モア・モア・モア!

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:1〜5lv

難易度:易しい

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:10人

サポート参加人数:3人

冒険期間:10月03日〜10月08日

リプレイ公開日:2004年10月09日

●オープニング

 大自然の驚異と言うものは、いつも唐突に襲ってくる。その日も、そいつは突然やってきた。
「気をつけろよ〜。高いンだから」
「わかってまさぁ。羊の群なんて、そう簡単に手に入るモンじゃねぇッスからね」
 教会の軒先で、何人かの村人達が、慎重に荷物を運び出し、並べている。中には、相当に古いものもあった。
「いやぁ、晴れていて良かったッスね。神父様」
「雨ふったら、またしばらく待たなきゃいけなかったですからねぇ」
 談笑する村長と村人。その手もとには、『虫干し中につき、触らないで下さい』と、手にバッテンマークがついたイラストと共に、そう文字の書かれた看板がある。
「しかし‥・・。改めて見ますと、一級品のお宝ですなァ」
「セーラ神の教えを書かれた、ありがたい本ですからねぇ。装飾も、それなりに豪華になるかと」
 彼らが見つめるその先には、刺繍入りの布で縁取られた聖書がある。大都市とは違い、このような小さな村では、本は貴重品だ。今、虫干しされている大判タイプでは、値段もうなぎのぼりだろう。
「見張り、きちんとやっていてくださいよ。泥棒に盗まれたら、困りますから」
「わかってまさぁ。その為に、うちの用心棒連れて来たンすから」
 そう言った村人の傍らには、大型でふさふさ尻尾の犬が、ぱたぱたと幸せそうに尻尾を振っていた。
「余り頼りにならない気もしますが‥・・」
「いいんじゃないですか? 見張り役の村人のお供になれば」
 それはそれなりに、役に立つかもしれない。苦笑しながら、そう言う村長さん。
「さて。じゃあ落ち着いた所で、休憩にしましょうか。ちょうど、パイが焼きあがった頃ですし」
 クレリックがそう言った。気付けば、教会の裏の方から、良い香りが漂ってくる。虫干しも一段落したので、村人は誘われるままに、教会の中へと入って行ったのだが。
「くぇーーーっくえぇ! くえぇーーーー!」
「何だあれは?」
 パイを片手に、おしゃべりに夢中になっている時、表のほうで、けたたましい泣き声がした。
「わゎん! わん!」
「うわぁっ。うるさいっ! 誰か何とかしろ〜!」
 けたたましく吠える動物達に、村長が耳を塞ぎながら、そう言って表に出てみれば。
「くぇぇっ!」
「きゃうん〜」
 先ほどのわんこが、巨大な鳥に吠えられて、すごすごと退散する所だった。
「あーーーー! 聖書がーーーーーー!」
「こらぁ! そこの鳥! うちの村の大事な本を返せーーーー」
 その背中には、先ほど虫干ししていた聖書を初め、紙と名のつくモノが、ごちゃりと乗せられている。
「えぇい、こうなったら、自分たちで何とかするべし! 神父様! いっちょ攻撃魔法でも‥・・」
「私、そんなもの使えませんよぉ」
 しかし、責任者のクレリックはと言うと、ぶんぶんと首を振るばかりだ。そう言っている間に、鳥さんはさっさと草原の向こうへと姿を消してしまう。
「た、大変な事になった‥・・」
 ギルドに依頼が持ち込まれたのは、その直後の事である。

