【ハロウィン】ミス・パープルの挑戦！
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■ショートシナリオ担当：姫野里美 対応レベル：フリーｌｖ 難易度：普通 成功報酬：0 G 65 C 参加人数：7人 サポート参加人数：-人 冒険期間：11月01日〜11月06日 リプレイ公開日：2004年11月08日 |
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●オープニング
●ケンブリッジの祭「ハロウィン？」
各学園の掲示板に羊皮紙が貼られていた。どうやらケンブリッジではハロウィンの祭があるらしい。
――１０月３１日
イギリスでは１０月３１日に妖精が旅に出る日とされており、このとき妖精は邪悪な性質を帯び、魔物を伴って野山を暴れまわるといわれているそうだ。
ハロウィンは、もともとケルトの祭「サムヘイン」と融合された形といわれている。サムヘインは１１月１日に祝され、人々は先祖の魂や精霊達を迎えるために仮面をつけ、かがり火をたくのだそうだ。ジャパンで例えればお盆のようなものらしい。かぶの中に火を灯すして、彷徨う魂たちをかがり火に呼び寄せるのだ。
――それがジャック・オ・ランタンと呼ばれる習慣である。
この祝祭では、モンスターの扮装をした子供達が『Trick or treat』＝ごちそうしないといらずらするぞ＝といって夕食をねだって各家を訪問するのだ。それが学園都市ケンブリッジでも３１日〜翌月２日までの３日間で行われるらしい。
「ケンブリッジのハロウィンを知らないらしいね」
キミに投げかけられる声。瞳に映し出されたのは、一人の生徒だ。
話によると、ケンブリッジの学園に、ジャック・オ・ランタンのかがり火が灯され、モンスターに扮装した生徒達が、各学園の寄宿舎にお菓子をねだりながら訪問するとの事だった。暗闇の中、かがり火に照らされる学園は、とても神秘的らしい。
生徒は更に口を開く。
「冒険者の入学も多くなって、ケンブリッジにギルドが設立されたでしょ？ どうやらハロウィンに合わせて、様々な依頼が舞い込んでいるらしいよ。キミも冒険者って感じだよね、興味があるなら、ケンブリッジギルドを覗いてみるといい」
●ケンブリッジギルド
北に生い茂る森の傍に「それ」は建てられていた。一見、小さな平屋の宿舎を思わせる建物が、ケンブリッジギルドである。
と、そんなギルドの前で、ハロウィン中の資金を、いくばくかでも稼ごうと目論んでいた学生に、声をかけた女性が居た。
「こらそこ！ ハロウィンだからって、浮かれて騒いでんじゃないっ」
「えー」
紫のハイスリッドドレスに身を包んだ彼女は、学生達にとっても恐怖の対象。この学校で教師を務めているミス・パープル女史だ。
「いいこと？ 学生っちゅーんは、お勉強が本文。いくらお祭りだからって、ただ遊んでるだけじゃ、将来立派な大人にはなれないわよん」
彼女は、学生たちの額に指を押し付けると、つんつんと突付きながら、そんな事をほざく。だが、彼女が身に付けている露出度の高い服装を見ると、とてもそんな気はしない。
「あーら、不服そうな顔ねぇ。そんな顔してると、宿題出しちゃうわよ」
「えーー！ 横暴だー！！」
不満そうな学生達。そんな彼らに、パープル女史は、色っぽく小首をひねりながら、こんな事を言い出す。
「問答無用。ちょうど、良い感じに仕組んでおいたネタがあったわねー」
「本気でやるんか‥‥」
今までは冗談半分だと思っていたのだが、彼女の口元に浮かぶ陰謀めいた表情を見ると、どうやら嘘ではなさそうだ。
「恨むんなら、学生のご身分を恨みなさいね。詳しい事は、後で話してあげるわ」
こうして、お祭り資金を稼ごうとした彼らは、不運っぷりを呪いながら、彼女の元に呼び出されるのだった。
そして。
「犯人探し？」
「ええ、そう。知り合いの商人さんに頼んでね。他の参加している皆さんにナイショで、センセを見つけ出してもらうって言うイベントよ」
彼らに下されたのは、そんな‥‥実習めいた宿題だった。
「でも、顔ばればれなんじゃないですか？」
「そこはそれ、抜かりなんかないわよ。ハロウィンですもの、ばっちり仮装して紛れてるわ」
彼女の容姿は、実習に参加する学生には知られていてもおかしくはない。だが、パープル先生は、自信たっぷりにそう言った。
「つまり、その仮装をひっぺがして、センセを捕まえろと」
