壷【うっしーDEトライ!】

■ショートシナリオ


担当:姫野里美

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月25日〜08月30日

リプレイ公開日:2004年09月01日

●オープニング

 それは、何の前触れもなく届いた一通の手紙から始まった。
「うーむ‥‥。これは‥‥」
 届けられた木の皮。それには、何やら文字が刻まれている。
「どうしたんスか? 村長」
「うぅむ。何と言うか‥‥。こう言う勘違いしたワカモノは、どこにでもいるんだなぁと」
 いつぞやの山羊飼いの青年に、そう言って彼は、届けられた手紙を見せた。
「えーと、何々‥‥貴殿の村にありし壷二つ‥‥で‥‥ちょうだい‥‥って、きったなくて読めないんですけど、何て書いてあるんです?」
「どうも、うちの壷を盗みに来てやると言った趣旨らしい。まぁ、一種の予告状だなー」
 のほほんとそう言う村長。その達筆すぎる文字に、あまり頭の良くない盗賊だと考えているのだろう。まるで緊張感がない。
「何でそんなもんが‥‥」
「この間の宴会で、吟遊詩人がしこたま歌い倒してったからなぁ。宴会メンバーがもらした一言を、鵜呑みにした奴が居ても、不思議じゃあないさ」
 宴会には様々な人が来る。その1人が壷の話を聞き、別の酒場でしゃべり、それに尾鰭葉鰭胸鰭背びれがついて、泳ぎまくって別の話に化ける事なんぞ、よくある話だ。
「でも、不味くないっすか? 確か、一週間後くらいに、例のお貴族サマが、壷を見せに来いとかうめいてた覚えが」
 確か、以前来た時に、『この壷は良い物だー』とか、『良い仕事をしている』とか、さんざん褒めちぎってませんでしたか? と、付け加える青年A。
「うむ。そこでだ。安全を考えて、一足先に、壷をあいつの館に移しておこうと思っている」
 相手の貴族も、お気に入りの壷が手元に来るのは歓迎らしく、費用その他は、向こう持ちなので、安心だ。
 ところが。
「おや、神父様。どうなさいました?」
「ああ、村長殿。大変な事に!」
 ギルドへ依頼書を出そうと外に出た刹那、教会の神父が、青い顔をして、村を出発しようとしている所へと出くわす。
「どうかなさったんですか?」
「それが‥‥、ウチで飼ってる牛が、何をやらかされたんだか、柵を破って、逃げちゃったんですよぉ」
 しかも、何を興奮しているのか、人を見ると襲いかかってくるらしい。特に、ミルクが入る様な入れ物を持っている連中は、真っ先に狙われるらしかった。
「それで、これからギルドに行って、捕まえる要員を貸してもらおうと‥‥。あれ、村長どうしたんです?」
 その牧師は村長が真っ青な顔をしているのを見て、問うてきた。と、彼は後ろ頭に冷や汗を流しながら、こう答える。
「あのー、教会の放牧地って、例の貴族の屋敷に向かう方向じゃ‥‥」
「ああ、言われてみればそうですね。それがどうしたんです?」
 のほほんとした態度で、そう答える牧師。まぁ、事情を知らないので、仕方がないといえば仕方がないのではあるが。
「と、通れないじゃないですかぁ!!」
「あー‥‥」
 あそこ、確か一本道だったはずでしょーーー! と頭を抱える村長。ヤギ飼いの青年が、「回り道しちゃ、ダメなんですか?」と言ったが、「いやー、それだと時間かかりすぎるしなー」と、難色を示す。そんな彼らに、牧師はこう提案した。
「じゃあ、こうしましょう。村長、壷の護衛を雇いに行くんですよね? その人達に、ついでに牛の捕獲もお願いするって事で」
「ああ、それは費用も抑えられて、一石二鳥ですね」
 悩んでいたわりには、至極あっさりとその提案を受け入れる村長さん。「では、そう言う事で」と、仲良くギルドへ向かう彼らを見て、「いーのかなーーー」と、頭を抱えているのは、ヤギ飼いの青年だけだった。
 そして、3日後。
「わかりました。何か他に注意事項はありますか?」
「ええと。中に3匹ばかり、特に凶暴になっている奴がいるんで、気を付けてくださいね」
 ギルドの担当官に、事情を説明し、依頼の承認作業を取る牧師は、数を示しながらそう言った。
「あと、牛はうちの教会の大事な収入源なんで、精霊魔法ぶち込んで、今夜はステーキだとか言わないようにお願いします」
「絶対やる奴いると思いますがね‥‥」
 顔を引きつらせてそう言う担当官。しかし、それはもはや言わないお約束とゆー奴である。

