【真・カンタベリー物語】密やかなる狩猟
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■ショートシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:3〜7lv
難易度:やや難
成功報酬:2 G 4 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:03月04日〜03月09日
リプレイ公開日:2005年03月08日
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●オープニング
●獲物
それは、カンタベリーから2日ほどの距離にある、とある貴族の領地で、行われようとしていた‥‥。
深い霧に閉ざされた館に、次々と乗り入れる高級そうな馬車。中へ入っていく彼らは、いかにもと言った風体の者達だった。
「ようこそ、皆様。今宵のハンティングへ」
そんな彼らを出迎え、口元に意味ありげな微笑を浮かべて、歓待する館の主らしき人物。短い銀髪を携えた、まだ若い当主である。
「この様な時間に行うとは、よほどの獲物なのだろうな」
「はい。今宵の獲物は‥‥麗しき獣にございます」
訪れた客人達に、恭しく頭を垂れる彼。その案内で、招かれた者達は、広間へと案内される。
「獣‥‥とな」
怪訝そうな客人達に、彼が指し示した先には、テーブル。その上には、何やら巨大な箱がおかれていた。紫色の布がかぶせられたそれに、主は自信たっぷりにこう言う。
「むろん。ただの獣ではございません。世にも珍しき、赤き瞳と、そして白き肌を併せ持つ、美しくも儚い獣でございますよ‥‥」
くくく‥‥と、のどの奥から笑い声が零れる。まるで、珍しい動物を、見せびらかしたくてたまらない子供の様に。
「よほどの自信があるのだろうな。そう言うからには」
客の1人がそう尋ねると、その主はこう言って、布に手をかけた。
「では、皆様方には、早速その『獣』をお見せいたしましょう。今宵‥‥狩るのは、この獲物にございます」
落ちた布の中。巨大な箱に入っていたのは‥‥切なげな真紅の瞳、揺れる赤い髪を持つ、1人の少年だった。
「こ、これは‥‥。ハーフエルフ‥‥!?」
しかも、良く見ればその耳は、人間よりも尖っている。さりとて、エルフ程でもない。ハーフエルフであるのは、一目瞭然だった。
「あ‥‥」
着ている物を全てはがされ、手首には枷。足首には、重い鎖が絡みついている。既に心は狂い掛けているのか、反応はほとんどない。無残なその姿に、客人達がざわめく。だが、主は変わらぬ微笑で、こう言い切っていた。
「いいえ‥‥。ここにいるのは、獣にございますよ‥‥」
かちゃりと、閂を外せば、箱の前面に取り付けられていた枠が、あっさりと外れる。倒れこむ彼の面を、客人達に見えるようにわざと上げて見せながら、彼はこう言った。
「この獲物を、我が領地内にある、霧の森へと放り出します。何、逃げ出す心配はございません。こうしてあるのでね‥‥」
「あうっ!」
痛みにはまだ反応があるのか、悲鳴を上げるハーフエルフの少年。見れば、鎖のまきついた足元からは、血が流れ、不自然な形に折れ曲がっている。
「期間は5日間。毎夜、寝静まる頃から、夜明けまで。この、麗しき獣を手に入れた方こそ、此度の勝者といたしましょう‥‥。いかがですかな? お方々」
だが、そんな光景さえも、目の前に居並ぶ者達にとっては、ただのアクセサリーに過ぎないらしい。その主と同じ様な表情をして見せながら、口々に「うむ‥‥。面白そうだな‥‥」だとか「可愛い子だ。苦しむ様は、さぞかし美しかろう」なんぞ囁きあう。
「では、決まりですね」
満足そうにそう言って、その主は狩猟の代金を、執事へと払わせさせるのだった。
●たれこみ
「議長、どうやら、我が領地ないで、非道の狩猟が行われているようです」
