【プリパ!】華やかな世界へようこそ☆

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:01月16日〜01月21日

リプレイ公開日:2007年01月24日

●オープニング

●ぷりんせすパーティ
 プレゼント大作戦から数日。エリザベータも戻ってきた事だしと言う事で、パーティが行われることになった。
「えぇとぉ、あとは議長様のところに行って、綺麗な布とリボンを貰ってくれば完了ですわ〜」
 飾り付け用品を山ほど買い込んだお琴が、議長ことギルバード家へと向かっている。議長自身は、そろそろ出産と言う事で、会えなかったが、レオンに話は通っていた。
「これが飾り用の布です。足りなければ、残りは当日までに用意しておきますから」
 色とりどりのリボンや布を手渡され、ぺこりと頭を下げるお琴。
「ありがとーございますー。あのー、レオンさんも、パーティには来られるんですか?」
「パーティ? いえ、私は‥‥」
 そう言った華やかな場所は苦手なのだろう。首を横に振るレオン。しかし、お琴はそんな事はまったく気にした風情もなく、にこりと彼を誘った。
「是非来てくださいな☆ 今年は、各地から貴婦人を招いて、その美しさを競うと言う催しがございますの。きっと、綺麗な方ががたくさんいらっしゃいますわ〜」
「そうですか‥‥」
 困惑した表情のレオンに、お琴は「詳しい事は、あとで王妃様から、招待状が届くと思いますわ。では、ごきげんよう」と言い残し、お使いを終える為、王宮へと戻って行った。
 その言葉どおり、議長の家には、王室からの招待状が届いた。議長だけではない、人数分そろえられている。しかし、それを見た議長、やおらこう呟く。
「ふむ。これはある意味で危険なパーティやもしれんな」
「どう言う事です?」
 小首を傾げるレオンに、彼は招待状を見せた。それには、参加できる者がほとんど貴族資格を持つ物ばかりとあったが、従者が2名まで参加可能とある。
「ほぼフリーパスだしな。それなりに人も多いと言う事は、事件もまた然りと言う事さ」
 心配げにそう言う議長。その貴族資格の審査が、自己申請ともなれば、ノーチェックに等しい故だろう。
 そして、その心配が現実になってしまうのもまた、天の道なのである。

●貴婦人は誰?
 数日後。
「それでは、今回の課題を発表しますの〜」
 お琴が、いつものように間延びした舌ッ足らずボイスでもって、課題を皆に公示して回っている。

ダンス:民族舞踊
料理:ロシア家庭料理
詩:雪景色をテーマに

「条件は、各国いずれかの貴族階級に属している方‥‥です。証明は、礼儀作法をもって行いますわ」
 一緒に出てきた先輩侍女が、そう言って細かい条件を書いた羊皮紙を、冒険者ギルドの壁に張り出す。「皆様気負いなく参加してくださいね」と、注釈つける彼女。
「「よろしくお願いしまーす」」
 声をそろえて、ぺこりと頭を下げる2人。

『ぷりんせすパーティ、参加者募集中!』

 こうして、ギルドを通じ、『ぷりんせすパーティ』、略して『プリパ』が、開催されることになるのだった。

●今回の参加者

 ea1060 フローラ・タナー(37歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1123 常葉 一花(34歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea8785 エルンスト・ヴェディゲン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb0882 シオン・アークライト(23歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb6993 サイーラ・イズ・ラハル(29歳・♀・バード・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb7693 フォン・イエツェラー(20歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb8684 イルコフスキー・ネフコス(36歳・♂・クレリック・パラ・ロシア王国)
 eb9405 クロエ・アズナヴール(33歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)

