【Bride War】皐月台風4
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■ショートシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 9 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月28日〜06月02日
リプレイ公開日:2007年06月07日
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●オープニング
●辺境の乱
さて、キエフの月道に荷物が届いたのと前後して、そこから馬車で数日離れた町では。
「ブルーレイ様はなんと‥‥」
「近いうちに、必ず行動を起こす。貴殿には、その先触れになってもらいたい」
とある村の屋敷で、密談とも言える会合が行われていた。いるのは、もう春になろうと言うのに、明らかに怪しい黒ローブの男達。もう片方は、辺境に位置する村々の村長とも言うべき立場の人間達である。
「しかし‥‥相手は強大。我が方に適うでしょうか」
「その為に、今とある品を輸送させている。それがあれば、貴殿とて力なきものの一員にはなるまい」
深く被ったローブの奥で、表情は見えない。だが、妙に力強ささえ感じる発言に、村長は頭を垂れる。
「なるほど。では、是非ブルーレイ様のお力を信じましょう」
そんな会話が、聞こえたとか聞こえないとか。
さて、それはさておき、お琴行方不明や、献上品の輸送や、極秘の警備など、様々な仕事が嵐のように吹き荒れる中、議長の元には客が訪れていた。
「先日は、どうもお世話になりました」
「これはこれは‥‥辺境同盟の」
それは、いつぞや案内をした辺境同盟のリーダーである。彼は、以前と違って腰を低くして、議長にこう話していた。
「お忙しいところ申し訳ありませんな。実は少々相談がありまして」
「なんでしょうか‥‥」
その変貌振りから、ただならぬ気配を察した議長、まず応接室へと通し、その詳細を問うた。
「実はここ数日。我が村に竜の亡霊が現れているのです」
彼によると、村の周囲に、まるで巨大な竜のようなスケルトンが現れているらしい。
「竜の‥‥とは、穏やかではないですね」
「骨だけとなった死せる竜が、この界隈をうろうろしておりまして‥‥」
と言っても、彼が伝え聞くドラゴンではなく、二本足であるく大きなトカゲのようなもののようだ。
「何か村に危害が?」
「今のところは、家畜が襲われる程度ですが‥‥。モノがモノだけに、そのうち人に被害が出るのは確かかと‥‥」
死者の軍勢には、議長も少なからぬ縁がある。詳しく聞こうとしたところ、レオンが申し訳なさそうにこう切り出した。
「失礼します。議長‥‥。ギルドの方が‥‥」
「ちょうど良い。お通ししてくれ」
話によっては、ギルドに依頼を持ち込むことになるだろう。そう思った議長、ギルドから派遣されてきた者を、応接室に通す。
「なんと。そちらにも竜の亡霊が‥‥。実は、こちらにも亡霊が出ておりまして‥‥」
話を聞いた担当は、驚いたようにそう言った。聞けば、彼の元にも巨大なトカゲのようなスケルトンが現れて、退治するかを迷っているらしい。
「それは‥‥どのあたりです?」
「地図で言うと、このあたりですね」
王室から貰った地図を広げ、場所を尋ねると、それは辺境同盟の村々から、キエフへと向かう川沿いだった。
「‥‥移動しているな。目的は‥‥キエフか」
他に村や大きな街もあるのに、彼らはそれを素通りしている。ルートは明確だ。
「もしや‥‥例のパーティを?」
「可能性は高いですね」
その時期、キエフでは公式行事である春のパーティが始まっている。そのパーティに乗じようとしていたらしい同盟長は、頭を抱えていた。