その頃、同領地のヨシュア議長宅では、レオンが強張った表情で、そう報告していた。
「そんな事が‥‥。本当に行われているのか?」
もし、それが事実ならば、ゆゆしき事態である。と、レオンは封の解かれた手紙を、議長に見せながら、こう言った。
「実は、先日、差出人不明の手紙が届いておりまして‥‥。嫌がらせかと思い、こちらで確認させていただいた所、その様な内容が書かれておりました」
「おそらく、係わり合いになるのを恐れたのだろうな。被害者がハーフエルフと言うのでは、仕方がない事だとは思うが‥‥」
内容を確かめ、ため息をつくレオン。まだまだ、彼らは迫害される存在のようだ。しかし、その直後、議長はサイドテーブルから、いくばくかの金貨を出して、こう告げる。
「お前の占いの腕は、信用に足るものだ。手紙のような非道が、この領内で行われているのなら、断じて許すわけにはいかない。急ぎ、キャメロットへ使いを出してくれ」
深く、頭を垂れるレオン。人狩りなど許される所業ではない。例えそれが、ハーフエルフであっても。
●闇のゲーム
一方、その頃館では‥‥。
「くくく‥‥。なるほど、考えたな‥‥」
「ふふ。お褒めに預かり、光栄にございます‥‥」
ワインを傾ける小柄な男。長椅子に寄りかかり、その面は見えないが、館の主が恭しくしている所を見ると、立場は上のようだ。
「ハーフエルフ狩りとは、キャメロットでは味わえない刺激‥‥。貴族が飛びつくわけだ‥‥」
「世の中は、理不尽を求めているのでございますよ‥‥」
平和すぎるゆえにね。と続ける彼。
世の中には、大きな戦のない事を、利用する者達もいるようだった‥‥。
●リプレイ本文
「件の少年は、相当弱っているか、息を潜めている筈。なんにしろ、反応は弱い筈だ」
「と言う事は、小さな反応をたどっていけば良いんだね」
ティアラ・サリバン(ea6118)の助言に、セシリー・レイウイング(ea9286)とカシム・ヴォルフィード(ea0424)は、ブレスセンサーを唱えると、比較的小さな反応を探していた。と、そんな彼に、ティアラはいつもの場所で、テレパシーの魔法を唱える。
「私は、上の方で見ている。目線より高い所にいれば、闇狩人には、そうそう見つからない筈だ」
そう言って、少し高い木の枝へと飛んで行く彼女。
「少年が狂化してなければよろしいのですけど‥‥」
不安げなセシリー。ハーフエルフ特有のその現象は、とても目立つ。彼女達にとって探しやすいと言う事は、闇狩人達にとっても探しやすいと言う事なのだから。
「見付かった?」
ややあって、ヒースがそう問うてきた。と、カシムは閉じていた目を開けて、こう答える。
「うん。数は多くない。一つ一つ探していけば良いと思うよ」
そう言って、フローラ・タナー(ea1060)お手製の地図に、反応の合った場所を示すカシム。後は、そこに近付いて、適時捜索すれば良いだけ。
「ちょっと見てくる。モンスターや小動物だったら、無駄骨だからな」
ティアラが向かった先には、幾つもの沼。目指す反応はまだ先だったが、彼女は慌てて引き返す。この辺りの湿地帯には、モンスターがいると言う情報を思い出したからだ。
「避けた方が無難だな。この辺りには、少年はいないのだろう?」
叶朔夜(ea6769)のセリフに、カシムが頷いている。ならば、迂回した方が良い。余計な騒ぎを起こせば、いつ闇狩人に気付かれるか、わかったもんじゃない。
「皆さん、出来るだけ、音を立てないように」
セシリーが、そう忠告した。その彼女の指示に従い、ヒースクリフ・ムーア(ea0286)が慎重に森の奥へと歩を進める。ジャイアントの彼、この体重で、沼にでも落ちたら、タダではすまないからだ。
「オーガがこんな所にいると言うのか‥‥」
それを見て、真幌葉京士郎(ea3190)が警戒するように、周囲を見回して、そう言った。
「外道貴族どもが、被害者の代わりに、オーガにでもぶち当たれば、万々歳なんだがな」
双海一刃(ea3947)が、そんな事を呟いた直後である。
