迷子のドラパピ
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■ショートシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月14日〜06月21日
リプレイ公開日:2004年06月23日
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●オープニング
それは、キャメロットから3日ほど離れた村で起きた。
「あーーーー! また無くなってるっス〜!!?」
村の納屋に、夕飯の材料を取りに来た村の青年は、ぶちまけられた小麦に、頭を抱えていた。
「どうした?」
「あ、村長。聞いて下さいよ〜。昨日から、うちの納屋が荒らされてるっス〜」
ちょうど通りかかった村長に泣きついたのも、これが初めてではない。ここ数日、気がつけば小麦や干した果物、取れたばかりの野菜などが、食い散らかされている。
「ガキどもの悪戯じゃないのか?」
「それが‥‥奪われてるのは、主に食料品やら、家畜の餌とか、そんな備蓄品ばっかりなんスよ〜。人間の子供は、生の小麦なんか、食い散らかしませんよねぇ」
村長の問いに、そう答える村の青年Aくん。
それが、干し果物や、子供が隠れそうな大きな農機具だったら、子供の悪戯とたかをくくるだろう。だが、それも3日続けて‥‥、ここまで荒らされると、たとえ悪戯でも、犯人を突き止めたくなると言うもの。
「まさか、夜盗の類とか? 東の森は、コボルトがねぐらにしてるって聞いた事があるし‥‥」
「そんなんだったら、もっと大々的に襲われてるっスよ。てか、そもそも、果物や野菜を食うコボルトなんて、聞いた事ないっス」
大げさに考え始める村長に、青年くんは首を横に振った。
「ふむ‥‥。ならば、勝手にもぐりこんだ人間か?」
「なんでこそこそする必要あるんです?」
困ってるんだったら、正直に村長ン家の扉を叩けば良いでしょ? と、もっともな事を言う青年。
「うーん。馬やロバにしては、蹄の跡がないしな‥‥」
「蹄の跡‥‥。そだ! 足跡!」
と、その彼はぽふんと手を叩き、広がった小麦に紛れた足跡を捜し始めた。
「こっちに続いているようだな‥‥」
2人してよく見ると、その足跡は、納屋の奥の扉に続いている。
ところが。その矢先、その扉の向こう側で、何か物音がした。
「な、中に何かいるよーな‥‥」
「あ、開けるならそーっとだぞ! そーっと‥‥」
びっくりした村人さん2人が、おっかなびっくりその扉を開けると、そこには。
「ぴぃ☆」
小さな緑色のトカゲがいた。
「うぉわぁぁっ」
「ド、ドラゴン!?」
いや、正確にはドラゴンではない。まだ生まれたばかりの子供‥‥通称ドラゴンパピィと呼ばれる、赤ちゃんドラゴンだった。
「あ。もしかして、祠のフォレスト様ン家の‥‥」
「マザーの子供か!」
その外見から、近くの祠にある洞窟に潜んでいると言うフォレストドラゴンの子供だと判断した村人さん達、思わず大声を上げてしまう。
「ぴぃぃ〜」
びっくりしたドラパピくん、とたんに目を潤ませていた。
「しーーーっ。下手に騒ぐと、エライ事になるッスよ!」
「す、すまん‥‥」
このまま彼(かどうかはわからない)が、泣き出せば、即座に親ドラゴンがぶっ飛んでくるだろう。そう思った村人さん達は、機嫌を損ねないよう、そっと後ずさりする。
「ぴぴぃ♪ ぴぴぴぃ♪」
当のドラパピくん、何だかこの場所が気に入ってしまったらしく、当分動く気はなさそうだ。
「よし、今のうちに冒険者ギルドに連絡しよう」
それを見た村長さんは、そう言った。
「えー! 俺ン家の納屋は〜!?」
文句をつける村人くんに、『村の安全と納屋の占拠、どっちが大事だ?』と、天秤にかけさせ、黙らせる村長。
「ドラパピがいなくなるまで我慢しろ。飯くらいは、家で食わせてやるから」
答えの出ない彼に、そう言う放つ。
「しくしく‥‥絶対、晩飯以外のものも食ってやる‥‥」
村人くんは、なんだか不穏当な一言を呟きながら、その後に従うのだった。
2日後、冒険者ギルドに、こんな依頼が提示された。
依頼:迷子のドラパピ
