清めの聖符と精霊の槍
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■ショートシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 32 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月12日〜12月15日
リプレイ公開日:2009年12月21日
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●オープニング
物語は、王妃の宮より始まる。トーマが冒険者達の手によって保護、確保されたのは良いが、さすがに無罪放免と言うわけには行かず、そのまま王宮の一室にて軟禁生活を余儀なくされていた。
もっとも、王妃が『どうしても』と言うので、それなりの待遇は約束されている。その代わり、見張りが何人も付き、事情聴取に呼び出されることも1度や2度ではなかったのだが、トーマは素直に応じていた。
「と言う事は、魔法陣の本体は別にあるのですね」
「ああ。アレは俺を閉じ込め、生気を吸収する為の陣だったから‥‥」
それでも、自分の事はあまり話したがらない。周囲としては、内側の事情よりも、現実に被害が出ている方が優先らしく、調べは淡々と進んでいた。
その結果、魔法陣の本体は、かなり広範囲に及ぶらしい。一見すると、道のようになっている為、端からは分からないそうだ。
「聖水の材料は調達してきたが‥‥大規模な工事か、盾が必要だな」
「今からでは間に合いますまい。とにかく、浄化を施さなければ。人を集めてくれ。案内は‥‥トーマにさせるがよろしかろう」
国政を担う者達が集まって、対応を協議していた。関係からすれば、王妃やそれに近しい者が加わるのが妥当なのだろうが、やはり王宮と言うのは、男性中心の世らしく、今まで関わっていなかったはずの貴族達が、対処を相談していた。
「逃げ出したりはしないだろうか」
「その為の冒険者だ」
もし、逃げ出したらその責は冒険者に取らせれば良い。どこの世も、尻拭いをするのは彼らだけ。
「では、布の調達は、ギルバード殿に。よろしくお願いいたします」
こうして、各地に通達が送られた。呪いを清める聖なる布を、急ぎ大量に製作し、各地に届けよ‥‥と。
布の一部は綺麗に畳まれて、冒険者ギルドに積み上げられた。見た目は大量の護符のように見えるそれを、パープル女史はまるで紙の束のように、かばんへと纏めていた。
「と言うわけで、あたし達のやる事は、この布で魔法陣をお掃除する事よん」
完全に元気になっているとは言えない様だが、豪州で調合してもらったモササウルスの肝薬のおかげで、表面上は平静を保っている。その証拠に、布の入ったバックを背中に収めていた。
「結構量あるけど、仕方ないわ。対処療法でも、やっとかないと、どんどん悪化するし。ただ、トーマの話では、核となる魔法陣があるはずなのよ」
その聖なる護符を、魔法陣を分断するように貼り付けて行くのが、今回の依頼だ、ただ、闇雲に貼り付けても効果は薄いので、トーマに要の部分を案内させるのだと、パープル女史は説明する。
「ただ、向こうも護衛はいるそうよ」
それぞれの核【陣】には10人前後の護衛がついており、地水火風月陽の6種類があるそうだ。
「面倒だけど、1つずつ潰していかないとね」
苦笑する彼女。こうして、ギルドに募集告知が出されるのだった。
さて、その夜の事。
「ん‥‥」
深夜、闇の中から響く声。
『パープルとやら、伝えて欲しい』
「その声は‥‥黒曜石さんか。どしたの?」
『封印の約束を果たしに来た。それぞれの地で、それぞれの属性を浸せ。木は森に、水は氷に、炎は清められたものを。風はさえぎる物のない場所で』