「‥‥気をつけて。何か来る」
周囲を警戒していたルア・セピロス(ea3168)が、忠告をした。見れば、湿地に生い茂る低木が、がさがさと大きく動く‥‥。即座に、刀を構える京士郎に対し、朔夜がこう言った。
「出来るだけ眠らせて下さい。殺せば死体が残り、血を流せば、猟犬が嗅ぎつけます」
「分かっている」
任務は、狩り被害者の確保と逃走。無用な戦いは、避けるが無難だと、一刃も重々承知している。
「がぁぁぁっ!」
現れたのは、やはりオーガだった。しかも、鎧をまとい、大きな丸太を持った歴戦の戦士と思しきオーガ。人の臭いを嗅ぎ付け、獲物を求めて姿を見せたらしい。その視線は、何故かカシムに注がれていた。
「‥‥男だよ。ボクは」
オーガの瞳が、暗い情欲に燃え滾っているのを見て、彼は平静を装って答える。しかし、通じていないのか、そのまま彼を捕まえようとする。どうやら、あまり頭の良いオーガはないらしい。
「させるか!」
振り下ろされた腕を、ヒースが受け止める。たらりと流される血に、オーガが怒りの咆哮を上げる。せっかく見つけた生贄を、取られたくないとでも思ったのだろうか。
「来い。受け止めてやる!」
剣を構える彼。仁王立ちのそれは、デッドオアアライブの構え。そこへ、オーガは構わず丸太を振り下ろす‥‥。
「ぐぅっ」
ダメージは少ない。が、それでも衝撃はある。顔をしかめて耐えるヒースを、オーガが、黄色い歯をむき出して笑った。
「峰打ちは難しそうですね‥‥」
ともすれば、全力で掛からねばならぬ相手だ。そう思い、朔夜も忍者刀を抜く。
「いや、まだ手はある。頭がよくないと言う事は、即ち魔法にも弱い。幸い、今は風上だ」
一刃がそう言った直後。
「俺が相手をしているうちに、眠らせるんだ!」
ギリギリと丸太を受け止めていたヒースが、合図をする。とたん、放たれる春花の術。甘い臭いのそれは、オーガに眠りの作用をもたらす。急に動きを鈍らせ、倒れるオーガ戦士。
「急いで。この隙に、撤収しましょう」
朔夜がそう言った。すぐそこまで着ている闇狩人達。その彼らから隠れるように、冒険者達は沼地を後にする。
「見て、ヒトガタ特有の‥‥。片方、引きづってるみたい‥‥」
と、足跡を見つけたセピロスが、進行方向を指し示しながらそう言った。見れば、足跡は不自然にびっこを引いており、時折、膝をついているか、転んでいるかしている事が分かる。
「だいぶ追い詰められているようだな‥‥」
「急がないと‥‥。向こう、見て下さい」
後ろを預かる朔夜が、同じ様に後方を守る一刃にそう言った。その視界では、煌々とした松明の明かりが、木々の向こうに見えている。しかも、何やら楽しげに騒いでいる話し声も聞こえていた。
「こちらには気付いていないようだね‥‥。どうしようか?」
「無用な戦いは避けた方が良い。感づかれると困るしな」
ヒースの言葉に、そう答えるティアラ。だが、彼が頷いて、方向転換を図ろうとした直後だった。
「何かいる」
厳しい口調で警告する一刃。隠密行動に長けた者だからこそわかる、明らかな殺気。走りこんできたのは、猟犬。それも、かなり訓練されたもののようだ。
「補足されたみたいだね。ここは私が食い止める」
「バカ者。おぬしはさっきオーガとやりあったばかりだろう。こんな所で戦ったら、目だってしまうわ」
構えるヒースの頭に乗り、それを押し留めるティアラ。
「ティアラ、アレを。盾は、カシムさんとヒースさんに任せて下さい」
オーラボディを詠唱し、己の防御力を上げるヒースと、正体がばれないようマスカレードを着用し、パリーイングダガーを構えている鳳萌華(eb0142)。彼らを見て、フローラがそう頼んだ。
「スリープ!」
直後、高速詠唱で唱えられたティアラのスリープが、騒ぎ立てようとしていた猟犬達を、夢の世界へと誘っていた。
「ねぇ見て。血の跡」
セピロスが見つけたそれには、下の方に、まだ新しい血がこびりついていた。萌華は、フローラの地図と、周囲の状況を慎重に見比べる‥‥。
