【パラサイト】クィーンの掃討

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 29 C

参加人数:10人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月20日〜07月25日

リプレイ公開日:2005年07月27日

●オープニング

 人の文化と言うものは、えてして真似されやすいものであるのかも、しれない。
 その遺跡では、オーク達の成人の儀式が行われていた。彼らは、遺跡に潜り、そこを巣とする他のモンスターを狩り、その首を成人の証として持ち帰る‥‥筈だった。
 だが。
「しゃげぇぇぇ‥‥」
 石に囲まれ、岩の鎖をはめられた、トカゲのようなモンスターが、よだれを流しながら、舌なめずりをしている。
 その名はパラサイト。動物に寄生をし、生きながらえるカンタベリー地区に特有のモンスターである。
「しゃげぇぇ‥‥」
 その下には、見るからに息絶えたオークの死体が三つ。
「ガァァァッ!!」
 その死体を踏みつけて、パラサイトは雄たけびをあげる。まるで、もっと血を求めるかのように。
「ウォォォォン‥‥!!」
 雄叫びに答える、格下のパラサイト達。小さなものまで合わせると、30匹から50匹はいるだろう。それはまるで、その一番大きなパラサイトを頂点とする、巨大蟻のよう。
「シャギャァァァァ!!」
 例えるなら、クィーンの座に収まっているだろう一番大きなパラサイトは、部下達に命じるように声のボリュームを上げた。その腹は、今にも卵を産みそうなほどに大きく膨れ上がっている。
「‥‥急がねば、ならんな」
「はい。産卵ともなれば、被害の範囲は拡大するに違いありませんし」
 レオンの『夢』から、その時が近い事を知った議長は、厳しい表情だ。
「遺跡の内部は、どうなっている?」
「途中までは、以前の依頼で手に入った地図が提出されています。ただ、ある地点から先は、アイテムがないと入れないらしく‥‥」
 言葉を濁すレオン。確かに報告書からも、ある地点より先は、オーク達が持っていたアイテムをはめ込まないと、進めないと書いてあった。
「別の出入り口があるはずだと思うが‥‥」
「ええ。でなければ、パラサイト達が頻繁に姿を見せられるわけはありませんし」
 しかし、他の出口がなければ、村の周囲で、パラサイトが目撃される筈はない。どこかに、別の出口があるはずだと、議長は口にする。
「ただ最近、例の村の涸井戸に、何やら水溜りの跡のようなものと、パラサイト達の融け残りが見られるようです」
「ジェル系モンスターが潜んでいるようだな‥‥」
 ウォータージェルとか、そう言った類のモンスターである。湿り気の多い地下通路などに潜み、やってくる動物や冒険者を溶かして食べてしまう、厄介な存在だ。
「だが、このままでは、計画にも支障が出る。レオン、わかっているな?」
「はい。心得ております」
 議長が促すと、レオンは頭を垂れて、部屋を後にする。
 数日後、先手必勝とばかりに、キャメロットでこんな依頼が出されるのだった。

『近くの遺跡に潜む、異形のモンスター達を掃討して来て欲しい』

 ただ、それには。

『なお、遺跡は研究に使用するので、出来るだけ傷を付けないでほしい。また、周囲に余計な不安を与えない為、他言無用に願いたい』

 そんな注意書きが添えられていた。依頼料が多めなのは、おそらく口止め料が含まれているのだろう‥‥。

●今回の参加者

 ea0163 夜光蝶 黒妖(31歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea2179 アトス・ラフェール(29歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea2438 葉隠 紫辰(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea3947 双海 一刃(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5892 エルドリエル・エヴァンス(22歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea9027 ライル・フォレスト(28歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ea9244 ピノ・ノワール(31歳・♂・クレリック・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb0117 ヴルーロウ・ライヴェン(23歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb0901 セラフィーナ・クラウディオス(25歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb2099 ステラ・デュナミス(29歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

