テーラー家やぎ祭り・妖しい恋ネタ募集中!

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや易

成功報酬:5

参加人数:10人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月12日〜10月20日

リプレイ公開日:2004年10月20日

●オープニング

 さて、やぎ祭の準備が着々と進んでいる中、人知れず苦悩している娘っ子がいた。
「はぁぁ‥‥、いつになったら、お呼びがかかるのかしら‥‥」
 冒険者ギルドのカウンターで、ため息をついているヒメニョ嬢。その手元には、ギルドが仕事の都合で取り寄せている『キャメロット城からのお知らせ』がある。
「手続き、終わりましたよ‥‥って、ヒメニョさん。何ため息なんかついてるんですか?」
「くっそー、今回もまたなかったー‥‥」
 主のブライアン氏の言葉に、カウンターの上に突っ伏しながら、ぶつぶつとそう言う彼女。
「そう簡単に追加はされませんよ。雲上の方々だって、お忙しいんですから」
「そりゃあわかってるけどさぁぁぁ」
 ごろごろと今にも転がり打算ばかりの表情で、頬を膨らませるヒメニョ嬢。「あたしの夢は、いつになったら門戸を開かれるんだ〜」と、文句もひとしおである。
「そーですねぇ‥‥。それなら、自分から引き寄せたらいかがです?」
 そんな彼女に、そう提案するブライアン氏。しかし、彼女は表情を曇らせたままだ。
「どうやってよ。キャメロットの街中で歌ったって、ギルドにピンはねされて、儲けは半分しかでないのに」
 ギルドがあるのは、何も冒険者達ばかりではない。吟遊詩人たちにも、ギルドと呼ばれる組合があって、キャメロットで仕事をする時には、そこを通さなければならないのがしきたりだ。
「じゃあ、街中じゃなければいいでしょ」
 そんな彼女に、ブライアン氏はそう言った。ヒメニョが「どこよ」と問うと、彼は「うちで」と爽やかに言って、家の周囲の地図を示す。その中心部分には、ブライアン家所有の岩山があった。
「ああ、やぎ祭?」
「そう言うことです」
 ちょうど、数日後にはそこにある祠で、感謝祭が行われる予定だ。ついさっき、祠の前を占拠しているやっかいな連中を退治してくれと、依頼を出してきたばかりである。どうやら、彼はそこでネタを捕獲しろと言いたいらしい。
「でも‥‥、あたしが歌に出来そうな方って、居るの?」
「‥‥たぶん。それに、冒険者ギルドとはコネがあるんですから、募集をかけさせてもらえば」
 一応、彼女のメインの収入源は、ギルドの報告書執筆だ。そのつてを使って、頼めばいいだろうと、ブライアン氏は考えたようである。
「うーん‥‥。最近書こうとしてるのって、男女間のノーマル恋愛じゃないからなぁ。第一、そんなにお小遣い持ってないよ」
 問題は、資金と本人の趣味趣向なのだが。
「いくらあるんです?」
「出せて1G」
 合計でよ? と付け加えるヒメニョ嬢。その金額では、普通に並んでいる依頼には、到底及ばない。
「じゃあ、一番気に入った人に、その1Gを進呈するという方向で」
「それで人くるのかなぁ‥‥。モノがモノだし」
 ノーマルな恋詩を希望する者達は後を絶たないが、その筋の恋詩は、需要はあれどなかなか表面に出てこないのが、世の常だ。
「こなくても、弊害はないでしょ?」
「だって、それはそれで悲しいし」
 まぁ、ノーマルの詩も、作れないことはないのだが、やはり少し寂しい気分になってしまうらしいヒメニョ嬢。
「その時は、そんな気分が味わえないくらいに、仕事振って上げますよ」
「冗談じゃないぞ! どんどん宮廷詩人から遠ざかっていくじゃないかぁ!」
 ぶつぶつとうめく彼女だが、それでもブライアン氏の提案に従い、依頼書へと記入するのだった。

