カップルバスターバスターズ
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■ショートシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:4〜8lv
難易度:普通
成功報酬:2 G 40 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:04月21日〜04月26日
リプレイ公開日:2005年04月28日
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●オープニング
寒いイギリス王国でも、そろそろ水が温み、雪が消えようかと言う時期、人々の営みに紛れて、冬眠から目覚める存在がある。
「そろそろ、冬明けかのぅ。トゥイン」
「はい。お似合いのカップルな方々が、時折見受けられて、うらやましゅうございますわ〜」
ある晴れた日のお昼時の事だった。ドーバーで貿易商を勤めているバンブーデン氏。その伯爵夫人から言われて、うっとりと目を細めているのは、護衛兼お世話係のトゥイン・パレス嬢である。
「お前はいつもそうじゃのぅ。何なら、縁談でも紹介してやろうか?」
「そればかりは、御方様でも、お断りさせていただきますわ。私、自分の旦那様は、自分で見つけますの☆」
御方様のセリフに、ちちち‥‥と指を横に振るトゥイン嬢。今はまだ、お見合いをする気はなさそうだ。その彼女の瞳には、一組のカップルが映っている。
「春になると、衣装が可愛いらしくなるなぁ。良く似合ってるよ」
「いやですねー。そんなお世辞、背筋が痒くなりますー。褒められたって、何も出ませんよ」
相手に衣装を褒められて、ぽっと頬染める彼女さん。暖かくなり、今まで家の中でいちゃこらしていたカップル達も、芽吹き始めた花々を目当てにか、外を仲良く散歩するようになっていた。
ところが、その時である。
「ふっふっふ‥‥」
日差しが暖かいと言うのにも関わらず、コートを羽織った男が1人。顔にペインティングを施し、コートの上からでも筋骨隆々とした体格な事がわかる、身長の高い御仁だ。
「あ、あの。何か御用ですか‥‥?」
怪訝そうに尋ねる彼氏の方。彼女の方は、怯えたように、後ろに隠れてしまっている。それを見た男は、瞳をきらーんと輝かせ、手にしていたメイスを振りかざした。
「人前でいちゃつくとは、なんとふしだらなっ!」
「い、いや別に‥‥。2人で昼メシ食ってただけですし‥‥」
彼氏が慌ててそう言うものの、本人はメイスをしまう気はなさそうである。
「その乱れた言葉遣い! 不届き者め! 制裁を食らわせてくれる! 我はカップルバスター也! 覚悟ぉぉぉっ!」
ぶんっと振り下ろされるメイス。その拍子に、コートがめくれ上がり、その内側が垣間見える。その下は、まるで自身の肉体を誇示するかのように、褌一丁。
「うぉわぁぁっ!」
「いやぁぁんっ」
逃げ惑うカップルさん。だが、仲良くお手手つないで、逃げようとする彼らを、その変態さんは気に入らないらしく、しつこく追い掛け回している。
「お二方! 早くこちらへ!」
「す、すいませんっ」
あわやと言う所で、トゥインが屋敷の中へと引っ張り込んだ。と、その変態さんは、ちっと舌打ちして、何処かへと走り去って行く。
「大丈夫ですか?」
「た、助かりました〜。いや、噂は聞いていましたが、まさかこんな昼間から出るとは、思わなかったものですから」
礼を言う彼氏。話を聞くと、なんでもここ最近、暖かくなって、外でデートを楽しんでいるカップルを狙う、全裸コートの男がいるらしいとの事。多くは、夜に出没していたので、昼休みに逢瀬を重ねるなら、現れないだろうと考えたのだが、どうやら甘かったようだ。
「御方様ぁ。このままでは、愛を育む事も出来ませんわ。どうか、あのはた迷惑な裸コートさんを、どうにかして下さいましぃ〜!」