内容:村の納屋に、ドラゴンの子供と言われるドラゴンパピィが住み着きました。このままでは、親ドラゴンが出てくるのも、時間の問題です。ですが、森はコボルトが出るので、私達には行けません。勇敢な冒険者様、どうか、私達の代わりに、このドラゴンパピィを、親元に返してきて下さい。
「でも、ドラパピって、近くに親ドラゴンがいるんじゃ‥‥」
「フォレストドラゴンは、ドラゴン族の中でも、比較的温厚と言われている。昼間は、洞窟の中で寝ているらしいから、その間に何とかすれば、襲われずにすむだろう」
担当の青年は、興味を示した冒険者の問いに、彼はそう答えている。
「それはつまり‥‥、昼間のうちになんとかしろと」
「そう言う事だな。ドラゴンの住む洞窟は、近くに祠があるので、それを目指すと良いそうだ」
元々は違う用途だったそうなのだが、今は村人が不用意にドラゴンのねぐらに近づかないよう、目印となっているらしい。
「あと、その森は、コボルトがねぐらにしていると言う噂がある。気をつけるように」
「なにぃぃぃぃっ!?」
最後に重要なセリフを言われ、冒険者たちが頭を抱えたのは、言うまでもない。
●リプレイ本文
●未知との遭遇
キャメロットから歩いて3日。依頼のあった村にたどりついた冒険者達は、さっそくドラパピが潜んでいると言う納屋へと向かった。
「それで、どうするんだ?」
「まずは、ドラパピを安心させる事が、肝要だと思うわ」
ドラゴンに関して詳しいらしい九重玉藻(ea3117)が、そう言った。それを聞いて九条剣(ea3004)も、納得したようにこう提案する。
「ふむ‥‥。とり敢えず友好的に接した方が良いと思う。動物とのファーストコンタクトは、何の邪気も無い笑顔で行うのが良いと、何かの話で聞いた事がある」
「そうねぇ。ホントはいっぱい抱っこしたり撫でたりしたいけど、野生動物は、そういうのを嫌がる子が多いし」
ノリコ・レッドヒート(ea1435)が、そう言った。ドラゴンに限らず、野生動物と言うのは、人と触れあう事を拒むケースが多い。と、そんな中、玉藻はごそごそとバックパックを探ると、こう頼み込んだ。
「村長、籠を貸してほしいんだけどー」
「こんなもんで良いか?」
出てきた果物籠に、彼女が放り込んだのは、ジャムのたっぷりついたミルクパンに、干し葡萄の練りこまれたパンだ。
「なんだ? これは」
「フォレストは森の竜。ましてや子供ともなれば、甘いものが好きだろうしな」
餌だ、餌。と続ける彼女。本当は林檎や葡萄を用意したかったんだが、時期が少し早くて、保存用のものしかなかったらしい。
「でも、これ美味しいですよー」
「こら、食うな」
その後ろから、様子を見ていたフェルディナン・アルヴァレス(ea3151)が、パンを口に放り込みながらこう言った。
「皆さん頑張って下さいね! 僕はここで見てますから!」
「‥‥おい」
やけに怯えきった姿に、ツッコミを入れる九条。しかし、玉藻はそんな彼に、こう告げてくる。
「あまり大勢で押しかけると怯えさせてしまうから、そこで待っていて」
「は、はいー‥‥」
これ幸いに、毛布を被ってしまうフェルディナン。
「あけるぞ」
ジャスパー・レニアートン(ea3053)が、そう言いながら、納屋の扉をゆっくりと開ける。中のドラパピを驚かさない様に言う配慮だろう。
「ぴぴぃ‥‥?」
中に居た深緑の竜が、怪訝そうに頭を上げる。
「ふはははははは! 安心するがいいドラパピ! 我輩たちが無事母上の元に送り届けてやるからな! 大船に乗ったつもりでいるがいい!!」
直後、ローゼン・ヴァーンズ(ea0310)が、無駄に高笑いしながら、指先を突きつけていた。
「ロゼのアホゥっ! いきなり怯えさせてどうするっ!!」
言い切った刹那、ローゼンの後頭部を、九条が強打する。
「い、痛い‥‥」
涙交じりの彼の頭に、大きなたんこぶが出来た。
「ぴ、ぴぃ‥‥」
いきなり出会い頭に大声を出されたドラパピくん、びっくりしてしまったのか、瞳を潤ませている。
「まずいわ。泣き出しそうよ」
真っ青な顔をするノリコ。ここで泣かれたら、即座に親ドラゴンがすっ飛んでくる羽目になりかねない。
「わしに任せるのじゃ」
と、そこへユラヴィカ・クドゥス(ea1704)が、背中の羽根をぱたつかせながら、空中へと飛び出した。
「ほーら、ドラパピくん。泣いちゃダメなのじゃー」
そう言って彼は、空中で踊り始める。
「ぴ、ぴぃ‥‥」
