちまったら‥‥、あいつはやってもいない罪を認めてしまうかもしれない‥‥。かと言って、バレりゃあタダじゃすまないし‥‥」
 差し出した肖像画には、長い髪の気弱そうな少年が映っている。責め苦に耐え切れず、処刑が早まってしまうかもしれない。それ以前に、大事な弟を傷つけたくない。さりとて‥‥証拠も真犯人も用意できていない。
「だから、頼む。あいつを‥‥うちの弟を、恐ろしい拷問から救い出してくれ!」
 無論、警備員に見つかれば、冒険者や依頼者とて、ただではすまない。その事が分かっていてもなお、大事な家族のために、頭を下げざるを得ないのだった。

 その頃、貴族の館では、その主と使用人が、何やら話していた。
「主様、御機嫌でございますな」
「ふん。さもあらん。せっかくの獲物だ。楽しまねば損と言うものだ」
 主である貴族は、怯えた表情で牢に繋がれている少年を見て、ほくそえんでいる。
「程ほどになさってくださいませぬと、後で処刑の楽しみが減りまするぞ」
「わかっている。私とて、貴族の義務は心得ておるわ」
 側に控えていたレンジャー風の男。彼の言葉に、持っていた鞭をぴしりと鳴らすその貴族。
「それならば上々。では、私はそろそろ行って参ります」
 返事を聞いて、その男はそう言いながら、恭しく頭を垂れた。
「うむ。吉報を待っているぞ」
「はい。必ずやご主人様のご期待に沿える獲物の情報を、持ってまいります」
 軽薄そうな顔つきをしたその男は、主人の言葉にそう答えている。対する貴族と思しき男は、ずいぶんと偉そうな態度で、足を組みなおした。
「おや? どちらへお出かけに?」
「3日後の処刑ショーの後、狩猟に出かけるそうなんで、そのための獲物を探しに行くのさ。こいつら連れてね」
 出かけざま、他の使用人が声をかけたのに、レンジャー風の男はそう答えている。その足元には、凶暴そうな顔つきをした犬が5匹もいた。
「きゃあ、唸らないでくださいましぃ」
「そう訓練してあるからなー。気をつけないと、お前さんも食われちまうぜ」
 低く唸る猟犬達。怯える他の使用人に、その男はにやりと笑いながら、そう言ってみせる。
「ちゃんとつないでおいてくださいましね。おお、怖い」
 おびえながらその場を立ち去る使用人。残されたレンジャー風の男は、猟犬の頭をなでながら、こう呟く。
「ふふふ‥‥、今に目にモノ見せてくれるさ」
 そうして‥‥彼は、私有地である森の中へと、姿を消すのだった。

●今回の参加者

 ea0186 ヴァレス・デュノフガリオ(20歳・♂・レンジャー・エルフ・ロシア王国)
 ea1060 フローラ・タナー(37歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea2182 レイン・シルフィス(22歳・♂・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea2366 時雨 桜華(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2856 ジョーイ・ジョルディーノ(34歳・♂・レンジャー・人間・神聖ローマ帝国)
 ea3397 セイクリッド・フィルヴォルグ(32歳・♂・神聖騎士・人間・ロシア王国)
 ea3590 チェルシー・カイウェル(27歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea3692 ジラルティーデ・ガブリエ(33歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea5840 本多 桂(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea6591 シーナ・アズフォート(31歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