「ふむ。巨大な鳥‥・・ですか」
「村の連中から話を聞く限り、ほぼ間違いなくモアだろうな。おそらく、持って行ったその紙束や本は、巣の材料にするのだろう」
 担当官が、村人から聞き出した話をまとめながら、冒険者達にそう告げた。
「本もモアも、大きなものだ。あのあたりに生息する個体は、紙切れを大きなまま巣材にするらしくてな、バラけてはいるが、何とか修復は可能らしい。もっとも、本が無事である可能性も高いだろう。この辺りは、モアをどーにかして、確かめてみると良い」
 あまりやる気のなさそうな担当官さん。それもそのはず。彼がそのあとでつけた条件が、また面倒だったのだ。
「本が燃やされる危険性を考慮して、火系の精霊魔法は使用禁止だ。あと、卑怯な事をしてはいけないとのお達しで、コアギュレイトも使用禁止だそうだ」
 どうやって捕まえれば良いのだろう。冒険者達が、一瞬頭を抱えてしまったのは、言うまでもない。

●今回の参加者

 ea1060 フローラ・タナー(37歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1123 常葉 一花(34歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea1128 チカ・ニシムラ(24歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea1553 マリウス・ゲイル(33歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea1704 ユラヴィカ・クドゥス(35歳・♂・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea4471 セレス・ブリッジ(37歳・♀・ゴーレムニスト・人間・イギリス王国)
 ea5321 レオラパネラ・ティゲル(28歳・♀・レンジャー・人間・エジプト)
 ea5382 リューズ・ウォルフ(24歳・♀・バード・パラ・イギリス王国)
 ea5597 ディアッカ・ディアボロス(29歳・♂・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea6118 ティアラ・サリバン(45歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)

