【王室御用達】デンジャラス観光

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月13日〜11月16日

リプレイ公開日:2006年11月20日

●オープニング

 その日、議長ことギルバード・ヨシュア宅には、珍しい客が訪れていた。入り口には、馬車が横付けされており、そこにロシア王家であるルーリック家の紋章が刻まれている。応接室へと通されたらしいその賓客は、議長にこう用向きを告げた。
「辺境からのゲストを、市内へ案内しろ‥‥。ですか?」
「そうだ。貴殿ならば、接待技術も優秀だと聞いている。冒険者への伝手も多い。ならば、王室付きの案内人として、相応しいと思って‥‥だそうだ」
 入り口に背を向けながら、そう話すルーリック家の使い。腰に下げられた短剣からは、かなり身分の高い者からの伝令のように見受けられた。
「それはかまいませんが。私はもともとイギリスの者です。外国人が、王家に関わる接待をおおせつかってよいものでしょうか?」
「我が主は、貴殿の能力を高く買っておられる。その力量をもってすれば、出自には拘らないとの事だ」
 それは光栄です。と、一礼する議長。そして、関心があるかのように、こう尋ねる。
「集まる方々はどう言った方々でしょうか?」
「様々だ。商業主、地方領主、王家の端に連なるもの‥‥。いずれも辺境の地から、王都へと来た者達だ。ただ‥‥決して王家に忠誠を誓っている者ばかりではないがな」
 厳しい表情を崩さぬ使者殿。どうやら、そう言った危険因子を、王家がじきじきにもてなすよりは、外国人である彼を、半ば捨てごま代わりに、使おうと言う腹積もりなのだろう。
「連中は今、キエフの迎賓館にとどまっている。一度、会いに行ってみるといいだろう」
 テーブルの上に置かれたのは、1枚の招待状。なければ入れないであろう、迎賓館のものだ。
「どうしましょう? 議長」
 使者が帰った後、不安そうにレオンが問うた。と、議長は首を横に振りながら、こう答える。
「受けるしかあるまい。王家じきじきのご指名だ。断れば‥‥、ここでの暮らしにも支障があろうな」
 ため息をつく彼。レオンが「そんなに、重要なのですか‥‥」と、眉を潜ませると、議長は公続けた。
「我らは試されているのだよ。本当に、王家に出入りするのに相応しい人材かどうか、ね」
 難題ではあるが、クリアすれば『王室御用達』の看板が手に入る。これは、その為の試練なのだと。
「出かけてくる。断れない仕事である以上、下見はしておかなければなるまい」
「お供いたします」
 招待状を片手に、迎賓館へと向かう議長に、レオンはそう言って、追従するのだった。

 そして、その迎賓館では。
「まさか、こう上手くいくとは思いませんでしたよ」
 ロビーで談笑する、数人の男女。年齢はバラバラだが、基本的にはハーフエルフばかり。彼らは、ホットワインを片手に、こう語る。
「ロシアと言うのは、秘密の多い国だからな。今頃は、王家も困っているだろう」
「ふふっ。最後には面白くない顔をしておけばいいんだよ。最初っから、接待なんかで歩み寄るつもりなんてないんだから」
 話の内容から察するに、彼は、王室からのもてなしを、はなから受け入れるつもりはないようである。
「違いない。くくく‥‥今から、案内係の当惑する姿が浮かぶようですよ」
「まったくだ」
 それどころか、案内係‥‥すなわち、この場合は議長のことだ‥‥を生贄に、この市内観光を、めちゃめちゃにする予定のようだ。王家の使いが、彼らのことを監視しているのを踏まえたうえでの、策略である。
「これは‥‥、連中がぐうの音も出ないガイドツアーを組む必要があるな」
 王家も、彼にその差配を期待している。ここで、捨てごまになるわけにはいかない。そうして、ギルドにこんな依頼が乗った。

『ロシア王家をあまり快く思っていない方々を、接待する面々を求めます。出来れば、マイナス思考をプラスに変換できるくらいのツアープランを、何でもいいから組んでください』