若い2人の窮地を知ったトゥイン、ごろごろと喉をならして、御方様の腕にからみつく。彼女の方も、「このままでは、我々も安心して弁当が食べれませんので‥‥。お願いできませんか?」と。手を合わせていた。
「うぅむ‥‥。民の安全を守るのも、我らの役目だしのぅ。仕方ない。トゥインや、ちょっとギルドまで行ってくりゃれ」
「かしこまりました〜」
嬉しそうに頭を垂れるトゥイン。
『平穏な春のデートを荒らす、はた迷惑な御仁を、何とかして下さい』
程なくして、イギリス冒険者ギルドに、そんな依頼書が載ったのだった。
ところが。
「なぬぅ!? 管理人の癖に、ふしだらな異性不純交遊、同性不純交遊を黙認しようと言うのかっ! 許せん! そっちがそのつもりなら、こっちも考えがある! とゆーわけで、なんか雇うのだ!」
その依頼書を見たらしい、例の褌コートの男が、ドーバーの街角で羊皮紙を握り締め、そう命じている。
「ヨーソロー!」
だが、明るくそう言った部下と思しきシフールのお尻には。
「バカな人間☆」
シフールらしからぬ、鉤型に曲がったデビルの尻尾が生えていたりする。
「と言うわけで、アンタ達は今から、カップルバスターズだからねん♪」
そのシフールは、深夜の森で、5人ほどの怪しいコート姿の御仁に、そう命じているのだった。
●リプレイ本文
バンブーデン家に向かう道で、紆余曲折の結果決まったのは、ネイラ・ドルゴース(ea5153)が知り合いの少年と。ジョセフィーヌ・マッケンジー(ea1753)がノイズ・ベスパティー(ea6401)と。そして、ヴァイン・ケイオード(ea7804)が情報収集に向かった為、ヒンメル・ブラウ(ea1644)が男役として、ロレッタ・カーヴィンス(ea2155)と組む事になった。ローランド・ユーク(ea8761)と、ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)は、別行動で聞き込みだ。
「これ、目立たない様に隠しておかないといけませんかしら‥‥」
ロレッタがそう言って、自身の持っているクルスソードの片付け先を見回した。だが、それには相方のヒンメルが、首を横に振る。
「いや、必要ないよ。こうして、街中を仲良くデートしている冒険者だって多いし」
見れば、行き交う人々の中にも、剣や弓を携えている者達がいる。結局、帯剣したままにする事にしたらしい。
「それにしても、恋人のふり‥‥。依頼のためとは言え、少し緊張しますわね」
「それほど、べたべたしていなくても、襲ってくるようだから、あまり気にしなくてもいいんじゃないかな」
どきどきとした様子のロレッタの肩をぽむ、と軽く叩き、励ますヒンメル。それだけを見ていれば、充分に仲の良さそうな恋人に見えなくもない。
「さて、どこで待ち伏せようかな」
「出没しそうな場所を、先に聞いてくると言うのも手ですわね‥‥」
話を聞いてきたところ、やはりここ数日は、バンブーデン家の荘園を中心に、出没しているようだ。さっそく、2人で向かった所、まっすぐここへ来たらしい先客がいた。
「身体は小さいけど、何かあったら、僕が守るからね!」
「ありがとう。お礼に歌でも歌うね」
ジョーの肩の上で、そんな事を大声で言っているノイズの姿がある。
「見苦しくったってぇ〜♪ 物悲しくったって〜♪ コートの中身は平気なの」
何が平気なんだかわからないが、そこそこ楽しんでいるようだ。と、彼女の調子っぱずれな歌を聞いたヒンメル、本業の詩人魂が刺激されたのか、こう言った。
「あーあ。わざとらしすぎるよ。恋人を装うなら、もっと歌い方があると思うんだけど。ロレッタ、聞いてくれる?」
「ええ、喜んで」
暖かな日差しの中、ベンチに座るロレッタ。と、ヒンメルは軽く息を吸い、春の日差しに誘われた小鳥のような声を響かせる。
「やぁ、ウィーンの森に春が来た、雲雀が歓呼の声を響かせ、柔らかな緑のつぼみが萌え出て、この世のいたるところに、歓呼がどよめく‥‥」
