真夏の怪談
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■ショートシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月22日〜08月27日
リプレイ公開日:2004年08月30日
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●オープニング
夏。
いかに涼しい英国とは言え、地元の人間には、暑い事この上ない。
そんな暑さをしのぐ為には、様々な方法がある。その村では、『恐ろしい話を聞いて、背筋を凍らせ、涼をとる』‥‥つまり、怪談話が流行していた‥‥。
「それじゃあ、始めるぞ」
扉も窓も締め切って、蝋燭だけになった部屋で、数人の若者が、額を寄せ合っている。
「今日は取っておきの話だ。その昔‥‥はるばる日本から、騎士様と試合をしたいと、月道を越えてきた侍がいた‥‥」
声を低く落とし、おどろおどろしく語りだす青年A。話している内容は、大した事はなく、右も左も分からない異国の地で、悪人にだまされ、結局、女郎蜘蛛の餌食になった侍がいるらしいと言った、大きな町には、三つは転がっているような話だ。もっとも、イギリスに女郎蜘蛛は存在していない。だが、それゆえに信憑性のない怖さが増幅しているのかもしれなかった。
「それ以来、村はずれの木には、月のない夜になると、志半ばで倒れた侍の魂が、首だけの姿になって、血を求めて現れるらしい‥‥」
「それだけですか?」
依頼の説明に来た村長に、目を瞬かせるギルドの事務官。と、彼は首を横に振りながら、こう続けた。
「いえ。ただの怪談大会だけならば、わざわざ冒険者様を呼んだりはしません。実は、怪談大会に参加した若者が、次々と行方不明になっているのです」
最初は、ただ肝試しがてら、件の木を確かめに行こうじゃないかと、何人かの若者が、村はずれの一本杉目指して、深夜巡業に向かった。外れとは言え、そんなに距離があるわけではない。住宅街の向こう側にあるため、見通しは悪いが、往復でも2時間かかるか、かからないかの距離だ。
ところが、そんな近場にあるにも関わらず、翌日になっても姿を見せず、様子を見に行った他の村人も、やはり帰っては来ない。
「最近、その村はずれの木から、鳥の声が聞こえなくなっていて、何か恐ろしいものが住み着いてしまったかもしれないと思い、出入りを禁止していたのです。そのせいもあって、村では、その死んだ侍の呪いじゃないのかと言う噂がたっていまして。ですが、わざわざ日本の妖怪が、月道を通ってまで英国に来たとは、とても考えられませんし‥‥」
ここまで来ると、もはや悪戯と言うよりは、事件と言って良いだろう。事実、それ以来、村人は恐れて近付こうとはしていない。
「とにかく、洒落ではすまない状況なので、皆様には、この怪談話の真相を突き止めて、これ以上の被害を出さないようにしていただきたいのです」
「わかりました。では、こちらに記入をお願いします」
話の導入は、いい加減だが、依頼そのものは、ごくまっとうなものらしい。まぁ、金さえもらえれば、どんな依頼でも受けるのが、ギルドの仕事なので、貼り出さない訳には行かないのだが。
「いなくなった者は、何名ですか? さすがにうちも、ノーヒントで張り出すわけにいかないので」
「最初は3人。次に2人、最後に3人と、合計8人です。それと、昔から村にあった木なので、出来れば傷つけないでいただきたいのですが‥‥」
ギルドの担当官の問いに、村長はそう答え、居なくなった者達の詳しいリストを話す。年齢と性別はまちまちだったが、共通しているのは、いかにもモンスターが好みそうな、肉の柔らかそうな体格の者だった。