ティアラ・サリバン(ea6118)/ アルビオス・レイカー(ea6729

●リプレイ本文

 その日の明け方。貴族の屋敷の近辺では、フードで顔を隠した、怪しげな集団が居た。
「だいぶ離れていますね。いっぺんに眠らせるのは、さすがに無理でしょうか‥‥」
 スリープで眠らせれば一発だと思っていたレイン・シルフィス(ea2182)が、困ったような表情を見せる。が、表門と裏口では、かなり距離があった。
「騒げば、私兵も動くだろう。まずは、おびき寄せる事が肝要だ」
 仮面姿のジラルティーデ・ガブリエ(ea3692)がそう言った。兄の狩人の話に寄れば、警備員は全部で12名。ティアラの偵察で、見えている4人の他、表にはもう4名居ることが分かっている。とすれば、残り4名は、中での警備、もしくは離れの警備についている計算になる。
「皆は隠れてて。それと、これを」
 彼の提案に、フローラ・タナー(ea1060)はそう言いながら、救出組にヒーリングポーションを差し出した。
「使わなかったら返してよ? 高かったんだから」
「そうなる事を祈ってろ」
 使わずに済めば、それはそれに越した事はない。そう言いたげなジル。
「んじゃ、正面突破と行きますかねぇ」
 桂がそう言いながら、門番の前へと進み出る。そして、咎められる。
 ティアラ・サリバン(ea6118)がスリープの魔法をかけるものの、確率は50%しかなかったらしく、片方は大騒ぎだ。そこへ、本多桂(ea5840)が当身を叩きこむ。わらわらと駆けつけてくる警備兵達に、桂は刀の切っ先つきつけて、力強く宣言する。
「あたしはいわゆる『曲者』って奴よ! アンタが大事にしているお宝、奪いに来たわっ!」
 驚く警備兵達。どうやら、あまり頭は良くないようだ。その間に、フローラは隠れていた潜入班に「今のうちに」と、頷いて見せた。当人と桂、そしてフローラにへばりついているティアラを除いた4人が、騒ぎを避けるようにして、屋敷の中へと滑り込む。
「黙らせろ!」
「させるか」
 残りの1人‥‥仮面のジラは、遅れてやってきた警備隊長と思しき、立派な身なりの青年の前に立ちふさがる。打ち込んできたそれを受け止める彼。その重さから、自分より格上の相手とわかる。けれど、引けない。
「えぇい、まどろっこしい。後でやりなさいって!」
 警備隊長が、ジラに夢中になっている間に、桂がブラインドアタックを叩きこむ。ただし、峰打ちだ。水を差された彼、不満そうである。
 こうして、一向はまんまと屋敷内に潜入したのだった。