「なんと言う事だ。せっかく、今回のパーティで、王家の方と話し合いで解決しようと思っていたのに‥‥」
「止めねばなるまい。同盟長殿、ご協力いただけますか?」
頷く同盟長。こうして、彼らは、事件の真相を突き止める事を、ギルドへ依頼し、その準備の為、散って行ったのだが。
「よろしいのですか?」
「連中とて、ここで恩を売っておく方が得策だと思っているようだしな。大儀はあるさ」
議長は辺境同盟の目的を、しっかりと見抜いた上での依頼だったらしい。
『キエフへ向かう謎の巨大スケルトン軍団がいます。人を襲う可能性があるので、探し出して退治してください。なお、何らかの人の手が加わっている可能性は充分にありえます』
敵は‥‥やはり複数らしい。
●リプレイ本文
「キエフ目指してひた走る骨とはな。迷惑な話だ」
楊枝代わりの小枝をくわえつつ、そう呟く大蔵南洋(ec0244)。キエフと辺境の軋轢に付いてはよくわからないが、民に被害が出てからでは遅いと言うわけだ。
「でもぉ、なんかぁ、モンスター退治なんてぇ、久しぶりってカンジィ。腕がなまってなければいいどぉ」
「大丈夫ですよ。その為に、あの手この手で進路妨害するんですから。あと、操る黒幕がいるなら、そいつも見つけ出して倒さなくっちゃね!」
大宗院亞莉子(ea8484)にそう答えると、ルンルン・フレール(eb5885)は自分のバッグの中から、『巨大スケルトン対策本部』と書かれた垂れ幕を取り出し、部屋の入り口に掲げてしまった。そして、テーブルの上に、用意してもらった地図を広げ、皆にこう言う。
「まず、現在までに出た被害状況を報告してください。それによって、侵攻ルートを予想しちゃいましょう」
「既に分かっていると思いますが、アンデッドの特徴は、この通りです」
フィリッパ・オーギュスト(eb1004)がそう言いながら、内容を書き出す。
非常にタフという長所、愚直であるという二次的長所を持つ。代わりに理性的な行動はとれず、人であればまず掛からないような作戦に引っかかる欠点と、その異様さ故に目立つという二次的な欠点を持つ‥‥そうだ。
「我ら冒険者の知恵と勇気を持ってすれば、必ず道は開けると思いますよ」
彼女はそう言って、話を締めくくった。と、その特徴と地図を見比べた南洋は、こう尋ねてくる。
「まず、辺境からキエフまでの川沿いのルートと周辺の小集落の位置を知りたいんだが‥‥」
彼によると、キエフ側から集落をたどるように辺境を目指せば、どこかで奴らとかちあうのではないだろうか‥‥との事である。
「目撃情報によると、このあたりですね‥‥」
その意見を聞き、フィリッパが話に出た村に印を置いて行く。ほぼ1本の線で繋がっていた。
「なるほど、これなら詳しい話を聞けば、何とかなりそうだな」
その感覚は、距離にして人が1日歩くのと同じ位である。次の出没場所は、ここから2日ほど行ったあたりだ。
「では、侵攻してくる竜スケルトンを、現時刻を以て『スケルドン』と呼称しちゃいます!」
「「「了解!!」」」
そう宣言するルンルンに、即答する他のメンバー。意外とノリの良い連中である。
一行は、スケルドンに追いつかれる前にと、出没ポイントの村まで向かった。
「足跡か‥‥。スケルドンは、ほぼ川沿いにまっすぐキエフまで進んでいるようだな‥‥」
レイブン・シュルト(eb5584)が、川沿いに屈みこんでそう言う。雪解けたあとのぬかるみには、特徴的な足跡が残っていた。その大きさからすると、体長は約1〜2mくらい。ちょうど、大きめの犬といった所だ。彼らは、まるで隊列を組むように、大き目の足跡を先頭にまっすぐ進んでいる。
