酔っ払い始末記
 |
■ショートシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月13日〜06月16日
リプレイ公開日:2005年06月20日
|
●オープニング
パープル女史は、自身も大問題を起こすようなぶっとんだ教師だが、その分、やっかいな事件の相談にも、良く応じている。今回、彼女の元に訪れたのは、そんなやっかいな事件だった。
「忘れ物をこっそり探してくれ? いったい何やったのよ」
「いやー、ちょっと飲み過ぎちまって。あ、俺じゃねぇよ? ヤバいくらい飲んだのは、俺のダチ」
軽い調子で事情を話す騎士学校の生徒。彼の話では、同じ教室の友人と、研究塔のある部屋で、夜遅くまで飲んでいた所、深夜に半裸で帰ってきて、そのままぶっ倒れたらしい。で、朝気が付くと、服はおろか、剣までどこかに忘れてきたとの事。
「バカねー。何も前後不覚になるまで飲む事ぁないじゃない」
「‥‥人の事言えんのかよ」
つい先日、新入生歓迎の為、のんだくれた教師のセリフとは思えない一言に、生徒から厳しいツッコミが入る。
「あ、あははは。でも、なんでそんなに飲んじゃったのよ」
「面子の中に、魔法学校の女の子がいたんだってさ。で、下心見え見えで飲ませようとするバカがいやがって。で、代わりに飲んで、二日酔い」
今頃は、部屋でうなっているとのこと。どうやら、いたいけな女子学生‥‥ケンブリに入学しようと言う良家の子女辺り‥‥を、毒牙にかけようとするバカから庇って、そこまで飲んでしまったらしい。これも、女性を大切にしようと言う騎士道精神の現われだろうが、だからといって、大事な剣をどこかに忘れてきてしまっては、下手すりゃ退学と言われかねない。そこで、パープル女史に相談しに来たと言うわけだ。
「なー。センセ、頼むよー。俺、あいつと一緒に騎士叙勲を受けたくて、ここ通ってんのに‥‥。それに、女の子の身代わりになって倒れたのに、このままじゃ、あいつだけバカを見ちまうじゃねーかー。なー?」
「そうねぇ。それは少し可哀相ねぇ‥‥」
戦いに赴いても、剣を折られる事はある。それに、女性の貞操を身を持って庇ったのに退学では、この先の騎士教育にも、影響を及ぼしてしまうかもしれない。
「わかったわ。じゃ、あたしの名前で、依頼を出しておきます」
「さんきゅー。さすが先生、話が分かるぜ! んじゃ、俺はアイツの所戻るわ。女の子と2人っきりにさせとくなんて、勿体ねぇもんな」
そう言って、その生徒は職員室‥‥正確には、ケンブリッジ教員相談所と言うのだが‥‥を、出て行くのだった。
「と言うわけで、今回はここに書かれた場所を巡って、とある剣を探し出して来てもらいます。この剣は、実際に、『これから飲みに行く』と言うシチュエーションのもとに、回ってもらったものなので、各所の方々は、本当にあった事だと思っています。彼と書かれてるのは、その人の事です」
その日の授業で、パープル女史は、そう言いながら、行き先の書かれた木の板を見せた。そこには、こう書かれている。
【回る場所】
ケンブリ装備品修理商会(市場):数日前に、剣のグリップ部分に、滑り止めの加工と意匠を施してもらう為、持込み済み。酒を飲んでいたのは、その完成祝いを兼ねて。商会の店と、その家族は、彼がそう言う注文をした事を(普通に客としてきたと言う範囲内で)知っている。
馬術房(外輪部):市場に馬を乗り入れるのは、周りにも御迷惑になるだろうとゆー事で、愛馬を預けてきた。預ける際に、申請理由として市場へ行くのと、研究塔を訪ねる話はした。
オールド・プラタナス(市内):友人との待ち合わせ場所として利用。しばらく立ち話に興じていた。その時に自慢の剣が出来上がった話をした。他に彼氏待ちや、彼女待ちの学生、一般市民らしき通行人が多数行き来していた。