●サポート参加者

太郎丸 紫苑(ea0616)/ ピチュア・リティ(ea5038)/ シーダ・ウィリス(ea6039

●リプレイ本文

 ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)が、サンワードで探し出した場所にたどり着いた冒険者一行。
「このあたりだと思うんだけど‥‥」
 その中心で、神父から『お任せします』の約束を取り付けたフローラ・タナー(ea1060)が、周囲を見回しながら、そう呟いている。
「んー、ちょっと待ってて。見てみるのじゃ」
 と、ユラヴィカがそう言いながら、テレスコープの魔法を使った。幾度も使用を繰り返した結果、ぼんやりとではあるが、巣らしきものが見えた。だが、そこから見える範囲に、モアの姿はない。身振り手振りというよりも、踊りでそれを伝える彼。
「エサでも取りに行っているのじゃろう。騒げばすぐ戻ってくると思うがの‥‥見つけたぞ」
 と、それを見たティアラ・サリバン(ea6118)が、フローラの頭の上で、巣から大して離れていない場所を指し示す。そこには、背の高い草むらにまぎれるようにして、モアの頭が垣間見えた。
「まったく。何をそんなに騒いでおるのじゃ」
 そのモアが、けたたましく泣き声をあげながら、巣の方向へ戻ってくるのを見て、首をかしげるユラヴィカ。
「ちょっと聞いてみるのじゃ」
『人間め。僕ン家の卵は、誰にも取らせないぞー』
 通訳すると、そんな感じだったようだ。
「た、卵泥棒だと思われたみたいじゃな」
「しかもアレ、まだ子供じゃな。たぶん、去年位に生まれたお兄ちゃんじゃろう」
 ユラヴィカが顔を引きつらせながらそう言うのに対し、ティアラがそう解説する。確かに羽毛の色が多少違う上、体長も1m半程度と、かなり小さい。雛の域は脱しているが、成鳥ではなさそうだった。
「どうしよう。あの大声じゃ、そのうち親鳥もよって来ると思うし」
「あ、もう1匹現れた」
 しかも、一体ではなく、複数。その小さな固体は、がりがりと地面を蹴ると、冒険者達へ向かって走り出した。
「わぁぁ、おっかけてきたー」
「追い出せー! って言っているのじゃ」
 チカ・ニシムラ(ea1128)が泣きそうな表情になるのを見て、効果範囲時間内だったせいか、小モアのセリフを、通訳するティアラ。
「とりあえず、巣から離しましょう!」
「わーん! 待ってよー」
 フローラもくるりときびすを返す。馬は預けっぱなしなので、勢い、自身で走る事となってしまうが。
「あれ? おっかけてこない?」
 ところが、ある程度はなれると、小モア達は巣に戻ってしまう。
「卵を守っているのじゃ。巣からあまり離れないのは、当然じゃろうしな」
「二度と来るなって言ってる」
 ユラヴィカとティアラの話を総合すると、敵とみなされたフローラ達がいなくなれば、モアは自然と巣に戻ってしまうようだ。
「巣から離れないとなると、少しやり方を考えないといけないわねー」
「そう言うことなら、私に任せてくれ」
 うーんと考え込むフローラの前に、レオラパネラ・ティゲル(ea5321)が進み出て、そう言った。
「って、何その格好‥‥」
「ん? 何かおかしいか?」
 彼女の衣装に、目を丸くするフローラ嬢。しかし、レオラの方は微塵も変だとは思っていないようだ。
「レオラお姉ちゃん、裸だーーーー!」
「裸じゃない! これはうちの伝統衣装だ!」
 まだ少女の域を出ないチカが、子供らしい表現でそう言う。
「村の人達が変な顔するから、上だけでも着て下さい。で、何が任せてくれなんです?」
 そんな彼女に、自分のマントを貸しながら、フローラがそう言った。
「要は、あいつらを巣から引き剥がせば良いんだよね。まぁ見てんさいって」
「ああ! ちょっと!」
 マント放り出しながら、レオラは小モアの方へと近づいていく。そして、モアの声を真似ながら、こう歌いだした。
「僕の名前はモアゴンゴン、お友達だよ♪ モアゴンのモの字はどう書くの? モアモアモアモア〜♪ その名はモアゴン♪」
 歌詞もさることながら、かなり音程が外れている。まぁ、ティアラのようなプロのバードではないのだから、仕方がないと言えば仕方がないのだが、小モアの方も、心なしか表情をゆがめているように、ほかの面々には見えた。
「それにしても、興味は示してるけど、あまり気にしてはいないねぇ」
「姿が見えないから、分からないんでしょう」