「あまり賢くはないですから、目的に向かってしか進めないのでしょう。となると、一番新しい出没ポイントは、あの向こうですね」
そう話して、森の向こうから立ち上る炊事の煙を指し示すフィリッパ。大幅な迂回や、どこかに隠れる何ぞと言う芸当は出来ない彼ら、足跡の向かう先へ行けば、何かつかめると主張する。
「すまん。ちょっと聞きたい事があるのだが‥‥」
レイブンが農具を片付けていた村人に、そう声をかける。だが、相手はろくな応対もせず、そそくさと家の中へ入ってしまった。
「どうやら警戒されているようだな‥‥」
「こっちもですね。扉も開けてくれませんよ」
困ったようにそう言うレイブン。見れば、反対側の家でも、フィリッパがそう言っている。
「うーん、もしかしたら俺のせいかもしれん‥‥」
顔立ちのせいで、誤解される事もあると言う南洋が、申し訳なさそうにそう言った。だが、フィリッパはそんな彼に、首を横に振る。
「いえ、単に怯えているだけでしょう。そりゃあ、あんな目立つスケルドンを見た後でしょうから」
そりゃあ、普通に暮らしている村人が、森の中で骨と皮だけの亡霊じみたトカゲを見れば、恐れおののくのも当たり前と言うわけで。
「んー、だったらぁ、ここはぁ、あたしに任せてって感じぃ」
と、その様子を見た亜莉子、人差し指を自分の顎の当てつつ、イタズラっぽく笑ってみせる。
「大丈夫ですか?」
「これでもぉ、そう言うの得意ーって言うかぁ、慣れてるって感じぃ」
そう言うと、亜莉子は人遁の術を唱え、男性の姿となった。口調こそ軽いが、忍びとしての技術も、それなりに心得ている。特に、ナンパと言う名の人心掌握には、かなりの時間を費やしてきたそうだ。
「おいらもついていくよ。神様の加護があれば、皆も心を開いてくれると思うし」
彼女だけでは不安だから、と、イルコフスキー・ネフコス(eb8684)が同行を申し出た。どこをどう見ても立派な聖職者の彼、信頼性は抜群だろう。
「ねぇ、何かぁ、ここら辺で妖しい人がいなかったってカンジィ」
「我々は、この国を守る為に動いている者です。神に誓って、怪しい者ではございません。どうか、ご協力いただけないでしょうか?」
口調こそ変わらないが、小綺麗な見た目に、聖職者を伴った2人は、どこかの高貴な家柄に見えたらしい。村人達は、それまでの警戒が嘘のように、スケルドンがどこへ向かったかを、教えてくれた。
「うーむ。複雑な気分‥‥だ」
「まぁまぁ。人は見かけじゃありませんから」
若干しょんぼりと肩を落とす南洋。そんな彼に、神聖騎士のフィリッパが、そう言って慰めるのだった。
「目撃情報では、川沿いから離れていませんから、この辺りを見張っていれば、現れると思います」
村人の話では、スケルドン達は、最短距離を進むように川沿いを進んで行ったらしい。なので、フィリッパの提案で、冒険者達はよりキエフに近い川岸で、スケルドンを待ち構えていた。
「いたぞ、あれだな」
えぐられた急流の崖。森の中から、姿を見せるスケルドンを見つけ、そう言う南洋。
「こんな巨大スケルトンがいるなんて‥‥。何者かがいるのかも」
明らかに不自然な生き物に、戦慄を隠せないイルコフ。
「思った通りですね。動きがトカゲそのままです」
「と言うより、ルンルンちゃん家のトカゲちゃんにそっくりって感じぃ」
獣の仕草そのままで、周囲の匂いを嗅いでいるスケルドン。フィリッパの台詞に、亜莉子は、ルンルンのペットのトカゲ? くんを引き合いに出し、そう指摘する。
「だとしたら、対処もしやすそうですね。こちらは一丸、あいては散漫という有利な状況で闘えるようにもっていくことが重要でしょう」
そう言うと、フィリッパは地面に簡略図を描いた。今いる川岸の縮図なのだろう。その間に、丸を書いて行く彼女。
「何か仕掛けたのか?」
