【ブラしふ団の挑戦!】服がない!

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:10月28日〜10月31日

リプレイ公開日:2005年11月06日

●オープニング

 それは、ハロウィンも近いある日、学生食堂で突如産声を上げた。
「我々は、一年間待ったのだ!」
「いまこそ、我らシフールの力を、奴らに思い知らせてやるのダ!」
 何人かのシフールが集まって、そんな声を上げている。皆、腕に黒い腕章を付けていて、それには『BS』の文字が躍っている。
「とりあえず、どうすれば困ると思うのだ?」
「もうすぐハロゥインだから、衣装がなくなったら困ると思う」
「よし、それでいこう」
 なにやら、悪巧みの相談をしているようだ。と、そこへギルドの受付嬢が、お昼を食べに来る。
「あのー、ここ座って良いですか?」
「うん、いいよー」
「どうぞどうぞ」
 悪巧みをしている割には、ずいぶんフレンドリィである。にこやかにそう答えて、席を譲るシフール達。
「では、決行は数日後に!」
「おー!!」
 盛り上がった彼らが、拳を突き上げたその時だった。
「わうっ」
「わぁぁぁ。お前はいいんだってば! きゃあああ」
 一緒にご飯を食べていた、ペットのコリー犬が、『僕も仲間に入れてー☆』とばかりに吠え、辺りは大混乱。
 こうして、なんだかとっても微笑ましい悪の秘密グループが発足するのだった。

 さて、それから数日後。ケンブリッジでは、パープル女史が、思わぬ難儀に遭遇していた。
「ないっ!!」
 真っ青な顔して、クローゼットをひっくり返している彼女。だが、出てくるのは肌着やアクセサリー、夏服ばかりである。
「ど、どこいっちゃったのよ〜。あたしの冬服〜」
 おたおたする彼女。それもそのはず、左腕の使えないパープル女史は、服の着脱がしやすいように、右腕1本でもどうにかなるよう、制服を改造しているのだ。
「先生、そろそろ授業ですけどー」
 そこへ、アルヴィンが彼女を呼びに来た。中々現れないので、様子を見に来たらしい。
「ごめん。ちょっと遅れるから、自習してて。あと、ギルドの子を呼んで来てくれない? ちょっと、問題が起きたから」
「はーい」
 流石にそこは教師をしているだけあって、冷静に対処する彼女。
「まったく。誰なのよ、あたしの冬服持ってったのは‥‥」
 とりあえず、何も着ないわけにいかないので、手近な夏服と、その上にコートを羽織る女史。と、その手が、ある場所で止まる。
「これは‥‥ブラックシフール団の腕章‥‥?」
 コートの下に、落として行ったのだろう。『BS』と書かれた、黒い腕章。それは、数日前から、学生食堂でなんだか盛り上がっているシフールの集団がつけていたものと同じものだ。
「ふーん。つまり、あたしの服を分捕って行ったのは、あいつらなのね‥‥。面白い事してくれるじゃない‥‥」
 そのとたん、パープル女史は、口の端に悪巧みの笑みを浮かべて、そう呟く。
「せんせー。呼んで来ましたー」
「ああ、入っていいわよ。問題って言うのは、これなんだけどね」
 そこへ、アルヴィンがギルドの受付嬢を呼んできた。パープル女史は、彼女達を部屋に招きいれ、簡単に事情を話す。
「でもなんで、先生の服を‥‥」
「実はそれ、ハロゥイン用に誂えたものでね。今日、課題をやるのに、持っていこうとしてたところなのよ」
 そう話す彼女。うっかり鍵をかけ損ねていた自分が悪いと言うのは、都合が悪そうなので、思いっきり伏せている。
「午後の授業は、これでも大丈夫なんだけど、問題はハロウィンね‥‥。生徒達に、探しに行って貰おうと思うんだけど」
 今年は、隠れた自分を探してもらうのはナシにして、借り物競争っぽくしようと思ったんだけどね‥‥と、そう話す彼女。
「分かりました。では、ギルドに張っておきます」
「お願いね。なくした状況は、後で書いておくから」
 こうして、ブラしふを追いかけて、パープル先生のお洋服を探すミッションが、開始されたのだった。