「月と陽はどうするのよ」
『それぞれの、道に‥‥』
言葉はそこで途切れた。翌日、月道から荷物が届く。いくつもの商人を経てきたのだろう。最後は議長経由になっていたので、怪しいものではなかったが、豪州からの届け物を急いで行うのは、とても大変らしい。
「この一つ一つに、属性球‥‥か。ひーふーみーと。うん、属性用の穴が開いてるわね」
それは、短い杖のような形をしていた。いや、どちらかと言うと、刃のない槍の柄のようである‥‥。
「名付けるなら、エレメンタラースピア‥‥かな」
願わくば、その力にならん事を。そう、刻まれていたと言う。
『魔法陣の浄化を行います! かなり広範囲に及ぶらしく、一つ一つ潰して行く必要があるようです。なお、張り巡らせながら、封印の源となる精霊の力を集めるので、回り道になると思われます』
結構、時間が掛かりそうである。
●リプレイ本文
まず一行はパープル女史の下へ赴き、エレメンタルスピアを手に、旅の支度を整えていた。
「これがその槍か。キングスエナー思い出すな。切り札になってくれればありがたいのだが」
イグニス・ヴァリアント(ea4202)によれば、槍はいつぞや、関わったことのあるらしいアイテムに似ているらしい。パープル女史はなんだか分からなかったが、魔杖だと彼は教えてくれた。
「まだ、足りない‥‥。ああそうだ。魔封じの聖剣はどうなったかな‥‥」
そんな切り札を作るべく、手紙を紐解く雪切刀也(ea6228)。議長から貰ったと言うその手紙には、悪魔の封印方法についての考察が記されている。
『妹には、私の方から言っておく。もし、この槍で足りないと言うのなら、力を与えるのはおまえ自身だ』
「必要なものは、他に何がある? まずは、ブランの刃‥‥。それから‥‥白の姫さんにも協力の連絡を取らないと」
力を与える要素を考えている刀也。議長からの手紙によれば、手に入りそうな部材に関しては、7割方なんとかなりそうだ。問題は、組み立てたものに『魂』を吹き込めるか、だが。
「まずはこの護符と精霊力から手をつけましょうか。呪いや悪魔の苦しみで苦しんで居る人達を、少しでも解放してあげたいですし」
思い悩む刀也へ、沖田光(ea0029)がそう言った。
「やることは単純明快、トーマ君に陣の要へ案内してもらって、 邪魔者を排除した上で護符を貼っていく、と。 そして各精霊力の強い場所で力を集めていくわけよね」
ミカエル・クライム(ea4675)が、一つ一つ指を折りながら、順番を確かめている。と、その鍵となる少年に、イグニスが言葉をかける。
「よろしく頼むぞ、トーマ。この国と豪州の命運がかかっているんだからな」
各地の陣を回るのは骨が折れるが、その価値は充分にありそうだ。
「‥‥別に」
もっとも、当の案内役は、どこかよそよそしい。
「‥‥監視、いるかな」
「いや、いらないだろう。むしろ必要なのは護衛だ」
東雲辰巳(ea8110)にそう答える刀也。敵にしてみれば、裏切った立場の彼の息の根を、止めに来るかもしれない。
「‥‥何もしないさ」
ひそひそと言葉を交わす二人に気付いたのか、トーマは寂しげな表情を浮かべ、ぷいと後ろを向く。
「今さらどうこうするだなんて、俺は思ってないよ。出来れば、変に気追っては欲しくない、かな」
刀也が後ろからそう言ったが、彼は答えない。それが出来れば苦労しないと言うのは、パープル女史の弁。
「汝の願いに力を‥‥か」
「つまり…譲れない願いを持って精霊の声を聞けば、信じる心は力になる、って事ですね!」
エレメンタリースピアをしみじみと眺めながら、思いにふける東雲に対し、沖田はどっかのアトランティス行き絵草紙の導入部分みたいな事を言っている。
