【真・カンタベリー物語】大切な貴方

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 30 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月13日〜07月20日

リプレイ公開日:2005年07月20日

●オープニング

 貴族の務め。それは、自身が扱う民達が、よりよく過ごせる様にする事だ。その為には、自身の趣味嗜好も切り捨てなければならないと、彼らは教え諭される。たとえ、心がYESと言わなくても、だ。
 災難が訪れたのは、そんな貴族達の1人だった。もっとも、扱っているのは小さな村1つ分の領地であったが。
 舞台となるのは、村長宅。
「また、お出掛けですか?」
 屋敷の主である村長に、そう尋ねてくる女性がいた。年の頃なら、まだ10代そこそこだろう。
「ああ。悪いか?」
 村長の方は、20代半ばと言った風情だ。事務的な返答をすると、彼は上着を羽織る。身なりが、外出のものに変わっている。イギリスは、日が落ちれば、夏でも寒いから。
「いえ。お早いお帰りをお待ちしております。そうそう、護符が出来上がって参りました。無くさないようにしてくださいね」
 疑おうともしない彼女。差し出したのは、精緻な木彫り細工の施された護符。
「わかった」
 それを、ベルトに引っ掛けたまま、彼は振り返りもせずに、屋敷を出るのだった。

 村長が向かったのは、村外れにある森の入り口。夜間立ち入り禁止の看板が掲げられたそこで、策の影から現れたのは、同い年くらいの青年だった。会うと2人は、まず挨拶代わりのキス。ついで、並んで座る。
「それ、新しいの?」
「嫁に押し付けられた」
 腰にぶら下がっている見慣れない護符に気付いた相手が、そう尋ねてきた。だが、言われた村長の方は、面白くなさそうだ。
「ダメだよ。せっかく貰ったものなのに」
「構わん。あんな‥‥叔母上のスパイに貰ったものなど、付けられるか。伯母上め‥‥。俺の性癖をわかっていて、無理やり嫁を押し付けて‥‥」
 相手の青年が止めたが、彼はそのまま護符をぽいと投げ捨ててしまった。どうやら、村長は今回の婚約を不服としているようだ。
「仕方がないだろ。キミん家は、代々この村を治めてる家なんだから。子どもは僕じゃ産めないんだし‥‥」
 相手の青年は、政略結婚がある意味義務だと言う事を、彼よりもわかっている様子。表情は、どこか哀しげだったが。
「そんな事、もう口にするな‥‥」
 恋人にはなれても、女にはなれない。そう言いたげな彼を、村長はキスで黙らせるのだった。

 翌朝。
「コルネット! 貴方、またペーターに会いに行ったそうね!」
「メリーヌ伯母上‥‥。どこからそんな話を‥‥」
 寝不足な顔で、屋敷を出てきた村長‥‥コルネットに、でっぷりと太った中年の婦人が、金切り声を上げている。
「どこだってよろしいでしょう! まったく、せっかくハイネを連れてきたと言うのに‥‥」
 元々声が高いのか、感情が昂ぶっているのか、きんきんとした声で、彼女は村長に説教を開始する。ペーターと言うのは、先ほどの青年。ハイネは婚約者の女性の事だろう。辟易とした表情で、それを聞いていた彼だったが、うんざりしたようにこう言った。
「私が女性嫌いなのは、伯母上だって承知しているでしょうに‥‥」
「そうは言っても、あなたはこの村の当主なのですよ! こうなったら、仕方がありません!」
 彼の返答に、彼女はぱちんと指先を鳴らす。と、わらわらと集まってくる、手にロープや鍬をもった女性達。
「こ、これは‥‥!?」
「しばらくの間、貴方は地下牢に入っていただきます!」
 それっと号令をかけると、女性達は村長ににじりよった。流石に、彼が手を出せないでいると、あっという間に持っていたロープで、村長をぐるぐる巻きにしてしまう。
「厄介な事になった‥‥」
 地下牢に連行されてしまった彼、かけられた錠前と、僅かに覗く月明かりに、そう呟く。
 と。
『手伝ってやろうか?』
 その明り取りの窓から響く、低い声。
「誰だ!」
 ただし、姿は見えない。気配でそこに誰かがいるのが、分かるのみだ。
『ご挨拶だねぇ。せっかく、そこから出してあげよーってのに。どうする? このままじゃお前、ずっとそのままだぜ?』
「‥‥わかった」
 その日、屋敷では小火騒ぎがあったと言う。