「ええ。この先に少し開けた川原がありますから、そこに、ルンルンさんが落とし穴を仕掛けている筈です」
レイブンがそう尋ねると、フィリッパは上流を指し示した。森は、途中で丘に変わっている。そこに誘い込む算段らしい。そう言えば、馬を借りていた事を思い出すレイブン。
「って、スケルドン達、そっちに行きませんけど‥‥」
ところが、そこへイルコフがそう言った。見れば、スケルドン達は、今度は森に沿って移動してしまっている。
「コースから外れるかもしれないって感じぃ。あたしに任せてって言うかぁ、これ使っちゃおうって感じ」
と、亜莉子は菫の背中に乗せていた大凧を組み立てた。そして、端っこを木に結びつけると、使用方法に則り、空へと舞い上がる。
「どうですかぁ?」
「大変。っていうか、スケルドン達、村の方に向かおうとしているみたいって感じぃ」
空から見ると、白く輝く彼らの身体が目印となり、全体の動きが良く見えた。それによると、彼らは水を求めるかのように、村の池へ向かいつつある。
「それはいけませんね。その前に何とかしないと」
一番大きな2m級のスケルドンの他、ひと回りからふた回り小さいスケルドンが数匹いる。
「神様、おいら頑張るから、力を貸して‥‥」
厳しい戦いになるかもしれないと感じたイルコフ、ホーリーシンボルを握り締め、セーラ神へと祈る。
「さて、ここから先は通行禁止だ‥‥!」
その間に、レイブンが、ロングソードをスケルドン達へと突きつける。目の前に敵を認識し、邪魔だと言わんばかりに咆哮する彼ら。
「さあ、いきましょうか」
そう言うフィリッパ。こうして、不死者通行止め大作戦は発動するのだった。
「をーほほほほ! 私を捕まえてごらんなさいってカンジィ」
疾走の術を使った亜莉子、通常の倍速で、スケルドン達を挑発するように、駆けずり回っている。
「亜莉子さん、こっちこっち!」
「でもぉ、私を捕まえていいのはぁ、ダーリンだけってカンジィ!」
フィリッパに手招きされ、冗談っぽく言いながら、落とし穴の向こう側へと走りこむ。
「数が多いかな‥‥。何とか火を使えれば良いんだがっ」
オーラパワーをかけたレイブンが、スケルドンにロングソードを振り下ろす。がしゃんっと薪を壊す音を立てて、身体の一部が吹っ飛んだ。だが、それでもスケルドン達の動きは止まらない。
「だったら任せてって言うかぁ! 芙蓉、お願いって感じぃ!」
わき道にそれようとするスケルドンには、亜莉子がペットのエシュロンに、ファイアウォールの魔法を使わせる。
「フォーメーションを崩さないで! 今のうちに、脇から魔法を!」
「大きいから、どこまで効くか分からないけど、きっと邪悪な存在だからっ!」
魔法の支援を受け、フィリッパはその足元にコアギュレイトを唱えた。動けなくなったスケルドンに、今度はイルコフがホーリーを放つ。初級ではあるが、抵抗の出来ない不死者の彼らには、かすり傷ではすまないダメージを与えているようだ。
「ぐぁっ」
だが、痛みを感じない彼らは、動きが鈍る事は無い。アンデッドになった事で、本来の素早さは失われているものの、その爪は、前衛に立つレイブンに襲い掛かる。
「だ、大丈夫ですかっ?」
「ああ。こいつら‥‥ただのスケルトンじゃないな‥‥。仕掛けたら、この通りだ」
駆け寄ってリカバーをかけるイルコフに、彼はまるで軽いヤケドのようになった腕を見せる。
「たぶん、あの小さい方はレイスだと思いますっ」
ルンルンが、ぼんやりと光る白い骨を指し示し、そう語る。有名どころのモンスター知識しか持たなくとも、触ればヤケドめいた傷を残すこともあるアンデッドは、それくらいしか思いつかない。
「スケルドン達って、元々は、月道の向こうにいるとか言う、大きいトカゲさん達の成れの果てなのかなあ?」