☆募集要項★
 恋詩の題材になってくれる方を募集します。
 お礼は心のこもった詩くらいしか差し上げられませんが、気に入った方には、がんばって1Gくらいは、差し上げられると思います。
 ただし、モデルになって目の前で‥‥ではなく、口頭で『これこれこう言う感じでお願いします』と伝えてください。
 なかなか思ったとおりの詩がなくてお困りの方、ブライアン・テーラー様のお屋敷で、お待ちしております。

 吟遊詩人 ヒメニョ

「なんか、不思議な依頼だな」
「まぁ、たまにはいいんじゃないか? いつも殺伐とした依頼ばかりじゃ、心もすさんでいくだろうし」
 数日後、所定の手続きを経て、張り出されたその募集要項を見て、担当官は口々にそう言うのだった。

●今回の参加者

 ea1060 フローラ・タナー(37歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea2438 葉隠 紫辰(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea2545 ソラム・ビッテンフェルト(28歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea3049 オズワルド・ペイン(48歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3161 レイフ・ノエル(33歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3692 ジラルティーデ・ガブリエ(33歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea3947 双海 一刃(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5657 橘 瑛蓮(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6118 ティアラ・サリバン(45歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea7469 エレナ・スチール(18歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

シーダ・ウィリス(ea6039

●リプレイ本文

 紆余曲折の結果、テーブルの上には、ハムとワインとエールがででんと置かれていた。
「あのー、ちょっとお願いがあるんですけど。まずはヒメニョさんの歌を聞かせてくれませんか? 同業として、参考までに」
「えー、あたし、物語と報告書が専門だから、お歌はあんまり上手くないよー」
 ソラム・ビッテンフェルト(ea2545)の申し出に、ひらひらと手を自分の前で横に振るヒメニョ。
「構いませんよ。どうしても嫌だと言うのなら、歌わなくても良いですし」
「どうしようかなぁ。本職の詩人さんがいるのにー」
 ソラムがそう言うと、彼女はちらっとティアラ・サリバン(ea6118)を盗み見た。しかし、彼女も自分の楽器をぽんと叩きながら、こう告げる。
「お前さんにプロのとか言われると痒いのう。確かにこうして楽器は持ってきたがの、今日の主役はお前さんじゃ」
「んもう、仕方ないなぁ」
 ああーあーと、喉ならしをしながら、彼女はすぅぅっと大きく息を吸い込む。
「!!!」
 直後、周囲に盛大な歌声が響き渡った。衝撃で、窓のよろい戸が、盛大な音を立てて落ちるほどである。声量だけは、本職の詩人さんらしいボリュームなのだが、音域が既に耳をつんざかんばかりだった。
「やだなぁ。恥ずかしいにゃ‥‥」
 もっとも本人は全く気付いておらず、ジラルティーデ・ガブリエ(ea3692)の鎧にのの字を書いている。