 声真似の方には反応しているものの、鳥の頭では姿なき声は理解できないようだ。その様子を見て、ディアッカ・ディアボロス(ea5597)がため息をつきながら、ファンタズムの魔法を唱えてみせる。それは、モア達の前に、小さなモアの姿を映し出した。
「侵入者だと思ってるようじゃ。縄張りを荒らされたと思ったのじゃろう」
「それこそこちらの思う壺です。モアさん。こっちですよ!」
 そう言って、ディアッカはモア達が移動するのにあわせて、幻を効果時間が切れる度に再び出現させ、動いているように見せた。それを追ってくる小モア達。それを繰り返した結果、完全に縄張りあらしだと認識したらしいモア三兄弟、草を踏み鳴らしながら、幻のモアを追いかけ始める。
「今のうちに、ブルームで上空へ!」
 フローラの言葉に、彼女の頭にはティアラが、チカの頭にはユラヴィカが陣取り、空中へと舞い上がった。
「追いつきそうよ! 早く〜!」
 地上では、モアの音声担当のレオラが、頭の上に画像担当のディアッカを乗せながら、走り回っている。
「少し頑張ってて! ティアラ、お願い」
「わしに任せるのじゃ! スリープ!」
 そこへ、ティアラがスリープの魔法を叩き込んだ。成鳥と違い、抵抗力のあまりない小モアは、あっさりと眠りに落ちる。
「これでも食らって、大人しくしてなさいっ!」
 兄弟の一匹が突然爆睡こいたのを見て、パニックを起こした小モアへ、今度はレオラがお手製の分銅をなげつける。
「あー。可哀相ー」
 足をもつれさせ、顔面を強打している小モアを見て、チカちゃんがそう非難する。
「別にこれくらい良いじゃないか‥‥」
「苛めちゃダメだよー」
 ところが、レオラの手から、残りの小モアをかばおうとした彼女の後ろで、その小モアが盛大に鳴いた。と、答えるように、もっと大きな鳴き声が響く。
「しまった忘れてた‥‥」
 草むらの中から、ぬぅぅっと顔を出したのは、体長3mはあろうかという、大人のモアだ。しかも、その頭上では、まるで鶏のオスがそうするかのように、とさかが膨れていた。
「ねぇあれ、怒ってない?」
「かなり。卵泥棒が子供をいぢめたと思ってるぞ」
 テレパシーの魔法を使っていたティアラがそう伝えている。
「ちょっとぉ! どうにかしましょうよぉ!」
「って言われても、相手が怒りに我を忘れててさー」
 フローラのセリフに、そう答えるレオラ。モアは、相当ぶち切れているらしく、歌を聞き入れてはもらえないようだった。
「何とか説得できないの?」
「この状況じゃあ無理なのじゃー。どっかで止まらないと、集中できん〜」
 テレパシーを使えるティアラも、ゆれる頭の上では、うまく魔法が唱えられないようだ。
「せめて、動きだけでも止められれば‥‥」
「ねぇねぇ、フローラおねえちゃん。あれもモアゴンの巣かなぁ?」
 そんな彼らとちがって、追いかけっこを楽しんでいる様子のチカが、目の前の穴を指し示しながら、そう言った。見れば、数m先に、モアの巣によく似た何かがある。
「ええっ!? そんなの聞いてませんよー」
「いや、よく見てみぃ。さっきの巣とは、ちょっとだけ違うのじゃ」
 ユラヴィカがそう言うと、ディアッカがレオラの頭の上で、こう依頼する。
「おそらくダミーでしょうね。レオラさん、もう一回声真似お願いします」
「わかったわ」
 走りながらの苦しい体制ではあるが、何とか声を出すことには成功し、大人モアが「くぇ?」と、周囲を見回しはじめる。
「よし。引っかかった。今のうちに回り込んで!」
 ディアッカが幻の小モアを出しながら、そう言った。それに、「はーい」とよい子のお返事をしながら、チカがダミー巣の反対側へとブルームをおろす。まっすぐそこへ突っ込んで行ったモア、巣に隠してあった落とし穴に、まんまとひっかかってしまった。
「ふふふ、引っかかりましたねー」
 製作者の常葉一花(ea1123)が、ほくそ笑みながら、姿を見せた。そして、仕掛けておいたロープの端を、チカ達の方へと放り投げる。
「それ! ひっぱれー!」
 ずぶっと首の中ほどまで穴に埋まるモア。
「縄梯子で絡めちゃってください!」
「もうやってるって!」
 はまってしまえば、後は捕獲するだけだ。一花に言われずとも、レイラ達が動きを止めようとしていた。
「ふ。やはり鳥頭。単純ですね」
 勝利を確信する一花。ところが。
「のんきに闇笑いしている場合ですか。モアが脱走しはじめてますよ」
 見れば、その強靭な足にものを言わせて、モアが穴から這い出ようとしている。
