精霊航路

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月16日〜01月19日

リプレイ公開日:2010年01月27日

●オープニング

 国交が成立し、その特産品と人となりが、ロシアにも知らされ、月道の向こう側に新たな国があることを知ったロシア国内では、オーストラリアへの渡航要請が日に日に増えて行った。
 商人達の下心も多少はあるだろう。しかし、半分は好奇心と言った様子なので、王室は希望者を徐々に整理していったのだが。
「航路の開拓、ですか?」
「はい。オーストラリアは広い土地です。ロシアの人々が何か商売をするには、移動手段が欠かせません」
 そう主張する議長。今までは、精霊船と言う恩恵があったればこそ、何とかあちこちいけていたのだが、定期的ともなると速度は落ちるだろう。
「確か、向こうは精霊の加護強い国でしたな」
「なんとか、その恩恵にあずかる事が出来れば、休憩所が増やせると思います」
 出来れば、人の力でどうにかしようとは思うが、それでも現地の人々に礼を欠く訳には行かない。それは、精霊達に対しても同じことだ。
「わかりました。では、冒険者達に依頼しましょう。かの方々の方が、精霊達により好意的でしょうし」
 それはすなわち、航路の開拓が、危険を伴うものである事を示唆していた。

 さて、ギルドを通じて冒険者達に航路開拓のお願いが出回っていく中、国交を成立させたオーストラリアにも、航路を繋ぎたい旨の手紙が届き、兄弟の長である水の精霊にも、伝えられていた。
『ミリオンフレイムの住む場所から先は、我ら兄弟の力も及ばぬ土地』
『地下は、大地のが管理しているのではあるが、それも平原より先には届かぬからなぁ』
『いっそ、反対側へ‥‥南の地も、我が精霊ではない』
 オーストラリアでは、けっこうな場所が、精霊の管轄から離れているようだ。そこならば、ロシアの人々がやってきても、咎める場所ではないそうだが、話を聞いた女王は、ハイド少年を呼び出し、こう相談していた。
「何やら、精霊の管轄していない場所が増えていたように思います。何か報告を受けてはいないでしょうか?」
「新たな遺跡が幾つか見つかったそうですが‥‥。その事かもしれません」
「ふむ。確かフレイム殿の先は、まだ手をつけていませんでしたね」
 女王は暫し熟考すると、ややあってこう言った。
「ロシアの人々が、地上の航路を開拓する事は構いません。ただ、条件が1つあります。水は我らの領域ゆえ、それ以外の場所に、人々の泊まれる場所を設置してください」
 領土問題を考えれば、妥当な申し出だろう。それはロシア側に伝えられるのだった。

 その頃、キエフでは。
「なんだか、この槍、色があせてきたわね」
「そうでしょうか‥‥」
 一応、聖なる槍と言う事で、保管はパープル女史が行っている精霊槍。一度は冒険者の尽力により、その力を蓄えたのだが、最近色が薄くなっていた。
「もしかしたら、もう少し力が必要なのかもしれないわ。そうね。せっかく国交が繋がったのなら、これに力を蓄えに行くのも悪くないわね」
 そう思った女史は、議長へとこう申し出る。
「本場でチャージした方が良いと思うのよ。それで、精霊船に乗っけて、各精霊に挨拶がてら、チャージしてきて貰うってのはどうかしら」
 向こうなら、もっとこの使い道も安定するだろうとの判断である。

 こうして、航路開拓の準備が整う中、再びオーストラリアは港湾管理局内では。
「また休みか‥‥。最近多いな」
「ええ、ロシアとの国交が繋がる前くらいからですから‥‥これで4人目ですか」
 管理局のあちこちで、病欠が目立つようになった。致命的な病と言うわけではない。1週間程すれば、ぴんぴんして出てくる。しかし、かかる率が高いので、何人も病欠してしまうそうだ。現地の医者が、薬が足りないと嘆いていた。
「それにしたって多すぎだろう。精霊力でも低下しているんだろうか」
「この間、肝を献上したばかりじゃないですか」
 それに、水の精霊達は、ロシアの式典にも現われたと言うから、その力に問題はないはずなのだ。
「うーん‥‥そうだよなぁ‥‥。もしかして、何か別の要因があるんだろうか」
「少し、調べて見た方がよさそうですね」
 局では、診断を受けた医者に尋ねていた。だが、医者も『体内の精霊力が、何者かに侵食されているようだ』と首を捻るばかり。