「どうでもいいが、何でジラになついておるのじゃ」
「いーじゃないのよー。それより、協力してくれるんじゃ、なかったの?」
 ティアラに言われて、後ろからあっかんべーとやってみせるヒメニョ嬢。その時になって、初めて思い出したかのように、ティアラがぽんと手を叩く。
「ああ。そう言えば、詩のネタを聞きたいんじゃったな」
「んー。でも私、妖しい恋のネタに関しては、知識ありませんよぉ」
 ソラムが肩をすくめながら、そう言う。不満そうな顔つきになるヒメニョさんに、彼はこう言ってくれた。
「でも、何も歌わないのは申し訳ありませんしねぇ。それでは、私の知ってる悲恋歌を一つ」
 竪琴を奏でながら、それを弾き語るソラム。
「‥‥後にしたそうです」
「それ‥‥よくある話ですから! 残念ッ!」
 何のノリかはしらないが、ヒメニョはきっぱりとそう言い切ってしまった。それを聞いて、不満そうに「えぇぇ、そうなんですかぁ?」と眉を顰めるソラム。そんな彼に、姫にょは悲恋歌の添削に入る。
「とりあえず、ここの『男女』の所を、『同性2人』に変更して、ここは『女友達』にするの。ほーら、こうすれば、お手軽に妖しくなるわ☆」
「そ、そういうものなのですか‥‥」
 どこがどう妖しいのか、さっぱり理解していない様子のソラムさんに、彼女はうふふっと笑って、「報告書書く時に、以外と使うのよ☆ このでっち上げ変換能力」なんぞと告白している。
「えぇと、じゃあこう言うのはどうです? エルフの神聖騎士と、人間のレンジャーの、敵わぬ恋のお話なんですけど」
 そこへ、エレナ・スチール(ea7469)が、自分の姉達の話をし始めた。しかし、彼女はやっぱり眉根を寄せている。
「ごめーん。あたしさ、異種族恋愛に寛容なタチなんだー。それだと、普通の恋物語になっちゃう」
 イギリスでも、異種族恋愛はタブーとして認識されている。しかし、ギルドに所属して、様々な恋愛模様と冒険者を見てきた結果、『たとえ異種族でも異性は異性。信じていれば必ず結ばれる』と結論づいたらしい。エルフと人間の場合、ハーフエルフと言う子供も出来るので、なおさらなようだ。
「登場人物そのものが完成されているんだと、ちょっと魅力が半減ねー」
「な、なるほど‥‥」
 ヒーローは何でも出来たらお話にならないのヨ☆ と解説する彼女。
「ふむ。そう言った話なら、俺も1つは知っている。知人の話だが‥‥聞くか?」
「ああ、あの話か‥‥」
 双海一刃(ea3947)に、同じジャパン出身の葉隠紫辰(ea2438)が、心当たりでもあるのかそう言った。同郷の2人が同じ話を知っているとなると、けっこう有名な話なのかもしれない。そう思ったヒメニョが問いかけると、葉隠は『さぁな』と答える。
「他にあるのかは知らん。それに、そんなに昔の話じゃないしな」
 と、言いだしっぺの双海がそうフォローを入れる。実はまだ現在進行形な話なのだが、それは言わぬが華と言う奴だ。
 そして。
「か、可哀相っっ」
 聞き終わった瞬間、何を感じ取ったのか、ハンカチ片手に滝涙のヒメニョ嬢。
「何か勘違いしてない?」
「プライバシーに配慮して、ある程度事実を伏せたんだが‥‥それが妙な想像を掻き立てたみたいだな」
 名前と年格好、さらには性別までナイショにして話してしまったのが、逆に効果的に作用してしまったらしい。
「気に入ったのなら、好きなように料理してくれて構わない。成功を祈っている」
「大丈夫! まーかせてっ! ヒメニョ、がんばるっ!」
 双海がそう言うと、彼女は大口開けてそう言いながら、指をびっと立てて見せた。と、それを見たティアラ、以外そうな表情で、竪琴を出してくる。
「なんじゃ。その程度でよいのか。なら、わしにも1つ知ってる話があるのぅ」
 彼女がちらりと視線を走らせたのは、屋敷の人にリカバーを頼まれているフローラ・タナー(ea1060)だ。
