【妖精王国】ディナ・シー・オブ・クィーン

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 74 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月24日〜08月29日

リプレイ公開日:2005年08月28日

●オープニング

「失礼します。どなたか、学園の方はおられますか?」
「おや、コレック卿」
 クエストリガーに顔を出すコレック・ターズ卿。彼は、受付に来ていた生徒会長を見つけると、こうきり出した。
「実は、うちの店にまた、妖精が現れましてな‥‥」
「また、何か悪戯を‥‥?」
 この忙しいのに、また悪さしでかしたのだろうか。と、いぶかしむ生徒会長に、コレック卿は首を横に振った。
「いえ、今度は酔っ払ってもおらず、まともに話を聞く事が出来たんですが‥‥。私だけでは、手に余る問題でしてな‥‥。なんでも、妖精国の女王陛下を、お助けして欲しいんだそうです」
 その表情を見ると、かなり深刻な話のようである。普段の口調が影を潜めているのは、その重大さ故だろう。そう思った生徒会長が、「詳しく話して下さい」と尋ねると、卿は「実は‥‥」と、事の顛末を話し出す。
「おや、この間の‥‥」
 いつもの様に、店を開けようと、雨戸を開けたコレック卿、在庫に手を出そうとしたディナ・シー少年を見つけて、声をかける。少年は、ちょっと驚いたようだったが、開けたのがコレック卿だと知り、粉を撒き散らせながら、飛びついてきた。
「うわーん。助けてー」
「ちょ、ちょっとどうしたの?」
 怖い思いをしたのだろうか。びーびーと泣きじゃくる妖精少年。
「はいはい。泣かないの。男の子でしょ」
「うぇーん‥‥。えぐえぐ‥‥」
 コレック卿が、ハンカチを差し出すと、彼はその端っこを抱えるようにして、しゃくりあげている。
「ほら、涙吹いて。落ち着いて話して」
「うん‥‥」
 彼が、顔を拭いてあげると、妖精少年は瞳を潤ませたまま、事の次第を語った。
「妖精王国の、女王‥‥?」
 それによると、彼らの住む妖精王国で、王国の女王や王族が捕まって、氷の棺に閉じ込められてしまったとの事だ。
「うん。僕達の女王様‥‥。助けてあげたいのに、悪い人に捕まって、大きなカラスが見張りになってて、近づけないんだ‥‥」
 話は、数日前にさかのぼる。妖精王国にいた女王は、ある日、王国に現れたギャリー・ジャックとその手下により、王国が乗っ取られ、女王はその王国の中心部たる巨大樹のてっぺんへ、閉じ込められてしまったらしい。
「いつまで私達を閉じ込めておけば、気がすむおつもりですか?」
「さぁな。いつまでかねぇ‥‥」
 王国を見渡せる位置にある大きな籠状の住居にぶら下げられ、拘束された状態の女王に、目付きの悪い妖精がそう言った。
「私は責任ある立場ですから、構いませんが、王国の住人達‥‥それに、人の子達は、あなた方の野望など関わりなきこと。開放してやるわけには参りませんか?」
「まいらねぇな。ま、大人しくお人形さんしてるこった。ギャリーのダンナの、事が成就するまではな‥‥!」
 その妖精は、せめて自分が捕らえられている間、王国の住人や、笛の音によって集められた者達を放してあげて欲しいと願う女王に、アイスコフィンの魔法を唱えてしまった。
「あ‥‥!」
 なす術もなく、氷の棺に閉じ込められてしまう女王。
『神よ‥‥。古き精霊よ‥‥。どうか‥‥我が子らに、ご加護を‥‥』
 最後に祈ったのは、己の安全ではなく、王国に住まう者達のこと。
「これで、ちったぁ大人しくなるかね」
「クワァ‥‥」
 冷え冷えとした空気が、どこからともかく流れる中、どこからともなく烏の鳴き声が、響いていたと言う。
「大変だ‥‥!」
 その様子を、こっそり見ていた少年妖精は、わき目も振らずに脱出し、ようやくコレックターズ卿のところまでたどり着いたとの事だ。
「なるほど。で、場所はどこなんです?」
「かの少年の話では、このあたりだと‥‥」
 コレック卿は、店から持ってきたらしいケンブリッジ周辺の地図を広げ、東の森に、目印を置いた。それはちょうど、ランス少年が手紙を送ってきた中にあった地図と一致する。
「‥‥先生が救出に向かった辺りですね‥‥。どうやらあのカラス、昼は王国でえさを狩り、夜は見張りになっていると言ったところですか‥‥」
「どういう事です‥‥?」
 怪訝そうなコレック卿に、生徒会長は『生徒が1人、巻き込まれちゃっているみたいでして』と、パープル生徒会長から預かった手紙を見せる。そして、クエストリガーの壁に、こう依頼を張り出した。