ハーブティ馬車(市内):オールド・プラタナスの横に停まっていた。材料を買いに行く前に、道すがら飲むものを購入。なお、二日酔い用のハーブも売っている模様。
ケンブリッジ総合研究塔(学園敷地内):買った酒を持ち込んで飲んでいた。話の中で、新しい酒を作ってみたので、飲んで見ないかとか言う話や、剣の柄部分の研究をしている奴もいるだろうなーみたいな話をした。
「それと、授業の一環ではあるけど、出来るだけ勘ぐられないように探し出してちょうだいね」
そう注釈をつける彼女。確かにこれならば、例え飲み会の存在がバレたとしても、『授業の為に協力してもらったんです』と、言い訳する事は出来るだろう。
(「ま、授業に他の学校の生徒を巻き込むなって怒られそうだけど、将来有望な子を退学にさせるよりは、マシ‥‥か」)
質疑応答を受けながら、そんな事を考えるパープル女史だった。
●リプレイ本文
●馬術房
「騎士学校の生徒と言う事は、ここは必ず利用することだろう。話を聞いて見るもいいかもしれないな」
ルーウィン・ルクレール(ea1364)と、大宗院透(ea0050)・大宗院亞莉子(ea8484)夫婦が、まず訪れたのは、馬術房である。馬を連れている事も多い生徒達が、授業を受ける間や、部活で騒いでいる間などに、馬と荷物を預けておく施設だ。当然、この間の酔っ払い生徒もここを利用していると言う事で、彼らは様子を見にやってきたのだが。
「彼が馬を停めているのは、あの辺りのようだな‥‥」
目の良い透がそう言って、厩を示した。柱の所に、依頼人友人の名前が書かれたプレートがぶら下がっており、中では黒毛の馬が、主の帰還を待ちながら、尻尾を振っている。
「係の者はいるようだ」
別の厩で、馬の世話をしていた少年を見つけ、そう言うルーウィン。
「じゃあ、ちょっと聞いてくるってカンジィ」
それを見て、亞莉子はそう言いながら、人遁の術で、騎士学校の生徒に化ける。
「私ぃ、新入生なんだけどぉ、荷物をここへ預ける場合って、どうしてるってカンジィ?」
「制服着てれば、スルーパスだよ。馬に乗せてた荷物は、そっちの棚にのせるんだ。馬はこっちの大きい方から」
アルバイトくんは、そう言うと棚と厩の入り口を見せた。確かに棚には、生徒のものらしき荷物が確かに乗っかっている。
「ふぅん‥‥。剣とかもここに置いとくってカンジ?」
「いや、武器は危ないから、別のところにしまうんだ」
彼の説明どおり、少し離れた場所に、細長い箱があって、中には預かった武器が名札と共に並べられている。
「誰でも取りにこられるのですか?」
透の問いに頷くアルバイト君。特に厳重に管理しているわけじゃないからねー。と答えている。箱には鍵はかけられているが、木製のそれは、その気になれば、簡単に開けられそうだ。
「無用心ですね。誰か怪しい御仁が来たらどうするんです?」
「そう言うのは、親方が対処する事になってる」
ルーウィンの問いに、アルバイトくんは『ほら』と視線を横に移した。そこには、立派な体躯を持つおやじさんが、腕を組んだまま仁王立ちである。顔を引きつらせる亞莉子嬢。
「忘れものなら、ひとまとめにしてある。勝手に探せ」
ぶっきらぼうにそう言ったおやじさんが、よっこいせと彼女の前に持ってきたのは、古びた武器がひとまとめにしてある木箱だった。
「これは、ちょっと大変かもしれないですね‥‥。ここはお任せしますよ」
それらの検証を大宗院夫婦に押し付けると、ルーウィンは早々に他の探索場所へと移動してしまうのだった。
●オールドプラタナス
さて、探索場所の1つ、オールドプラタナス。広場に立つ、古い大きなその木には、色々な人が集っていた。
「貴方に永遠の忠誠を誓います‥‥か‥‥。さすがに、カップルだらけだな‥‥」
殆どは、愛を語る者達ばかりである。その様子に、ちょっとうらやましそうな東雲。