 その頃。
「誰か止めてぇぇぇっ!!」
 学生食堂の近くで、紫の、女性ものの肌着を、旗の様に繰りつけた棒を持ったシフールが、コリーに引きずられて、お外を大暴走している。
「え、うわぁぁんっ」
 ちょうど、お買い物に来ていたアルヴィンくん、不幸属性があるのか、突撃されてしまうのだった。

●今回の参加者

 ea0050 大宗院 透(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea1704 ユラヴィカ・クドゥス(35歳・♂・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea5597 ディアッカ・ディアボロス(29歳・♂・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea8785 エルンスト・ヴェディゲン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 ea8870 マカール・レオーノフ(27歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb0379 ガブリエル・シヴァレイド(26歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 eb3503 ネフィリム・フィルス(35歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)

●サポート参加者

林 高麗(eb0923)/ 茉莉花 緋雨(eb3226)/ 紗夢 紅蘭(eb3467

●リプレイ本文

 話を聞くと、ブラしふ団ばかりではなく、飲み過ぎたパープル女史にも非はありそうだ。とは言え、窃盗がいい話ではないので、一行はとりあえず連中を捕まえて、問いただしてみようと言う事になったのだが。
「で? お前がなくしたのは、ハロウィンに誂えた服との事だが、肌着もセットだったのか、それとも他にも服を盗られた者がいるのか? 自分でなくして忘れただけだったら怒るぞ」
「既にキレそうな顔で言わなくたって良いじゃない。確かに肌着もセットだったけど、それ以外は‥‥」
 相変わらずの仏頂面でそう尋ねてくるエルンスト・ヴェディゲン(ea8785)に、ミス・パープル(ez1011)は肩をすくめて首を横に振る。
「それくらい覚えておけ。おいそこで吹き出しそうになってる受付の。似たような被害が出ていないのか?」
「山ほど出てますよ。肌着泥棒くらいなら」
 話を振られた受付嬢は、そう言うと被害報告書を見せた。それには、ブラしふ団によるイタズラの数々が記されている。
「ふーん。どうやら、皆が思ってるより悪い子みたいだねぇ。これは、エスカレートしないうちに止めないと」
 思っていたより酷い状況に、そう言うネフィリム・フィルス(eb3503)。と、とある事件以降、シフールの守護者と言う二つ名で呼ばれるようになったイェーガー・ラタイン(ea6382)、こう答えた。
「ええ。悪い芽は今の内に摘み取ってしまわないと。取り返しのつかない状況になったら、彼女達の方が可哀相ですしね」
「‥‥まったく。なんでこうなるんだ」
 程度の代償はあれど、悪人を改心させようと言う若人に反論するつもりのないエルンスト、不機嫌そうな顔をしながら、そう呟くのだった。