●サポート参加者

マリア・オロソフ(eb8873

●リプレイ本文

 その日、競技会に参加する面々は、議長の家で、着替えを済ませていた。
「そろそろ時間のようですわね。ギル、裏の荒事は任せましたよ。レオン、子供達の事をよろしくね」
 白一色の聖者装束に身を包み、ガウンを羽織りなおしながら、仕事に出向くフローラ・タナー(ea1060)。
「子供の名前だが‥‥。もう少し考えさせて欲しい。確かに、幸多かれと願うが、レオンの占いを待ってからでも、遅くはあるまい」
 ラテン文学から、希望や幸運の名をとろうと提案していた彼女だったが、議長はゆっくり考えたいようだ。
「ペットは‥‥、何処か別の場所につなぐことになるみたいだな。いい子で留守番してるんだぞ」
 さすがに中に持ち込むのはどうかと思ったフォン・イエツェラー(eb7693)、鱗と四足を暖かそうに工夫した箱に入れ、係りに預けている。
「よし、これでOKっと。目力抜群、リップも完璧。これで貴族サマのハートは、私のモ・ノ☆」
 メイク道具を片手に、丹念にお化粧を済ませたサイーラ・イズ・ラハル(eb6993)は、そう言って鏡をしまう。そして、くるりと向き直ると、その最上級に着飾った姿でもって、イルコフスキー・ネフコス(eb8684)にこう申し出る。
「ねぇねぇ。出来れば礼儀作法云々を教えてくれないかしら。踊りにもベッドマナーにも自信はあるんだけど、言葉遣いとかがイマイチで‥‥」
「べ、べっど‥‥。え、ええ。いいですよっ」
 多少頬を染めつつ、そう答えるイルコフ。
「他にも、礼儀作法を身につけたい方はいますか? 一夜漬けでも、せめて挨拶の仕方くらいは、覚えておいて損はありませんし」
 王妃が出てくるまでには、まだ少し時間がある。他の面々にも彼がそう薦めると、クロエ・アズナヴール(eb9405)がそれに答えている。こうして、一通りの準備を、皆が終えた頃、盛大な拍手が起きた。
「どうやら王妃様がいらっしゃったみたいですね」
 その人だかりからして、今日のメインゲストが来たようだと判断した常葉一花(ea1123)、自分も同じように一声言上申し上げようと、その環の中に加わる。
「私も挨拶してこよう」
 シオン・アークライト(eb0882)もそう言って、一花についていった。だが、そこはお琴が列整理をするほどに、混雑していた。主従と言う体裁をとっているクロエとシオン、その人の多さに、閉口してしまう。
「不審者が紛れていても、絶対に分からないですわよ。これじゃあ」
「そうみたいねぇ。同盟さんもいるし」
 仕事が出来ないと嘆く一花に、従者の形を取っているサイーラがそう言った。その口元に浮かんだ笑みを見て、シオンが「知り合いかしら?」と尋ねると、彼女は以前の事をにおわせながら「ちょっとね」と答えている。
「ちょうどいい。話をつけてくれないかしら? 噂話程度でかまわないんだけど、最近の情勢も聞きたいし」
「別に同盟さんじゃなくてもいいわよ☆ 私も仲良くなりたいし」
 そのシオンに言われ、彼女は教えられた通りのステップを踏み、辺境同盟の元へと、歩み寄る。
「なるほど。そう言う事ね。確かに、あの王妃様じゃ、お飾り以外の何者でもないかも」
 それによると、王妃は表情が乏しく、印象が薄い。辺境の連中や、国王に取り入りたい貴族の輩は、彼女を招いて『王命』の形を取る事が多いそうだ。余計な介入をされたくない連中にとっては、都合のいい王妃様ってところなのだろう。
「もう少し詳しい情報が知りたいな。アピールしてみましょうか‥‥」
「そうね。私もちょっと興味があるし」
 シオンの申し出に、サイーラはにやりと笑って、彼の元へと向かって行った。そして、壁際によりかかり、腕を組んだままむすりとしている王妃付き衛視‥‥トーマへ、こう話しかける。
「こんばんは。こんな所にいていいのかしら‥‥?」
 虫の居所でも悪かったのか、明るく話しかけたサイーラを、彼はじろりとにらみ付けた。
「失礼しました。えぇと、トーマさんでしたわね?」