●今回の参加者

 ea0637 皇 蒼竜(32歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0823 シェラン・ギリアム(29歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea0950 九条 響(28歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1060 フローラ・タナー(37歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3668 アンジェリカ・シュエット(15歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 ea4295 アラン・ハリファックス(40歳・♂・侍・人間・神聖ローマ帝国)
 ea6202 武藤 蒼威(36歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)

●リプレイ本文

 相談の結果、村長宅から必要なものを借り、盗賊の仕業だろうがなんだろうが、とりあえず正面突破という事になった。
「それにしても、盗賊が狙ってるなんて、信じられないくらい良い天気ですねー。これで、依頼でなければちょうどいい散歩なんですが」
「ほんと。依頼がなければ、遠乗りでもしたい気分だわ」
 カイ・ミスト(ea1911)の言葉に、そう答えるフローラ・タナー(ea1060)。見上げれば、ぽかぽかととても良い天気である。僅かにそよぐ風も心地よく、お出かけにはちょうど良い天気だった。その膝の上には、壷を入れた木箱がある。背中には大きい方の壷を収めた箱が収まっていた。
「あれが、例の牛ですか‥‥。では、ちょっと様子を見にいってきますわ」
 そんな、お天気の良い平原で、草をはんだり、喧嘩をしたりして過ごしている牛達を見て、アンジェリカ・シュエット(ea3668)がそう言った。ミミクリーの術で、梟に変化し、彼女は牛のいる方へと向かったのだが。
(「おっといけない、もうすぐ時間ですわ」)
 村から近いとは言え、そう狭い平原でもない。おまけに、止まろうとした木は、平原の外輪部にまばらに生えているので、戻るのにもある程度時間がかかる。
「あ、あら‥‥☆」
 アンジェリカ、時間間隔を間違ったらしく、途中で変化が解けてしまう。おまけに止まろうとした木は、いかに軽い彼女とは言え、枝が細くて支えきれない。幸い、足元は柔らかい草だったので、しりもちをついてお尻を少々打った程度。酷い目に会いましたわぁと思いながら、もう一度ミミクリーをかけなおそうと、頭を上げた時である。
 目の前にいたノーマル牛と、ばっちり視線が合ってしまう。
「んもももももも!!」
「きゃああっ、見付かってしまいましたわーーー」
 着ている洋服が赤くてヒラヒラした服ものだったせいか、興奮して追い掛け回してくるノーマル牛1号くん。それを見て、少女がいるとやる気度が普段の3倍は違うシェラン・ギリアム(ea0823)、持っていたナイフにバーニングソードの魔法を宿らせながら、こう叫ぶ。
「おのれっ! 清らかなる乙女を追いまわすとは、なんたる不届き者ッ! これでも食らうが良いっ!」