目の前でゆらゆらと踊る彼を、不思議なものでも見るような瞳で見つめるドラパピ。
「ぴー‥‥。ぴ!」
食いものと勘違いしたのか、いきなりユラヴィカを咥える彼。
「わわわわわっ。踊り子さんに手を触れてはならんのじゃー」
「ぴぴぃっ♪」
唾液でべとべとにされながら逃げ回るユラヴィカを、子犬か何かの様に尻尾を振りながら追い掛け回すドラパピ。
「どうやら事なきを得たみたいね‥‥」
「うわーん。助けてたもれー」
機嫌は思いっきり上向きになったようだが、このままではユラヴィカがエライ目にあう。そう判断したノリコ、待ってましたとばかりに、こう言った。
「はいはい。パピーちゃん、こんにちわ☆」
「ぴぃ?」
ゆっくりと近付いてくる人間の女の子に、怪訝そうに首をかしげるドラパピ。
「美味しいおやつ持ってきたの。お姉さんと遊ぼ♪」
ノリコの手には、先ほど九重が用意していたジャムパンが握られている。
「ぴぴぃ!」
餌に釣られたドラパピ、てててっと近寄って、パンにかじりつく。全く警戒していない様子で、自分の手から餌をぱくついているドラパピに、ノリコの目じりがだらしなく垂れ下がった。
「大丈夫。私達が安全に親元まで導いてあげるから♪」
どうかしたの? と言った様子で、顔を見上げたドラパピに、アルフェリア・スノー(ea0934)がそう言った。そして、ドラパピの鼻に、軽くキスをしてほお擦りをする。彼は、くすぐったそうにしていたが、するりと離れて。今度はジャスパーの足元に座り込んでしまう。
「安心していいよ」
「ぴー‥‥」
屈み込みながら、目線をドラパピにあわせるジャスパー。指先を軽く差し出し、「‥‥おいで」と誘うと、ドラパピは喉を鳴らすようにして、飛びついてきた。
「これが龍‥‥? 蜥蜴の間違いではないのか」
そんな彼を見て、紅天華(ea0926)が怪訝そうにそう言った。華国出身の為、西洋風のドラゴンが珍しい上、出身国風のドラゴンでないのが、不服らしい。
「失礼な。ぴぃちゃんは立派なドラゴンさんです。ねー?」
「ぴぃ!」
ノリコにそう言われ、そのとおりだっ! とばかりに、胸を張るドラパピ。いつの間にか、名前まで付けてもらったようで、本人(?)としては、名前が気に入っているようだ。
「フェル、そんな所にいないで、もっとこっちにおいでよ。可愛いよ? こいつ」
「だ、だって怖いじゃないですか!! かまれたりしたら‥‥」
そんな騒ぎを、遠巻きに見ているフェル。不幸さ加減には自信があるらしく、側に来ようともしなかった。
「大丈夫よ。赤ちゃんだから、そんなに痛くないし」
ノリコがぴぃちゃんを撫でながら、そう言う。まぁ、鱗のある生物が可愛くて仕方がない彼女にとっては、もしドラゴンにかまれたとしても、ニコニコ笑っているだろう事は、なんとなく予想がつこうと言うものだ。
「ぴー‥‥」
「わわっ! 来たっ!」
とてとてとドラパピの方から歩み寄られて、慌てるフェル。驚いて固まっていると、ぴぃちゃんは彼が被っていた毛布にじゃれ付き、くいくいと引っ張り始める。
「もしかして、それが欲しいのかな」
「みたいね」
暖かそうな毛布だ。もう夏も近い季節だったが、洞窟の中は、それなりに寒いのだろう。離そうとしないドラパピくん。
「‥‥あ、あげます」
「ぴぴぃ! ぴぃ!」
フェルが毛布を手放すと、ぴぃちゃんは後ろ足だけで立ち上がり、フェルへと抱きついた。そして、『これはお礼』とばかりに、そのほっぺたにキスをする。
「ひぃぃぃぃぃっ!」
目を回している彼に、不思議そうな顔をするドラパピ。後ろでノリコが、「いいなー。あたしもパピーちゃんにチューされたーい」と、指を咥えていた。
「ああ、いたいた。何の騒ぎだ? お、それがドラパピか」
と、そこへ一足先に村へ到着し、森の様子を探っていたフローラ・タナー(ea1060)が戻ってくる。
「見て見てー。可愛いでしょーー」
すっかり仲良くなった様子のドラパピと依頼仲間に、フローラは苦笑しながら、こう言う。
「ま、まぁ、なんにせよ、なついているのなら、お前たちに任せた方が無難だろう。あまり時間もないし、森へ向かうぞ」
「はーい」
ドラパピを引っ張り出したのなら、ここに用はない。そう言って彼らは、陽が暮れないうちに祠へたどり着くべく、行動を開始するのだった。
●届けもの!