 数日後。議長宅を訪れる青年の姿があった。先日、村長とあっていた青年、ペーターである。
「実は、村長を助けて欲しいんです‥‥」
 応対に出たレオンに、彼は自分と村長との関わりを、包み隠さず話し、窮状を訴える。
「難しい問題ですね。少々お待ち下さい」
 それを聞いたレオン、自分1人では、判断が付きかねると思ったらしく、議長の元へと案内してくれる。
「僕としては、彼がお嫁さんを貰うのは、構わないんです。ただ、今のままじゃ、何も知らない奥方様が可哀相で‥‥。それに、最近放火騒ぎが起きていて、怖いんですよ‥‥」
 なんでも、小火騒ぎが頻繁に起きており、ペーターとしては、軟禁されている彼が、拷問でも受けているんじゃないかと、心配でたまらないようだ。
「わかった。このままでは、村の引っ越しもままならんしな。キャメロットの者達に頼んでみよう」
「よろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げるペーター。

『閉じ込められている村長を助けて、彼を陥れようとしている親族さんと、仲直りさせてあげてください』

 こうして、ギルドの壁に、また1つ、新たな依頼が書き加えられるのだった。

●今回の参加者

 ea0356 レフェツィア・セヴェナ(22歳・♀・クレリック・エルフ・フランク王国)
 ea0424 カシム・ヴォルフィード(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea0945 神城 降魔(29歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1060 フローラ・タナー(37歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1704 ユラヴィカ・クドゥス(35歳・♂・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea3190 真幌葉 京士郎(36歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea5597 ディアッカ・ディアボロス(29歳・♂・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea9037 チハル・オーゾネ(26歳・♀・バード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb1600 アレクサンドル・リュース(32歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb1935 テスタメント・ヘイリグケイト(26歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

 冒険者達が、依頼人から話を聞くと、今回の事は、叔母一人で考えた話ではなく、誰か他の者の入れ知恵めいているらしい。聞き出した所によると、彼らが訪ねるまでにも、村長の館を中心に火が出ており、それを危惧したメリーヌの号令で、夜回りが行われる事になったとの事。そして彼女は、まるで見せたくないものでもある様な仕草で、自分を屋敷から追いやったそうだ。
「やはり、真相は乗り込んでみないとわからないか‥‥。ペーター、何とか村長と話が出来る方法はないか?」
 頭の中で、話をまとめていたらしい神城降魔(ea0945)が、そう尋ねてくる。と、彼は、隠し扉の事を教えてくれた。
「鍵がかかっている‥‥」
 しかしそこは、神城の指摘どおり、木製の大きな鍵がかけられている。比較的新しいそれは、おそらく、後から付けられたのだろう。
「なにをしていらっしゃるのです!」
「まずい‥‥。叔母上殿だ」
 きんきんと良く響く声に、軽く耳を塞ぎながら、警告するテスタメント・ヘイリグケイト(eb1935)。このまま、説教部屋行きかと、3人が身構えた直後だった。
「申し訳ありません。部下が、先走ったようですね」
 純白の、いかにも聖職者と言った風情のフローラ・タナー(ea1060)の登場に、メリーヌさんは、疑いながらも、声を上げるのを止める。
「私は、小火の事を気にしておられる御方の命で、状況を確認しに来たものです。その者達の非礼、上司の私から、お詫びいたしますわ」
 調べていた真幌葉京士郎(ea3190)達を、自分の部下だと主張する彼女。少々納得行かない感情が、3人の頭をよぎったが、3人ともそこで文句をつけるような性格はしていないので、とりあえず彼女に任せる事にする。
「あら、そう言う事でしたの。こちらこそ、疑ってしまって。ごめんなさいね」
 をほほほ、と口元に手をあてて、そう謝る彼女。相変わらず、声も態度も高飛車だ。
「いや。それより、村長殿と話がして見たいのだが‥‥」
 首を横に振りながら、神城はそう申し出た。何とかして接触をもてれば、救出も容易いと考えたらしい。だが彼女は、首を横に振った。
「そうですか‥‥」
 ダメで元々と思っていた神城、あまり食い下がらず、あっさりと諦める。
「とにかく、こんな所ではなんですから、応接室の方へどうぞ」
 相手の方は、何とかしてこの場所から離れさせたいようだ。その態度が、尋常ではないと考えたフローラ、こう言い出す。
「ありがとうございます。ああ、貴方達は、現場で証拠集めをしていてくださいな」
 彼女が、何を目的としているのかを知ったテスタ、黙って頷く。しかし、メリーヌも、そう簡単には引き下がらないようだ。取りまきらしき女性に、手伝いを命じている。
「すまない。他に、以前から勤めているものに、話を聞きたいのだが‥‥どうした?」
「実は、私を含め、現在屋敷の中にいる者は、殆どが最近雇われた者達ばかりなのです」
 テスタのセリフに、その『お手伝いさん』は首を横に振る。なんでも、メリーヌの指示で、ごく最近、召使の総入れ替えが行われたようだ。
「やはり、あの叔母が動いているのか‥‥。ところで、女性と言う事は、ハイネさんの部屋にも、入った事があるのだろう?」
 テスタに問われ、頷く彼女。と、彼は薄く切った木片に、借りたナイフで、呼び出しの文言を刻み込む。うやうやしく受け取る彼女。と、その時である。
「ちょっと待て。これ、すぐ外れるぞ」
 京士郎のセリフに、振り返るほかの2人。見れば、鍵が掛かっているようにみえたのは、目の錯覚で、実際はしっかりかけられていなかったらしい。彼が少しいじると、木製の錠は、かしゃんと地面に落ちてしまう。
「村長がいない!?」
 京士郎が覗くと、その通路の向こうに、人の気配はない。教えられたお手伝いは、慌ててその場を離れてしまう。
「よし、これで自由に動ける。ディアッカ、フローラに連絡して来てくれ」
 周囲に生えた木の上で、連絡待ちをしていたディアッカ・ディアボロス(ea5597)に、京士郎はそう頼むのだった。