 議長からご紹介を受けまして‥‥と、イルコフに教わった通りの挨拶を済ませると、彼は「奴の手ごまか。何の用だ?」と、問い正して来た。
「ちょっと、仲良くなりたくて。ここは寒いから、出来れば暖かい所でどうかしら?」
 腕を絡ませ、やや強引に暖炉のある方向へと引っ張っていく。しかし、2〜3歩動いた所で、逆に捕まってしまった。
「‥‥‥‥何を企んでいる」
「あ、あははは。えーと、そのー‥‥」
 彼女の細腕では、びくともしない彼。半ば脅されるようにして、事情を尋ねられた彼女は、付け焼刃の仮面を脱ぎ捨て、いつもの表情へと戻り、こう囁いていた。
「やぁねぇ。そんな怖い顔しないでよ。実は、家のお嬢様が、競技会に出るんだけど、審査委員が誰か聞きたくて‥‥。内緒よ?」
 頼まれていたのは事実である。その態度に、トーマはしばらく彼女をじっと見つめていたが、やおら手を離し、何人かの審査委員の名を教えてくれた。
「もう一つ教えて。確かトーマさんは、騎士団の1人だったわよね。仕事にも関わる事だし、話せる範囲で結構なんだけど、簡単に紹介してもらえないかな」
 さらにツッコんでみせるサイーラ。しかし、トーマはと言うと、ぷいっとそっぽを向き、話には乗ってこない。そこへ、様子を身に来たシオンが、間に割ってはいる。
「つれないわね。国王陛下の演説は聞いたんだけど、一部の大公殿以外は、騎士団の動きがまるで見えない。中身、教えてくれても良いと思うけど?」
 もっともな主張。その台詞に、トーマは警告するかのようにこう答える。
「我が炎狐騎士団の敵は、ロシア王国にとっての敵だ。もし、貴殿らが叛意を抱くいずれかの者に従うなら、闇夜に気をつけるといい‥‥」
 まるで、騎士団が工作部隊でもあるような口調。どうやら、警戒されてしまったようだ。
「何か行うのですか?」
「不穏な動きがあれば、粛清するまで。王命、そしてラスプーチン様のご命令とあらば、冒険者とて容赦はせぬ」
 シオンが尋ねると、トーマはそう言いおき、2人の前から立ち去ってしまった。
「一番怪しいのは、そのラスプーチンなんだがな‥‥」
 話を聞いたエルンスト・ヴェディゲン(ea8785)は、そう呟いている。蛮族が言っていた『髭のいけすかない男』。その心当たりが、王室顧問以外に思いつかない‥‥と。
「そちらはどうでしたか?」
「国王夫妻には、まだ子がない。口さがない者は、さっさと第二夫人を娶って、ハーフエルフの血を残した方が良いと噂していたな。他の貴族のように」
 シオンの問いに、エルンストは聞いた話を伝えた。直接彼が尋ねたわけではないが、王妃を評する者達は、そう物語っていたと。
「この国では、そう言った事が横行しているのですか‥‥。知りませんでした」
「ハーフエルフ至上主義だからな‥‥。国王クラスともなると、計画的にハーフエルフを産めるようにしているが‥‥、一般の貴族ではそうも行くまい」
 この国では、ハーフエルフが跡継ぎにいるか否かが、出世の行く末を決める。持たざる者は、なんとしてでも、それを確保しようとする。故に、今回のようなパーティを狙うと言うわけだ‥‥と。
「それで、今後もこう言った会合は予定されているようだと言ってた訳ですか。今回が王妃と言う事は、次は国王ですね‥‥」
 さすがに、次は今回のような競技はないでしょうが‥‥と、目の前で繰り広げられる光景を見て、そう答えるシオン。そこではフォンが、参加者達の整理をさせられていた。
「ダンス競技に参加の方は、きちんと並んでください〜。ああ、これじゃ、見回りにも出れない〜」
 会場を回って、警戒しようとしていた彼だったが、お琴に捕まって、手伝わされているようだ。そこへ、一花がサイーラを呼びに来た。出来る限り仮面を脱ぎたくない彼女、ややあって、メイクを直した状態で現れる。
「悪いんですけど、イリュージョンの魔法を頼めるかしら。いまいち舞踊には自信がないんですもの」
 OK‥‥と、手でマルを作って見せるサイーラ。
「一番、常葉一花、剣の舞をご披露いたします」
 そう言うと、彼女はクリスタルソードを唱えた。きらきらと蝋燭の日を乱反射し、周囲に星を撒き散らしたようになるのは、サイーラの幻影の賜物だ。「おおー」と声の上がる中、彼女は6分間剣を振り、演舞を終える。