「わかりました。少し難しいかもしれませんが、お引き受けいたしましょう」
「よろしくお願いします」
了承のサインをする担当官に、村長は深々と頭を下げるのだった。
●リプレイ本文
昼でも薄暗い森をあるく冒険者達。
喪路享介(ea5630)が行った事情聴取によると、どうも犠牲者が3人ほど増えているらしい。話によると、最初に行方不明者が出たのは、10日前。それから、1日〜2日おき毎に人が消え、依頼が受理されてからも、3人ほど行方不明との事。
そこで、双海一刃(ea3947)の百聞は一見にしかず、シーダ・ウィリス(ea6039)の夜行性っぽいのに、わざわざ夜行く事はない‥‥等の意見、享介の提案と一刃の助言もあって、不要な保存食等を村に置き、村の若者がたどったという道のりをなぞるように、杉へと向かう事にしたのだ。
「な、なんだか雰囲気の悪い森だよぉう」
レイヴァート・ルーヴァイス(ea2231)のマントを、しっかりと握り締めながら、不安げに呟くアーサリア・ロクトファルク(ea0885)。昼でも薄暗い森の中で、敵でも警戒しているのか、上ばかり見ている。
「何かいる」
と、一刃が人差し指を唇に当てて、『黙れ』のサインを示しながら、そう言った。彼の肌には、突き刺さるような殺気が、感じ取れている。
「どっちです?」
小首を傾げるアルメリア・バルディア(ea1757)の問いに、彼は殺気の流れてくる方向を指差してみせた。
「確かめてみましょうか」
彼女は小石を拾い上げ、茂みの向こう側へと投げつける。すると、何かを打ち鳴らすような音が、暗闇から聞こえてきた。
「風が変わった‥‥?」
先頭に立っていたヴァレリア・ボギンスカヤ(ea1269)が、そう呟いた。森を吹き抜ける風に、血のにおいが混ざったのが、彼女には分かる。よく見れば、茂みの影にかくれるようにして、鳥や小動物の干からびたようものが、転がっている。それに気付いた彼女、無言で弓を構えた。と同時に、がさがさと下草を踏みしめる音が近付いてくる。
「こっちへ来るぞ!」
ジャパン語で警告する一刃。厳しい表情は、それだけで緊迫感を伝える事に成功したようだ。ヴァレリアが後ろの下がり、代わってレイが、剣を構えている。
「拙い剣だけど‥‥」
後ろの方では、シーダもまた、そう言って剣を鞘から外す。その直後、木々と茂みの間から現れたのは、巨大な蜘蛛だった。
「レイ、気を付けて」
グッドラックをかけてくれるアーサリア。そんな彼らに、蜘蛛は餌とでも思っているのか、キチキチと威嚇音を鳴らしながら近づいて来た。
「ああ、わかってる。こんな奴に遅れは取らんさ」
そう答えるレイに、グランドスパイダが前脚を次々と地面に突き立てようと迫る。
「けっこう素早いですね‥‥」
蜘蛛が狙っているのは、肉が豊富についていそうな者や、体格の大きそうな者だ。アーサリアだけではなく、他の女性陣も守らなければならない騎士様は、防御一辺倒になってしまっていた。
「こんな所で、もたもたしてる場合じゃないのに‥‥」
弓を討つヴァレリアが、唇をかみ締めながら、そう呟く。目指す杉の木は、まだまだ先だ。しかし、蜘蛛は、まるでその木に近付かせないかのように、彼らの行く手を妨害している。
その焦りが、隙を生んだ。不意打ちを恐れ、時間をかけている間に、アーサリアの加護が‥‥途切れてしまう。その刹那、蜘蛛が鋭く牙を打ち鳴らした。
とたん、彼らの上に覆いかぶさるように茂っていた森の梢から、巨大な影が飛び降りてくる。
「きゃあっ!」
「アーサリアさん!」