「人の想いで効力が増幅されるということか? 取りあえず、今の私の願いはデビルの影響をさっさと排除することだな。まだ見ぬムゥの遺跡が私を待っているのに、いつまでも余計な真似を続けさせるわけにはいかん」
ゼファー・ハノーヴァー(ea0664)としては、このごたごたを早く片付けて、豪州の遺跡を探索したい模様。
「まあ、後はレディが無事にそして笑顔であればそれでいい‥‥がな」
心なしか、生き生きとしてきたパープル女史を、東雲は嬉しそうに眺めているのだった。
「さて…スピアだが、大雑把に問題は二つ」
精霊槍を取り囲むようにして、座り込んだ冒険者達。刀也がこう切り出した。
「清められた炎…これはキエフの教会で聖油を頼むか。他に聖なる炎だと……ちょっと浮かばない」
「火は清められたもの、あたしに任せなさい♪」
杖を掲げるミカエル。自分の炎は聖なる劫火だと言いたいらしい。とりあえず他の属性について予想を立てる。
「地属性は森、まぁ問題無いわね。 水属性は氷、水辺を目指せばOKっと。 風属性はさえぎる物のない場所、崖の上とかね」
「マグマ溢れる噴火口、流れる大河、切り立った断崖、強き風が吹く場所、洞窟奥の闇等々……かもしれません」
沖田もそう答えた。それらしき場所は、キエフからさほど遠くない場所にも、いくつかあるだろう。マグマ以外は、だが。
「陽属性は月の道、月道付近になるわよね。夜もアリ?」
「月はミカエル殿の言うように月道だと思うが、陽は何だろうな?」
ミカエルに頷いてみせるゼファー。皆の意見は一致しているようだ。
「月は月道でいいとして、問題は『陽』。正午の事か、日差しを最初に浴びる場所か、或いは日の出の事なのか」
「噂のホルスに会ってこいという訳ではないよな、流石に」
今から陽の精霊を探すのは非常に面倒くさい。つか、大冒険だろう。悩むイグニスに、沖田が、ぽんと手を叩く。
「あっ、陽というのは、お日様が良く当たる場所に、槍を置いて2時間放置とかそんな感じなのかな?」
まさか洗濯物や毛布と同じ扱いじゃないだろうと思ったゼファー、とりあえずそれっぽい儀式の方法を提案していた。
「南中時の日差し、或いは日の出、日中、日の入りと太陽の動きにそって陽の光を集めてみるとかか?」
まずは実験と言うことで、とりあえず議長ン家が行き着けにしている教会の屋根に上り、その日がよく当たる場所に、槍をさらしてみたところ。
「わぁ、何か浮かんできました、浮かんできました」
じぃぃぃっと眺めていた沖田が、嬉しそうにはしゃいだ声を上げた。見れば、うっすらと文字のようなものが浮かんでいる。さすがに、ただの陽の光だけでは足りないらしく、もう2〜3回日当りをよくする必要がありそうだった。
精霊槍にパワーをチャージする方法がなんとなくわかったので、一行は護符を貼り付けながら、そのチャージを行う事にした。
「枚数を聞いただけでうんざりだなー」
ゼファーが、荷馬車に護符を積み込みながら、そうぼやいた。10枚単位であらかじめ束ねたそれは、小さな木の樽に収められ、さらに10個単位で積み上げられている。
「冷たいし、お肌が荒れるし・・・。ホント厄介なのを展開させてくれたものよね〜」
ぶつぶつと嫌そーに言っているミカエル。かなりの物量なので、彼らは荷馬車を借り、その中に護符を積んでいた。
「まぁ、乗って体力を温存できるだけましだと思うがな」
余ったスペースに乗り込むイグニス。吹きさらしで少し寒いが、歩かなくて済むのは、無駄な体力を消耗しない為、後衛が魔力の回復に勤しむ事も可能だった。
「‥‥そろそろ、目的地だ」
ずっと喋らなかったトーマが、ある脇街道に差し掛かった時点で、指示を出す。この先、2時間と言った所らしい。
「ちょっと見てくる」
偵察要員のゼファーが、穏身の勾玉を使いながら、歩いて行った。同行するのは東雲だ。