 それぞれの報告は、色々な場所を回って、最終的に冒険者ギルドへと集められた。そして、まとめられた報告は、どうやら精霊に関わるものばかりだと判明する。
 そこで。

『精霊船を使い、各精霊の元を周り、ロシアの人々が安全に公開出来る航路を探しつつ、その力を正常に戻してきてください』

 その折に、何か精霊から試練を課されるかもしれないが、それを乗り越えるのも、冒険者達の役目と言うものだろう。

●今回の参加者

 ea0029 沖田 光(27歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0664 ゼファー・ハノーヴァー(35歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea4675 ミカエル・クライム(28歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea6228 雪切 刀也(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8110 東雲 辰巳(35歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 eb3530 カルル・ゲラー(23歳・♂・神聖騎士・パラ・フランク王国)

●リプレイ本文

 ミカエル・クライム(ea4675)が挨拶を、雪切刀也(ea6228)が情報収集は大切だと言う事で、一行はまずクイーンズランドへと向った。東雲辰巳(ea8110)が聞いてきた所によると、やはり力を吸い取られるように倒れる場合が多い。ロシアと違うのは、一週間もすれば元に戻る程度だが、起きた時期を考えると、ロシアより若干症状が軽くなっていると言ったところだろう。
 もしかしたら魔法陣の浄化が必要なのかもしれない。そう考えた刀也は、他の面々と共に、症状の起こっている者の集められた神殿へと赴いていた。
「黒曜石、お前は大丈夫なのか?」
「今のところは動ける。だが、精霊船の速さが少し遅れるだろうな。パワーが足りない」
 後ろを歩いていた黒曜石が少し辛そうだ。ジャパン特有の黒い装束の刀也に、同じ黒系ながら、こちらはどこか西洋の軍服めいた姿の黒曜石。どうやら、精霊力の影響が出始めているらしい。
「こう言うときだ。力になれるならなりたい。もう少し、人に頼って良いのだから」
 そう言うと、刀也は遅れがちな黒曜石の手を取り、その歩幅に合わせてくれる。オーストラリアではこうして触れる事も出来るのが嬉しい。
「‥‥別に、頼るほど困っては‥‥。いや、ありがとうと言っておくべきだろうな。ここは」
「ふふ‥‥」
 次第に表情も豊かになっている。ぽふぽふと頭を撫でられて、そんな対応をしている黒曜石さんに、刀也の鼻の下が伸びていた。
 そんな微笑ましい風景が繰り広げられている間に、神殿に到着する。水を意匠化したマークが入り口に掲げられており、案内板等も設けられている辺りは、ロシアの教会とかわらない。事情を告げると、面会室へ通してくれた。
「致命的な病でないのがまだ幸いですが‥‥病気になるというのは辛いですもんね。無事解決してあげたいです」
 医者ではないので、直接患者を診るわけにはいかないが、沖田光(ea0029)に話してくれたのは、やはり加護を受けている精霊のバランスが崩れているのではないかと言う話だった。
「う〜ん、キエフでもあった呪いみたいなものなのかなぁ。ねぇねぇ、こんなおねえさん見なかった?」
 その人魚に、カルル・ゲラー(eb3530)はレミエル嬢の事を聞いていた。それっぽい人の人相風体を尋ねるが、「うーん、見たような見てないような」と、あまり芳しくない返答だ。
「念の為、ちょっと恐竜の骨とか、確認させてもらって良いかな?」
 カルルが水鏡の指輪を持ち出してくる。
「うん、やっぱり魔法の品みたいだよ」
 室内には、やはり恐竜製品が数多くある。殆どはその大きさを生かして皿や日用品に加工されたものだったが、そのいくつかには、魔法の力がかかっていた。どうやら、王宮に送り込まれたものと同質のようだが、それよりもだいぶ小型になっている。