「そう言う事。どんな仮装をしてるかは、当日まで秘密よん」
バラしちゃったら、意味ないからね。と、そこからは少し真面目な表情となり、こう続ける。
「早目に終わったら、遊んでいても構いません。なお、詳しい条件は、今から言うから、皆耳の穴かっぽじって覚えて行くように！」
「えぇぇえ〜、暗記かよ〜」
教訓：学生日々是勉学也。
●今回の参加者
ea0356 レフェツィア・セヴェナ（22歳・♀・クレリック・エルフ・フランク王国）ea0582 ライノセラス・バートン（29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国）
ea1060 フローラ・タナー（37歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国）
ea1123 常葉 一花（34歳・♀・志士・人間・ジャパン）
ea1382 シュヴェルヴァー・ヒューペリオン（28歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国）
ea1916 ユエリー・ラウ（33歳・♂・ジプシー・エルフ・ビザンチン帝国）
ea8110 東雲 辰巳（35歳・♂・ナイト・人間・ジャパン）
●リプレイ本文
「うわぁ、けっこう人がいるねぇ」さて、当日。周囲を見回しながら、そう言っているのはレフェツィア・セヴェナ（ea0356）。本日の仮装は、ウィザード風である。
「そりゃあ、祭ですしねぇ」
そんな彼女に答えているユエリー・ラウ（ea1916）の格好は、ワーウルフの仮装だ。
「先生、どこに潜んでるんだろうな」
「うーん。仮装は教えてくれなかったからなぁ。結構手間かもしれない」
周囲を油断なく見回しながら、ライノセラス・バートン（ea0582）はそう言った。彼の衣装は、ハルバードを携えたオークである。もちろん、武器は張りぼてだが。
「とにかく、手分けして探しましょう」
パープル先生の事ですから、多分どこかに紫のアクセサリーを付けていると思いますし。と付け加えながら、ユエリーがそう言った。好きな色と言うのは、必ずどこかで身に付けてしまうもの。それは、受講者のほとんどが考えていた共通意見だ。それを目印に、各部屋を分担して当たる事になったのだが。
「流石に、目立つようには着てないか‥‥」
考えてみれば、いくら紫の洋服が好きな女性とは言え、こう言った課題で、明らかに分かるようには着ていないだろう。
「あとは、左手に何も持ってない人‥‥かな‥‥」
残る手がかりは、麻痺していると言う左腕。そう思って、レフィが参加者を見回すと、だいたいホールに居た面々の、半分くらいは絞り込む事が出来た。
「わぁっ」
それで余所見をしていたせいか、盛大にコケてしまう彼女。鼻先を床に思いっきり打って、半泣き状態に成るレフィ嬢。
「大丈夫？」
と、そこへ白い猫手袋に包まれた手が差し出された。
「あ、ミス・ホワイト。ありがとう」
よく神学の講義で会うフローラ・タナー（ea1060）の姿に、レフィがほっとした表情を見せる。が、それもつかの間。彼女は、フローラが白毛の立派なケット・シーと化しているのを見てしまったから。おまけに、少し化粧までしていた。
「どうしたの？ そのカッコ」
「うん。ちょっとね」
触れてほしくない事の様に、目をそらすフローラ。彼女にしては珍しく、誤魔化したような物言いである。その後ろ手に、何かメモのような薄い木片が握られているのを見て、リフィは彼女がパープル女史に借り出されたらしい事を悟る。
「課題、頑張ってね」
残念そうに口を尖らせる彼女に、フローラ先生はそう言いながら頭を撫で、回廊の方へと姿を消していった。
「本当にどこ潜んでるんだろう‥‥。怒られちゃうけど、騒ぎでも起こしてみようかな‥‥」
そんな事をしている間に、会場には人が集まってきた。そんな彼らを見て、リフィが不謹慎な考えを起こしかけた時である。
「トリック・オア・トリート‥‥。ご尊顔拝見願えるかな？」
「へ？ ええ、構わないけど」
ドレスのワンポイントに、紫の縫い取りがあったせいか、そう声をかけられた。まぁ、断る理由もないので、彼女はそう言いながら、あっさりとフードを外す。
「ハズレか。失礼、つい声をかけてしまっただけです」
「残念。ボクはパープル先生じゃないよ」