「しかし‥‥。すごい部屋ですね。これも、ブラしふ団がやったんですか?」
「ううん。これはあたしが。探すのに、色々ひっくり返しちゃって」
 イェーガーが、とっ散らかった部屋の経緯を尋ねると、パープル女史は首を横に振る。あっさりと現場保全を放棄した彼女に、イェーガーはがっくり肩を落としながら、続きを問うた。
「えぇと、チェストとかは、開けっ放しだったんですか? 当時の状況を詳しく話して欲しいんですが‥‥」
 だが、彼女はやる気なさそうに、「それが思い出せりゃ、苦労しないわよ」と答えている。ため息をつくイェーガーに、ガブリエル・シヴァレイド(eb0379)がこう言った。
「最初は部屋を捜索するのが良いと思うのなの。もしかしたら、手がかりが見付かるかもと思うのなの」
「確かに、何か見つけたら、それがきっかけで思い出すかもしれませんしね」
 引っ越しや片付けの際、思いもかけないものを見つけ、感傷に浸ると言うのは、よくある事だ。そう思ったイェーガーは、現場を詳しく調べる為、彼女やネフェリムらと共に、手分けして部屋の片付けにあたったのだが。
「あー、そこは触らないでくれるかしら。大事なもの入ってるから」
 パープル女史が、事ある毎に注釈をつけるのである。おかげで、ろくに手をつけられない始末。そのセリフに、大宗院透(ea0050)がぴくりと反応する。
「いい加減にして下さい‥‥。服を見つけたくないのですか‥‥。些細な証拠も真相に近づくためには必要なものです‥‥」
 口調こそ穏やかだが、表情の少ない透の面には、お怒りマークが浮かんでいる。その勢いに押されたパープル女史は、大人しく引き上げてくれた。
「さて、この間に探してしまいましょう」
 そう言うと、透は散らかった物品を整理し始めた。調べ終わったものを分かるようにしただけなのだが、結果的に掃除になっている。が、予想外に、紫の衣装が多かった。これを一つ一つ検証するのは、かなり骨が折れそうだ。さすがに、閉口する透を見て、ネフィリムがこう提案する。
「むやみやたらに探す前に、当のパープルちゃんに、どんなものなのか、確かめてからの方が良いんじゃないかい?」
「そうですねぇ‥‥」
 潜入工作に情報収集は必需品である。基本を思い出した彼は、一通り紫のものとそうでないものを分け、綺麗にたたむと、皆と一緒に、パープル女史が事情聴取を受けている食堂へと向かった。
「どうですか? 調子は」
 イェーガーが、経過を尋ねると、占い道具を手にしたユラヴィカ・クドゥス(ea1704)が、なくしたドレスの形状を聞いている真っ最中だ。
「ふむふむ。こう、布がたっぷりと使ってあって‥‥大きなシフールみたいじゃな」
 彼は、それを書き記してリストにしている。羽やスカートが別物で、10個ほどのパーツに分かれると、パープル女史は話してくれた。
「お子様どもめ。わしの占いの腕を甘くみるでないわーー」
 水晶玉とカードをわしわしと配置しつつ、そう宣言するユラヴィカ。彼は、リストを元に、サンワードの魔法を唱える。尋ねるのは、ブラしふ団の人相や、腕章の出所だ。その様子を見て、イェーガーがディアッカ・ディアボロス(ea5597)に尋ねる。
「なんだか、ムキになってません?」
「そりゃあ、同じサイズですから」
 対等なサイズの連中には、意地を張りまくる性格だと知っている彼は、生暖かく他人の振りをしている。「占いじゃあああっ!!」と叫び倒しているユラヴィカの姿を横目で見つつ、ディアッカはパープル女史に、こう提案した。
「この間に、何が起こったのか確かめておきたいのですが‥‥。協力していただけますよね?」
「私も手伝うなのー。うふふ」
 ガブリエルも、何か含むような表情で、魔法を唱えている。そんなわけで、2人がかりで、失われた記憶を呼び起こそうとしたわけだが。
「これは‥‥」
「どうやら先生、ノリでブラしふ団に、衣装の事をバラしちゃったみたいですね」
 2人が見たのは、テーブルに簡単な設計図を書いてみせるパープル女史の姿。顔がほんのり赤い上、側にはカラの小樽が転がっていた。周囲のシフールには、ブラしふ団の証である黒腕章が装着されている。
「楽しみだったのかな。誰に見せるつもりだったのかな〜」
 が、ガブリエルはそれだけでは足りないらしく、もっと深い所の記憶を探ろうとする。と、そこへユラヴィカが「終わったのじゃー!」と叫ぶ。
「お子様達は、一通りイタズラして、お腹がすくと、食堂に戻ってくるそうなのじゃ」
「時間は‥‥そろそろ、午後のティータイムですね」
 イェーガーが、教会の鐘の音に、そう答える。確かに、外には授業の終わった生徒達がちらほらと見えた。
「よーし、行ってみるのなのー!」
 そんな生徒達が、腹ごしらえをする場所。つまり学生食堂に、一行は向かうのだった。