「うふふふ、せっかく来たんだしぃ、ちょっと寄ってこうよぉ」
「行ってあげますから、くっつかないでください」
もっとも、その一組である筈の大宗院夫妻の場合、愛は、妻の亞莉子が一方的に注いでいるらしく、透はうっとおしそうに絡みついてきた腕を振り払った。
「いいじゃない〜。ほら、周りもやってるってカンジィ」
「一人身だって多いですよ」
ごろごろと喉を鳴らす亞莉子に、透は冷たくそう言って、東雲辰巳(ea8110)の方を指し示した。そこでは、彼が待ち合わせをしていた学生を捕まえて、聞き込みをしている真っ最中だ。
「なぁ、気になったんだが、どうしてこんな文字が彫ってあるんだ?」
その学生さんの説明によると、150年前、フランクから落ち延びてきた若い騎士が、仕えていた姫君に対して、紙だとなくなってしまうからと言う理由で、プラタナスの幹にそんな文言を掘り込んだと言う、どこかで聞いたような話だった。
「何だかろまんちっくかもー」
そんな伝説めいた由来に、夢見る乙女な亞莉子嬢、うっとりと目を細ませる。
「馬鹿者。150年前の彫り物が、まだ残ってるわけないでしょう。でまかせに決まっています。それに、遊びに来たわけじゃないんですよ」
透が嗜めているが、あんまり耳には入っていないようだった。
「騎士達にも、そんな浪漫に燃える輩は多いんだろう。このあたりで先週、誓いの儀式の真似事をしていた奴はいないか? こうジャパンの剣の柄を持っていた奴なんだが」
別の場所では、エルンスト・ヴェディゲン(ea8785)も聞き込みに当たっている。もっとも、誓いの儀式ごっこをする輩は、少なくないらしく、首をひねられてしまうが。その学生が教えてくれたのは、広場の周囲に数多く居るハーブティ馬車だ。確かに、彼らなら間違いなく一日中、ほぼ毎日広場に居る。何か妙な事があれば、覚えて居るに違いない。
「そうか、ならば行って見るのも手だな‥‥」
「私達はもう少し残ってるってカンジぃ。ね? 透☆」
算段を練っている東雲に、亞莉子は透の手に絡み付くようにしながら、そう言った。彼がやんわり断ろうとするが、彼女は瞳を潤ませて、胸を押しつける。コメカミをひくつかせている透。やっぱり、愛は一方通行の模様。
「俺は研究塔の方へ行ってくる。後は頼んだ」
エルンストは呆れているのか、そう言い残すと、研究塔の方へと行ってしまったのだった。
●ハーブティ馬車
さて、一方ミカエル・クライム(ea4675)は、広場周辺‥‥と言うより、依頼人がたどった道筋にあるハーブティ馬車を、確かめに行っていた。とは言え、馬車は市民の喉を潤す気軽な食事所として、あちこちに点在している。広場だけでも5箇所はあった。
「うーん、一つ一つ探すしかないのかなぁ‥‥」
ミカエル嬢、早くもその多さに、根を上げ始めている。
「うわぁ、おいしそう‥‥。んー、どれにしようかな〜♪」
今はチェリーやベリー系の季節らしく、店頭には色とりどりの初夏の果物が並び、ミカエルの食欲を刺激している。もっとも、財布にお金はあんまりない。
「店主、この二つを頂こうか」
そこへ、横からチェリーを奪い取った手があった。見れば、東雲である。彼が買ったのは、ハーブティの茶葉やら、チェリークッキー、二日酔い用のハーブ等。なんでも、ぶっ倒れている例の御仁に、差し入れするんだと頼まれたらしい。その1つを横流ししてもらい、ミカエルは満足そうにそれを口に放り込んだ。
「らっきー。あー、でも毎回こうだと、太っちゃわないかな。まぁ‥‥大丈夫だよね。きっと」
東雲の説明に、ミカエルはそう言い訳しながら、もう一枚クッキーをつまみ食い。
「時に店主。この辺りで、剣の自慢話をご披露していた奴を見なかったか?」