「ペアでも良いのですか?」
 拍手が鳴る中、シオンはそう尋ねた。と、フォンが「構わないそうです。厳密なコンテストではないので」と、代わりに聞いてきてくれる。
「じゃあ‥‥、サイーラさん。お願いできますか?」
「いいわよ。私もそこのトーマ様に、聞かせて上げたいし」
 そう答えて、楽器を借りてくる彼女。余り自信はないが、チャームの隠れ蓑には充分だ。
「社交ダンスにちょっと民族風なのを混ぜた感じで頼みます」
「頑張ってみるわ」
 要求された通りの曲を演奏できるかどうか分からないが、とりあえず知っている曲を爪弾くサイーラ。それにあわせ、シオンは従者として同行していたクロエと、まるで演劇の男役のように、ダンスを披露してみせた。
「さすがに、本職にはかないませんわね〜」
 それを見て、ほぅ‥‥と感嘆の声を上げる一花。サイーラが一曲演奏し終わる頃、そのどこか倒錯的な雰囲気に、頬を染める女性陣が数人。
「‥‥ご苦労様」
「クロエこそね」
 もっとも、踊った方は、そんな事などまったく気付かず、お互いにねぎらいの言葉を掛け合っている。
「でも、王妃様は相変わらずねぇ」
 それでも、評価員の1人であるはずの、エリザベータの表情は、余り変わらない。
「あら、トーマ様」
 ところが、その時である。つかつかと歩み寄ったトーマが、ぼそりと一言。
「‥‥いい踊りだった」
 相変わらず表情を消したままで。それを見て、演奏役だったサイーラが、ここぞとばかりに、擦り寄ってくる。
「えー。私の演奏は〜?」
「‥‥もう少し鍛錬を積めば、宮廷楽師にひけをとらんかもしれんな」
 揶揄するようにそう言って、再び仕事へと戻ろうとするトーマ。その後を、サイーラは慕うように追いかけて行った。
「あら、行っちゃったわ。これからお料理なのに」
 残された一花、ちょっと困った様子で、料理道具の揃えられていく会場に、目を配る。
「私もアレは自信がない。食べた事はあるけど‥‥」
「見よう見真似で挑戦するしかなさそうですわね‥‥」
 お題は、ロシア国民にとって、ジャパンの味噌汁に等しいボルシチ。だが、シオンは料理が得意ではない。ジャパン人の一花には、作り方さえわからないようだった。
「うーん‥‥。ボルシチ怖い‥‥」
 で、その結果、毒見役だの試食係だのの名目で、フォンが生贄になってしまう。むろん、一服盛られたわけではなく、ただ単にまずい料理を食べてしまったせいだ。
「可哀想な事してしまいましたわ」
「まぁ仕方あるまい。見回りを申し出たのは、フォンだし」
 パーティを無事終わらせようと、奔走していた結果なので、名誉の負傷と言う奴だろう。毒を入れられたわけではないので、次の競技が終わる頃には、回復しているはずだ。
「後残すは‥‥詩作ね。よければ、これ使って」
 サイーラが、五色の筆を手渡す。持つ者にインスピレーションを与えるそれを片手に、詩をひねり出そうとするシオン。
「確か、テーマは雪だったな‥‥」
「お化粧もしてあげるわ。ちょっとは見栄えよくしてあげないとね」
 その間、サイーラは一花が、より魅力的に映る様に、紅を引いてくれた。
「うーん。少し気恥ずかしいけど、やはり堂々とやったほうが良さそうね」
 シオン、そう言って、前に進み出る。思いついたのは、先日の国王の演説にヒントを得た、「ロシアの新たなる時代」をイメージした格調高い勇壮なイメージの詩。凍てつく雪原を駆け抜ける銀狼‥‥と言った所だ。
「ん? 何か騒ぎか?」
 見れば、玄関先に、議長の扱う刺繍を織り込んだ馬服を着せたユニコーンを乗り付けているフローラがいた。
「ヨシュア夫人、白騎士フローラ様のお越しです」
 イルコフがタイミングを合わせるように、大声で叫ぶ。勢い、注目を集めてしまうそれは、否応なしに目立っていた。
「エリザベータ様には、ご機嫌麗しく‥‥」
 と、優雅に一礼する彼女。イルコフに天使の装束を着せ、神に祝福された聖母のような演出を見せながら、その唇に、ゲルマン語で詩を載せた。