『妖精王国に潜入し、女王陛下を救出してくれる面々を募集します』

 結構、大変な話になりそうだった。

●今回の参加者

 ea1123 常葉 一花(34歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2767 ニック・ウォルフ(27歳・♂・レンジャー・パラ・イギリス王国)
 ea4665 レジーナ・オーウェン(29歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5597 ディアッカ・ディアボロス(29歳・♂・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea7511 マルト・ミシェ(62歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea8737 アディアール・アド(17歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

「これでしばらくは保つと思います。空からの攻撃が増えるかもしれませんが、その時はお願いしますね」
 持っていた愚者の石に念を込め終わったディアッカ・ディアボロス(ea5597)がそう言った。これで、一時間は黄金そっくりに見える。その輝きで、大鴉達を引き寄せられれば、ラッキーと言う所だろう。
「心得ました。お任せ下さい」
 その偽物の黄金が置かれた辺りを防衛線として、レイピアを片手に一礼するレジーナ・オーウェン(ea4665)。マナーコーディネーターと言われているだけあって、このあたりの礼儀作法は、美しいと言って差し支えないだろう。
「さぁて。臨時とは言え、教え子達に怪我をさせるわけにはいかないからのぅ。派手にひきつけて、出来るだけ安全に行かさねばの」
 対照的に、こきこきと肩をほぐすマルト・ミシェ(ea7511)。肉体労働は得意ではなかったが、コレも年長者の責任と言うものだ。
「落ち着けば、ゆっくり樹と語れますからね。微力ながら、尽くさせていただきたいと思いますよ」
 なんだかんだと言いつつ、既にやる気満々のアディアール・アド(ea8737)。そこへ、上空を旋回する巨大な鳥が現れた。遠くて詳しい造作まではわからないが、おそらく女王を見張っていると言うジャイアントクロウだろう。
「後方支援はお願いいたしますね。では、参ります」
 レジーナはそう言うと、連れてきたウォーホースにまたがり、正面でレイピアを高々と掲げた。そして、軽く息を吸い込み、大きな声でこう叫ぶ。
「わたくしはイギリス騎士オーウェン家の娘、レジーナ。ギャリー・ジャックに与する者達よ、大人しくこの王国から立ち去りなさい!」
 反応はあまりない。だが、声に驚いてか、ジャイアントクロウの動きが、にわかにあわただしくなり、その羽ばたきが近付いてくる。まるで、畑から追われた鳥達のように。
「聞こえていないのでしょうか」
「いや。そんな事はないと思うがの」
 人の気配がしないことに、マルク老とアディが顔を見合わせている。レジーナとて、一度で相手が出てくるとは思っていない。うかつに近付くくらいならと、彼女はさらに声を張り上げた。
「わたくしたちに恐れを為して閉じこもっているおつもりですか? やはり卑劣な反逆者どもには引き篭りがお似合いということですね!」
 とにかく、こちらへ注意をひきつけなければ。その思いが天に届いたのか、鴉達の騒ぎを聞きつけて、いかにも魔術師と言った風情の男と、そして何人かの妖精が、姿を見せた。その様子にマルト老。アディにこうアドバイスをしてくれる。
