【ケンブリッジ奪還】緑の悪魔

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:10人

サポート参加人数:3人

冒険期間:09月20日〜09月25日

リプレイ公開日:2004年09月27日

●オープニング

「なに? モンスターがケンブリッジに!?」
 円卓を囲むアーサー王は、騎士からの報告に瞳を研ぎ澄ませた。突然の事態に言葉を呑み込んだままの王に、円卓の騎士は、それぞれに口を開く。
「ケンブリッジといえば、学問を広げている町ですな」
「しかし、魔法も騎士道も学んでいる筈だ。何ゆえモンスターの侵入を許したのか?」
「まだ実戦を経験していない者達だ。怖気づいたのだろう」
「しかも、多くの若者がモンスターの襲来に統率が取れるとは思えんな」
「何という事だ! 今月の下旬には学園祭が開催される予定だというのにッ!!」
「ではモンスター討伐に行きますかな? アーサー王」
「それはどうかのぅ?」
 円卓の騎士が一斉に腰を上げようとした時。室内に飛び込んで来たのは、老人のような口調であるが、鈴を転がしたような少女の声だ。聞き覚えのある声に、アーサーと円卓の騎士は視線を流す。視界に映ったのは、白の装束を身に纏った、金髪の少女であった。細い華奢な手には、杖が携われている。どこか神秘的な雰囲気を若さの中に漂わしていた。
「何か考えがあるのか?」
「騎士団が動くのは好ましくないじゃろう? キャメロットの民に不安を抱かせるし‥‥もし、これが陽動だったとしたらどうじゃ?」
「では、どうしろと?」
 彼女はアーサーの父、ウーゼル・ペンドラゴン時代から相談役として度々助言と共に導いて来たのである。若き王も例外ではない。彼は少女に縋るような視線を向けた。
「冒険者に依頼を出すのじゃ。ギルドに一斉に依頼を出し、彼等に任せるのじゃよ♪ さすれば、騎士団は不意の事態に対処できよう」
 こうして冒険者ギルドに依頼が公開された――――

 ケンブリッジ奪還に向けて、各方面から冒険者が集められ、そして役割が与えられていた。
 彼らに割り振られたのは、冒険者養成学校の一クラス、工作員養成棟におけるスライム大量発生の討伐と駆逐である。
「と言うわけで、これが学内の見取り図だ」
 冒険者達が見守る中、地図を広げてみせる担当官。羊皮紙には、学内のだいたいの概略が描かれている。とは言っても、地上一階建てのフロアがぽつんと記されているだけだ。
「ここに、モンスターが住み着いたんですか? 余り大したことないように思えますが‥‥」
 怪訝そうな表情を見せる冒険者達に、彼はこう説明する。
「いや、実はここは機密事項に類する施設らしくてな。まぁ、いわゆる『軍事施設』と言う奴だ。話では、民家4件ほどの広さの場所‥‥、まぁ、貴族の母屋とかわらん大きさだろう‥‥。そこで、秘密の特訓を受けているらしい。当然、外からは見えない。で、様子を確認しようもないと言うわけだ」
 たとえモンスターが現れたとしても、やはり軍事機密は、おいそれとは出せないのだろう。それを苦々しく思っているのか、担当官の表情は険しい。
「中に取り残されている者達は‥‥」
「あの養成所では、現在8名ほどが、共同生活を営んでいたらしい。その1人が、命からがらはい出て来て、中の惨状を伝えてくれたそうだ」
 中では一体何が起こっているのだろう。息を飲む冒険者達に、彼はこう言った。
「中ではな‥‥、スライムとジェル系が、大量発生しているらしい」
「げ」
 顔を青ざめさせる冒険者達。そんな彼らに、担当官は、小石を敵に見立てて、こう告げる。
「ビリジアンモールドが、大小合わせて10匹、クラウドジェルとメタリックジェルが、合わせて8匹、でかいビリジアンスライムが1匹。それが、施設内のあちこちに潜んでいるらしい」
「そんなにたくさん‥‥」
 20匹近い大所帯である。いくら特殊な訓練を受けている者達とは言え、捕食本能しかない相手では、苦戦もしている事だろう。
「しかも、あの中は潜入工作や、敵に取り入る為に、小型の民家を模した様な施設もあるらしい」
 さらに敵にとって都合の良い事に、隠れる場所に箱と書かないようだ。
「詳しいことは、現地に入って見なければ分からんが、小さな村にはびこるスライムどもを駆除して行くような心積もりで挑めば、大丈夫だろう」
 要は、畑や牧場、そして太陽のない小さな村で、大量発生したスライムやジェルを、駆除しつつ取り残された学生を救出すると言った所か。
「しかし、ケンブリッジとなると、時間が‥‥」
「緊急事態なんでな。馬車を貸してくれるらしい。ともかく、急いでその連中を叩きのめしてきてくれ。おそらく、何人かは孤立して残されている筈だ!」