 そう言うや否や、彼は腰にさしていたたいまつを引き抜き、クリエイトファイアーで火をつけた。だが、牛達は興奮しているのか、火を怖がるどころか、前足で地面を掻き、鼻息が荒くなるばかり。
「この程度の炎ではびびりませんか‥‥ならば、くらえっ!」
 火の大きさが、倍くらいになった。
「きゃあっ! ちょっと大きすぎだよぉ。牛さんをステーキにでもするつもり!?」
「そこの牛ッ! これも愛するあの御方との幸せな家庭を築く為です。おとなしく牧場に帰りなさい!」
 牛とは直接関係ないセリフを吐きながら、巨大たいまつ片手に、ノーマル牛へと突っ込んで行く彼。
「んもーんもー!」
「ふ。所詮は獣。このまま牧場まで一直線です」
 流石に炎の大きさが普通の3倍ともなると、牛でなくても充分怖い。で、その結果、ノーマル牛はくるりと踵をかえすと、その興奮を、他の冒険者へと向けた。
「うわぁっ、何やってるのよ! 興奮した牛が、こっちに来たじゃないっ!」
 で、そこにいたのは、先ほどからノーマル牛を、いかにも『美味しそう☆』ってな視線で見ていた九条響(ea0950)である。
「そんなものは、御自分で何とかなさって下さいッ。さっきから何もなさってないんですからぁ!」
「冗談じゃないわよ! さっきからあいつらを美味しいローストビーフにしてやりたくて、うずうずしてるの押さえるので、大変なんだからぁ!」
 華国人の彼女にとって、目の前にいる牛さんは、食材でしかないらしい。
「食べないでって言われてるでしょう!」
「うわーん。せっかくおいしい肉餅や饅頭の元が転がってるのに、料理できないなんて、生殺しだよぉ〜。誰か、僕に流れる華国料理人の騒ぐ血を止めてぇぇ!」
 が、んな事は牛さんにはまったく関係がない。彼女が悩んでいる事なんぞつゆ知らず、炎から逃げようと、かまわず突っ込んできた。
「ひかれるっ!?」
 土煙を上げて突進してきたノーマル牛1号から15号。このままでは、その重量が、響を踏みつけてしまう。
 しかし、そこはそれ。並の村人Aとは違うわけで、皆の見守る中、彼女はストライクEXの要領で、牛の頭を踏み台に、高くジャンプしていた。
「させるかぁ! 必殺、乳牛雪崩渡りの術っ!!」
「ぶもぉっ!?」
 着地地点にいた牛の背中をまたも踏み台がわりにして、ぴょんぴょんと飛び石をはねるように、牛の群を攻略して行く響。
「はいはい。敵わないと思った牛さんは、こっちにおいでませね」
 所詮はノーマル牛。踏みつけられれば、あっさりと目を回してしまう。それを、大きなボーダーコリーになったアンジェリカが、牧場へと誘導していた。
「どうだぁ。人間サマのパゥワァを思い知ったかー」
 胸をそらして、わーーはっはっはと高笑いする響。ところが、それを見てまだやる気満々の表情を見せている牛が、約3匹。そう。ノーマル牛ではなく、特に凶暴な例の黒牛連中である。まるで何かの運動用具を、乱暴に扱うかのように、同朋に相対している響を見て、怒り心頭のようだ。そして、そんな事になんぞまーったく気付かず、高笑いを続けている響に向かって、三連牛は、前足でゴリゴリと威嚇のポーズを示す。
「ローストビーフに負けるなんてぇぇぇ! 教会の黒い牛は化けものかぁぁぁぁぁ!?」
 勝利に気を取られた響が、後ろから追突され、哀れ視界外へと退場してしまったのは、言うまでもない。