「ん〜、デビルの仕業かなぁ? 歪みでも出来てたり?」
 怪訝そうに首をかしげるミカエルに、刀也が黒曜石の肩を抱き寄せて促す。こくんと頷いた彼女が説明するかぎり、何だか体のどこかに穴が開いて、そこから少しずつ漏れている様な感覚‥‥だそうだ。他の人魚達に聞き込むと、やはり同じ様な返答が返ってきた。
「大方デビルが何かしているのだろうが、症状から言っても、魔法陣の浄化が必要な可能性が大きいな」
 ゼファー・ハノーヴァー(ea0664)もまた、あれこれと症状を聞きまわった結果、やはりどこかに例の魔法陣が稼動しているのではないかと結論付ける。
「やはり、浄化が必要そうだな。議長から聖布は貰えるのか?」
「ああ。問い合わせの手紙は出しておいた」
 ゼファーの問いに、刀也が前もって渡していた手紙を見せる。それには、少し時間がかかるとは思うが、必要ならば三日後には送り届けられると言う旨が記されていた。
「なら、その間に精霊詣でを済ませれば良い訳だな」
 そう言って、ゼファーは神殿の者達に指示をする。聖水の材料を用意し、浄化の手順をパープル女史から説明してもらい、それまでに聖布が届くと告げていた。
「これ効くかなぁ」
 その間に、カルルはキエフで似たような症状があったと聞き、それに効く薬草を用意してきた。どこをどう見ても太くて長いネギなのだが、風邪への効果は折り紙付きだそうな。
「これ、お味噌汁にしようと思うんだ。あとは、うがいと手洗いはちゃんとしなきゃだよ〜」
 カルルはちゃんとお琴嬢から豆味噌を調達していた。とは言え、こんな水の中で液体モノを用意したら流れてしまうので、作るのは地上の港‥‥と言う事になる。
「んと、安全なルートとかって、わかるか?」
 その間に東雲が地図を片手に、どうやって反対側へ向うかの相談をしていた。それを調べるのが冒険者のお仕事なのだが、一応人魚達にも尋ねている。
「ううむ、ツアー向けの調査とかしておきたかったんだが、ここでは無理か‥‥」
 手元のメモに『豪州観光案内』と書いてあり、水の神殿やら料理の美味しい店等が記されている。そんな中、地図を見ていたカルルが、こう言い出した。
「アリススプリングから西回りで行くのが良いと思うんだにゃー」
 なぞったその指先は、海岸線沿いに南下して行くルートである。話を聞けば、途中いくつか遺跡が点在しているようなので、食料補給がてら目星をつけてみるといいんじゃないかにゃーと、カルルは提案している。
「初詣はお正月には欠かせませんもんね。月と陽じゃなくて、白と黒なのは神聖王国といわれた、ムゥにゆえあっての事なんでしょうかね?」
 沖田がルートを地図に書き込みながら、そう尋ねてくる。その辺りは、精霊にとって「色」に代表されるそうで、細かい区別があまりないそうだ。
「ふむ。確かにこれならやる事が多いが、地図は作りやすそうだな」
 ルートが決まれば、早速出発だ。平原までは何とか地図があるので、ゼファーは時折眼下を見下ろし、時には着陸してもらいながら、恐竜の種類とその分布、植生、地理状況をざっと書き込んでいる。
「丸見えだと、肉食系の子に標的にされちゃうからね。程よく遮蔽物のある所をさがしましょ」
 ミカエルも食料の調達と、人々が休める場所を探していた。平原は広く、遮蔽物は少ない。見れば草食竜達は、めいめいに穴を掘って巣を作っているか、大型化と群れる事で対抗しているようだ。
「水が確保出来る方が良いけど、これは上とかけあうべきかな」
 刀也の見つけたいくつかには、その恐竜達が飲む水場があり、その近くにはまばらな木々が生えている。木陰で休みやすそうな場所だが、吹きさらしでは肉食竜と疎遠とは言いがたい。
「マッピングして、それから管轄に聞けば良いのではないか?」
「後は‥‥マナーも一応書いておくべきか‥‥」
 東雲のアドバイスに、刀也が手紙をしたためている。内陸のここに、人魚はあまり来ないだろうが、現地の人々への配慮は必要だろう。
「あっ、この場所なんか、休憩所にするのに良さそうじゃないですか‥‥。わぁ、見てください、あっちには恐竜の親子が、草はんでますよ。可愛いな。美味しかったけど」
 そんな中、休憩場所としての祠を見つけた沖田が、嬉しそうに水辺の恐竜を眺めているのだった。