 一応のプランはあるが、肉付けやサプライズイベントなども、盛り込んで、『面白くなかった』と言わせないプランにしたいようである。

●今回の参加者

 ea0517 壬生 桜耶(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1060 フローラ・タナー(37歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1123 常葉 一花(34歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb6643 クラム・グランマリア(22歳・♂・ナイト・人間・ロシア王国)
 eb6701 カンジス・コンバット(34歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb6993 サイーラ・イズ・ラハル(29歳・♀・バード・ハーフエルフ・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●打ち合わせ
 その日、キエフ市内のギルドには、依頼を受けた面々が集まっていた。
「市内を案内しろと言われても、僕も異国の地は初めてに近いので、正直どこから手をつけていいのやら‥‥」
 ロシアには来たばかりなのだろう。困惑したように苦笑する壬生桜耶(ea0517)。と、そんな彼に、礼服姿の議長ことギルバード・ヨシュアは、こう言って羊皮紙製の白地図を手渡していた。
「地図くらいは用意しておいた方がいいだろうな。案内係が迷子では、話にならんし」
「なるほど。しかし、お客様はとってもとっても偉い人なんですよね。粗相などあっては、僕の首、飛びますか?」
 引きつった顔に、冷や汗が浮かんでいる壬生。どちらかと言うと、自分が観光案内してもらいたい気分なのだろう。ややげんなりした表情で、そう尋ねていた。
「かもしれないな。もっとも、貴殿の首が飛ぶ前に、私が追放なり処刑なりを食らっていると思うが」
「まぁ、そうはならないように努力しますよ」
 苦笑しながら、渡された白地図をしまう壬生。と、そこへクラム・グランマリア(eb6643)が自信たっぷりにこう宣言する。
「ふふ‥‥デンジャラスな観光プランを組み立てる、か‥‥。そんなこと、このロシア王国観光局長クラム・グランマリア様にかかれば朝飯前さ。ご安心なさい」
 大げさな仕草で、胸を張るクラムに、「‥‥お手柔らかに願うよ」と一言口添える議長。そんな中、念入りに化粧を施していたサイーラ・イズ・ラハル(eb6993)が、ようやくめかし終えたらしく、鏡をしまって、代わりに白樺のメモ帳を取り出す。
「よし、これでOKっと。議長さん、わかる範囲で結構なんだけど、視察団の個人情報、教えてくれないかしら」
「肩書きには、ロシア辺境同盟とある。主に開拓地区や、森に住む村々の代表だそうだ。ただ、本当にそうなのかは、わからないがな」
 議長が見せてくれたのは、羊皮紙に記された名簿だ。それには、視察団の名前と性別年齢、それにどこの村の代表か等が記されている。しかし、顔が書かれているわけではないので、真偽の程は疑わしかった。
「つまり、他の国の方々も、紛れ込んでいると言うことね」
「ああ。もしかしたら、公国の貴族も紛れ込んでいるかもしれん。表沙汰にすると、色々と問題になるので、伏せられているがな」
 それを一つ一つ確かめるようになぞっているサイーラに、議長はそう言って頷く。と、それを聞いた常葉一花(ea1123)も、納得したように呟いた。
「なるほど。では、あまりキエフの繁栄を快く思ってはいない方々になりますわね。ふむふむ‥‥」
 彼女も、なにやらいつものように企んでいる様子。含み笑いを広げるようなツアーの企画者に、苦笑する議長。と、そこへフローラ・タナー(ea1060)がこう釘をさした。
「でもギル、王家御用達の看板が貰えると言うのは魅力的ですけれど、この仕事をこなしたら、その看板が貰えると、勘違いしない方が良いとは思いますわ」
「そうだな。念書や契約書を交わしたわけではないのだし‥‥」
 確かな証と言うのは存在しない。レオンが、その意図を代弁するかのように「期待はしない方が身の為と言うわけですね」と、説明していた。
「うーん、ロシアとはそう言う国なのでしょうか‥‥」
「どこの国でも、悪巧みをする奴は多いと言う話ですわよ」
 その釘に、周囲を見回しながら、壬生が言うと、一花は自分の事なぞ棚上げて、注釈を入れてくる。と、彼は『なるほど』と理解したようで、こう続けた。
「ふむ‥‥。それで、どこをご案内するのでしょう? 出し物と言っても、踊りや小咄等の芸当は出来ないんですが」
「そう言うのは、やらなくてもかまいませんよ」
 フローラが首を横に振る。苦手な事をやって、失敗するくらいなら、別の事を任せた方がいいと判断したようだ。
「レオン、当日の天候操作は出来るかしら?」
「それほど長い時間でなければ、雲くらいは晴らせますが‥‥。あまり期待はしないでください」
 その彼女に確かめられ、自分の技量を告げるレオン。フローラは「それでいいわ。ただ、難癖をつけられたくないだけだし」と答え、ツアー当日の朝、魔法を使う事を頼んでいた。
「その前に、コースの下見を先に済ませておくのも、良策ですわね」
 壬生の白地図を覗き込みながら、ルートの選定をしている一花。
「ルーリック家に縁のある場所の方がいいかしら‥‥」
「そうかしら。議長さんの情報だと、ルーリック家に縁のある場所は、少ない方がよいと思うわよ」
 一方のフローラはと言えば、話題づくりに王家の話を提案するが、サイーラが聞き出した情報を基にすれば、それは避けた方が良さそうだ。
「だとしたら、その土地の者しか訪れない場所なぞ、どうでしょう? 町やギルドの人なら、何か知っているかもしれません」
 と、そこへ壬生がそう提案する。確かに、町の事は町の人に聞いた方が良さそうだ。
「では、先にそれを調べておきましょう」
 そう言う一花。そんなわけで、ツアールートは、市井寄りの内容になるのだった。