フィラ・ボロゴース(ea9535

●リプレイ本文

「ここからは、私1人で‥‥。皆、援護に‥‥」
 既に使われなくなって久しい古井戸を前に、ピノ・ノワール(ea9244)から渡されたロープを繋ぎ合わせながら、夜光蝶黒妖(ea0163)がそう言った。見れば、かなり深さがありそうな井戸だ。
「何かいる‥‥」
 結んだロープの先に、ランタンを取りつけながら、深さを測っている彼女。井戸の壁面には、何やらぬめぬめしたモノがこびりついており、モンスターの存在をうかがわせる。
「降りれそう?」
「やってみる。出てきたら、お願い‥‥」
 一度、ロープを引き上げて、ランタンを外した彼女、それをエルドリエル・エヴァンス(ea5892)に渡し、今度は自分にロープを巻きつけた。
「やはり、ジェル系がいるのは、間違いないようだ!」
 ランタンで中を照らしていたエルに、大声で答える夜蝶。普段なら、そんなに激しい物言いはしないのだが、そうして叫べば、ジェルも反応を見せるだろうと思っての事。
「大丈夫かな」
「いつでも魔法は放てるようにしてある。それに、奴とて危険は承知の上だろう」
 危険な釣り行為に挑む彼女に、エルが再び心配そうな表情を浮かべると、ロープを支えていたアトス・ラフェール(ea2179)がそう答えた。彼の言う通り、ステラ・デュナミス(eb2099)がクリエイトウォーターで、バケツに水を貯め、自分に有利に働くように準備している。
「このままじゃ、出て来ない‥‥。なら‥‥えいっ!」
 そこの方で、何やらうごめいているのは、明かりで見えている。しかし、じっと待っているだけのジェルに刺激を与える為、夜蝶は湿った壁を蹴りつけていた。勢いをつけたせいで、壁の一部が崩れ、足元へと落下する。
「来た! よし、引き上げろ!」
 アトスが、他の男性陣に手伝わせる為、そう叫ぶ。それを、ジェルは攻撃と勘違いしたのだろう。即座に触手めいた腕を伸ばして、夜蝶を捕らえようとする。体色が青いのを見ると、井戸の水に紛れていた、ウォータージェルだ。
「あ、ああ。青い‥‥。綺麗だ‥‥」
 当然の様に追いかけてきたジェル。表の光に照らされて、水面にも似た輝きを見せるそれに、ヴルーロウ・ライヴェン(eb0117)が憧憬の眼差しを向けていた。
「って、何を惹かれてるかー!!」
「い、いや。何を考えてるんだ、俺! 欲しくなんかない! 欲しくないぞぉ!」
 アトスに怒られて、ぶんぶんと首を横に振り、慌てて否定する彼。そして、前言撤回とばかりに、オーラショットを乱射する。それを見て、エルもウォーターボムをぶっ放した。
「あんまり効かないわね‥‥」
「鍛えてないからな‥‥。片手間だし」
 だが、2人とも使っている魔法は、初級レベルである。体力の高いジェルには、かすり傷程度しか、与えられていない。
「どうしよう。私のアイスブリザードだと、夜蝶さんまで巻き込んじゃう‥‥」
「いや、相手はそれほど知能は高くない。エサが移動すれば、出て来る筈だ」
 手を出しあぐねているステラに、ピノがそう言った。ステラに、ジェルに対する知識はなかったが、彼が言う通り、姿形を見る限り、それほ知能は高くないように見える。
「成る程な。井戸の中でさえなければ、やりようはいくらでもある」
 彼のセリフに、葉隠紫辰(ea2438)は松明を灯した。そして、火のついたそれを、距離を取りながら、井戸の中に投げつける。
「さすがに、松明で決定的なダメージを与えるってのは、無理があるかな‥‥」
 双海一刃(ea3947)と2人で投げ込むものの、あまり効果を上げていない。
「近寄ら‥‥ないで‥‥!」
 一方の夜蝶はと言うと、やられてなるものかと、避けに徹しているが、流石にまったく攻撃を受けないと言うわけには行かず、あちこちに赤い擦り傷めいた跡をつけていた。
「出てきました!」
 その彼女を追って、ついにジェルが姿を現す。引き上げた後、怪我をした夜蝶に、リカバーをかけ終わったアトスは、そう言うと、彼はコアギュレイトで、動きを止める戦法へと切り替える。
「そのまま拘束しててね! えぇい!」
 彼の魔法により、身動きの取れなくなったジェルに、ステラがバケツに用意した水を、ウォーターコントロールで包み込む。
「そのまま良い子で居てね! カチコチにしてあげるから!」
 ゆらゆらと水の中をたゆとうジェルに、彼女は水ごとクーリングの魔法をかけた。超低温のそれは、時間をおかずして、凍り始める。
「これで止めだ!」
 動きの取れないジェルなど、タダの的。程なくして、氷ごと砕かれてしまうジェル。
「やっぱり、、井戸は奥の遺跡に繋がっているで間違いないわね。もしかしたら、残りの連中はそっちにいるかもしれないけど」
「まぁ、一応、油と松明で燃やしとこーぜ」
 ステラの確信に満ちたセリフに、ライル・フォレスト(ea9027)は持ち込んだ油と松明で、そこにへばりついているかもしれないジェルの一掃を計る。
「これで、しばらくは出てこねーだろう。火が消えたら、先に進むぞ」
 焦げた臭いが漂うそこを、冒険者達は先へ進む為の通路として、利用するのだった。