 その入り口は、作業場として使っていた祠の近くにあった。
「槍が反応している。これがチャージの合図かな」
 東雲の持つエレメンタラースピアが鈍く輝いている。どうやら試練が近いと知った沖田、その精霊槍を受け取りながら、首をかしげていた。
「精霊の試練は一体どんな物が科せられるんでしょうね‥‥飛ばされて、沈められて、焼かれて、埋められる?」
 ひょっとして白と黒の試練は、食べちゃったお手紙の内容聞いて来いとかだったらどうしましょう? と、山羊の精霊みたいな事を言い出す彼。
「それで済めば良いがな」
「ええ。どんな試練が来ようとも、気をしっかり持って乗り越えて見せますから」
 もっとも、刀也の予想では、それ以上の試練が課される可能性もあると言う。それを聞いて、沖田は試練に耐えたらチャージして貰えるのではないかと言い出していた。
「フレイム様への供物はこれでいいかしら‥‥」
 ミカエルが、人魚達が普段供物として利用している品を持ってきた、一見すると保存食に見えるそれを3束用意したところで。精霊船はゆっくりと降下して行く。
「にゃっす! ぼくカルルでっす。よろしくねっ」
『よくぞ来た。妹を通じての信号は届いていたようだな』
 中に入り、供物を捧げ、わくわく気分を抱えたカルルが、天使の笑顔でご挨拶する。と、程なくして激しい炎が吹きあがり、人の姿となった。炎の精霊ミリオンフレイムだ。
「試練ってどんなのかなー。質疑かなぁ? それとも、いざ尋常に勝負! とかとか?」
「異国では、試練を超え、その上で契約をする所があるそうだ。なら、これも繋がってるものの一つ。笑って超えて見せるさ」
 血の気の多い冒険者の事、こう言った勝負事にはやる気満々らしい。その様子に、ミリオンフレイムはくるりと踵を返す。ついてこいと言った所か。
「おお、ここは‥‥」
 ずいぶんと深く潜った気がする中、やがて地中深い通路の先に出た。ゼファーが目を輝かすのも道理で、石切り場のような無機質な壁面ながら、まるで大きな港のように、いくつもの桟橋が出ていた。そしてそこには、温度の高い水が流れている。その暖かい川に浮かぶのは、いくつもの壊れた船だ。
「見事、治めてみよ。さすればここはお前達に開放しよう」
 ミリオンフレイムがそう言った刹那、精霊槍が光を放ち、暗く闇になっていたその先を照らした。
「ゴールはアレね」
 ミカエルがそう言う。そこには‥‥普通の港で言えば灯台に当たる位置に、小さく建物が見えた。壊れた橋も複数ある事から、何とかしてそこを目指せば良いと言ったところか。
「望む所だ。いくぞ!」
 そう言って、早速攻略を開始する一行。遺跡である事は間違いないだろうと言う事で、ゼファーはその壁面に書かれた文字や、港の作りなども調査する事にしていた。
「んと、白は慈愛の心、黒は試練の心として、これを泳げって事かな?」
 それぞれの特徴を思い浮かべながら、流れる湯の川をつついてみるカルル。その温度はとても高く、何も対処をせずに泳いだら、全身火傷ですぐにセーラ様送りになりそうだ。
「風は吹きつけてる。進む事が試練なのだろうさ」
 地下灯台から流れる風そのものは、表のものと変わらない。それを指摘されて、うーんと考え込んでしまうカルル。
「土はじっとしているような気もするけどにゃー」
「硬い、と言うこともあるぞ」
 こんこん、と地面を叩くゼファー。しっかりした石組みが敷かれている。多少暴れても問題はなさそうだ。
「中心部には何が待ち構えているのかなぁ。この船、直せないかな」
 カルルが壊れている船を何とか利用出来ないかと手を伸ばした。が、思いの他温度が上がっていて、すぐに引っ込めてしまう。
「だいたいの位置はこんな感じか‥‥。やはり、過去に何か意味があったのだろうな」