「…迷いの森、目覚めの時を…少年の吐息、ただ白金に輝く…」
森の中で、スノーの歌声が、朗々と響いている‥‥。
「ギシャシャ!」
その歌声に引きよされらる様に、姿を見せるコボルトたち。
「そうそうかまってはいられないけど、殲滅出来る時にやっておく! はぁっ!」
愛用のクルスソードを片手に、フローラが敵の群に飛び込んでいく。愛馬は森では移動力が落ちるため、村に置いて来たが、リカバーとアンチドートは習得済みだ。多少の無茶はきく。それに、ここで奴らを止めなければ、ドラパピの方へ行くかもしれない。
「がんばれーー。まけるでないぞーーー」
「お前も手伝え!」
無責任な応援をするユラヴィカを怒鳴りつけるフローラ。
「わしは非・戦闘要員じゃ。応援だけはするから、しっかり働くんじゃぞー」
そうは言うものの、実際ここまでコボルトを探し出せたのは、彼がテレスコープで、周囲を確認したおかげだ。
「ぎしゃ!」
「わわわっ。何をするのじゃー!」
もっとも、コボルトにしてみれば、そんな事はあまり関係がないらしく、空中で踊りながら応援していた彼に、ナイフを振り上げる。
「ユラヴィカ殿! こっちにこい!」
「天華、やっつけるのじゃー」
そこへ、反対側を偵察していた天華が戻ってきて、逃げてきたユラヴィカを抱き止めた。そして、コボルト達を相手にしているフローラと、ムーンアローをぶち込んでいたスノーにこう言う。
「2人とも、巻き込まれたくなかったら、下がれ。命の保障はせん‥‥」
彼女が何をしようとしているのかを悟り、言われたとおり天華から離れる2人。直後、コボルトにディストロイが打ち込まれる。
「うーみ、容赦ないのぅ」
肉片と化した敵の姿に、眉を顰めているユラヴィカ。その隣で、スノーが他の面々に、テレパシーで「やっぱりいたわ。こっちはなんとかしたけど…すぐそっちに合流するわ、気をつけて」と忠告している。
そして。
「あれが祠か‥‥」
「ん? ちょっと待て! 何かいるぞ!」
ようやくたどり着いた竜の祠。かなり古いらしいその前に、待ち構えていたかのように立つ影数対。
「ぎしゃ! ぎしゃしゃ!」
「あ、さっきのコボルト。ボスに言いつけたな」
見れば、先ほど傷つけたコボルトと、彼らを率いているらしいオークが、頭に青筋を浮かべながら、やる気満々の態度で、こちらを睨みつけていた。
「なんか怒ってるのじゃー」
そりゃあそうだろう。部下がコテンパンにされて、復讐に燃えないモンスターは、あまりみない。
「おーーほっほっほっ!! 醜い者に生きる価値はなし! さぁ、エリザベスと僕達! やーーーっておしまいっ!!!」
と、高笑いと共に大蝦蟇のエリザベスを召喚した九重、冒険者仲間を勝手に下僕よばわりし、『GO!』とばかりに指し示す。
「食らえ! 死のカルテットを!!! ふはははははは!!!」
従う義理は欠片もないのだが、そこはそれ、ノリと勢いは重要と言う事で、ヴェントラキュイで高笑いの多重唱を食らわせるローゼン。うるさいことこの上ないが、そこにライトニングサンダーボルトだの、ウィンドスラッシュだのを叩きこんでいるあたり、何も考えていないわけではなさそうだ。
「ノリコ。ぴぃちゃんをよろしく」
そんな中、ジャスパーは、なついていたドラパピくんを、ノリコに預け、そう言った。
「ぴやー」
「はいはい、怖くないからねー☆ ああ、し・あ・わ・せ♪」