 井戸の底には、人間が一人、屈んで通れるほどの横穴があった。おそらく、偶然開いた穴だろう。嫌な匂いの立ち上る中を、冒険者達は、周囲を確かめながら、遺跡の内部へと向かっていた。
「一本道か‥‥。方角的には、間違いなく遺跡に向かっているな‥‥」
 前回の調査の際、作成された地図に、現在分かっている部分を書き込むライル。セラフィーナ・クラウディオス(eb0901)から借りたそれを、頭の中に叩きこんだ村の状況と比べてみると、間違いないようだ。
「くう、しまった、ここは遺跡か。戦闘になるまで、汚れないように気をつけなければならないな」
 それを聞いて、自身に言い聞かせるようにそう言うブルー。
「この先に、大小さまざまな反応があります。気を付けて下さい。いよいよのようですから」
 ようやく、並んで歩けるほどの大きさとなった通路で、デティクトライフフォースを唱えていたピノが、警告を発する。
「どうでも良いけど、出入り口付近で、確実に数を減らす方が無難なんじゃない?」
 扇形になった部屋は、攻めるに難しく、守るには易しい地形だ。やってみる価値はあるだろう。
「凍っちゃいなさーいッ!」
 程なくして、姿を見せるパラサイト達に、開幕一番専門クラスのアイスブリザードを放つエル。相手を凍らせる魔法ではないが、ダメージを与えるには充分だ。
「って、エル! あんまり派手に戦わないでよー!」
 もっとも、パラサイトだけではなく、周りの壁にも被害を与えてしまい、セラに怒られるはめになる。
「うっさいわね。こっちだって生死に関わる問題なんだから」
 量が多いので、ぐだぐだと細かい作戦を練らず、削れるだけ削るつもりなのだろう。
「大丈夫みたいだから、あたしもやろうっと。窒息させるより、効率よさそうだし」
 それを見て、いままでウォーターコントロールでの足止めしかやっていなかったステラ、同じ様にアイスブリザードの魔法を唱えて、数を削っていた。
「まったく‥‥。次から次へと‥‥面倒だわ‥‥。キリがないわね‥‥」
 しかし、それでもパラサイト達は、攻撃の手を緩めない。どうやら、自分達をえさだと勘違いしている模様。
「やる気あるのは認めるけど、前に出すぎ。そんなに死に急ぎたいなら、止めやしないしないわよ」
 思っていたほど、動きは早くないので、セラはそう言うと、得意の弓を撃ち込んでいく。かなりダメージを負った彼らに、エルがウォーターボムで狙い撃ち。
「扇の要を利用するんです。広い方には、絶対に行かせないで下さいよ!」
「心得た」
 直角になった部分に追い込むように、ピノとアトスが、牽制代わりのホーリー系を叩きこむ。
「生身であるだけマシってもんだ。出来るだけひきつけろよ!」