「‥‥そこ、木の根」
彼女が指し示した刹那、覆いかぶさるようにしていた枝が、がさりと動いた。中に、誰かがいるのは確かなようだ。慎重に、その枝をどけて見るセピロス。中には、落ちていた枝をナイフの様に持ち、怯えた表情を見せる裸の少年。特徴的な耳を見れば、ハーフエルフである事は一目瞭然だ。首を横に振る彼に、セピロスは自分では手に負えないと悟り、こう言った。
「‥‥いたわ」
「‥‥保護だ」
そう答える萌華。急がなければ、猟犬が目を覚まし、主人たる闇狩人達に知らせてしまう。だが、物事はそう簡単には運ばない。
「こないで‥‥」
彼が、言葉少なにそう叫んだ直後、その瞳と髪が真紅に彩られてしまう‥‥。
「ハーフエルフも大変だね‥‥」
ぼそりと呟くセピロス。どうやら、闇狩人達を退けながら、彼の心に潜むモンスターも、倒さなければならないようだ。
「わたくし達はあなたの敵ではありません。あなたを守って差し上げますわ」
セシリーが、少年に向かってそう声をかけてみる。だが、少年は首を横に振るばかりで、恐慌に震えていた。
「近くに連中がいる。嗅ぎつけられないうちに、何とかしないと」
ブレスセンサーで、辺りを警戒していたカシムがそう言った。見れば、遠くの方に、松明の明かりが見える。どうやら、自分達を、その一味だと思いこんでいるようだ。
「すっかり人間不信になってしまっているな。仕方がない。少し荒っぽいが、勘弁してくれよ!」
眠らせるしかない。そう思った朔夜、逃げようとした少年を捕まえ、当身と言う名のスタンアタックを叩きこむ。冒険者のハーフエルフ達と違い、何の技量も持ち合わせていない彼は、その一撃に、あっという間に崩れ落ちていた。
「何をするんですか!」
「峰打ちだ。だいいち、こうしないと、話も出来ないだろう」
気を失う彼を抱きとめる朔夜。正論だが、フローラは納得行かないようだ。
「ともかく、冷えた身体を温めないと」
文句をつけるのは後だ。そう思いなおし、フローラはバックパックの中から、余分な防寒着を出し、少年へと羽織らせる。
「う‥‥」
「目を覚ましたようだな」
程なくして、毛布に包まれた彼が、目を開ける。狂気から開放された彼の瞳は、綺麗なエメラルド色をしていた。
「安心して、私はあなたを傷つけたりしない。助けたいのです」
京士郎の腕の中、ぼんやりした表情の彼に、フローラはそう語りかけた。腕を頬に当て、その温もりで心を癒そうとする、聖母の様に。
「あ‥‥や‥‥」
「口も聞けないほどショックと言うわけか‥‥。いや、もしかしたら、人としての言葉さえ、与えられていないのかもしれんな‥‥」
中々、言葉を発しようとしない彼を見て、京士郎がそう言った。生まれたハーフエルフを、人として扱わない時だってある。迫害と言うのは、そんなものだと。
「これを飲んでください。傷が治ります。傷を癒したら一緒に逃げましょう」
そんな彼に、フローラは持っていたヒーリングポーションを差し出す。自然にその傷が癒えるには、一ヶ月は掛かろうと言う怪我を追っているのは、見た目にも分かる。だが、少年は中々それを手に取ろうとはしてくれない。
「怖いのだろうな。仕方がない。ちょっと貸せ」
「何を‥‥」
怪訝そうにフローラが見る中、一刃は、ポーションの封を切ると、少年の顎をくぃと持ち上げる。
「‥‥!!」
そのまま、口移しに一気に流し込む彼。驚くフローラに彼は、「何を驚いている。人工呼吸と同じだろう」と言い放っていた。
「ほら、もう痛くない。大丈夫でしょう?」
「僕は‥‥」
が、その効果のおかげか、少年の頬に赤みがさす。ようやく、まともに口がきける様になったようだ。
「私は白騎士。フローラ・タナーと言います。あなたの名前を教えてもらえませんか?」
きっと人格を否定され続けてきたはず。名前を聞くことで、個人として扱ってもらえているのだなと思ってもらえればいい。そう声をかける彼女。
「ふろーら‥‥? 僕の名前‥‥は‥‥」