「攻撃魔法は控えておくんじゃぞ。下手なもの使うと、何か大惨事になりかねん。元が小さいし」
「安心して下さい。森を傷つける様な魔法は、持ってないですから」
 だが、彼が習得している魔法は、主に森の中を安全に歩き、そして木々と語らう為のもの。相手を傷つける心配は無いと告げる。まぁその分、他の面々に比べると、戦力としてはやや心もとないわけなのだが。
「鴉達が騒ぐから来てみれば。うるさい娘だ。餌にしてやる」
 そう言うと、男はなにやら合図をした。すると、上空をやかましく旋回していた鴉達が、急降下してくる。それだけではない。隠れていた妖精達も、思い思いのスタイルで、彼ら3人を取り囲んでいた。
「空からと地上からですか‥‥」
「空中は私が相手をします。接近戦なら、負けはしませんから!」
 少々分が悪いが、他に出来る面々がいない。そう思ったレジーナ、ウォーホースの腹を蹴り、戦場の中央へと躍り出る。
「ほいほい。なら、お前さんの相手はわしじゃ」
 彼女が、クロウ達の相手をしている間、マルト老は、飄々とした仕草でそう言って、小石を拾い上げた。
「ふん。年寄りの冷や水にならんが良いがな!」
 相手は高速詠唱を心得ているのだろう。そう言い終わると、アイスチャクラを出現させる。
「経験はお前さんの3倍は豊富じゃい。ほれほれ、こんな事も出来るぞ」
 しかし、マルト老はまったく動じず、拾った小石をお手玉してみせる。
「だったら何だって言うんだ。え?」
「分からん奴じゃな。即ち、こう言う事も出来るっちゅう事じゃ!」
 そのお手玉をしていた小石の1つが、いきなり方向を変え、水魔法使いへと襲いかかった。直後、鈍い音がして、その魔法使いのおでこを直撃する。
「ほっほっほ。同じ魔法使いじゃもの。抵抗が高いのはわかっとるが、変わりに装甲が紙同然なのもわかっとる。石でぶん殴られるのは、同じ重さの武器より、下手すりゃ痛いぞぇ」
 胸をそらす老。気がつくと、彼女の頭上には、20kgほどの木が、ふよふよと浮いていた。ごつごつと尖ったそれは、下手なメイスよりもよっぽど痛そうだ。
「く‥‥。たかが枯れ枝‥‥。接近戦に持ち込めば!」
「近付かせませんよ。残念ながらね」
 その彼女を守るように、アディの操る蔦が、まるで1本の巨木の様に絡んだ姿を見せる。
「なら、こっちも近付かせないようにするまでだ」
 彼がそう言った刹那、周囲の空気が格段に下がる。フリーズフィールドを使ったようだ。
「さて、どうする? お三方」
 急激な気温の変化で発生した霧に紛れて、何かやってくるつもりなのだろう。もしかしたら、ある程度ひきつけた後、引き上げてしまうかもしれない。
「やれやれ、あんまり使いたくなかったんじゃがのぅ」
 女王を救出してくるまで、彼らを退かせるわけには行かない。そう打ち合わせ済みのマルト老は、アディにこう頼んできた。
「一箇所に集めて欲しいんじゃが、出来るかの」
「‥‥わかりました」
 ディアッカの様に、幻影を作り出す事は出来ないが、プラントコントロールで木々を操り、人がいるかのように揺らす事は出来る。
「何をするつもりだ?」
 そうして、何人もの増援が出てきたように見せかけ、あちこちから小石を投げてくるアディに、怪訝そうな表情の水魔道師。
「これをするつもりじゃ」
 その彼の真正面から聞こえたのは、いかにも平常心と言った風情で、グラビティーキャノンを唱えるマルト老の声。その魔法使いが、声も上げずに昏倒したのは、その直後の事である。