「でしょうねぇ。確か、他の報告書の話では、月道からの品を奪い取ろうとした御仁がいると言う話でしたし」
治療の為、ホーリーフィールドを展開していたイルコフがそんな疑問を口にすると、その中から、コアギュレイトを撃っていたフィリッパがそう答える。
「いずれにせよ、死んでからも操ろうなんて酷すぎるよ」
「ブレスセンサー感覚に感知有りです!」
同情するイルコフに、今度はルンルンが、警告するようにそう言った。
「やっぱり、そう言う事なんだ‥‥」
同盟長の話から、何者かが背後にいる事を聞いていたイルコフ、言われたほうを見回すが、きしゃあと吼える声以外、何も見えない。
「ただで復活するわけはないしな。どこだ!?」
代わりに、前衛で骨に十握剣を振り下ろしていた南洋が、その目となる。
「スケルドン達の向こう側です!」
「くそ、位置はわかっているのに、これじゃ近づけない‥‥っ」
ルンルンの報告に、彼もまた怪しげな御仁を見つけるが、アンデッドスレイヤーを振り下ろしている都合上、その場を離れるわけに行かず、悔しげにそう呟く。
「やぁん、骨だから戦いにくいぃ!」
一方のルンルンもまた、縄ひょうを振り回しているが、かすり傷程度しか与えられていなかった。
「落とし穴までもう少しです! 頑張って!」
「リカバーありますから、多少の怪我は大丈夫です!」
励ますフィリッパと、ホーリーを雨あられと降らせまくるイルコフ。そのおかげか、次第に動きの鈍って行くスケルドン達。
「突いて駄目ならこれしか無い…」
縄ひょうではダメージが薄いと感じた彼女、アイスチャクラムのスクロールを広げる。出来た氷の円盤を、彼女はその卓越した射撃能力で、スケルドンめがけて投げつけた。
「切り裂けアイスチャクラ‥‥シュート!」
ポイントアタックを併用されたそれは、狙い違わず彼らの胴体に命中する。その間に、南洋が十握剣をお見舞いし、レイブンがスマッシュを振り下ろす。
「今のうちに!」
劣勢を気取られぬ前に! と、そう叫ぶ南洋。即座に、エシュロンを伴った亜莉子が走り出し、術者の背後へと回りこむ。
「はーい。残念でしたってカンジィ」
相手には、まるで突然現れたように見えただろう。振り返ったそいつに、亜莉子は春花の術を食らわせる。
だが。
「って、まだ動いてますよぉ!」
スケルドンは、術者がいないにも関わらず、盛大な牙を剥いていた。あわててホーリーフィールドの魔法を唱えるイルコフ。
「えぇい、こうなったら、とどめを刺すだけだ!」
てっきり、大人しくなるかと思っていたが、そうでもないらしい。仕方なく、掘ってあった落とし穴に、スケルドン達を蹴り落とす南洋だった。
「神様、安らかに眠らせてあげてね‥‥」
落とし穴に落ちたまま、バラバラになったスケルドンに、供養の祈りを捧げているイルコフ。かなり長い間戦っていたような気がするが、この疲労感は、2〜3日休めば、元気になれるだろう。
「黒幕さん。こうなったら、全部話してもらえませんか?」
一方では、ルンルンが縛り上げた術者に、にっこりと笑顔で、事件の真相を吐かせていた。
「ラスプーチン卿の使者と名乗る奴が来て、戦力を貸してやるから、革命に加われと‥‥」
なんでも、不満に思っているのを聞きつけたように、ラスプーチン卿の使者が囁いたそうである。
ところが。
「ぐはぁっ!」
事件の重要人物の名前が出たと共に、後ろから深々と矢が突き刺さっていた。あわてて助け起こすが、既に時遅く、絶命してしまっている。
「やはり、都合が悪かったのでしょうか。残念ですね‥‥」
しょんぼりと肩を落とすルンルン。
「あぁあ、私もウェディングドレス着て結婚式やりたいってカンジィ」
そんな中、ひと足早くキエフに戻った亜莉子は、パーティで姿を見せた国王夫妻を遠くから眺め、そうぼやくのであった。