 刀也が、それぞれの位置を書き記していた。そして、地上と照らし合わせて見ると、今は川になっている部分が、下ってきた通路とほぼ平行している事に気付く。
「ここに記述があるな。ひょっとして、起きた事件を書いている可能性があるな。ミカエル殿、古代語の翻訳を頼む」
 ゼファーが表情を生き生きとさせながら、桟橋に書かれた文字を写し取り、ミカエルへと渡した。これだけ温度が高いと、恐竜達の住処になっている可能性もあったが、ブレスセンサーで調べた限り、そう言った事はなさそうだ。クレバスセンサーで隠し部屋等も探して見たが、どうやら表から見えない場所に、部屋がいくつかあるらしい。しかし、地図で方向を確かめると、ちゃんと入り口は存在しているようだ。
「それとこれを書き写して‥‥と。船の部品もいくつか持って帰った方が良さそうだな」
 慎重に部材を拾い集めるゼファー。彼女の腕からすれば、壊れた船も時間さえあれば直せるらしい。それにナンバーをつける作業をしていた東雲が、興味深げに尋ねてくる。
「一体どんな遺跡なんだ?」
「いや、私では単語を拾うのがやっとだが‥‥」
 ゼファーがミカエルの方を向いた。写した文字を色々と眺めていた彼女は、ひとつの結論にたどり着いたかのように、こう答える。
「うーん、どうもここ、旅人の休憩所だったみたい」
 彼女が示したのは、クレバスセンサーで反応があった場所だ。
「なるほど、それでか‥‥。他に何かあるか?」
「番号が降ってあるから、複数あったんじゃないかしら」
 船の名前と思しき文字の後に、番号が振ってあったらしい。と言う事は、この船の控え室は、奥の部屋‥‥と言ったところだろう。他の船着場と同じ様に。
「なるほど、ここはかつては地上の港だったらしいな。だが、戦争の余波で地下に移したと言うことか‥‥。まだまだ知りたい事は多々あるものだな」
 さしあたっての目的は、この地下港のマッピング。そう考えたゼファーは、奥の灯台を目指す事になった。
「これで、最後か?」
「し、死ぬかと思った‥‥」
 冒険者達が、最後の橋を渡ったのは、それからまる1日はたった頃だ。朽ちかけた場所もあったが、壁が残っている場所も多かったので、工夫して何とかクリアする事が出来た。
 後は、精霊の許しを得るまでだ。
「ミカエルさん。これを」
 沖田が持っていた精霊槍を手渡す。試練に耐えたらチャージしてもらおうと考えていたが、ここは彼女に託すのが筋だろう。
「フレイム様、まだまだ未熟なのは重々承知です。しかし、人とは不完全であるが故に、その力も未知数ですわ。ならば、この機にそのお力、託してはもらえませんでしょうか」
 その槍を手にしたミカエルは、かなうなら本契約を、とそう言って一歩前へと進み出る。玉座めいた祭壇が揺らぎ、再びミリオンフレイムが姿を見せた。
「‥‥ふむ。だが、その意思の焔は激しいようだな」
「もちろん! それがあたしの持論よ!」
 力強く答えるミカエル。その決意はいささかも緩んでいない。
「よかろう。ならばこうしよう」
 ミリオンフレイムの炎が一瞬、勢いを増した。その炎は、急速に精霊槍に吸い込まれていき、一番上の宝玉を赤く染める。
「これは‥‥」
 そこには、しっかりとミカエルの名前が刻まれていた。
「忘れるな。乗り越えるのは己自身だと言うことを」
「はいっ!」
 どうやら、精霊槍はミカエルの契約の証になったようだ。元々、振り回せるようなシロモノではないが、柄からじんわりと暖かさが伝わる気がする。
「新たに見つかった遺跡と言うのは、他にもあるのだろうか」
「わくわくするわね〜。どんな遺産が眠ってるかしら?」
 こうして、遺跡を巡る開拓路は、新たな足を手に入れる事となったのだった。