黒の空を戟の煌めきが刹那、白に染めた。
真白き雪白を朱に染め、消え行く者。

だが、新たな命は生まれ出でる。このような日にも。
我らが未来。その穢れなき真白き魂は、

北の真白き大地は、何の色に染められるのか

 聖夜の出来事を歌ったらしいその詩に、今度はイルコフがこう続ける。

夢に染まる大地を夢見し少女は歩む。
着き従う人々はただ黙々と進む。

たとえ命尽きようともその少女に従う定め。
終に向けてただただ進む。

 2人とも、ジーザス教の信徒。おそらく聖典からヒントを得たであろうそれに、客席は静まり返っていた。だが、ややあって‥‥拍手が巻き起こる。
「しまった。これだけ注目されるとなると‥‥まずいな」
 盛り上がっているのは事実だったが、観客の注目が集まると言う事は、その分他の事に意識が向かなくなると言う事。シオンの傍らで、彼女の視線を感じながら、クロエは関心なさそうにしている面々へと、意識を集中させる。
「飲み物は、特に問題ないなさそうですけど‥‥」
 一方のシオンは、そんな貴族に配られる果実酒を確かめていた。髪の毛どころか、埃一つ落ちていない酒。毒は盛られていないようだ。
「不審な行動をチェックしようにも、パーティの進行を妨げるわけに行きませんしね」
 一花も、他の貴族たち目を光らせているが、人数の多さに手が追いついていない。
「ブレスセンサーをしても、この人数では、特定できんしな‥‥」
 エルンストは、得意の風魔法で、不審者を割り出そうとしたが、ここまで人の数が多いと、紛れ込んでしまうだろう。
「仕方ない。こいつを使うか‥‥」
 そう言って、持ち込んだパーストのスクロールを広げるエルンスト。専門的なルーン文字の書かれたものだが、彼の知識ならば、使いこなせることだろう。
「これは‥‥。黒い外套の男‥‥?」
 一週間分の過去が、まとめて頭に流れ込む。その中に、依頼に出てきた男が、議長宅に来ていた貴族と話し込んでいる姿が映った。そして、『リーンと言う少年を囮に‥‥』と、はっきりと口にしている。それが、先ほど会場にいた男と同一人物だと知ったエルンスト、皆にそう告げる。
「それだけ分かれば十分だ。後は他の奴らに任せる事にしよう」
 会場にいた後輩達が、その外套の男を追いかけていくのを見送り、シオンはそう呟いて、剣を収めるのだった。