「いらっしゃいませ。あ、マカールさん。こんにちは」
 花嫁育成計画卒業生らしく、優雅に一礼するランスくん。同じく貴婦人に対する礼で返したマカール・レオーノフ(ea8870)は、彼にこう言った。
「こんにちわ、ランスくん。最近は寒くなってきたので‥‥。これを」
 相変わらず苦労しているらしい彼に、マカールはそう言って、ふわふわの帽子をすぽっと被せてくれる。
「あ、あの。今お仕事中なんですけど‥‥」
「似合いますよ。とっても。頭寒足熱と言うそうですが、あったかい方がいいですしね‥‥。ではこれは、お部屋に置いておきますよ」
 困惑するランスくんに対し、マカールはそう言ってくれた。彼が頬を染めた刹那、乱入してくる証拠集め組。
「あ、あのですね。ランスくん。ちょっと聞きたい事があるんですけど、いいですか?」
「はい。ちょっとだけなら‥‥」
 慌てた彼、そう言うと、ランスくんに、昨夜の事を尋ねる。店主を気にする彼を見て、ディアッカがこう申し出てくれた。
「マスターには、私の方から話しておきます。マカールさんは、ゆっくりとランスさんの相手をしてて下さいね」
 頷くマカール。その彼と、2人っきりになったランスくん。事情を聞かれて、素直に教えてくれる。
「ブラしふさん達ですか‥‥? ええ、確かにあの日、何人か見えられて、そこのテーブルに陣取られてましたけど‥‥」
 彼が指し示したのは、その辺りでは一番大きなテーブルだ。途中までは見ていたが、まだ10代の彼、それほど夜遅くまで働いているわけにはいかず、夕食の時間帯が終わると、自分の家に戻ったそうだ。
「そうですか。ありがとうございます」
「いえ。こんな事くらいしか出来ないかもしれないし‥‥」
 礼を言うマカールに、ランスは少しだけ寂しそうな表情で、首を横に振る。
 一方、店主や他の店員の証言を取りに行ったディアッカに、店のオヤジはランスくんが指したのと同じテーブルを示して、こう言ってくれた。
「ああ、それならそこの大テーブルだ。なんだか知らんが、賑やかにやってたぜ」
 どうやら、ブラしふ団がいたのは間違いないようだ。そう思ったディアッカは「ちょっと失礼しますよ」と言いながら、パーストの魔法を唱える。
「内容はこれで‥‥」
 マカールが、問い正したい事象を、ディアッカに囁く。頷いた彼は、その指示に従い、注意深く確認する。
「どんな話をしてたんだい? パープルちゃんと、ブラしふ団は」
「ふむ。どうやら、賑やかな事が好きな特性は、白でも黒でも変わらないみたいですね。ただ、ブラしふ団は、最初からパープル女史を酔い潰すつもりで、お酒の席に巻き込んだようです」
 ネフィリムの問いに、ディアッカはそう言った。
「ふむ。それは受付のお嬢ちゃんの証言とも一致してるねぇ。一体何が狙いなんだろう」
 確かに彼女も、受付嬢から話を聞いた際に、ブラしふ団が、パープル嬢に狙いを定めていた事を聞き出している。
「わかりません。ただ、その時の様子はこうでした」
 そう前置きして、ディアッカはその時の様子を話した。パープル女史が帰ったのはかなり遅くで、その時にはシフール達が一緒だったらしい。そして、その後で店を出たシフールも居たそうだ。
「そう言えば、さっきわんこに引きずられてる変なシフールをみたけど‥‥。それは何か関係がありそうかい?」
「あ、そのコリーなら、確かにいました」
 市場でみかけたコリーの特徴を告げると、ディアッカは宴席の側にいたコリーと同じだと教えてくれる。
「つまり、そのコリーと騒いでいるお子様を探せばよいのじゃな」
 そこまで分かればこっちのものじゃ。と、得意げに胸をそらすユラヴィカ。と、その時である。
「あー。面白かった。おっちゃん、美味しいお茶とおやつ〜!」
「いたー!!!」
 仲良く店に入ってくるブラックシフール団ご一行。ユラヴィカに指をさされて、その動きがぴたりと止まる。
「観念して、さっさとドレスを返すのじゃあ!」
「に、逃げるぞっ!」
 ユラヴィカが腕をまくりながら脅すと、ブラしふ団はくるりと回れ右。
「ふん。逃げたからと言って、わしの目を誤魔化せると思うなよ! エックスレイビジョン!」
 そのままダッシュで姿を消す彼らだったが、ユラヴィカの目にははっきりとその後姿が映っていた。
「あっちなのじゃ!」
 場所は、市場の方だ。人ごみに紛れて逃走と言う魂胆だろう。
「ようし、皆で追いかけるよ〜!」
「おう。任せときな!」
 が、どんなに混雑していても、既に鍵を握るわんこは把握済み。ガブリエルの言葉に、意気揚々と、探索に臨むネフィリムだった。