一瞬、ヴァレリアの注意が彼女に逸れた。と、まるで、それを見計らっていたかのように、今まで相手をしていた蜘蛛が、口から糸を吐き出していた。
「させるかっ!」
それは、彼女達と蜘蛛の間に割り込んだレイの、腕と身体を巻き取り、身動きが取れないようにしてしまう。
「レイ!」
アーサリアが、恋人を奪われまいとしっかり捕まっている。この状態では、コアギュレイトを撃つ事もままならない。しかし、蜘蛛はキチキチと牙をならしながら、彼らを引き寄せた。攻撃で脚先を2本ほど吹き飛ばされていたが、まだまだ意気は盛んのようである。
「こらぁ! そこの蜘蛛! こっちだよ!」
シーダがそう言って、もう一匹の蜘蛛を、おびき寄せようとしている。しかし、いかに剣技が得意とはいえ、決して本職ではないシーダは、防御を考えずに当てに言った結果、蜘蛛に絡めとられている。
「アーサリアさん、手を離して下さい!」
と、それを見て、後ろのほうで、ウィンドスラッシュを放っていたアルメリアがそう言った。
「このまま、彼を拉致らせて行けば、行方不明の人達の所へ、案内してくれます! 村人を何人も行方不明にした犯人が、この2匹だけであるわけがないでしょう」
「でも‥‥!」
と、首を盾に振らないアーサリアに、当のレイが落ち着いた表情で、こう言ってのけた。
「アーサリア、シーダさんを放っておくわけには行かないでしょう? それに、心配しなくても、こんな連中に食われたりしませんから」
「レイがそう言うのなら‥‥。気を付けて」
安心させるように微笑むレイの頬にキスをして、アーサリアはグッドラックの魔法を施す。どれほど保つか分からなかったが、少なくとも生存期間を高めてはくれるだろうと、そう信じて。
「行っちゃった‥‥」
手を離すと、蜘蛛は己の獲物を確保して満足したのか、ぐるぐる巻きのレイとシーダを抱えて、森の奥へと消えて行った。
「追いかけましょう。根城は、分かっているのですから」
心配そうな表情を崩さないままのアーサリア。そんなの肩を抱いて、アルメリアはそう言って先に進む事を促すのだった。
盾役のナイトと、前衛の剣士を失い、戦力的にはダウンしている筈なのだが、その分アーサリアがクルスソードをぶん回している。
「あーあ。こんな所で、無駄にパワーを使わないで下さいよ。勿体無い」
アルメリアが呆れたようにそう言う中、ヴァレリアが前方を指差した。そこには、噂の巨木がそびえている。
「あれですか‥‥。何だか元気がないですね。見たところ、動き出す気配はありませんけど」
木の様子を見ながら、そう言うアルメリア。もっと近付いてみようと、彼女とアーサリアが木の根元へ近付いたその時である。その根元の床が、突然抜け落ちていた。
「いたたた‥‥。この地面、やたら固いぞ」
一刃が腰をさすりながらそう言った。ふみ固められたと思しきそれは、彼ら冒険者だからこそ、軽症程度ですんだのであって、普通の人間ならば、良くて捻挫、悪ければ骨折と言った所だろう。
「ど、どうやら、やっぱり罠だったようですね」
「皆さん、怪我はないですか?」
後ろ頭に冷や汗を流しながら、罰の悪そうな表情をしながら、交互にそう言う2人。
「ああ、この程度。うちの師匠の方の一撃の方が、よっぽど厳しいさ」
一刃は、大丈夫といった様にうなずいて見せた。イギリス語を話せない彼の言葉は分からなかったが、少なくとも大怪我をしている風情ではないのは、アーサリアにも分かる。
「それにしてもここは‥‥」
昼でも夜の様に暗いそこでは、今しがた落ちた天井の穴が、唯一の明かりだ。その薄明かりのおかげで、次第に目がなれてくると‥‥、そこには驚愕の光景が広がっていた。