「うそぉ」
 ぶちっと嫌な音がして、ロープが切れた。
「こらーーー。せっかく苦労して作ったんですから、壊さないでください!」
「そう言う問題じゃないですよ」
 あきれたようにそう言うフローラ。しかし、そんな彼女に一花は、含み笑いを浮かべながら、ぱちりと指を鳴らす。
「安心してください。罠という物は、十重二十重に張り巡らせておくものなのです」
「プラントコントロールっと」
 その声とともに、隠れていたセレス・ブリッジ(ea4471)が、魔法を発動する。しゅるしゅると伸びあがった蔦が、切れたロープの代わりに、モアへと絡みついた。
「こう言う時の為に、わらの中に、本物の草を混ぜて置いたんです」
 威張れる事じゃないが、まぁ対策を立てておいた事には違いあるまい。
「モアたちも巣を作りたいのはわかるけど聖書は大切なものですし、紙は貴重品ですし‥‥」
 やはり気まづいのか、あさっての方向を向きながら、言い訳めいた呟きをもらすセレス。
「こっちは大丈夫だね。陽動の人たちモアを苛めたりしてなければいいけど」
 チカの明るい声が、妙にむなしかった。
 その頃、空っぽの巣を捜索していた方はと言うと。
「ありましたよ。聖書って、これですか?」
「うわ、フンだらけじゃん!」
 マリウス・ゲイル(ea1553)が見つけ出したそれに、リューズが思わず後ずさりながら、そう言っていた。見れば、巣の中から、幸いにも半分ほどしか解体されていなかった聖書が見つけ出されている。
「大丈夫。外側だけですから。さっさと引き上げましょう」
 かなり汚れてはいたが、中身の紙部分には、それほど被害はない。少しばかり、バラバラになっている事を除けば。
「どうしたの?」
 一緒に探していたお手伝いのシフールにつつかれ、怪訝そうな表情を浮かべるリューズ・ウォルフ(ea5382)。
「そう言えば、さっきからコンコンピーピー言ってますね。どこでしょうか‥‥?」
 マリウスの鋭い耳にも、違和感は形となって現れていた。すぐ近くで、卵の殻をたたくような音が聞こえ始めている。そう。泣き声とともに、すぐ足元で。
「あ。卵孵ってる‥‥」
 気づいた時にはすでに遅く、巣の中にあった卵が割れて、中から可愛らしい雛が、顔をのぞかせている。
「お腹空いてるのかなぁ」
 盛大に鳴き声をあげる雛に、リューズが困惑したようにそう言った。しかし、もっと困っている人が、隣に一人。
「そんなに鳴かないで下さいよ〜」
 人間様の教育は出来ても、動物相手では少しばかり勝手が違うようだ。
「大きな声出さないでよね。小モアが起きちゃう」
「そ、それは失礼‥‥ぶっ」
 そう言いかけたマリウスの後頭部に炸裂する、強烈な蹴り技。それを見て、リューズが呆れたようにため息をつく。
「ほら言わんこっちゃない」
「わ、私なら大丈夫です」
 鼻血ふきふき、平然とした表情を保つマリウスに、彼女が指し示したのは、彼ではなく、その後ろにいる物体だ。
「マリウスの事なら心配してないよ。あたしが心配してるのは、君の後ろにいるそれ」
 振り返れば、最後に残った親鳥なのだろう。特に立派なモアが一匹。
「どうやら、だいぶ睨まれているようですね」
「当たり前だよ。鳥さんから見たら、うちら立派な卵と雛の泥棒さんだし」
 しかも、かなりお冠のようだ。激しく鳴き始めて、彼らを追い出そうとする。がりがりと地面をかきながら、威嚇のポーズをとっているモアに、マリウスは自身の気を高め、オーラ魔法を発動させる。
「仕方がありませんね! 来るなら来なさいっ!」
「マリウスさん!?」
 やる気は満々のようだ。否、相手が決して油断できる相手ではない上、誇りあるナイトである以上、それに答えないのは、失礼に当たると思ったのだろう。
「死なないようにはしますよ! 食らえ! オンガード!」
 放たれた強烈な蹴りを、オーラシールドで防御しつつ、カウンターアタックをお見舞いする彼。至近距離で放たれたそれは、モアのどてっぱらに炸裂する。
「紫苑くん! ロープを!」
 さすがに、体力だけはあるらしく、倒れたとはいえ、まだまだ元気のようだ。ロープ持って近づいていこうとする弟子に、最後の抵抗をしてみせるモア。
「えぇい、おとなしく寝てなさいっ!」
 そこへ、リューズがスリープの魔法を叩き込み、モア一家は一網打尽にされてしまうのだった。
 聖書が、村人の手に戻ったのは、フローラの提案により、しっかりと修復された後のことである。