 その頃、他の面々は、女王の眠る巨大樹へと忍び寄っていた。
「なんか、妙な格好ですわね」
「我慢して下さい。コレも目立たない為ですから」
 巨大樹へと登る前、イェーガー・ラタイン(ea6382)が皆にやらせたのは、そこらに生えている蔦や植物で、目立たないようにカモフラージュする事だった。
「表は派手ですね」
「終わる前に、救出してくるのが上策かと」
 その時、ちょうど外でクロウ達の喚く声と、レジーナの挑発する姿が、耳に飛び込んできた。既に、囮達の戦闘は始まってしまっているようだ。
「気を付けて下さい。中に敵がいないとも限りませんから」
 常葉一花(ea1123)がそう言って、注意を促した。しかし、外の囮に出払ってしまっているせいか、一行は大した妨害に出くわさず、巨大樹の‥‥女王の下へとたどり着く。
「あれですね‥‥。女王様は‥‥」
「さすがに気品が漂ってらっしゃいますわ」
 ディアッカのセリフに、一花は、そう言った。アイスコフィンに封印されてもなお、その雰囲気は打ち消しようがないのか、感心したように。
「でも、あれではせっかくの御髪が台無しです。助けて結いなおして差し上げなくては」
 一方、ニック・ウォルフ(ea2767)としては乱れた髪を、早く直してあげたくて仕方がない模様。
 だが、女王の周囲には、まだ何匹かのカラスが残っていた。おそらく見張りだろう。半分しかいないのは、他のカラスは出払っているようだ。
「可能な限り騒がれない様に」
「わかってます。遠距離から狙いますから」
 一花の指示に、イェーガーがショートボウを構えた。そのまま、素早く矢を放つ彼。
「クァァ‥‥」
 すたんっと烏に突き刺さったそれは、それこそ巣をつついたような騒ぎになる。その鳴き声に、違う所にいたらしきもう1匹を目覚めさせてしまう。
「しまった! もう1匹いたか!」
 慌てて、新たに出てきた烏に、矢を射掛けるイェーガーだったが、そっちは外れてしまう。
「間に合わない‥‥!?」
 一花も、高速詠唱を使ってクリスタルソードを作り上げたが、彼女の場合、あいにく遠距離用のCOも魔法も心得ていない。
「させません!」
 このままでは、外に知らされてしまう‥‥と、2人の間に緊張が走った刹那、1本の矢が風を切ってカラスに刺さった。当たり所が悪かったのか、そのままどさりと落ちてしまうカラス。
「助かりましたわ」
「引き続き、警戒してて下さい。その間に、何とかしてきます」
 礼を言う一花と、そう頼んでくるディアッカ。ニックが頷いた所を見ると、そのまま隠れた状態で、増援がこないか見張りをしていてくれるようだ。
「これは‥‥」
 小さな身体と飛べる体を活かして、女王の元へとたどり着くディアッカ。パーストで、数日前までいた見張りや魔術師達が、外へ出払っている事を確かめると、テレパシーで女王に語りかけた。反応はない。後で聞いた話だが、アイスコフィンの中は時が止まっている為、意識は眠っている時と同じになるそうだ。
『もう少しですから、頑張って下さいね』
 そんな、意識のない女王を励まして、ディアッカは一度、皆のところへと戻る。
「どうだった?」
「先に、残っている人達が居ないか、探して来て下さい」
 女王はそれを望んでいるようですから。と、彼が告げると、イェーガーが「わかった」と答えて、すぐ近くにあった鳥篭住居の入り口へと手をかけた。
「ちょっと待ってください。それは囮です!」
「え!?」
 ディアッカが止めたが、時既に遅し。
「ひっかかったな‥‥!」
 ニヤリと笑って、中の人物が魔法を唱える。淡い青の光に包まれている。
「ぐぁっ」
 だが、その刹那。隠れていたニックが、矢を打ち込んでいた。
「危なかったですね」
「‥‥すみません」
 礼を言うイェーガー。そんな彼らを、一花が「急ぎましょう」と促すのだった。