●今回の参加者

 ea0123 ライラック・ラウドラーク(33歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0353 パトリアンナ・ケイジ(51歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea0403 風霧 健武(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea0439 アリオス・エルスリード(35歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ea0717 オーガ・シン(60歳・♂・レンジャー・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea1704 ユラヴィカ・クドゥス(35歳・♂・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea3468 エリス・ローエル(24歳・♀・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea3747 リスフィア・マーセナル(31歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea6033 緲 殺(25歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea6368 ナツキ・グリーヴァ(33歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

クウェル・グッドウェザー(ea0447)/ レゥフォーシア・ロシュヴァイセ(ea6879)/ フェルシーニア・ロシュヴァイセ(ea6880

●リプレイ本文

「誰か居ませんか〜」
 施設の地下で、ライラック・ラウドラーク(ea0123)は一番手近な小屋へと、入ろうと、そう言った。
「ちょっと待って。入る前に、様子を見ましょう」
 そんな彼女を制すエリス・ローエル(ea3468)。そして、バックパックに詰め込んでいた保存食を、中へと投げ入れる。だが、物音は返ってこなかった。
「なんか、確かめる手段ないの?」
「やってみます」
 ライラにそう言われて、ナツキ・グリーヴァ(ea6368)はバイブレーションセンサーの魔法を唱えた。彼女の腕では、中で何かが振動している事はわかったが、その詳しい場所を確かめる前に、魔法が切れてしまったようだ。
「あなたの魔力は、スライムが現れた時にとっておいて下さい。後は、私達が」
 エリスがそう言って励ましている。そんな彼女はと言うと、扉に手をかけながら、奥へ向かって叫ぶ。
「聖なる鷹の騎士団団長参上! 学生さん、助けに来ましたよ!」
 返事はない。中は静まり返って居る。いや、よく耳を澄ませば、暗闇から、何か粘性のある液体がはねる様な音が聞こえてくる。
「あっちのようです」
 ナツキがそう言いながら、ランタンを照らす。
「誰もいない‥‥」
「殺気はびんびんに漂ってくるから、この近くのどっかに隠れていると思うけど」
 妙に明るくそう言うライラ。だが、気配も音もすれども、姿が見えず。その様子に、彼女はこう続ける。
「こういうのは天井からぬらーって降りてくるのが定説じゃない?」
 と、そんな彼女を見ていた3人が、動きをシンクロさせて、ライラを指差した。彼女がゆっくりと後ろを振り返ると。
「うわぁっ!」
 土壁に張り付いているクレイジェルと、至近距離で御対面。
「いつの間に来たんだよ。殺気が多すぎてわからんかったじゃないか〜」
 切りつけるライラ。だが、相手は不定形生物である。剣で切ったくらいでは、動じない。反対に、粘液をかけられそうになり、ライラは慌てて飛びのいた。見れば、金具がしゅうしゅうと、嫌な匂いを放っている。
「油断は禁物ですよ」
 どうやら、酸の粘液らしい。それを見たエリス、そう警告を放つ。
「わかってるって! このっ! けっこう早いなっ! スライムのクセにッ!」
「ライラさん、スライムじゃなくて、クレイジェルです」
 ぼやきながら剣を振り下ろすライラに、エリスがツッコミを入れながら、弓矢を打ち込んだ。
「弓矢が効いてない‥‥」
「土の塊みたいなもんだからねぇ。中途半端な攻撃は、通用しないさ」
 だが、その程度の攻撃では、クレイジェルは、かすり傷ほどもにも感じていないようだ。
「ああもう、これだからスライム系は嫌なんですよ」
 ぼやきながら、ホーリーに切り替えるエリス。
「こっちもか‥‥。ああもう、どうしたら‥‥」
 それすらも、効果は今ひとつのようで、彼女は困った表情だ。
「こう言う時には、専門職に任せな! とりゃぁっ!」
 物理攻撃が効かないわけではない。そう思ったライラは、力の限りクレイジェルにロングソードを振り下ろす。知能の高いモンスターではないのだろう。切り飛ばされてもなお、うぞうぞと近付いてくる。
「どいて下さい!」
 そんな彼女に、ナツキが突然そう言った。そして、ライラが返事を返す前に、グラビティーキャノンを解き放つ。
「うぉわぁぁっ!」
 悲鳴を上げて飛びのくライラ。見れば、鎧の端っこが、ちょっぴり焦げていた。
「コラァ! 言うの遅いぞ!」
 さわぐ彼女の横で、ナツキはいっこう気にせず「やっぱり転倒しないか‥‥」なんぞと呟いている。
「ちょっと! どこ触ってンのよ〜!!」
 そんな事を言っている間に、ライラの足元に這い登ってくるクレイジェル。側に居たクウェル・グッドウェザー(ea0447)が、身代わりになるが、向こうにしてみれば、エサが雌から雄に変わっただけの様だった。
「OK! そのまま食われてて!」
 悲鳴を上げる彼。それを囮にしながら、ライラはまるでゼリーを切り分けるかのように、ジェルの解体に走るのだった。