話を聞くと、昨日だか一昨日だかに、剣の自慢話に花を咲かせていた集団があったらしい。なんでも、滅多に予約が取れない職人を、運良く押さえられたそうで、時折良いなだの、うらやましいだのと言ったセリフが飛び交っていたそうだ。
「そいつら、どこに行ったか分かる?」
「修理屋の方かなぁ。もっとも、あの先には、研究塔もあるから、どっちにいったのは分からないが」
そう言うと、ハーブティ馬車の店主は、商店街の一画に繋がる道を教えてくれた。
「ありがとうー。じゃ、あたし、ちょっといってみるねっ」
そう言うと、ミカエルはクッキー片手に、研究塔へと向かってしまう。まぁ、餅は餅屋に任せておいた方が良いだろうと、東雲は踵を返した。
「なら、俺は先に届け物を済ませるとするか‥‥。アイツを誘うのは、夕方になりそうだな‥‥」
使い走りも結構大変である。
●ケンブリ装備品修理商会
装備品修理商会。それは、中古の鎧を着れる様に調整したり、剣の意匠を変えたりする、職人連中が店を開く商店街である。魔法の品は対応していないので、鍛冶屋や衣料品店の延長線上ではあるのだが。
「けっこう、店の数があるのだな‥‥」
依頼人から、剣を出した店の情報を聞き出した天羽奏(eb2195)は、その店員から話を聞くべく、そう言いながら、修理商会を歩いていた。そこへ、馬術房で話を聞いていたルーウィンと、やはり依頼人から話を聞いていたらしいレムリィ・リセルナート(ea6870)が、状況を聞きに来る。
「っと、アレだな。依頼人から聞いたのは」
そんな彼らから話を聞きつつ、たどり着いたのは、緑地に雷マークが旗印の店だ。店構えは、他の店とそれほど変わらない。カウンターと工房が並び、奥からは作業の音が聞こえている。
「すみません。鎧の調整と、剣の調整を頼みたいんですけどー」
自身の剣をカウンターに置きながら、ルーウィンが申し出ると、応対に出てきた店員さんは、軽く挨拶しながら、その注文を聞いてくる。
「えぇと、この間、剣を頼みに来た、こんな感じの人いたでしょう? その人と同じのにして欲しいんだ」
依頼人の風体を説明し、そう指定するレムリィ。程なくして、店員さんは注文の際に受けたと思しきデザイン画を出してきた。
「そうそう。これこれ。実は、その剣の意匠にほれたんで、同じの作って欲しいんだって」
話に聞いていたのと同じデザインである。ジャパン趣味が入ったそのグリップ部分を指しながら、彼女がそう切り出すと、店員さんは眉根をしかめながら、こう説明してくれた。
「うーん、それは困ったッスねぇ。実は、あの意匠を作った職人は、気難しくて、あまり同じ物を作らないんスよ」
まったく作らないと言うわけではなく、何年か立てば作ってくれるのだそうだが、それでも多少アレンジが入るらしい。天羽が他の人にも話したのか? と尋ねると、その店員は、他にもその注文をしに来た人が来て、丁重に断ったこと、加えて、研究塔だかの関係者だとごり押ししようとした事も教えてくれる。
「なら、今日はさび止めだけお願いします」
それだけ聞けば充分と思ったルーウィンは、とりあえず翌日には出来上がる調整だけ頼んだ。
「さて、限定のレア物と言う事は、探しやすくはなりましたね。ちょっと待ってて下さい」
割符に名前を書いている彼を置き、外へと出た天羽は、サンワードを唱えた。指定条件は持ち主の名と、そのグリップのデザイン。その魔法に降り注ぐ太陽は、『塔』とだけ答える。二回目に聞いても同じだった。
「やはり、塔の誰かが持っているみたいね」
それを聞いたレムリィは、拳を打ち鳴らすと、陽光の示した探索場所へと向かうのだった。
●総合研究塔
考えてみれば、騎士見習いが素面で剣を手放すとは考えにくい話である。研究棟で酒が入ってから、半裸で寮に帰り着くまでに失ったと考えるのが、まず道理だろう。
「ここが研究塔か‥‥。確かに素晴らしい施設だが、我が祖国の陰陽寮も引けを取るものではないぞ」