「そういえば、レミエルとかいう女は今回も関わってくるのだろうか」
「さぁね。でも、関わる気があれば、でてくるんじゃないかしら」
彼らが偵察に向う間、イグニスはなんとなしにパープル女史に尋ねていた。だが、彼女は首を横に振る。そうして、半日ほどたった頃だろうか。
「戻った。護衛だと思しき連中がうろうろしてたな。場所は、このあたりだ」
がさり、と荷馬車の横に張られたテントに戻ってきたゼファーが、バーニングマップのスクロールを広げていた。蛮族の位置と罠を説明する為だが、やはり魔法陣の周囲に見張り小屋を作っているらしい。
「トラップでもかけて迎撃かしら」
フレイムエリベイションは固定として‥‥と、迎撃方法を考えるミカエル。しかし、イグニスに言わせれば、「進むとは思えん」だそうで。
と、そうして対策を練っている時だった。
「‥‥のんびりしていていいのか? あれ」
ぼそりと、トーマが魔法陣の方を指し示す。見れば、巡回だろうか。数人の蛮族が、こちらに向っている所だ。
「仕方がない。やるか」
偵察の際、縄ひょうに持ち替えていたゼファーが、星天弓へと戻していた。
「どっちみち倒さなきゃいけない相手よ」
パープル女史がそう言って、ライトハルバードを持ってこさせている。
「それもそうよね。じゃ、ちゃっちゃとやっちゃうわよ」
ミカエルはそう言うと、フレイムエリベイションをかけた。まずは自分。それから沖田、次にゼファーと言ったところだ。
「恐竜は一応動物だから、本能に従っている限りは、肉食の獣を相手にするのと変わらない。ただ、制御されているとなると、そこに軍馬の動かし方が入るだろう」
交戦する前に、イグニスはそう言って特徴と攻撃方法を皆に伝えていた。
「護符を狙われないと良いが‥‥」
刀也は、後ろの荷馬車の事が気になる模様。そこまで話した時、茂みの向こうから、黒恐竜に乗った蛮族達が姿を見せる。
「お前は!」
戦闘にいた奴が顔色を変える。見つかったのは、トーマだった。その前に立ちはだかり、イグニスは姿勢を低くしたまま、じろりと蛮族を睨みつける。
「退け、早々に明け渡すのが身の為だぞ」
容赦する気はない。命が惜しければ、と言う意味だ。その間にトーマの前に割り込んだ刀也が彼を制す。
「トーマ、下がってろ」
「ここでいい」
動く気はなさそうだ。ワケアリの御仁特有の態度に、刀也は苛立ちを隠さずに荷馬車の後ろへと押しやった。
「お前が狙われたら、王妃様に会わせる顔がないだろ」
「‥‥わかった」
王妃の名前を出されると、彼は大人しく荷馬車の陰へと引き下がっていた。
「燃え上がれ、僕の精霊力よ…ファイヤーボム!」
「炎の壁よっ!」
入れ替わるように、沖田とミカエルが魔法を唱えた。さっと左右に展開する恐竜達。追いかけるように沖田が水晶剣片手に、ファイヤーバードを唱え、その行き先をさえぎるかのように、ミカエルがスモークを唱え、ボムを発射させている。
「遮蔽物があるわけじゃなさそうだなっ」
茂みの影で勾玉を使おうとした東雲だが、イグニスによれば、死角は中々見つけにくいようだ。仕方なく、レディさんの左側へと戻る彼。
「あいつらがディノと同じなら、懐に飛び込んで足をねらえっ」
「そう言う器用な戦い方が出来れば、苦労しないつーのっ」
ダブルアタックで脚を狙い、距離を取るイグニス。そこから、東雲と共にソニックブームを放つ。
「やらせん!」
ちょうどトーマを狙おうと距離を詰めた恐竜が、蛮族と共に後退する。そこへ、Wシューティングで手数を稼ぎ、上の蛮族を狙った。
「‥‥あの後ろからやった方が良さそうだな」
順番は、前衛である刀也や東雲を越えてこようとする蛮族からだ。
「恐竜を狙え!」
「わかってる。ピンポイントで‥‥いけるはずだっ」