 魔法でパラサイト達を片付ける彼らとは対照的に、右腕の忍者刀でもって、パラサイトの目を集中攻撃するライル。当たろうが当たるまいが関係ない。装甲の薄い所を狙い、同じ所をきりつけて行く。
「言われなくとも、な」
 ダブルアタックを習得している両手ききの一刃、手にした小太刀とナイフで、確実にダメージを与えていた。
「ぐあっ!」
 それでも、囮となっている面々には、優先的に攻撃の手が及ぶ。回避能力の高い夜蝶は、その名が示す通り、舞うようにパラサイト達の攻撃を避けていたが、それをし損じた紫辰は、パラサイトの爪に引っかかれ、胸に血の花が咲かせていた。
「紫辰!」
「大丈夫、カスっただけだ‥‥。く‥‥っ」
 オフシフトで、回避しているライルと違って、自前の回避能力しか持たない彼、予想以上に傷は深いらしい。
「‥‥これ、飲んでおけ」
 幾ら心憎からず思う相手とは言え、こんな緊迫した場面で、そんな姿を見せるわけにはいかない。手渡した指先に愛情だけをこめ、一刃は紫辰に、リカバーポーションを差し出す。
「すまない‥‥」
「気にするな。もう、お前が犠牲になる姿は見たくないからな‥‥」
 それまでの経歴と行動から、自身の命さえ差し出すを厭わない紫辰を、そう言って案ずる一刃。
「俺だって怪我してるんだけどー」
「あなたは私が治してあげます」
 何か納得行かないライルくん、アトスにリカバーを施され、ぶっすーとした表情だ。
 だが、そうしているうちに。
「囲まれたかっ!?」
「何とか隙が作れれば‥‥」
 いくら彼らとて、物資にも力にも、限界はある。戦っているうちに、周りを取り囲まれてしまった。おまけに、自分達が入って来た通路から、ジェルまで乱入している。
「ちっ。こんな時に‥‥」
「どうする?」
 さすがに、この疲弊した状況では、両方相手をするのは、かなり厳しい。そう問うて来た紫辰に、一刃はこう言った。
「春花の術で眠らせれば‥‥」
「動きを止めれば、後はジェル達が始末してくれると言うわけだな」
 何しろ、パラサイト達さえ、その腹に入れてしまう悪食っぷりである。眠りについてしまえば、後は共食いを引き起こすだけ。
「そう言うことだ。何とか、注意を向こうに向けさせる事は出来るか?」
「やってみる」
 一歩、前に進み出る紫辰。そこへ、レイピアで中衛をやっていたブルーが、彼らの武器に、オーラパワーを付与してくれた。
「使え。多少は役に立つ筈だ」
「恩にきる」
 これで、威力は上がる筈だ。
「死地に活路を見出してこそ、我が剣の真髄なれば。行くぞ、一刃」
「ああ」
 パラサイト達の中に飛び込んで行く2人。こうして、一同はなんとか、本隊を始末する事が出来たのだった。