「待てぇぇぇぇ!」
「やなこったぁぁ!」
 ばたばたと全力疾走状態で追いかけるユラヴィカと、捕まってなるものかと、縫うように逃げ回るブラしふ団。おかげで、買い物に来ていたアルヴィンくんが盛大に吹っ飛ばされてしまう。
「あ、あたたた‥‥」
「大丈夫か? アルヴィン」
 すッ転んだ彼を抱き起こしたのは、生徒達とは別ルートで、あれこれ聞き込んでいたエルンストである。
「ありがとうございます。先生」
 腕の中で、嬉しそうに礼を述べる彼。一応、花嫁育成計画卒業生らしい成果は守られていたらしい。
「ごめんねー。急いでたから」
 一言そう言って、とっとと追いかけっこを再会しようとするブラしふ団。だが。
「ちょっと待てそこのシフールども」
「ぎくぅっ」
 大事な生徒をすッ転ばせたエルンスト先生の機嫌がなおるわけもなく。
「その旗竿についているけしからんものは、どこで手に入れてきた」
「そ、それは‥‥っ」
 ぎろりと睨まれて、すくみ上がるブラしふ団。持っていたままの旗竿ものが、パープル女史のものである事を、実抜かれてしまったらしい。
「逃げろっ」
「わうっ?」
 ぺしぺしとコリーの尻尾を叩いて、発進させるブラしふリーダー。驚いたコリーくん、上にブラしふ乗せたまま、全力疾走再開中。
「このままじゃ、捕まえられませんね」
「あたしに任せな。こう言う時の為に、猟師の腕を磨いているんだから」
 追いつけないイェーガーに、ネフィリムが自信たっぷりに言った。
「追い込み役は、私がやります。囮は、得意ですから‥‥」
「いや、それはユラヴィカが要れば充分だろ。なんだか楽しそうだし」
 イェーガーの申し出に、ネフェリムはそう言って首を横に振る。
「観念するのじゃああああ!」
「ほら、な」
 彼女が指し示したとおり、コリーに乗って暴走中のリーダーを、むきーっと追いかけているユラヴィカ。
「そうですね。結構人数がいますから、皆で当たった方が無難でしょう」
 逃げるターゲットを追いかけるのは、透も得意な方だ。経験者の指摘に、素直に頷くイェーガー。
「見つけたぞぇ!」
「えぇい、強行突破だー!」
 ターゲットはと言うと、回りこまれたユラヴィカに体当たりを食らわせている。空中を転がって行く器用なシフール達に、イェーガーがロープを投げた。
「そうは行きませんよ。えい! ああっ! 外れた!」
 そう簡単には当たらない。が、それを目印に、透が微塵隠れで一気に近付く。
「‥‥王手」
 ブラしふに肉薄し、ぼそりと呟く彼。
「覚悟するのじゃ、お子様ども! シフールの恐ろしさを叩きこんでやるのじゃ!」
「ごめんなさいぃぃぃ。僕はただ、リーダーに言われてぇぇぇ」
 観念したブラしふ。こぞってリーダーを指差す。
「ほほぅ? お前が主犯か。あのふざけた旗竿以外にも、余罪がありそうだな。ゆっくり話してもらおうか」
 ずぉぉぉぉんっと怒りのオーラを見に纏ったエルンストの姿に、ブラしふ団はすっかり意気消沈して、きゅうんと座り込む。
 こうして、主にエルンストとイェーガーとマカールのお説教により、イタズラ者のブラしふ団はすっかり改心して、その名称を改め、これからは『ブラックシフール団』ではなく、『シフールシフール団』、略称しふしふ団と名乗る事にしたそうである。