 一方、燃やされた跡地では。
「ここか、現場は‥‥。小火と言っても、かなり激しく燃えたようだな‥‥」
 アレクサンドル・リュース(eb1600)の見た印象では、かなり大きなものが燃えたようなこげ跡がついている。松明程度ではないそれは、やはり、誰かが火をつけたと言うのが正しそうだ。
「そこは触らないでいただけます? 先祖代々の大切な品々が入っているものですから」
 一方のメリーヌはと言うと、彼が触れようとした調度品や絵画の数々に、異常なまでの警戒を見せている。
「怪しいですね‥‥。あの、ちょっと調べていただけません?」
 何か、隠している。そう思ったカシム・ヴォルフィード(ea0424)は、ディアッカに魔法を使うよう要請した。
「ああ、すみません。ちょっと事情調査をしたいので、協力して下さいね」
 緑の光が、ディアッカを包む。使う魔法は‥‥リシーブメモリーとパーストである。メリーヌが、魔法に関しては、あまり造詣が深くない事が幸いし、その記憶から、必要な事柄を、彼へ教えてくれる。
「どうじゃったのじゃ?」
「この計画、彼女一人が考えたものではないようです‥‥。謎の影がちらついていますね‥‥」
 彼の意識に見えたのは、何やら謎の青年の姿だ。それを聞いて、ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)はため息をつく。
「やっぱり、1匹見たら30匹な連中かのぅ。そうじゃ、ちょっとそこのご先祖様に聞いてみるのじゃ」
 彼の見聞きした話を下に、ユラヴィカは先祖の肖像画の前で、サンワードを唱えようと、金貨を取り出す。
「だから、触らないでと言ってるでしょう!」
 しかし、メリーヌが金切り声をあげるので、詠唱を止めざるを得なかった。
「手がかりが、この辺りにあるのは確かなんだが‥‥」
 顔を見回すディアッカとカシム。そんな彼らに、柱を見ていたチハルがこう指摘した。
「あの‥‥これ、何か筋になっていませんか?」
「ちょっとどいて。調べて見るから」
 こっそりと、カシムがブレスセンサーを使う。
「村長は、この奥のようです‥‥」
 反応があった。呼吸はしっかりしているあたり、無事ではあるようだ。
「裏に、隠し階段があるようじゃ」
 おそらく、中からは開かないようになっているのだろう。
「すまない。この裏は、避難場所にでもなっているのか?」
「その様な事、小火と何の関係があるのですの?」
 アレックスの問いに答えないメリーヌ。このままでは、逆に叩きだされかねない。
「まぁまぁ、そんなにイライラしないで下さいな。そうですわ。落ち着ける曲でもご一緒しましょう。確か、御婚礼が近いとか。是非、式の時に歌う歌を、作ってみたいですわ」
 窮地を救ったのはチハル・オーゾネ(ea9037)だった。持っていたリュートベイルを爪弾き、軽やかな曲を奏でてみせる。一曲作るだけでも、かなりの時間が稼げる筈である。と、メリーヌは、曲をプレゼントすると言われ、メリーヌは渋々その場を離れた。直後、一行は石の扉を開き、中の村長を助け出そうとしたのだが。
「居ない!?」
 ついさっきまでその場に居たはずの、彼の姿がなかった。小窓が開け放たれている所を見ると、出たのは最近らしい。
 窓から見れば、火事と騒ぐ村人。確かに、遠くで煙が上がっている。
「急ぐぞ!」
 アレックスがそう叫んだ。彼を連れ出したのは、おそらく放火犯と同じ御仁だろう。