 ようやく、周囲にパラサイト達がいない所まで、移動してきた冒険者達は、一息ついていた。囮に出た紫辰や一刃も、何とか生きている。
「数を逆算すると、あれで全部だとは思えないけど‥‥」
「まだ、卵が孵化する前なんじゃないかしら。体の小さいのも多かったし」
 今まで倒した数を数えていたステラに、エルがそう答えた。幸い、前回の調査で、成体の数を減らしていた為か、戦力的にはそれほどでもなかったらしい。
「ここは‥‥」
 周囲を見回し、そう言うセラ。通路を抜けた先には、まるで儀式の間の様に、卵が整然と並んでいた。
「孵化場‥‥だろうな」
 卵の1つを、問答無用で叩き切る一刃。中で、未成熟のパラサイトが、ぴくぴくと痙攣していた。
「踏み潰すのは大変そうだな。いっそ、焼き払うか」
 ライルがそう言う。しかし、その直後。
「まさか‥‥」
「孵っちゃった‥‥?」
 居並ぶ卵が、まるで内部から剥かれるかのように、ぱっくりと十字に割れる。その中から、体液の音を滴らせながら現れる、ベビーパラサイト。
「皆、下がって!」
 今まで魔力を温存していたエルが、わらわらと出てきた彼らを見て、そう叫んだ。
「お願い、水の精霊たちよ。私に力を貸してっ!」
 彼女が唱えたのは、己が使える最高レベルのアイスブリザード。極寒の猛吹雪は、ベビーパラサイト達に、着実にダメージを与えていた。空気が白く輝く中、ぼとぼとと落ちて行くベビー達。
「さすがに凍り付いちゃったわね。でもどうする? 残り半分あるし」
 そう尋ねてくるセラ。残り半分は、まだ孵化が始まっていない。そんな彼女に、ライルがこう言った。
「上手くすれば、まとめて燃やせる。井戸にへばりついた奴ごとな‥‥」
 彼が出しているのは、火のついた松明だ。
「材料は、あるの?」
「たっぷりと持ってきてるぜ」
 セラの問いに、ブルーがそう言って、まだ残っている油をぶちまける。
「どうも、嫌な予感がするわ。気を付けて」
 巻かれたそれに、火が付けられる中、セラはそう言った。そう、まだ‥‥最大のパラサイトが、姿を見せていないと。
「しゃぎゃぁぁぁぁ!」
 燃え盛る炎の中、ゆらりと姿を見せる、大きな影。
「おっと。女王様のお出ましだぜ」
 そう言うライル。
「常識的に考えたら、卵を運びやすい場所に‥‥ボスがいるってのは、当然だな」
 アトスがそう言った。確かに、蟻の巣でも、卵は女王のすぐ近くに置かれている。
「キシャァァァァ‥‥」
 クィーンパラサイトは、動かなくなってしまったベビー達を見つめていたかと言うと、冒険者達に向かって、頭を振り上げる。
「なんか、怒ってる?」
「そりゃあ、目の前で自分の子供を殺されたわけだし」
 ステラとセラ、びっくりしておててを取り合っていた。
「ギシャァァァァァ!!!!」
 そんな中、クィーンは盛大な声でほえると、冒険者達へと突進してくる。
「うわぁっ!」
「きゃああっ!」
 他のパラサイト達より、格段に大きな爪。ベビー達の死体を踏みつけつつ、冒険者達さえ餌食にしようと、蹴りを食らわしてくる。
「いたたた‥‥。一撃でこれかよ‥‥」
「流石にクィーンですね‥‥」
 避け損なって、ダメージを負ったライルに、リカバーを施すアトス。と、それを終えた彼は、すっくと立ち上がり、クロスソードを抜いた。
「しかし、全員で攻撃すれば、活路はあるはずです。狙いを頭部に集中しましょう」
「心得た」
 一刃を助け起こしていた紫辰、忍者刀を構え、迎撃を試みる。
「ぎしゃああああ!」
 対して、ヤル気満点のクィーン様。そんな彼女に、エルがシャドウバインディングを撃ちこみ、動きを止める。
「その腹部の中身を畏れるのです。村のため、ここで散ってもらいます。滅せよ!!」
 彼らが牽制に動いている間、詠唱を済ませたピノが、専門レベルのブラックホーリーを撃ち込んで。
「ぎしゃぁぁぁぁ!!!!!」
 足元を押さえられたクィーンが、全員でタカられて、倒れ伏したのは、それから何分後かの事だった。