「ここは、食料庫か、抱卵室かなんかのようだな‥‥」
幼虫と思しき子蜘蛛をたたっ斬りながら、一刃がそう言った。巨大とは言っても、その辺りの大きな蜘蛛と変わらないレベルの子蜘蛛は、あっさりと絶命する。
「ひどい、こんな‥‥」
その様子を見て顔をしかめるアーサリア。そこには、行方不明になった者達の『残骸』が横たわっていた。その上には、幼虫とおぼしき小さな蜘蛛がはりつき、せっせと『栄養を補給』している。そして、それら小蜘蛛を保護するかのように、大きな木の根が張り巡らされていた。と、そんな彼女に、ヴァレリアは厳しい口調でこう告げる。
「これも、自然の摂理だ。ただ、少し規模が大きくなっただけ」
普通、蜘蛛は網を張るか、地面縦穴を作り、獲物を捉えると言う。みれば、落ちた所には、蜘蛛の糸で織られたと思しき布状のものが、ひっかかっている。それが少し巨大化して、複数になっただけ。
「生きている奴はいるのか‥‥?」
「ちょっと待ってください。確かめてみたい事があります」
慌てて生存者を探そうとする一刃に、今まで後ろから事態の推移を見守っていた享介が、首元の銀のネックレスを引きちぎった。そして、卵を産み付けられたまま、気を失っている生存者に向かって投げつける。
「反応は、無し。どうやら、ズゥンビやレイスの類ではなさそうです」
「とすれば、この辺にレイが‥‥」
顔を上げて、周囲を見回すアーサリア。全神経を費やして、彼を探していた、その時である。独特な、牙を鳴らす音が、闇の奥から聞こえてきた。
「あっちだよ!」
「ちょっとアーサリア! 待ちなさい!」
後先考えずに、そちらへ向かうアーサリア。そんな彼女を追い、アルメリアが続く。そして、一行は蜘蛛が居ると思しき場所へと向かったのだが。
「なんか、ふた回りくらいでかいんだけど‥‥」
レイとシーダを捕獲した蜘蛛より、ひと回り大きいものが5匹。そして、それらよりも、もうひと回り大きいものが1匹。その最大の蜘蛛は、まるで女王蜂のように、中央にででんと構えている。どうやら、それがこの蜘蛛達の親玉のようだった。
「えぇーん、なにすんのよー! あたしなんか、食べても美味しくないよー」
彼らは、今まさにシーダを子供達へのディナーに供しようとしている。じたばたと逃れようとする彼女。
「おのれ! 女性に手をかけるとは何事です! 食べるなら、俺を先に食べれば良いでしょう!」
その後ろの方で、ぐるぐる巻きにされたまま、レイがそうまくし立てている。何とか彼女を蜘蛛達から引き離そうと必死だ。
「く、このまま撃ったら、回りの根っこにも影響が‥‥」
あまり広くない空間だ。下手にウィンドスラッシュを使えば、回りの木々も傷つけてしまう。魔法を撃てないでいるアルメリアの横で、ヴァレリアが無言で弓を構えた。
「お願い。レイ達の‥‥ううん、その回りに居る人達の安全を優先して」
彼女に、そう声をかけるアーサリア。
「わかっている。これでも、ツンドラの狩人。木が大切なのは、承知している」
ヴァレリアがそう言いながら頷き、つがえた矢を放つ。それは、風を切る音を立てて、女王蜘蛛に突き刺さっていた。
周囲の蜘蛛達が、初めて彼らの姿に気付いたかのように、高い警戒音を鳴らす。そして、大事な産卵の儀式を邪魔した闖入者に、牙を剥いた。若い2匹でさえ、あれだけ手こずった相手である。油断は出来ない。
「それでも、やるしかないでしょう。弓撃ちたい人は、後ろに下がっててくださいね!」
アルメリアがそう言って、魔法を詠唱し始める。とたん、彼女が緑色の光につつまれ、直後、強い風が周囲で渦をまいた。
「中に入っていれば、糸を免れる確率も高くなります。今のうちに、レイさん達を!」