ケンブリッジでは、音楽部の部長職を務めていた彼女。その歌唱力は、プロとしても上級レベルに属するものだ。
「詩人ですわね。続き、聞かせてもらってよいかしら?」
うっとりと聞きほれるロレッタ。それだけを見ていると、どこかの令嬢が、気に入りの詩人に歌わせながら、逢瀬を楽しんでいる姿そのものだ。
「そう、ウィーンの森に春がやってきた。歓呼が、歓声が、歌声が、野にも、林にも木霊している‥‥」
その歌声は、少し離れた所で、兄貴から隠れて、恋人のふりをしていたネイラと少年のもとにも届いていた。
「なんだか、恥ずかしいですぅ〜」
「仕事なんだからしょうがないだろう。寒くはないか?」
とっておきらしい赤いドレス姿のネイラに抱きかかえられて、顔を朱に染めている少年。しかし、身長と年齢差から、カップルと言うより、兄弟にしか見えない。
その時、がさりと背後の茂みが動いた。
「変態さんかもしれない。よし少年、このまま‥‥」
まだ日も高いっちゅーのに、ネイラさん、勢い余ってそのままベンチへ押し倒し。少年が瞳を潤ませながら、勘弁してくれと言わんばかりに、力なく首を横に振っているが、そんな事ぁお構い無しだ。
と、茂みが書き分けられて、ぬぅっと現れる人影。
「だけど、悲鳴が出ちゃう。女の子だもん♪」
それを見たジョーが、そう歌い終えると共に、盛大な悲鳴を上げた。とたん、その周囲で警戒に当たっていたヒンメルとロレッタが、われ先にと駆けつける。
「現れたね。この変態!」
「ちょ、ちょっと待て! 俺だ! そいつの兄貴だ!」
ぐるりと周りを取り囲むと、姿を見せたのは、船で一緒だったエルフのお兄さんである。で、始まる大喧嘩。
「面白そうだから、しばらく見物してる?」
「それだと御仕事にならないよ」
まぁ、これはこれで楽しそうなんだが、このまま痴話喧嘩を見物している暇はない。後ろ頭に汗を流しまくっているメンバーに、ノイズはこう提案してみせた。
「ここにはもう来ないだろうから、別の所を探そう」
人、それを『触らぬ神にたたりなし』と言う。
そんなこんなで、日が暮れた。
「出没範囲が広すぎるなぁ。何でだろう」
ノイズが、トゥイン嬢に、遭遇した時の事や、荘園内の地理、そして被害状況などを聞いて見た。それを元に、伯爵夫人が貸してくれた地図に、小石で目印を付けて行くと、面白い事が判明したのだ。
「こう言う話には、賛同するのが多い筈だ。特に、冒険者辺りがな。トゥインちゃん、このあたりで、同業がいそうなエリアを知らないか?」
「港の方なら、船子さん達が根城にしている酒場が、たくさんありますわ」
彼女が言うには、その中には、たちの良くないお店もあるとの事。それを聞いたヴァインは、夜があまり遅くならないうちに事情を聞いてこようと、港へと向かう。
「そこのお二方。相性でも占って進ぜるのじゃ」
港の大通りで、行き交うカップルを相手に、声をかけているのはユラヴィカ・クドゥス。この界隈で、占い師の姿を借りて、情報収集をしていたようだ。
「おう、そこの占い師。ちょっと人探しをしてるんだが、占ってくれねーか?」
「う、うむ。ちょっと待っておれ」
客のふりをして、どっかりと腰を下ろすヴァイン。と、ユラヴィカは少し戸惑ったようだが、占い道具片手に、相談に乗るふりをして、こう言った。
「最近、このあたりで、ストーカー騒ぎが起きておる。この騒ぎは、その前に荘園でも起こっていたので、カップル達は、また変態が出るんじゃないかと、びくついておるようじゃ」
彼が集めてきた話では、ちょっとでも寄り添っていようものなら、とたんに気配を感じ、落ち着いて話も出来ないらしい。
「なるほどなー。それで、そのストーカー男ってのは、どこに出るんだ?」
「主に‥‥人が多い場所じゃ。そうじゃのう、この時間なら、街の広場か、その周辺と言ったところかのう。ちょうど、大道芸がやっておる頃合じゃし」