「あら、それはいけませんね。わかりました。ちょっと離れます‥‥」
 部屋を出て行く彼女。その後姿を見送ったティアラの瞳が、これ以上ないくらいきらりんと輝いている。
「ふっふっふ。当人がいなくなったと言うのなら、遠慮はいるまいっ。がーしがし歌ってやるわい」
「ほへ? どう言う‥‥」
 流石にヒメニョ嬢も、そこまで頭は良くないようだ。そんな彼女に、ティアラはテーブルの片隅に陣取りながら、こう切り出す。
「そうじゃなぁ‥‥。シフールの吟遊詩人と神聖ローマの神聖騎士の種族も性別も年の差も越えた恋の話などどうじゃ? 一緒に冒険しておって窮地も共に潜り抜けておるそうじゃ。近頃では巨大怪鳥と戦ったらしいのぅ。真っ白な装備を煌かせて、空飛ぶ箒で颯爽と戦う姿に、そのシフールは恋心を一層つのらせたと言うぞ」
「へへぇぇぇぇ。そうなんだぁぁぁぁ」
 ようやく気付いたらしいヒメニョ、にやぁりと悪巧み笑いを張り付かせて、ティアラの話に耳を傾ける。
「終わりました。大したことなかったみたいです」
 と、彼女がその『シフールの吟遊詩人と神聖騎士の恋のお話』を熱く語っている最中、フローラが部屋へと戻ってくる。そんな彼女に突き刺さる皆の視線。特にしげしげと見ていたヒメニョ嬢、開口一番。「やるじゃなぁいー」と一言。
「え? な、何がどうしたんですか? 私の顔に何か‥‥」
「別にー。ねー?」
 1人分かっていないフローラ、きょろきょろと周囲を見回す。が、どう逃げても、注目されているのは自分のようだ。
「うむ。それでだなぁ、そやつとそのシフールは、毎日のように裸の付き合いもしてるようなのじゃ。真っ白い肌に燃えるような赤い髪。あれで男を知らんとはなぁ」
「って、ちょっと待って〜! それってもしかして私の‥‥」
 特に意味深なセリフを口にしているティアラを見て、はっと気付くフローラ嬢。とたんに顔色が真っ赤になってしまう。
「えぇっと。それっぽいネタを話せばいいんだよな? 俺が歌うんじゃないよな?」
 リアルに想像してしまい、同じ様に顔を真っ赤にした橘瑛蓮(ea5657)、困惑したようにそう聞いてきた。頷くヒメニョに、彼はこう言う。
「俺‥‥あのさ、恋‥‥かどうか確信持てないんだけど、俺‥‥親父が好きなんだよな」
 ソラムに言われ、彼は声を潜めながら、まるで人生相談か何かの様に、話を続ける。まぁ人の好みは様々である。一概に変だとは言えない。何も言わないヒメニョが、無言で語る。
「あ‥‥詩の指示が要るんだっけ? あ、そっか‥‥えっと、んじゃ、まあ‥‥そういう感じで。息子から父親への揺れる恋心を!!」
「心得ましたわっ」
 きらーんと瞳がやる気モードになっているあたり、微妙にツボを押さえたようだ。
「あの‥‥。いったい、今回の依頼の目的は‥‥」
 そんな中、1人分かっていないレイフ・ノエル(ea3161)。
「あたし言わなかったっけ? 恋の歌の題材を下さいって」
「へ? 誰がですか?」
 この期に及んで、まだ理解していない彼に、ヒメニョは「ユー☆」と指し示して見せた。
「き、聞いてませんよぉ!! まさか、勝手に私との変な恋物語を捏造するつもりですか!?」
「「そのとうりっ!!!」」
 疑いのまなざしを向けるレイフに、彼をここまで連行してきたオズワルド・ペイン(ea3049)がこう釈明する。
「別に犯罪を推奨しているわけではないぞ。可愛い後輩を一人前のナイトにしようと、指導に励んでいるだけじゃあないか」
「なんでそうなるんですか! ヒメニョさん、私は困っているんですよ。ペインさんは良い先輩ですけど、時々、私を貴婦人のように扱おうとするんです。変でしょう?」
 納得入っていないレイフに、ヒメニョはとどめとばかりに、「いいえ、美しい方は、例え殿方であっても、貴婦人の様に扱うのが筋と言うものですわ☆」と、ペインの味方をする口ぶりだ。