 その頃、もう1つのグループはと言うと。
「えーと、壁に接している所には、潜んでいないようなのじゃ」
 ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)が見える範囲には、農具などが転がっている。だが、スライムやジェルの姿はない。
「気を抜くでない。相手はじめじめした所を好むモンスじゃ。風通しの良い場所には、おらん可能性もある。いいから見てみい」
 オーガ・シン(ea0717)に言われた通り、天井裏と床下にエックスレイヴィジョンを施してみれば、うぞうぞぷしゅぷしゅと胞子と酸を飛ばす、ジェルとモールド達と、不安な表情を見せている学生がいた。
「ほら、言うた通りじゃろう。さっさとあけるのじゃ」
「ったく、じいさん、人使いが荒いぞ」
 こう言った力仕事は、パトリアンナ・ケイジ(ea0353)の仕事らしい。蹴り飛ばされれ、文句を言う彼女、そのまま、潜んでいると思われる小屋の扉を、リスフィア・マーセナル(ea3747)と共に、こじ開ける。と、胞子を撒き散らし、天井裏から落ちてくるビリジアンモールド。
「布でマスクをして! 吸わないように!」
「その前に、あやつをとめんかぁいっ!」
 何しろ3mはあろうかと言う巨大なまりもである。それがゴロゴロと転がって来ては、押しつぶされない様にするだけで精一杯だ。
「だって、床下には、生徒さんがいるんですから、無茶できませんよぉ!」
 おまけに、小屋の中には、まだ学生たちが居る。うかつに迎撃と言うわけには行かなかった。
「だったら、もうちょっと広い所に連れだしゃあいいだろうがぁ!」
「そ、それもそうですねって。うひゃあぁっ!」
 パティに言われて、少し開けた場所に向かおうとするリスティアだったが、曲がった所で、足元に嫌な感覚を覚え、すッ転んでしまう。
「ジェルが〜。いやぁん、服がとけちゃいます〜」
 悲鳴を上げる彼女。見れば、足元に居たクレイジェルにまとわりつかれ、装備品がぶしゅぶしゅと嫌な匂いを発している。
「構うな。全国の爺専に、さーびすさーびすぅ‥‥じゃ!」
「どうせ見るなら、もっと若い色男がいいんだけどね!」
 同じ様にジェルにまとわりつかれ、服を溶かされかけているオーガに、そう悪態をつきながら、強引に引き剥がすパティ。
「何とかして、こいつらの気をそらすのじゃ! そうだ! わしのバックパックの中に、保存食がある。それを使え!」
 滑やか過ぎるそれに、四苦八苦して居るのを見て、オーガがそう言った。見れば、はずみで飛ばされたバックパックの中から、保存食が見えている。
「あんたのエサは、こっちだよ!」
 それを投げれば、匂いにつられて、離れるクレイジェル。
「ついでに、乙女の柔肌に触れるんじゃありませんっ!」
 そこへ、自由を取り戻したリスフィアが、ロングソードを叩きこんだ。
「こうつかみ所がないんじゃ‥‥そだ!」
 と、パティは何を思ったのか、すぐ近くにあった樽を壊し始める。
「そこ、調度品を破壊するんじゃない」
「こんな時に、四の五の言ってられないだろ。とりゃぁっ!」
 分解された木の板。それを、叩きつけるようにして、スープレックスをかけるパティ姐。
「地べたに叩きつけられないなら、地べたを叩きつけてやるまでだ! ノルマンに殴りクレリックありなら、イギリスには投げレンジャーがいることを思い知れ!」
 ふはははは! と、豪快に笑い飛ばす彼女。見れば、板の下敷きになるようにして、クレイジェルがしゅうしゅうと蒸発して行く真っ最中だった。
「よし。後はアレをどうにかするのじゃ!」
 びしぃっと指をさすオーガ爺。その先にあるのは、転がっていったはいいが、戻ってきたらしいビリジアンモールドだ。
「ちょっと‥‥切り辛そうね‥‥」
 あちこちにぶつかっては、胞子を撒き散らしているモールド達を見て、リスフィアがそう言った。何しろ、少しでも振動を与えれば、毒のあるそれを撒く勢いだ。床下の学生たちの事を考えると、うかつに切りにもいけない。
「なに。丸くて毒があるとは言え、ただの草。燃えるものは、燃やせば良いのじゃ」
 そう懸念する彼女に、オーガ爺は『安心せい』とでも言いたげな様子で、布を巻きつけた矢を取り出し、火を付けてみせる。
 モールド達が、その矢で燃やされてしまったのは、言うまでもない事だろう。