 さて、救出班はと言うと、屋敷の大きさに、すっかり閉口してしまっていた。
「誰か来る」
 ヴァレス・デュノフガリオ(ea0186)が『しっ』と指先を唇に当ててみせる。見れば、母屋を出て行く屋敷の主の姿があった。
「まずいな‥‥。奴め。庭を突っ切って行きやがった」
 舌打ちするヴァレス。屋敷の横に広がる庭園は、上から見れば、誰が歩いているか明白だ。
「近道とかないのかな‥‥」
「急がば回れと言うしな。庭の壁伝いに行った方が早いか‥‥」
 もっとも、庭の周囲には、それなりに花壇や生垣がある。そこに潜みながら向かえば、何とかなりそうだ。と、そこへ貴族の下に、騒ぎを報告する警備兵が訪れた。
「おっと。コイツは好都合‥‥」
 何か、話しこんでいる様子の彼。それを見たジョーイ・ジョルディーノ(ea2856)は、今のうちに先に牢屋へ向かってしまおうと提案する。
「あれが地下牢か‥‥」
 離れを見つけたシーナ・アズフォート(ea6591)が、そう言った。見れば、確かに人気のないはずの離れに、交代要員も含めた見張りが、4人もいる。
「やるか?」
「待て待て。それじゃあスマートじゃねぇ。怪盗っつーのは、気付かない内にお宝を掠め取るもんだ」
 ジラが剣の柄に手をかけたのを見て、そう言いながら制すJJ。と、レインが竪琴を爪弾きながら、こう言った。
「2人‥‥いえ、4人ですね‥‥。眠らせて見ましょう」
 流される眠りの旋律。スリープの魔法は、見張りを次々と夢の世界に誘って行く。もっとも、いくら能力の高いレインとは言え、取りこぼしと言うものはある。そこを、シーナが後ろから『強引に』眠らせていた。
「よしよし。良い子だ。そのまま起きるなヨ☆」
 くすっと笑いながら、そう言う彼女。見張りが大人しくなったのを見て、一行はそのまま地下へと降りて行く‥‥。
「誰ッ!?」
 土牢の向こう側で、怯えた表情を見せる金髪の少年。
「ほほぅ。お前が例の‥‥。なるほど、男にしておくには、勿体無いな‥‥」
 それを見て、ジラが感心した様に呟く。
「ぼ、ボクを殺しに来たの‥‥?」
「こらそこ。脅してどうする。大丈夫。私達は、お兄さんに頼まれて、あなたを助けに来たんだよ」
 シーナが、彼を押しのけて、そう言った。
「兄様に‥‥? 無事なの!?」
「心配してるけどね。今は、ある場所に匿ってる」
 安心させるように、そう伝える彼女。少年が、怯えた表情から、ほっとした表情になったのもつかの間、警戒していたヴァレスがこう言った。
「おしゃべりが過ぎるぞ。上が騒がしくなってきた」
「おっと、いけない。気をつけないとね。JJ、とゆーわけで、鍵壊しちゃって」
 頑丈な鍵がついた扉。大きな音を立てるわけに行かないので、シーナはそう言ってJJに道を譲った。
「はいはい。それじゃあ、レディのハートを攻略しますかね」
 くるっと盗賊用具の一つを、指先で回しながら、JJは金属製の錠前にそれを差し込んで見せた。ほどなくして、外れる錠前。
「さ、こちらへ」
「わ、わかりました‥‥」
 レインが少し厳しい調子で、こう言った。気の弱い性格なのは本当なのだろう。そのまま、引っ張られるように土牢を出る彼。ところが、廊下に足を踏み出した所で、倒れこんでしまう。
 ジラに支えられながら、少年は申し訳なさそうな表情をした。どうやら、碌な食事を与えられていなかったようである。
「これじゃ、事情を聞くのは無理ですか‥‥」
「怪我と違うから、ヒーリングポーションきかないしねぇ」
 レインは、彼から少し事情を聞くつもりだったようだ。シーナが、横でポーションの容器を振っているのを見て、諦めたような表情を浮かべている。
「これを着ていけ。上から羽織るだけでいい」
 ジラが着ていた自分の外套をかけたのを受けて、頭を下げる少年。
「それから、誰か一人、時間稼ぎが必要だな。見付かると厄介だ」
 暗い土牢だ。奥のほうでうつむいていれば、少しは時間が稼げるかもしれない。
 その直後。
「残念だが、渡すわけにはいかん。私の密かな楽しみなんでな」
 睨み付けるジラに対し、狭い牢屋の入り口に現れた青年貴族は、口元に笑みさえ浮かべている。
「だーれがわたすかよ。お宝は泥棒さんが頂くって、相場が決まってんだ」
 値踏みするような視線に、JJが即座にお断りの姿勢を見せる。
「レイン、魔力に余裕あるか?」
「まだ、大丈夫です」
 後ろで、ジラがレインにそう尋ねた。彼女は、自身の魔力は、まだこの場を切り抜けるだけのパワーがあると告げる。
「JJが丸め込んでる間に、たたみかけろ。隊長連中は、俺とシーナで何とかする。ヴァレス。地図は頭に入ってるな?」
 無言で頷くヴァレス。その直後、レインが竪琴をかき鳴らした。
「悪いけど、変態貴族に構ってる暇はないんでね! あばよ!」
 JJがそう言って、膝をついた貴族の横をすり抜けて行った。お宝を回収したら、とっとと撤収するのが、泥棒の鉄則だ。そこへ警備隊長が立ちはだかる。
「行け! ここは俺が食い止める!」
「しかし‥‥!」
 ジラが、剣を抜きながらそう言った。と、彼は背負ったままの少年をシーナに託し、こう告げる。
「早く想い人の所にいかせてやれ。心配するな。たとえ捕まったとしても、身の処し方は心得ている!」
「しかし‥‥」
 レインの言葉に、何度か依頼を一緒にこなしているシーナは、こう言った。
「大丈夫。あの人は、何が合っても上手く切り抜けてくれる。そう言う人だから」
「行こう‥‥。こっちだ」
 ヴァレスが、そう言いながら、警備兵が居ない方向へと導く。
「あばよ! お貴族さんっ!」
 去り際、JJが『泥棒JJ参上』と書かれたカードを投げ捨てながら、彼らは生垣の向こう側へと姿を消す。残ったジラに、警備隊長が一言。
「仲間を逃がす為に、わざと残るとはな」
「正直言うと、おまえと戦ってみたかっただけなんだがな」
 さっきは途中で物言いが入ったからな‥‥と、そう言いたげな彼。
「ならば、望みどおりの目にあわせてやるっ!」
「危険は、高貴なる者の義務と言うヤツだ。そう簡単にやられはせんさ!」
 ジラのオーラソードが輝く。白み始めた空に、その音は遠く響いた。
「く‥‥。強いな‥‥」
 数分後、実力の違いからか、片膝をついているジラ。剣が振り上げられる。彼が悔しさ交じりの視線を向けた時だった。横合いから滑り込むようにして、警備隊長の剣が叩き落される。
「間一髪。間に合ったな」
 見れば、セイクリッド・フィルヴォルグ(ea3397)が、ディザームの要領で、彼の剣を弾き飛ばしていた。
「余計な真似を‥‥」
「重装備であまり動けんのでな。罪をかぶるぐらいはやらせろ」
 ふんっと剣の露をふり飛ばしつつ、そう答えてみせるセイクリッド。そこへ、ティアラがスリープの魔法をかける。
「よし。全員! 散れ!」
 眠りこける警備兵達を残し、不法侵入者は、日が高くなる前に姿を消すのだった。