「この人は、私をからかって遊んでいるだけなんですよぉう!」
 なんぞと言うレイフの顎を優しく捕まえて、ペインは丁寧な口調でこう言った。
「レイフ君は素直で可愛いね。そんな風に顔を真っ赤にヒメニョ君に弁解しては、僕に愛されてる事を肯定してる様なものじゃないか」
「だから、私は女性ではないと何度言ったら‥‥」
 ヒメニョがドキドキと期待の眼差しで見守る中、彼はその指先へ、貴婦人にそうするかのように軽くキスをしながら、こう言う。
「じゃあ、僕の事はキライかい?」
「そ、それは‥‥」
 レイフにとっても、決して人として嫌っているわけではないので、その辺りは言葉に詰まってしまう。
「じゃあ好きなんだろう?」
「どうしてそうなるんですかーーー!」
 それが、ヒメニョの煩悩パワーに直結している事に、当人全く気付いてはいないのだが。
「ねーねー。あれって、痴話喧嘩って言うんじゃないの?」
「いや、夫婦漫才って言う方が正しいと思うぞ」
 フローラの頭の上から、ヒメニョの頭の上に場所を移したティアラ嬢が、そう答えている。
「ヒメニョ君。キミの心に響く様な愛の真理を、今ここで見せてあげよう」
 ニヤリとそう言って。
「ん‥‥っ‥‥!?」
 酒にそれほど強くないレイフに、口移しで強制的にワインを飲ますペイン。漏れ出す吐息を閉じ込めるように、深く、強く。それに対し、内心『うわぁぁぁあ』と悲鳴を上げているレイフだったが、後ろ頭をしっかりと押さえ込まれている為、全く動けない。そうこうしているうちに、息苦しさと酒の成分で、思考回路が蕩けて行く。
「きゃー☆」
「しーっ。盛り上がっているところだから、小声で喜ぶのじゃっ」
 一方のヒメニョはと言えば、別の意味で黄色い悲鳴を上げかけた所を、ティアラにそう窘められていたり。
「ら、らにをふるんれすかぁ‥‥」
 熱い吐息をついて陥落して行く様子が、ヒメニョの目にしてみれば、『キスで宥められた恋人』みたいだという事は、本人は気付かないまま、彼女の妄想をまたまた手助けしている。
「ふふふ、本当に可愛い人ですねぇ」
「大丈夫♪ お部屋なら、余ってるから。介抱するなら言ってね☆」
 そのまま、力が抜けて、ペインに身を預けてしまうレイフを見て、ヒメニョ嬢は壁にかかっていた、客間の鍵を手渡しながら、そう言った。
「ちっちっち。こからは大人の時間だ。ネタなら今ので充分だろう? ゆっくり休ませてあげたまえ」
 しかし、そこから先は、御披露する来はなさそうだ。そのまま、部屋に消えて行く2人を見て、ヒメニョ嬢は、残念そうに残りのネタをかき集めに回るのだった。
 んで、いざ祭当日。
「って、なんであれだけ面白がってネタ聞いておいて、ジラが一等なんじゃ‥‥」
 1Gを進呈されているジラを見て、不満そうにそう言うティアラ。
「だって、お話し振りが上手だったんですもの☆」
 さわやかな表情で、そう答えるヒメニョに、横でエレナが「絶対趣味に走ってるって」と、もっともな事を言っている。
「嘘、大げさ、紛らわしい表現こそ詩人の骨頂。つまるところ、面白ければ良いだろうが」
「いやぁん黒騎士さまってば、人を悪徳広告業者摘発委員会みたいに〜」
 ジラがそう言うのを聞いて、ヒメニョはぷうぷうと頬を膨らませた。どっちかっつーと、摘発される方じゃないのかなーと言うエレナの意見は、痛いので禁止。
「それに、別に黒騎士様のネタばっかじゃないもの〜」
 何故かあさっての方向を向きながら、そう言い出すヒメニョ。そして、ティアラとソラムに頼んで、自分が作った歌を歌ってもらう。それには、絶妙な折混ぜ具合で、全員のネタが入っていた。ただ、ちょっと耽美に偏ってはいたが。
「まぁ、祭りですし、笑って流しましょうよ。久しぶりに心の底から笑い声を上げたような気がしますしね」
「そうそう。祭りは楽しむものじゃぞ」
 フローラがそう言うと、ティアラも同じ意見を返す。こうして、祭は朝まで続くのであった。