 一行が、火事現場へ向かうと、そこには、別の調査をしていた筈の面々がいた。
「お前ら、何でここにいる!?」
「京さんこそどうして」
 驚く京士郎に、そう言うカシム。彼らいわく、こうである。
「いや、俺は脱出の後を調べていたら、こっちに来たんだが‥‥」
「繋がったな。自警団のメンツにも聞いてみたが、小火は村長の行動範囲内‥‥」
 そう答えるテスタ。夜回りの面々に、火事の状況を聞き、ペーターの話にあわせると、ちょうど重なったらしい。
「炎を操る悪魔でも、背後にいるのでしょうか‥‥」
「やっぱり、一匹見たら30匹なのじゃ」
 デビルの可能性を示唆するフローラに、ユラヴィカがそう言った。2人は、何度か議長の仕事をこなす上で、よくデビルを目撃している。
「一筋縄で行くだろうか‥‥途方もない曲者と言う気がしてならないのだが」
 それでも、アレックスはそう言った。もし、そうだったとしても、インプやグレムリンとは、別格の存在だろうと、彼は言う。
「いたぞ」
 そう言う神城。村の外れに、その姿はあった。
「ほらぁ。ぐずぐずしてるから、もう追いつかれちゃったよー」
「あーーー! リリィベルーーー!」
 ユラヴィカがそう叫ぶ。見れば、村長をつれた青年‥‥ディアッカの魔法に出てきた奴だ‥‥と、もう1人、道化師姿のシフール。
「おのれー! 来てるのなら、さっさと姿を見せるのじゃー」
「だぁって、今回はメインじゃないモン☆」
 きしゃああっとムキになるユラヴィカを、同じサイズのディアッカが「落ち着いて下さいよー」となだめている。
「それよりも、村長を返して貰おうか」
「だってよ。どーする?」
 不気味な笑みを浮かべながら、そう言う青年。だが、傍らの村長は何も応えない。どうやら、操られているようだ。
「おそらく、彼を操って、小火騒ぎを起こし、その責任を、メリーヌさんに押しつけ、共倒れを狙ったのでしょう」
「そこへ、自分の息のかかった連中を送り込むと言うわけか‥‥。許せんな」
 フローラの解説に、テスタの目の色が変わりかける。
「こんな所で切れないで下さいよ。元に戻すの、大変ですし、人、集まり始めてますよ」
 そんな彼を落ち着かせるように、神城がそう言った。見れば、騒ぎを聞きつけたのだろう。村人が、続々と集まり始めている。そんな中で、狂化を起こせば、下手をすればデビルと同類に扱われてしまいかねない。
「まったくです! 人の心にかこつけて、悪事を働くなんて! ジーザス教の使徒として、白騎士の名にかけて! お前を許しません!」
 そんな、いぶかしげな雰囲気を吹き飛ばす、凛としたフローラの声。演説めいてはいたが、身に纏ったローブと、信仰心の厚さを示す茨の冠、そして、手にした聖なるメイスは、人々の共感を得るのに充分役立っているようだ。
「はぁーっはっはっは! とんだ茶番だな! まぁいい。今日はほんの挨拶代わりだ! そのうちまた、燃やしてやるよ」
 このまま居残っているのは不利だと考えたのだろうか。青年は、村長を置き去りにすると、背中の翼を広げる。一緒くたに逃げるリリィベルに、ユラヴィカが「逃げるなーー!」と叫んでいた。
「たぶん、また会う事になるでしょうね。今は、村長と仲直りさせる方が先ですし」
 残った村長を保護しながら、そう言うフローラ。
「やっぱりわしら、家庭内害虫駆除屋のようなのじゃ」
 暗躍するデビル達と、自分達の姿を省みて、ユラヴィカはそう呟くのだった。