 数時間後、隣の森の中では。
「向こうは上手くやり過ごした見たいですね」
 警備員をやり過ごすアルビオス・レイカーをみて、安堵しているレイン。
「しかし参ったねー。囲まれちゃってるよ。このままじゃ、身動きが取れないや」
 目指す教会は、この森を越えた先だ。しかし、森には追っ手が徘徊しており、うかつに先に進めない。
「どうやってやり過ごす? 死刑なんて、ごめんだしな」
「いっそのこと、一気に仕掛けてしまいましょうか。あの子には、その混乱に乗じて、逃げてもらうって事で」
 案外過激な事を言い出すレイン。このあたりは、他の冒険者と変わらない。JJもいざとなったらダッシュで逃げようと考えていたようだが、やはりそう上手くは行かないようだ。
 と、その時である。
「チェルシー、ムーンアロー!!」
 警備隊につきささる、一本の光の矢。出所をさぐれば、木の影から姿を現す、仮面の少女‥‥チェルシー・カイウェル(ea3590)。
「怪盗チェルシー。月に変わって、変態貴族を征伐に!」
 髪型も服も声色も変えてある。簡単には彼女だとばれないだろう。舌をぺろりと出して、救出班が潜んでいる方向とは、反対に走りだすチェルシー嬢。
「このガキ! なめるなっ!」
 しかし、バードの体力では、現役の警備兵にかなうべくもなく、あっという間に捕まってしまう。
「やーん。レディに何するのよー」
 ぷうぷうと文句をつけるチェルシー。
「全くだ。女性は丁重に扱うんじゃなかったのか? イギリス人ってのはよ」
 ここぞとばかりに、姿を現す時雨桜華(ea2366)。その顔には、まるでジャパンの忍者か何かの様に、ぼろ布が巻かれている。
「ふっふっふ。人呼んで、音速浪人。仲間のピンチにただいま参上ッ! てか」
 そう言いながら、切りかかる時雨。
「今のうちだ。さっさと逃げとけよ」
「悪いね。旦那」
 ぴょこんっと起き上がって、距離をはなすチェルシー。適当な距離を走った所で、再びムーンアローを放つ。その間に、救出班は、さっさと森を抜ける。それを別の陽動だと思っているらしい警備隊長に、時雨はこう言った。
「へぇ、あんたが隊長か。なるほど、強そうな顔してら」
「お前もか‥‥」
 多少呆れた表情を見せる警備隊長。それを見て、時雨は、なるほど‥‥と気付く。
「つぅ事は、俺で2人目って事か。人気モンだな」
「どうせなら、麗しきレディにモテる方がいいがねっ!」
 今度は自分から切りかかる隊長。他の警備兵達が、加勢をしようと、剣を抜く。しかし、そこに立ちはだかったのは、もう1人の剣士。
「おっと。貴様達の相手は、私だ」
「あたしもまだまだ元気なこと、忘れないでねー」
 セイクリッドがそう言うと、森のこだまか何かの様に、チェルシーが悪戯っぽく続けた。
「‥‥そこまでして何故庇う。仕事だからか?」
「吟遊詩人は縛られない。権力にも、倫理にも。ただ自らの思うままに、信ずるままに進むのみ。納得が行かないだけよ、無実の罪で捕らえるなんてね」
 妖精めいた仕草で、しかしはっきりと、チェルシーは言い放つ。と、その貴族は、何やら思案する表情で、こう提案する。
「良いだろう。諸君らに免じて、2日間猶予をやる。その間に、無実の証明が出来れば、放免してやろう」
「以外と話が分かるじゃねぇか」
 そのセリフを聞いて、刀を鞘に収める時雨。伊達に貴族をやっているわけではないようだ。もっとも、見つけられなかった時は、全員処刑するつもりなのだろう。
「あとは犯人捜査組が上手くやってくれるのを信じるのみ、かな」
 そうなるか否かは、全ては犯人探しにかかっていると、JJは呟くのだった‥‥。