本当なら、人目の付かない場所でいちゃつこうと言うものだが、何をされるか分からない恐怖感から、自然と人の多い所に向かっているらしい。それを聞いたヴァインさん、ユラヴィカにこう告げると、広場へと向かう。
「OK。んじゃ、仕事頑張れよ」
「では、言われた通り、頑張るとするかのぅ‥‥」
それを見送ったユラヴィカ、その『仕事』をする為、自身も広場へと向かうのだった。
賑やかに人の集まる広場で、聞こえてきたのは、リズムの良い民俗音楽。そんな中、現れたのは、顔にグレートマスカレードを着用し、上着に豪華なマントを羽織り、中身は踊り子の衣装一式を身に着けた、ある意味完璧ないでたちのローランドだった。
きわどい衣装に、一部のご婦人さん達が、目を輝かせる。その視線を受け、右腕にエロスカリバーを装備した彼。いつの間にか剣舞は、エロスなピンクのもやをまとわせた、妖し過ぎる全裸ショーへと変わって行く。
(「変態男め、見えるか? 本物の輝きが‥‥! 俺の完璧なセクシィダンスを、よぉく目に焼付けやがれ!」)
もちろん、ローランドの方も、流し目を送って、アピールを忘れない。何組か、カップルがその流し目で破壊されていた。
「時に、お嬢さん、この街の住民で、変態出没時期と前後して、フラれたり別れたりした、ゴツいマッチョ男を知らないか?」
で、数時間後。その『たくましい殿方が大好き☆』と言ったお嬢さん達に、酒場に誘われたローランドさんは、ようやく本題を切り出した。
「そうねぇ‥‥。おおかた、船に乗れなかった船子じゃないのかしら」
やっぱり、男は度胸と知性とたくましさを兼ね備えてないとねー? なんぞとほざくお嬢さん達に、彼は続けてこう問いかける。
「あと、もう1つ。コート褌男、見なかったか?」
「船上げの人足さん達なら、しょっちゅうそんな格好してるわよ。そのまま、陸上がっちゃう人は少ないけどね」
どうやら、びしょぬれになる事も多い荷揚げ人足は、肌着が仕事着になっているようだ。教えてくれたお嬢さんに礼を言い、自身の住所を差し出すローランド。と、そこへ、通りすがりを装ったユラヴィカが、こう言ってきた。
「そこの踊り子。お探しの船子が、コート引っ掛けて、伯爵の荘園に向かったようじゃ」
「むう。こうしちゃいられねぇな。お嬢さん、あばんちゅうるは、明日の夜にしてくれよ☆」
その情報に、ローランドは、軽くウィンクを残しながら、華美なローブを引っ掛けた姿のまま、荘園へと向かうのだった。
そして。
「本当なのかい? ユラヴィカ」
「うむ。さっきエックスレイヴィジョンで確認したから、間違いなく、『黒』なのじゃ」
現れた不審人物の報告を聞いて、ヒンメルが問うと、彼は大きく頷いた。ここへ向かう道すがら、魔法を使って見た所、中身は素肌と褌だったとの事である。それを聞いた冒険者達は、昼間と同じ様に、カップルのふりをして、荘園内に散る。
「お前に合うと思って買ってきたんだ、着けてみてくれ‥‥」
そんな中、ヴァインは、そう言いながら、持っていた水晶のペンダントを、ロレッタに差し出している。昼間は、ヒンメルと会っていた彼女だ。派手に詠っていた事を考えれば、変態さんには、『数多くの男性を手玉に取る御令嬢』に見えるかもしれない。そのロレッタが、ペンダントを受け取った直後だった。
「ちょっとまったぁぁぁl! そこの不届き者!!!」
思惑通り、茂みの向こうから、葉っぱを頭に載せた状態の、変態褌コート(仮)が乱入してくる。
「掛かったな! アホがぁっ!!」
だが、それまで令嬢に愛を捧げる冒険者の顔をしていたヴァイン、懐からスリングを取り出すと、その顔面に石礫をお見舞いしていた。
「ふぁーはははは! 静粛な夜を荒らす変態め! これでも食らうが良い!」
しかもクイックシューティングまで使って、もう一発も至近距離から直撃させている。
「だーっ! やめんかー! わしは何もしとらんーー!」
「嘘付けこのヤロー!」
ぶっ倒れた変態褌コートさんを、げしげしと踏みつけるヴァインくん。