 その頃、木の外では、木の陰に潜みながら、アディがタイミングを計っていた。
『アディさん、女王陛下の所まで来ました。でも、蔦が張り付いてるので、上手く運び出せません!』
 そんな彼に、ディアッカから連絡のテレパシーが流れ込んでくる。
「連絡が来ました。ちょっとここ、お願いしますね」
 頷いたアディは、レジーナに前線を任せて、プラントコントロールを唱える。効果範囲の広いそれは、女王を捉えていた蔦を取り、運びやすくしてくれる。
「今のうちに」
 ここで解凍するのは得策ではない。一度、外へ運び出してから、開放しようと言う事で、一行は、表の魔術師達が戻ってこないうちに、さっさと撤収する。
「ディアッカ、合図をお願いします」
 シフールの半分程しかない小さな女王を抱えたイェーガーが、ディアッカにそう言った。頷いた彼の魔法は、即座に表のアディ達に伝わって行く。
「もう大丈夫のようです」
 囮の面々は、そう言うと、さっさと撤収準備を始める。後は、潜入班と合流して、森を出れば良いだけ。
「そうじゃな。追いつかれると厄介じゃ。魔法でもかけておくかの」
 時間稼ぎに、マルト老はそう言うと、アグラベイションを相手にかけてしまうのだった。

 かなり離れたところまで逃げ延びた一行は、火を焚いて、女王の封印を解きにかかっていた。
「ふぅ。ちぃっとばかし無理をしてしまったかもしれん‥‥。明日は筋肉痛じゃな」
 張り切った見返りの怖いマルト老。
「申し訳ありません。このように良くしていただいて‥‥」
「そんな事ないよ。女王様は、やっぱり綺麗に身だしなみ整えなきゃ♪」
 その反対側で、陽気にそう言って、女王を飾り付けているニック。綺麗な女性を綺麗にするのは、美容師冥利につきるというものらしく、とても楽しそうだ。
「俺は、女王様の『自分の身でなく、民を案じた』その想いに応える為に来ました。ただ、それだけです‥‥」
 イェーガーの言葉に、頭をたれる女王。
「しかし、ギャリーは不在でした‥‥。これから、どうなさるおつもりですか? 女王様」
「様子を見て、このまま彼らが戻らないようでしたら、荒された王国の復興をしたいのですが‥‥。王もどこかに捕らわれておりますし、ここで、御厄介になるわけにも参りませんし‥‥」
 妖精王が生還した暁には、蹂躙され、荒れた王国を元に戻したいと、彼女は言う。
「確かに、このままでは樹と語る事も出来ませんね」
 結局、側に近づけなかったアディが、残念そうに答えた。と、そんな女王に、一花が事情を尋ねる。
「でも、諸悪の根源を叩かないと、またギャリー達が現れるかもしれませんね。どうしてあそこに閉じ込められていたんですか?」
「反乱は、突然乱入されて‥‥あっという間に‥‥。我らは、争いは好まぬので、なす術もなく‥‥」
 妖精王国に人が入るのを防ぐ為、結界を張っていた。しかし、その半面、力の源となる笛を奪われ、外部にさらされた時、対抗する手段を失っていたのだと、女王は悲しげに語る。
「心中、お察しいたしますわ。ところで、ギャリー達がどこにいったのか、御存知ありません?」
「おそらく、グランタ様の御陵ですわ。どこから聞いてきたのか、墓のありかを見つけた彼らは、そこに向かうと話しておりました‥‥。おそらく、墓に眠るといわれるグランタのベルが目当てだと思います‥‥」
 と、女王は膝をついて、まるで偉大な聖者に祈るかのように、こう頼み込む。
「あれを使ったら、ゴグマゴク達が目覚めてしまいます‥‥。人の子の方々、どうかお願いです。そうなる前に、ギャリー・ジャックを止めて下さい‥‥。その為ならば、私はどうなっても‥‥」
 深々と頭を下げる彼女の、小さな手を取り、レジーナは、こう答える。
「顔をお上げ下さい、女王様」
 うやうやしく礼をして、彼女は貴人に剣を捧げる騎士そのものの仕草で、こう誓ってくれた。
「女王様、隣国の危機は、我らの危機。いかなる事態になろうとも、我ら一丸となって、お助けいたしますわ」
「俺も、妖精王国が、あなたの想いの様に、神と精霊と民と共にあらん事を、英国民の一人として願っています‥‥」
 イェーガーも、レジーナの言葉に同意するように、そう言ってくれる。
「ありがとうございます‥‥! 私も、素晴らしき隣人を持って、嬉しく‥‥いえ、誇りにさえ思いますわ」
 2人のそのセリフを聞いて感激したらしく、女王の両頬には、透明な涙が伝うのだった。