心配そうなドラパピくんを、よしよしとなだめるノリコ。今だけは独占できる事が嬉しいせいか、ごろごろと喉を鳴らしている。そんな中、ジャスパーはオークに向けて、ウォーター・ボムをぶち込んでいた。
「今だ! フェル!」
「ごめんなさいっ!」
陽魔法の使い手にとって、陽の光はこの上ない味方だ。そう言ったフェルディナンの指先から、サンレーザーが迸り、オークの頭を焦がす。
「あーん。あたしのムーンアロー、ほとんど効かない〜。いっその事、私の歌で、戦意喪失させれればねぇ‥‥」
ムーンアローの威力の低さに、不満そうなスノー。かと言って、今、戦意喪失の歌を続ければ、オークたちばかりではなく、自分達の戦意まで喪失してしまう。それは出来ない相談だ。
「ぴっぴっぴ! ぴっぴっぴ!」
「ぴっぴっぴっぴっぴっぴっぴ!!」
ドラパピとユラヴィカ、いっしょになって応援中。
「お前らばっかにいいかっこさせるかよ! ヤラれる前にヤレだ!」
九条がそう言いながら、オークの眼前に飛び出した。コボルトたちには目もくれず、チャージングからスマッシュEXを繰り出す。まだ、修行中の身の上なのは、熟知している。ここできられたら、自分の方がヤバイので、その前にと思ったらしい。
「うわぁっ!」
しかし、相手とてコボルトとは違う。カウンター気味に攻撃を受けて、九条の左胴のあたりに、傷が出来る。
「大丈夫か? 剣」
「こんな傷‥‥くらい‥‥っ」
駆け寄ったフローラに、彼はそう言ってニヤリと笑って見せた。だが、浮かぶ脂汗が、その言葉を裏切っている。そんな彼に、「無理をするな」とばかりにリカバーを施すフローラ。
「すまねぇ‥‥」
傷のふさがった九条はそう言った。これでもう大丈夫。そう判断した彼女は、すっくと立ち上がり、オークにクルスソードをつきつけ、騎士の礼儀作法に従って、こう宣言する。
「先祖代々の白騎士の名を辱めぬよう‥‥。フローラ・タナー、参るッ!」
盾で身を隠しながら、突撃していく彼女。
「負けてられるかよ! さっきの借り、この剣で返してやるぜ!」
そんなフローラを見て、九条は立ち上がった。そして、再びオークに剣を振り下ろす。
いかにオークとは言え、多勢に無勢。程なくして、敗北を悟った彼らは、ほうほうの体で逃げ出していった。
「やったぁ!」
「ぴっぴぴぴぃ!」
応援係のユラヴィカとドラパピ、2人して大喜びだ。
「よし。後は、この子をままドラの所に返すだけじゃな」
天華がそう言って、祠の向こうの洞窟に足を運ぼうとした。ここまで来たら、ぜひともドラゴンに会って帰らないと、気がすまないらしい。
「ぴー!」
「どうしたの?」
ところが、それを鼻先で押し留めるぴぃちゃん。どうやら、ままドラは怖いから、来ちゃダメと言いたいらしい。
「人生には冒険も必要なのだ! だがなドラパピ君! 君はまだ幼い! まだその時ではないのだ! いつか我輩のような立派な男になる日が来る! きっと来る! だから今は…」
「おめーは黙ってろ」
そのドラパピに、偉そうに説教たれようとしたローゼン、やっぱり九条にぶん殴られている。
「うふふ、もう村に着ちゃ駄目よ。ああ、でもこの恩は忘れちゃ駄目よ」
「ぴっぴぃ!」
天華の言葉に、『OK!』とばかりに鳴く彼。
「ばいばーい、ぴーちゃーん。またあそぼーねー!」
いつしか時刻は夕暮れ。そんな中、ノリコがぶんぶんと元気よく手を振っている。
「ぴぃぴーーい!」
そんな彼女に、ドラパピは同じ様に元気よくおててを振りながら、洞窟の奥へと戻っていくのだった。