そんな事を主張していた天羽は、研究塔の建物を見上げながら、感想を述べた。研究塔と言うのは、その名の通りそびえる塔を中心とした、総合研究施設である。中では、各研究者の趣味に応じた様々な研究がなされているのだ。
「お国自慢は、またの機会にしてくれ。それで、街の方はどうだったんだ?」
先に塔へ来ていたエルンストに、天羽は、修理商会で聞いてきた話を教えている。
「ふむ。そうか‥‥。あれは一品物だったのか‥‥」
「ええ。興味を示していた御仁がいたのは、間違いないようです」
エルンストのセリフに、ルーウィンが頷いた。やはり、レムリィの言う通り、剣の研究を行っている者を締め上げた方が早いようだ。
「さぁて、今日は何の研究中かな〜」
その研究塔に向かったのは、彼らばかりではない。ミカエルも勝手知ったるなんとやらで、研究塔の一画へと赴いていた。
「ここには、どれくらいの剣があるんです? 自慢の逸品とかあったら、見せて欲しいなー」
そう言って、ミカエルは研究室にあると思しき剣を、何とかして見せてもらおうと食い下がる。レムリィ達が現れたのは、ちょうど彼女が、グリップ部分の装飾についての話にまでこぎつけた頃だった。
「すみません。ちょっと聞きたいんですけど、良いですか?」
話に夢中になっていた研究生くん、彼女の申し出に、不機嫌そうに答えている。
「実は、浮気調査なんですよっ☆ 彼と同室の依頼人が、先生に泣き付いちゃって、仕方なく〜」
ぼそぼそと耳打ちするレムリィ。と、一方の研究生達は、なにやら心当たりがあるようだ。
「えぇぇ。じゃあ前からそう言う事が? 詳しい話を聞かせてもらおうかしら」
そこへ、ここぞとばかりにねじ込む彼女。その手には、パープル女史から調達したらしい発泡酒がある。
「大丈夫大丈夫っ、お酒の席での与太話って事にしとくからぁ」
渋る研究生に、さっさとカップを持たせ、彼女はだばだばと酒を注ぎ込んでしまう。結果、口の軽くなったその研究生さん、飲み代代わりに、酔っ払いと剣を確保した犯人との関係を、ぺらぺらと喋り倒してくれた。要は、仲のよろしくない相手が、レアものを手に入れたので、酔って忘れたついでに、ちょっと困らせてやろうとしたのだそうな。
「用事は済んだ。ここは任せたぞ」
それさえ聞けば充分である。いつの間にか宴席と化した研究室の始末を、ルーウィンに押しつけて、エルンストは話に出てきた相手に、剣を返して貰いに行ってしまった
「こう言うのを、とんびにあぶらげっていうのだろうな‥‥」
天羽がそう呟く。後日、酔っ払い生徒が彼に呼び出され、半日ほどお説教部屋に連行されていた事を追記しておく。
●酔い覚ましには愛を語って?
さて、その頃。オールドプラタナスの下では。
「そうだ。これ、渡しておくよ。また酔っ払われると困るしな」
呼び出したパープル女史に、東雲が二日酔い用のハーブを差し出している。そして、受け取ろうとした彼女の腕を引き寄せて、こう言った。
「あらためて誓おう。貴女に永久の忠誠を‥‥。そしていかなるときも護り抜かん事を」
「‥‥バカ。生徒が見てたらどうするのよ」
嗜める彼女だったが、そっぽを向いているあたり、まんざらでもない様子。
「やっぱりぃ、異国で愛を語るのって、燃えるってカンジィ」
「えぇい、うっとぉしい。いちいち抱き付くないで下さい!」
それに触発された亞莉子、相変わらず透に抱きついては、蹴り飛ばされている。本当は夕日の中、キスの1つでも交わしたかったのだが、やっぱり透には、愛なんぞまったくないようだ。
「酒がないのに、酔っ払ってるんですか? そんな酔いは、宵の時に覚ますのがよいですよ」
まぁせめて、愛する透の駄洒落が聞けただけ、儲けものか。
「あ、あははは。おあとがよろしいようで〜」
ケタケタと笑う亞莉子嬢。ケンブリッジは、今日も平和なようである。