「む、むう。ここはいったん戦略的撤退を‥‥」
敵わぬかもしれないと悟った変態褌コート、くるりと回れ右をして、逃げ出そうとする。
「逃がさないわよ。ノイズ、アレを!」
だが、そこへ、忍び足でこっそり接近していたジョーが、立ちふさがり、ノイズに合図をした。
「はーい☆ えーい!」
彼に投げ縄を放たれて、ひっくり返る褌コート。首に引っかかったそれは、そのまま彼の手によって、ぐるぐる巻きにさせられてしまう。そこへ、少し離れていた他の面々が集まってきた。だが、ぐるりと取り囲まれて観念したのか、彼はこう叫んだ。
「く、くっそー! こうなったら!」
ぴゅーいっと口笛を吹くと、現れる増援部隊。全員、褌コート姿である。
「そこまでだ!」
と、その時だった。グレーとマスカレイドを着用し、華美なローブに身を包んだきわどい姿の踊り子1名。
「むぅ。あのグレートマスカレイドは!」
そう。ついさっきまで、伯爵夫人の護衛と称して、お茶こいていたローランドである。彼は、ローブをはためかせると、持っていた日本刀を構えて、こう叫んだ。
「カップルバスター参上! 貴様らに、バスターの何たるかを教えてやるよ! 芸術だと言う事をな! 熱き拳を食らいやがれ!」
ソードボンバーが、あたり一帯に食らわされた。味方にまで被害が出ているのだが、そこはあえて目を瞑るらしい。混乱するその隙に、駆け寄ってきたローランド、中心にいた親玉らしき褌コートにこう告げる。
「で、そこのお前! 今から、根性を叩きなおしてやる!」
そう言うが早いが、彼にバーストアタックを食らわしていた。
「あら、いやん」
当然、その下にあるのは、まぁそう言う格好なわけで。いつでも攻撃が仕掛けられるようにしていたロレッタ嬢、恥ずかしそうに頬を染めている。
「なんて格好晒してる! お前なんか袋だ。袋!」
「うぎゃぁぁぁぁ!!」
こうして、哀れ身包みはがされちゃった褌コートさんは、恥らう乙女と情熱の踊り子、他数名の良識ある冒険者さん達により、ぼこぼこにされてしまうのだった。
「オジサン達のお父さんやお母さんが、立派に不純異性交遊してたから、今のオジサン達が居るんだよ?! わかってる?」
ノイズから、がみがみと説教を食らっている褌コート壱号。その背中には、『この者、変態』と書かれしまっている。
「あ、あははは‥‥。いやぁ、そうは申しますが、やはりそのー‥‥目の前で、ああいうのを見ると、イライラするわけで‥‥」
しかし、彼は納得が行かないセリフを吐きながら、別の方向を指差す。
「あ、あのー‥‥、もう犯人は捕まったんじゃ‥‥」
「何言ってんだい。これからはご褒美だよ。さぁ、遠慮なくお姉さんの胸に飛び込んでおいで☆」
そこでは、ネイラが件の少年を、むぎゅーっと抱きしめていた。それを見たヴァインくん。もっともだと言わんばかりにして、一言。
「よし、訂正してやる。バカップルは許す。ありゃ邪魔だ。ただし、怪我させないように、紳士的に邪魔するんだ。良いな?」
何か論点がずれているような気がするが、そこはそれ、大人の事情で気にしないのが、正解と言うものだろう。
「ま、いいんじゃない?」
「良くないぞ。この手の話の裏側に、決まっていっつもいる憎いあんちきしょうが、まだ出て来てないのじゃ。おのれ、あやつめ、どこへ消えたのじゃー!」
ぷりぷりと怒るユラヴィカ。目の色が変わっている。せっかく対デビル用に武器を交換したのに、それが無駄になってしまうのと、同じ体格の敵にからかわれるのには、我慢がならないようだ。
「よし。俺に良い案がある」
と、それを聞いたローランド、ぐるぐる巻きにされた褌コートに、こう告げる。
「そこのおっさん。充分反省はしたんだな? んじゃ、とっとと帰れ」
今まで、お仕置きを受けていた褌コートおっさん。今度はコートを外れないように留めながら、こくこくと頷きながら、ほうほうの体で闇の中へ。
だが結局、そのシフールらしき影に追いつく事は出来ず、正体は謎のまま残るのだった。