●GO! PLAN!
 翌日。
「ご苦労様です。御仕事、頑張ってくださいね」
 迎賓館へと出向いたフローラは、議長と共に、視察団ばかりではなく、使者殿にも軽く頭を下げている。
「本日お供をさせていただきます一花と申します‥‥。お見知りおきを」
 そんな中、いつものよりも少し裾の長いメイド服をまとった一花が、口元に笑みを浮かべ、優雅に一礼していた。マイナスだった感情が、少しだけ上向きになったかもしれないと思ったクラムは、そこで意味ありげな台詞を、こうのたまう。
「おや、皆さん、この迎賓館にいてよく無事でしたね。ここはタチの悪い幽霊が住んでいるらしくて、毎日死者が出ているんですよ」
 ざわつく視察団。そんな彼らに微笑みかけながら、サイーラはカンジス・コンバット(eb6701)に問うた。
「どう? 様子は」
「辺境の‥‥とは言え、貴族のプライドを持っている人ばかりじゃな‥‥。あの性格じゃと、敵も多かろう。戦闘はないと思うが、もしかしたら、付け狙っている方がいるかもしれぬ」
 剣を携えたままの彼が、話した印象をそう告げる。話の中で嗜好等を聞いてみた所、自分達の村が優秀だと思っているような者達ばかりじゃ‥‥と、彼はサイーラに教えてくれた。
「わかったわ。私は視察団の方々の気を引いてるから、その間に‥‥お願いね?」
「うむ。心得た」
 サイーラがそう言う間、彼は壬生達にその状況を伝える事にする。
「なるほど、警戒だけはしておきますわ」
 そう答える壬生。と、彼はだいぶ冷え込んできた空気に、上着の紐を締めなおす。
「それにしても寒い国ですね‥‥。こういう時は温泉につかりたいものです。この異国でも温泉はあるんでしょうかね?」
「郊外になりますが、よい保養所がございます。何でも、冬でも凍らぬ湖があるそうですわ」
 視察団に話しかけると、一花がここぞとばかりにホットレイクの事を持ち出していた。余裕があれば、郊外にも連れていこうと思ったのだが、時間的に難しいようだ。
「この国は、それほどに寒いのですね。では、風邪など召されては困りまするゆえ、遠慮せずにどうぞ、どうぞ」
 壬生がそう言って差し示したのは、商店に並んでいたまるごとシリーズだ。しかし、視察団がそちらへ振り向く前に、ガンジスがこう言い出す。
「皆、出発の時間じゃぞい」
「えー‥‥」
 至って真面目に防寒着として薦めようとしていた彼、止められて不満そうな表情だ。しかしそこには、一花がこうフォローを入れる。
「普通の観光客なら、笑って許してくれそうですけど、今回はしまっておいて下さいね。ああそうだ。後で議長に着せてしまうのも手ですよ」
 知らん振りをしているギルだが、ちょっと可愛いかもしれない。後で頼んでみようと思う彼。
「すみませんねぇ。気を使わせてしまって」
「いえいえ、これが役目ですから☆」
 壬生が申し訳なそうに言うと、首を横に振る彼女。こうして一行は、ある者は案内役、ある者は護衛と言う形でもって、市内にある遺跡へと向かったのだが。
「皆さん、これがかの有名な石碑です。あっ、触っちゃダメですよ。爆発しますからね。それで毎年、観光客から何人も死者が出ているんですよ」
 ある事ない事吹き込むクラム。ざわつく視察団に、サイーラがここぞとばかりに魔法を唱えた。
「大丈夫です。私がきっとお守り申し上げますわ‥‥☆」
 対象は、視察団の団長。幸いな事に男性なので、彼女は問題なくチャームをかける事が出来た。
「どうです?」
「ええ、きっと私に夢中になってるわ」
 フローラに問われ、指でマルを作ってみせるサイーラ。念入りな化粧と、ナンパ技術の賜物だ。こうして、傍に侍る事に成功した彼女。べったりと寄り添われ、鼻の下を伸ばす団長に、クラムはいかにも訳知った表情で、広場へと案内する。