 そんな‥‥一種お笑いめいた他の冒険者とは別に、纏う雰囲気がシリアスめいた者達が居た。
「何か居る‥‥」
「物音がするな。どこだ?」
 人より感覚の優れた風霧健武(ea0403)、緲殺(ea6033)、アリオス・エルスリード(ea0439)の3人は、気配と僅かな音が、周囲に居る敵が、ジェル達ばかりではない事を、感じ取っていた。特に、殺の鼻には、なにやら異臭も漂ってきている。
「そこだぁっ!」
 じっと、その気配を探っていた殺は、おもむろに目の前の小屋の窓を、力の限り叩いてみせる。跳ね上げ式の窓が吹き飛ばされ、中の様子が垣間見える。そこには、助けを求める学生と、それにせまる巨大な‥‥ビリジアンモールド。その周囲の壁に張り付くようにして、緑色のスライムも垣間見えた。
「くそ、引き剥がせ!」
「エサはこっちだぞ‥‥と!」
 窓枠から、保存食を投げつけ、気を引こうとするアリオス。と、それは端の方に潜んでいたジェルに辺り、またたくまに溶かされて行く。
「あっちにも敵が‥‥」
「関係ない奴は後回しだ! 今は無視しておけ!」
 構っている暇はない。そう言いながら、風霧が矢を打ち込み、レゥフォーシア・ロシュヴァイセ(ea6879)がディストロイで攻撃する。
 と、モールドとスライムが、こちらへと方向を変えた。若い殺をエサにしようと思ったのか、取り囲んでいる。おまけに、足元には土の表面を溶かしながら擦り寄ってくるスライムが、彼女の足元から、せり上がってきていた。
「ボクに触るんじゃない!!」
 その被害が、肌に届く前に、彼女はオーラアルファを使って引き剥がす。
「お前ら! 無事か?」
「は、はいっ」
 学生達の安否を、風霧が確認する。怪我をしている者は、フェルシーニア・ロシュヴァイセ(ea6880)がリカバーで治癒していた。
「合図したら、走って!!」
 オーラアルファの衝撃で、目を回しているモールド達が起きないうちに。そう言って走りだす殺。
「扉を閉めろ!」
 がちゃりと、閂が下ろされる。モールド達が目を覚ます音がしたのは、その直後の事だ。
「いたいた。どうだった?」
「まぁ、何とか彼らは助け出したよ」
 そこへ、他の冒険者達が戻ってくる。彼らの報告を聞いて、アリオスがこう尋ねた。
「問題は、ジェルどもだな。そっち、何匹倒した?」
「小物を2匹づつかな」
 人は見つけたんだけどねー。と、パティが既に彼等を地上へと送った事を告げる。ライラ達も、似た様な状況だ。
「残りは半分か‥‥。攻撃魔法を使える奴が少ないのが問題だな」
「ある程度減らさないと、時間ばかりかかってしまいますよ」
 ナツキがそう言った。ここに来るまでに、施設の把握はあらかた終えていたが、思ったより広く、分散したそれを片付けるのには、骨が折れそうだったからだ。
「なぁに、相手はただのでかい藻じゃ。別段デビルと言うわけじゃない。こいつを使えばええじゃろ」
 と、そんな彼らに、オーガ爺が、たいまつをかざして見せる。その手もとには、油のたっぷり詰まった壷がぶら下げられていた。どうやら、モンスター達が弱って、ある程度攻撃が加えられるようになったら、池の水で消し止めれば良いと考えているようだ。まぁ、胞子さえ吸い込まなけりゃ、大丈夫だと言った所か。
「どうやっておびき寄せるんだ?」
「エサなら、まだあったじゃろ」
 こうなることあるを予想して、大量に持ち込んだ保存食には、まだ余裕がある。
「親玉が出てきたぞ」
 炎にあぶられるようにして現れる、ビリジアンモールド達とスライム。
「うわっ! 酸か?」
 炎でだいぶ弱ってはいたが、それでも、攻撃は食らう。それを避ける為には、あまり近付く事もできない。
「これだけ近ければ、弓も魔法も撃てる!」
 風霧が、弓矢を構えながらそう言った。距離にして約10m。それだけあれば、充分だと。
 結果、何とかモールドを倒したものの、戦闘の煽りで、修復を余儀なくされてしまった事を、報告しておく。