棒読み同然の、感情全くこもっていない声で、シュヴェルヴァー・ヒューペリオン（ea1382）にそう言われ、リフィはにかっと笑ってみせた。が、反応はない。リフィを無視し、一向気にせず、左手を使っていない紫の布地をつけた御仁に、片っ端から同じセリフを吐いている。
「なんだか手当たり次第って感じだね‥‥」
じーっとその様子を見守っていたリフィは、後をついて行くのだった。
その頃、ライノセラス・バートンは、左側の控え室をあらかた調べ終え、ちょうどホールの方へと戻ってきていた。
「トリック・オア・トリート‥‥」
そこへ、声をかけてきた吸血鬼風の青年。見ると、シヴである。どうやら、彼の持っているハルバードに目を付けたようだ。
「ちっ。野郎かよ‥‥。失敬、俺の目が腐っていたようだ」
ライが、オークの被り物を外して見せると、シヴはふんっと顔を背けながら、嫌そうにそう口走る。
「あんた、俺に喧嘩を売るつもりか？」
「そう思うなら、それで結構」
否定しないシヴに、ライは持っていたハルバードで、軽く床を鳴らしてみせる。
「良いだろう。ちょうど獲物も持ち合わせているしな」
「ふん。俺も、こんな茶番には飽き飽きしていた所なんでね」
彼の方も、いい加減口説き文句の繰り返しには、嫌気が差していたようで、そう言いながら、フードを脱ぎ捨て、本物の吸血鬼の様に、マントを翻してみせる。
そして、それを皮切りに、ライは持っていたハルバードを、シヴへと振り下ろした。身を低くし、その一撃を転がるように避ける彼。元々、パープルをいぶりだす為に、わざと下手な演技を披露する手筈だったので、バトルが始まっても、好都合と言うもの。
「皆様、危険ですから、端っこまでお下がりくださいね〜」
騒ぎを聞きつけたユエリーが、話術技能を駆使して、実況と司会なんぞをやらかしている。
（「これだけの騒ぎ。先生が聞きつけてこないとは思えない‥‥」）
もっとも、その目的は、ただの煽り役ではなく、観客に混じっている筈のパープル女史を見つけ出す事。彼が、観客の安全を図って炒ると言った仕草で、周囲に目を向けた時だった。
「姫、あぶのうございます。後ろへ」
いかにもうだつの上がらない従者と言った装束の東雲辰巳（ea8110）に、目立たない位置へと押しやられている女性。背中に、大降りの羽がついている。被り物は、紫の目の鳥。
（「あいつか‥‥！」）
目のいいライも、酔っ払いのフリをして、ハルバードの動きを追っているその女性に気付いたようだ。
「よそ見している暇があるのか？ 食らえ！」
そこへ、シヴがブラインドアタックをぶち込む。よろめくライ。
その勢いを利用し、ライは、まるで手が滑ったかのように見せかけながら、先ほどの鳥仮装の女性の左腕に、ハルバードの攻撃を食らわせていた。
「あぶなっ」
出遅れた彼女に変わって、東雲がそれを受け止める。
「邪魔するんじゃない‥‥」
もう少しで、どうにか出来るはずだったのに。彼女が反射的に左腕を庇ったのを、ライは見逃してはいなかった。
「ニセモノとは言え、レディに武器を向けるとは、騎士にあるまじき所業だな」
役に立たなくなってしまったハルバードを蹴り飛ばし、そう言う東雲。
「こら、そこの２人ッ！ いきなり戦闘始めてどうするの！」」
と、他の観客が、肩図を飲んで見守っている中、進み出たケット・シーが居た。フローラである。言われて見ればその通り。会場を見回してみれば、ちょうどライとシヴを中心にして、ホールが闘技場と化していた。
「ねぇ！ ２人がいないよっ！？」
リフィの報告に、ユエリーがそう言った。間の悪い事に、その隙に、例の２人は、ホールを抜け出してしまったようだ。
「まだ、そう遠くには行ってないはずです。エントランスの方を探しましょう！」
まだ捜していない場所は、屋敷のエントランスを残すのみである。そう目星をつけたユエリー、他の面々をひきつれて、逃げた２人を追いかけるのだった。
その頃、ホールを後にした謎の鳥頭娘と従者はと言えば。
「お待たせ。念のために衣装切り替えてきたわ」
そう言って、衣装を変えたパープル女史が戻ってくる。見れば、彼女の衣装はグリマルキンの仮装へと変わっていた。
「お前‥‥。本当に、違うのか‥‥？」
「どうかしら」
はぐらかす事の得意なあたりは、東雲の捜している女性と、全く同じなのに。
「けど、もしあなたが、大切な人を亡くしていて、その償いをしたいというのなら、身代わりになるくらいは、構わなくってよ」
悲しげな表情を浮かべる東雲に、彼女はそう申し出てくれた。
「そうか‥‥」