「皆さん、ここがかの有名なロシア王国の広場です。あっ、無闇に歩き回っちゃダメですよ。トラップが沢山埋まっていますからね。それで毎日死者が出ているんです」
「心配しなくても、後ろに居ればいいわ」
 怯える団長を庇うサイーラ。と、クラムは腕をまくり、その傷跡を彼らに見せる。
「そうですね。僕達や市民の皆さんは慣れていますけど。そうそう、この間、この僕もトラップを踏んでしまったんですよ。迂闊でした。ほら、これがその時の傷です」
 本当は、以前の冒険で出来た傷なのだが、そんな事は言わなきゃわからない。顔を見合わせ、そんな危険な広場に‥‥とざわつく彼らに、サイーラはしなだれかかりながら、耳元でささやく。
「うふふ。だめよ? そんな事言っちゃ。お口を縫い付けちゃうかもよ」
「脅かさないで下さいよ。そうですね、それでは、そろそろ昼食を兼ねて教会に行きましょう」
 自分が驚かせているのはさておき、そう言ってクラムは、用意された場所へと案内する。サイーラが、竪琴を披露する中、フローラは視察団に食事を運ぶ。
「お弁当には、フィッシュフライを用意しましたわ。イギリスの名物料理なんですの」
「でも、気をつけてくださいね。油断してると料理が爆発します。それでよく死者が出るんです」
 ここでもまた、吹き込んでいるクラム。一花が、フローラを示して、「ご安心ください。彼女はリカバーの使い手ですから」と、フォローを入れていた。
「見てください。これは昨日、ここで死んだ観光客の血です。爆発させないコツは、神様に祈りながら食事をすることですよ」
 そんな中、クラムはと言うと、あらかじめ床にぶちまけておいた豚の血溜りを指し示し、話にリアリティを持たせている。演奏を終えたサイーラも、「それが怖かったら、今回の接待で難癖付けない様にお願いしますね☆」と、笑顔でお願いしていた。
「冗談ですよ。実は、我々には少々事情がありましてね。脅かすような真似をして申し訳ない」
 さすがにこれ以上脅すのはよくないかもしれない‥‥と判断したギル、視察団の団長へそう申し出る。そして、傍にいたフローラを紹介し、その腹に、自身の子が宿っている事を告げた。
「私とギルがキエフに来たのは、この子の為なのです」
 そこから先は、フローラの仕事だ。ギルに寄り添いながら、腹を撫で、出産を楽しみにしていると告げる。そんな幸せな夫婦像を見せながら、今度は一花が彼らと付き合うメリットを告げた。
「王室御用達の最新の織物を入手することが出来ますし、議長の人脈には、自分達以外にも優秀な人材がおり、並みの冒険者では片付かない厄介ごともあらかた片付けてしまいます。手を組まない理由はないでしょう?」
 彼女のように、辺境地域の有力者達を味方につけたいのは、一人ではないようだ。それを聞いたサイーラも、団長にささやくように申し出る。
「辺境の方々は、キエフにはない宝をお持ちと伺います。その財力も地位も、王家に引けを取らないと存じます。是非、私もお仲間に加えていただきたいのですわ」
 他の冒険者には悪いが、資産と地位は、彼女にとっても魅力的だったから。魅力的な肢体を誇る彼女に、チャームをかけられたままの団長は、できる限りその要望に答えたいと語る。
「陳情、頑張ってくださいね」
 こうして、王宮の近くまで視察団を見送ったクラムは、最後にこう言ってのける。
「それにしても、王家の方々って凄いですよね。この危険な場所を、平和にみせかけるように、毎日努力なさっているんですから」
 半分皮肉が混ざっているのは、決して王家に忠誠を誓っていない彼らに対する、彼なりの賛同なのだろう。
「これでよかったのだろうか‥‥」
「互いの距離を短くしなれば、良い結果に近付くでしょうから。後は、天命に任せるのみですわ」
 結果を待つギルに、フローラがそう言って慰める。こうして、視察団の案内は、デンジャラスなまま、幕を閉じるのだった。