イグニスのアドバイスに従い、その後ろで弓を持った蛮族へ、矢を放つ。こうして、恐竜達を残し、姿を消す。
「この呪いは、土地がかかった慢性化した肩こりのような物なのかも知れませんね…だから、こうやって揉みほぐしてから、丁寧に湿布を貼る」
ともあれ、先に護符を張らないといけない。沖田が、護符を隙間なく敷き詰めて行く。
「核たる魔方陣と封印の源となる精霊の力の在処は別のものなのか‥‥? 無論同じということであれば問題ないが、違うということであれば難儀だな」
その作業を、魔法陣毎に繰り返して行く中、東雲が地図に記された場所を見て、首を捻っている。見る限り、エレメンタラースピアの力を補充する場所とは、ほぼ重なっているようだ。ただ、微妙なズレが気にかかる。
「あれが、最後の魔法陣だ」
話が動いたのは、最後の魔法陣‥‥闇に閉ざされた地下の魔法陣へ案内された時だった。
「‥‥いらっしゃい」
魔法陣の中央にたたずむレミエル。周囲には、護衛と思しき恐竜達。
「やはり、いたか。目的を言ってみろ。場合によっては協力できるかもしれんぞ?」
イグニスが話を切り出す。と、彼女は静かにこう答えた。
「‥‥道を作りたいだけよ。あなた達は都合よく動くそのコマ」
「違う土地に向う道と言うなら、必要なんだが」
ゼファーもそれに加わった。遺跡へと至る道は、彼女も求めている所だ。だが、レミエルは静かに口の端を吊り上げる。
「この世界には興味がないの。私が欲しいのは、もっと違う道。そう、何もかも超越するような道よ」
異世界への道。まさか、アトランティスだろうか。
「‥‥その扉を開ければ、失われたものは戻る。記憶も、本当の力も」
ぎくり、とパープル女史が体を震わせたような気がした。
「‥‥誰かと協力しようとは思わないのか」
「私は犠牲を厭わない。あなた達には無理ね」
イグニスが歩み寄ろうとするが、彼女は首を横に振る。そして。
「‥‥だから、さよなら」
ぱんっと手を鳴らして。直後、足元の魔法陣が光を放つ。その光は、魔法陣を飛び越え、表の護符を貼り付けた先へと伸びて行く。振り返ったイグニスの目の前で、その光は護符にぶつかり、まるで炎に水をかけたように消えた。
「護符の効果が出たようだな」
「厄介な事を‥‥。まぁいいわ。それでも道は繋がったから」
ニヤリと口の端を持ち上げるイグニスに対し、彼女はそう言って闇の向こうへと姿を消すのだった。
一夜、明けて、状況を確かめたところ。
『魔力の質が変化している。精霊力が噴出しているようだ‥‥』
黒曜石の顔色が少し悪い。その症状に、東雲は見覚えがあった。パープル女史が呪いを食らった時に似ていると。
「やはり、魔法陣と精霊力の源は違うのかもしれない。キエフ近辺でそれぞれの精霊の力の働きが強いところが封印の源となりそうなものだが、レディ、何か知らないか?」
「多分、向こうに行く必要があるわね」
その東雲が、彼女に尋ねると、どうやら豪州と往復する必要がありそうだ。もしかしたら、遺跡を回る都合も出てくる可能性があるそうである。
「そうか‥‥。このスピアが役に立てば良いが‥‥。その前にちょっと聞いておきたい」
その鍵となるスピアを持った刀也が、話は変わるんだが‥‥と前置きした上で、ジャパン語の手紙を広げる。それには、10人近い冒険者の名前が書かれていた。
「ジャパンでちょっと食料が足りなくてな。豪州で獲得出来る食料面での価格の安価優遇。需要も多いから、利も出ると思うんだが‥‥」
何やら事情はあるようだが、女史はそう言った背景は効かないふりをして、こう答えている。
「さすがに輸出は無理よ。でも、それだけあれば、保存食くらいは出来るんじゃないかしら」
「ありがたい。何しろ少し人数が多いんでな」
本格的に確保する為には、豪州まで出向く必要があるだろう。それでも、刀也はそう礼を言うのだった。