「はいっ!」
アーサリアが、危険を顧みず、愛する人の元に向かって走りだす。
「レイ、大丈夫ですか?」
「無茶しすぎですよ」
自分の事をたなにあげて、苦笑するレイ。その後ろで、シーダがぶんぶんと半分吊り下げられながら、『コラ、そこの2人! 愛を確かめ合うのは、キャメロット帰ってからにしとけっ!!!』と文句をつけるが、2人の世界に邪魔はあっても入れない。『あなたに何かあったら、どうしようかと』だの『そう簡単に食われやしませんよ』だのと、感動の再会シーンは延々と続いていた。
「ぎゃああ、こっちも早くなんとかしてよぉ!」
シーダが、涙まじりに訴える。一番大きな蜘蛛は、先に目の前の餌を処理しようとしているのか、彼女に食らいつこうとしていた。
(「やられるっ!」)
シーダが思わず目を閉じた瞬間である。ばきりと殻が砕かれる音がして、その一撃が止まっていた。
「よぅ」
刀を肩に乗せ、にやりと不敵に笑ってみせる時雨桜華(ea2366)。
「桜華! 貴様、どこに行っていた!!」
ケツを叩かれて、怒り心頭とばかりに襲ってくる女王蜘蛛を相手にしながら、静かな怒りを見せる一刃に、彼はその理由をこう言った。
「バケモノ蜘蛛つったら、昔から土に潜んでるってモンだろ。それに、村の怪談話で、女郎蜘蛛が出てきたって話を思い出してよ。巣穴探してみたら、ここにたどり着いたって訳さ」
飯の種を浮かす為、サバイバル行為に精を出していた、ケチくさい精神の賜物だろう。
「さぁて、んじゃ、この邪魔な木をばっさりやって、ひと暴れといくかねぇ」
「アホかお前は。村長からは、出来るだけ傷つけるなっって言われて居るだろう」
即座に一刃からのツッコミが入る。そんな彼に、桜華はこう続けた。
「うだうだ抜かしている暇はねぇ。生きてる奴かっさらって、さっさと地上戻るぞ!」
「俺のネックレスは、どうするんですかぁ!」
桜華の言葉に反論する享介。安いものでもないのに‥‥と言いかけた彼を、桜華が一喝する。
「んなもんは、あきらめろ! 人命優先って奴だよ!」
「そんなぁ〜」
ぶつぶつ文句垂れている彼に、今度は一刃がこう説得する。
「残念だが、それも仕方がないだろう。たんかを作って、運んでいる余裕はなさそうだ」
彼の言うとおり、目の前で牙を剥いている蜘蛛達を見れば、遺品を捜すのは、あきらめた方が良さそうだ。
「大人しくして下さいっ!」
時間を稼ぐ為か、享介が、ポイントアタックで、蜘蛛の足を切り落とす。アーサリアも至近距離に居るのを良い事に、コアギュレイトを唱えていた。
「当たったら儲けもの!」
そこへ桜華が、力の限り刀を振り下ろす。足が三本ほど転げ落ちたが、まだ動いている。さすがに移動は出来ないらしく、キチキチと威嚇の音を鳴らすのみだ。
「今のうちだ!」
「せめて、糸切ってからにして下さいよーーー!」
レイがぐるぐる巻きにされたまま運ばれて、文句をつける。しかし、抱えているほうの桜華は、人前でいちゃついた罰だとでも思っているのか、聞く耳を持っていない。そうして、一行は生存者を連れて、村へと引き上げるのだった。
その結果、生存者3名、うち重傷者2名、犠牲者8名、残りの蜘蛛3分の1との報告を受け村長は森を立ち入り禁止区域にすると決めるのだった。
閉鎖された空間:裏の森、一本杉周辺。
「いつまで落ち込んでるんだよ。また買えば良いだろうが」
「しくしく‥‥」
村からの帰り道、結局銀のネックレスをなくしてしまい、泣き濡れた享介が、桜華に慰められている。
「なにかを護るために、なにかを捨てないといけないのって‥‥悲しいよね」
そんな彼らを見て、アーサリアがレイにしか聞こえない声で、哀しげに呟くのだった。