 謎の男を、村から叩き出した冒険者は、当事者が全て顔をあわせないと、解決しないとの意見で、関係者全員‥‥総勢14名を、村の教会に集めていた。
「まず、はっきりさせておきたい。結婚相手は、やはり異性でないとダメなのか?」
 テスタがそう尋ねると、彼女はぶすーっとした表情ながら、まともな返答をしてくれる。
「ええ。婚姻とはそもそも、我が家の血を、後世に残すこと。いくら愛し合っていても、同性では子供は産めませんわ」
「ふむ。やはりそうか‥‥。性癖は聞いたが、それでも村長という家柄である以上、次の世代へと担うための子供は必要だしな‥‥」
 まぁ、良く考えてみれば、当たり前の話なのだが。
「僕個人としては、別にいいと思うんだ。人が人を好きになることは悪いコトじゃないもん」
 雰囲気の重くなりかけた会話に、レフェツィア・セヴェナ(ea0356)が割って入る。一般的には、異種族間恋愛と同じ扱いを受けているその関係でも、個人的には認めてもいいと思っているらしい。
「だから、ハイネちゃんに実際のことを知ってもらうのが一番いいんじゃないかな。ペーターさんは、村長さんが結婚することには反対じゃないんだし。それでいいよね?」
「私‥‥ですか?」
 リフィの提案に、頷く冒険者達。その姿に、今まで、我関せずと言った表情の彼女が小首をかしげていると、一同を代表して、神城がその真実を明らかにする。
「実は、コルネットさんには、恋人がいるんだ。ここにいるペーターと言うね」
 しかし、彼女は困惑した表情を浮かべるばかりだ。
「えーと、ハイネさん。貴女は、彼に恋人がいたとしても、側で支えて行きたいと思いますか?」
 カシムが、そう尋ねるが、逆に「殿方と言うのは、妻の他に、恋人がいるものなのですか?」と尋ねられ、説明に困ってしまう。
「正直な話、ハイネさんは村長の事を、どのように思っていらっしゃるんです?」
 女性の事は、やはり女性の方が分かるらしく、フローラが単刀直入に聞く。
「よくは分かりませんが、大切な人だと教えられてきましたわ」
「ふむ。これはその大切な人に捧げる為に用意したのかの?」
 ハイネの答えを聞いて、ユラヴィカの差し出した護符。それは、彼女が、村長の為に苦労して用意したものだ。
「はい。コルネット様の安全を願い、ノルマンから特別に取り寄せた物です。それが何か?」
 ユラヴィカのリヴィールポテンシャルで、すでにそれがヘキサグラム・タリスマンだと分かっている。それだけで、ハイネは本当に、コルネットの身を案じていると証明されたも同じ事。
「大丈夫です。きっと‥‥ あなたは、あなたの選択をすればいい。不幸ばかりでも、ままならないことばかりでもないはずよ」
 不思議そうな表情を浮かべているハイネを、フローラは受け入れがたい事実に戸惑っていると受け取ったのだろう。そっと肩を支える彼女。
「3人でよく話し合い、その上で未来を決める事が最良であろう。自分の未来は自分のものだ。後で後悔の無いよう、しっかりと決めるべきだ」
 最終的には、本人の気持しだいと言う奴だ。と、神城が言う。神妙な顔つきの村長の様子を見るに、冒険者に色々といわれ、反省はしているようだ。そんな彼に、一行は色々とアドバイスしている。
「‥‥まぁ、それはそれ、これはこれだ。嫁さんも叔母御も女性。泣かせぬようにな」
 たとえ、複雑な事情を抱えていても。レディに涙を流す事は、男のする事じゃないと、京士郎は最後にそう主張した。
 こうして、紆余曲折はあったモノの、村長の家では、政事の半分を叔母御が負担し、ペーターはお抱え薬師として同居をはじめ、その代わり、ハイネには、それなりの自由が許され、引越しが終わった後、親戚筋から養子を貰うと言う形で、話がまとまるのだった。