必死でその暖かさに答えようとする彼。しかし、どうやら名前すら与えられず、獣の子同然の扱いを受けてきたらしい。申し訳なさそうな表情をする少年に、フローラは『良いのよ』と微笑んで、ぎゅっと抱きしめてあげている。羽織らせた防寒着に、小さな涙の跡。
「痛かっただろう? もう、怖くない。名前がないのなら、僕がつけてあげるよ」
その様子を見て、カシムもそう言った。だが、ちょうどその時である。
「命名は、カンタベリーに帰ってからだ。猟犬どもが、目を覚ましたらしい」
聞こえ始めた犬の鳴き声に、怯える少年。
「心配するな! もう誰にも君を傷付けさせやしない!」
それを見て、ヒースが力強くそう宣言する。
「少し動く事になりそうだな。落ちないように、しっかりつかまっているんだぞ」
うっかり振り落とさないように、萌華にロープで固定させながら、京士郎がそう言った。と、朔夜が反対側を示しながら、こう指示を飛ばす。
「人数が多いな。何人か黙らせたら、外に向かってくれ。みつかったら、議長に迷惑がかかる」
「あの人が、それくらいで顔色を変えるとも思いませんけれど。ライトニングサンダーボルト!」
それを受け、セシリーがちょうど射線上に一列になった闇狩人の馬を狙って、魔法を打ち込んだ。
「何だ! 急に馬が暴れだしたぞ!?」
狂乱する馬を押さえつけようとして、落馬する貴族達。それを見て、セシリーはさまぁ見やがれと言った風情で、ころころと笑う。
「ほほほほほほ。馬から落ちて痛い思いをなさいませ」
「怖い‥‥」
その表情に、腕の中のの少年がぎゅっとしがみついてきた。
「‥‥頼むから、この子を怯えさせないでくれ」
「あら、ごめんなさい。どうしても、許せなくってねぇ」
せめて、これくらいのオシオキは大目に見てちょうだいな。と言わんばかりのセシリー。
「お仕置きタイムは安全な所に逃れてからですよ」
「‥‥や‥‥」
その姿に、また恐怖心を煽られてしまったのだろうか。と、京士郎はそんな彼を、片腕で抱きしめながら、こう語りかける。
「自由になりたいのだろう? だから、ここを突っ切るもう少しの間だけ、お人形さんの様に大人しくしててくれ」
その言葉に、静かになる彼。
「反省してらっしゃいませんわね」
一方で、貴族達は、自分達の行為が、その災いを招いているなどとは、欠片も思っていないらしい。今度は直接電撃を叩きこまないといけないかしら‥‥と呟くセシリーに、セピロスが一言忠告を発する。
「攻撃を仕掛けるのは止めた方が良い‥‥。相手に、侵入者がいる事がばれる‥‥」
「ちっ、残念」
腕を引っ込める彼女。
「ヒース、妨害工作を手伝ってくれ。こいつで道を塞ぎたい」
ジャイアントのパワーに物を言わせ、その辺に落ちていたた丸太や枝で、朔夜の言う通りに、妨害工作を始めている朔夜。見れば、一刃もあたりに水を撒いていた。
「何をしている?」
「臭いを消すのさ。猟犬対策にな」
沼が今度は自分達に有利な戦場を作ってくれる。それを示す一刃を見て、京士郎は何か策を思いついたようだ。
「なるほどな。ふ、良い事を思いついたぞ。確か、あのオーガは、まだ眠っていた筈だな。少年、ちょっとこれ借りるぞ」
彼は、持っていた香り袋を少年に持たせると、その足にまかれていた応急処置の布を少し切り取って見せた。
「彼奴等には、それ相応の報いを受けてもらおうと思ってな‥‥。血の臭いを、たっぷりとしみ込ませた布だ。興奮したオーガと、興奮した猟犬ども‥‥。追ってきた闇狩人と鉢合わせたら、どうなるか‥‥。確かめられないのが残念だ」
ふふふふ‥‥と意味ありげな笑みをこぼす京士郎。彼もまた、外道な貴族達の行いを目の当たりにして、頭に来ているようだ。その背後では、オーガの怒号と、犬の鳴き声、そして‥‥悲鳴。
「狩りは‥‥生活の為‥‥。遊びでするものじゃない‥‥」
その光景を背に、ぼそりと呟くセピロス。
なお、少年はティアラの口添えにより、ギルバード・ヨシュア(ez1014)の下へと保護されたと言う‥‥。