口元に浮かべた静かな笑みが、東雲自身のくすぶった思いを打ち消してくれたような気がする。
「そこのお二人。宜しければ、相性でも占っていきませんかぁ？」
声をかけたのは本を片手の常葉一花（ea1123）だ。いつもの彼女の口調とは、かけ離れている。見れば、髪形も変えており、いつもと雰囲気がだいぶ違っていた。しこたま怪しいが、パープルは「面白そうではあるわね」と言ってくれる。
「それじゃあ、まず右手を出してくださいな〜」
差し出された右手を、それらしく覗き込む一花。少しの間、難しそうな顔をしていたが、ややあって、こう告げる。
「む。２人は運命の意図で繋がれているとでました！ じゃあ、次は左手をお願いしまぁす」
意図は糸ではないらしい。微妙にその辺りを強調しつつ、彼女は本来狙っていた方の手を、差し出させようとした。
「あら。そこまで詳しいのが必要かしら？」
彼女はそれを断るような仕草を見せる。一花の演技力の低さを、見抜かれてしまったようだ。
「うふふふ。そうねぇ。必要ないかもしれませんわね」
口調を元に戻し、ローブを脱ぎ捨てて、一花はそう言った。東雲が止めようとした刹那、彼女は差し出されなかった左手を掴んでしまっていた。
「愛しのお姉様。もう逃がしませんわよ。ミス・パープル‥‥」
そっと耳打ちして、強引に引き寄せる。
「おい！ どこへ連れて行く気だ！？」
「うふふふ。お姉様は私が頂いていきますわ」
そのまま、エントランスを離れ、休憩室の方へと向かおうとする一花。
「せっかく捕まえたんだ。女２人で絡むなんて、そんな美味しい真似されてたまるか！」
何か勘違いしているようなセリフを吐きつつ、慌てて追いかける東雲。と、その先で見たのは、真っ赤な顔をしている一花だった。彼女は東雲の姿を見ると、ふらふら立ち上がり、被り物を直していたパープルに、こう御注進。
「あー。そういえばぁ、お姉さまのことを『ぱーぷりん』呼ばわりしてる人がいたような‥‥」
それを聞いて、パープルの被り物の奥の目が、きらーんっと輝く。
「何ですって‥‥」
「確かー、その時、白い姿がチラッと見えましたわー」
むろん、口から出任せである。しかし、酒の回ったパープル女史、一花に詰め寄って、その出没先を問いただした。
「最後に見たのは、エントランスの方ですの」
それを聞いた彼女、悪巧みを思いついたような含み笑いをもらしている。
「困ったわがまま姫だ。行けば見付かるだろうに」
いつもなら、わざわざ行くような真似はしない。どうやら、相当酔っているようだと判断した東雲は、慌てて後を追いかけるのだった。
「どこに潜んでるのかしら‥‥」
エントランス付近で、一花がチクった『不届き者』を探すグリマルキン仕様のパープル先生。胸元と頭の中心部が、宝玉の様に紫色に塗られている。そこへ、２階へ上がる階段に座っていたユエリーが、声をかけてきた。
「‥‥ここにもか」
声色を変え、歩みを止める彼女に、ユエリーはわざとバカにしたような表情で、大げさにこう言う。
「そんなに警戒しなくても宜しいじゃありませんか。ぱーぷりん嬢？」
「誰が‥‥なんですって？」
被り物から零れた声が、１オクターブ低くなり、元の調子へと戻ってしまう。
「おっと失礼。ちょっと言い間違えただけですよ。ミス・パープル」
自分の予想が間違っていなかったなーと確信したユエリーは、立ち上がって素直にそう謝った。が、パープル女史は、被り物を外してはくれない。
「先生、見つけましたよ！」
と、そこへ、遅れて駆けつけてきたライが、びしぃっと指先を突きつけた。
「こら！ 貴様ら、人ン家の姫に何をする！」
「またお前か！ 邪魔するなよ！」
で、遅れてやってきた東雲と、何やら揉めている。
「お知り合いですか？」
何やら複雑な事情があると予想したフローラ、ラテン語でそう尋ねた。と、パープルは無言で肩をすくめて見せる。まぁ、怪我をする前の記憶は、すっぱり落ちているとの事なので、真相は定かではないが。
「あいつに似てるのも、何かの縁だと思ってな。せめて祭りの間だけでも、傍らに侍らせて貰う事になった。文句があるか？」
「じゃあ、こっちの課題はどうなるんだー」
東雲のセリフに、そう答えるライ。通せ通さないと、ぎゃあぎゃあ大騒ぎだ。
「えい」
その最中、それまで黙っていたシヴが、騒ぎに乗じて、猫の被り物をひっぺがしてしまった。
「仕事完了。さっさと帰りますよ。俺は」
中のパープル女史の顔を確かめると、彼は屋敷を出て行く。こうして、課題はあっさりと幕を閉じるのだった。