「ローストビーフ‥‥。そう、あれは美味かった‥‥」
 妙に綺麗な発音で、ボソリと独り言を呟く武藤蒼威(ea6202)。もちろん、きちんとイギリス語を使っている。直後、彼は舌なめずりをしながらギラギラと肉食獣の如き瞳で側にいる牛を見つめた。
「ぶもぉぉぉぉっ!!」
 ガンを飛ばされたのがわかったのか、それとも牛の本能のなせる業か、三連牛の1頭が、突っ込んでくる。
「させるか!」
 大きく身体を捌いて三連牛を避けようとする蒼威だったのだが。
「あ、弾かれた」
 牛に思いっきり蹴り飛ばされている。そんな彼を見て、出番待ちのアラン・ハリファックス(ea4295)がこうツッコミを入れる。
「だから言っただろー。牛を投げるにゃ、スタンアタックじゃ通じねぇよって。それにお前、バカ力の分、動き鈍いじゃねーか」
 本当はすれ違いざま、華麗に投げ飛ばしてやろうとしたのだが、やっぱり投げ技を体得しないまま挑んだのは、失敗の元だったようだ。
「フッ。たわいない」
 そんな中、蒼威は、泥だらけになりながら、何事もなかったかのように、ひょいと立ち上がると残りの牛へ向けてニヤリと笑う。
「お前な、その格好で言っても、ぜんぜんクールに見えないぞ」
 アランのそんなツッコミなんぞ、まるで意に介さない。直後、普段の無表情から想像出来ない凶悪な笑顔で、牛を挑発していた。
「アラン、後は頼むぜ」
 そうかと思えば、いきなり自分から牛へ向かって猛然と走り始める。一気に至近距離まで近づくと一発頭蓋に掌底を決め‥‥ようとした。
「ぶもぉぉぉぉぉ!!!」
「なんで気絶しないんだぁぁぁぁ!!」
 が、やっぱり踏みつけられてしまう蒼威。
「アホか。やみくもに打ったって、牛だって防御するモンなんだから」
 説明しよう! 牛の急所と言うのは、人間とは違う! いかに基本技術の高い浪人とは言え、突進してくる牛の急所を正確に見抜く為には、それなりの知識が必要なのだ!
「フローラ、後で回復よろしく」
 踏みつけられ、泥だらけになりながら、目を回している蒼威を、安全な場所まで転がした後、事態の推移を見守っていた皇蒼竜(ea0637)が、すっくと立ち上がる。
「やはり、凶暴とはいえ獣。一番デカイ奴、イコールリーダーと言う事か‥‥」
 そう言って、袖からあるモノを取り出す彼。それは、例の壷に良く似た壷だった。
「牛に、本物もニセモノも、区別なんぞつくまい。行きがけに、チーズやヨーグルトのにおいをたっぷりと染み込ませておいた。こうすれば、寄ってくる筈だっ!」
 しかも、ぷぅんと乳製品のにおいが漂う物体だ。と、彼はそれに皮袋に入れてあった牛の餌をたんまりと注ぎ込むと、それを持って三連牛へと近付いて行く‥‥。
「ぶもぉぉぉぉぉっ☆」
「うぉわぁっ、きたぁっ!」
 美味しい餌のにおいにつられ、思ったとおり蒼竜へと襲い掛かってくる。大騒ぎする他の面々をよそに、彼はぴしゃりと言い放った。
「騒ぐなッ! あんな奴、こうしてくれる! 華国四千年の技をよぉく拝んどけッ!」
 華国語なので、他の面々には何を言っているのかイマイチ伝わっていないが、そこはそれ、行動で示すが上策と、彼は地面を蹴り上げる。
「とりゃあぁぁぁっ!」
 角を掴み、受身の要領で、牛の背に飛び乗ろうとする彼。しかし、蒼威と同じ様に、攻撃力は高いが、防御力は低い彼、受身だの軽業だのは余り得意ではないらしく、振り落とされて、そのままずるずると地面を引きづられている。
「おのれ、牛のクセに俺を踏み落とすとはーーー!」
 蒼竜はそう喚くものの、牛に言葉が分かるわけもなく、そのまま暴走まっしぐらだ。
 そんな‥‥興奮した黒い三連牛の前に現る、1人の青年。
「ふっ。どいつもこいつも情けない。真のマタドールとは、俺様のよーな奴の事を言うのだ」
 おそらく村長ン家から借りてきたのだろう。足にぴったりとフィットしたズボンをはき、そう言うアラン。頭には、アンジェが作った花冠が煌いていた。彼女いわく『またどーるって、お人形さんの事でしょう?』と、天然な勘違いをされ、ソレを拒否するとギリアムに刺し殺されそーになったが故である。
「来たか‥‥」
 赤くてヒラヒラしたモノに反応するのは、牛の宿命とばかりに、方向転換をする三連牛。それを見たアランは、そう呟くと、手にした布を派手に閃かせ、花冠から一輪抜き取って口に咥え、不敵に微笑みながら、周囲の女性陣に深々と礼をする。
「ある時はただのしがない傭兵崩れ、またある時は結婚適齢期を逃したただの男‥‥だが今は違う!! 俺の名はアラン・ハリファックス! 突如イギリスに現れた、スタイリッシュなイカしたマタドール、それが俺だッ!!」
 そう叫ぶや否や、彼は村長宅から調達してきたと思しき発砲酒の樽を突きつけながら、大見得を切った。
「行くぞッ! 黒い三連牛っ!」
 樽の栓を抜き、周囲にばら撒くアラン。匂いで興奮したのか、牛ががりがりと前足で地面を引っかき始める。その真正面で借りた布をちらつかせると、挑発されたのがわかったのか、即座に牛達はアランへと向かってきた。
「って、何で3匹同時なんだ!?」
「そんなもの持ってるからですわ」
 上から梟の姿になって、高みの見物していたアンジェリカが、呆れたようにそう言った。本来の計画では、2匹しか相手にしなくて良い筈だったのだが、他の2人がやられてしまった為、自動的にそうなった模様。
「まぁいい。さぁて、来いデカブツ。Let‘s Showtime!!」
 突進してくる牛を、華麗な真横ステップで回避する彼。しかし、その程度では止まらない。と言うか、単に酒のせいで前後不覚になっているらしく、牛達は血走った目で、ギャラリーへと向かってしまう。
「フローラさん、今ですッ!」
「わかってる。いくわよっ!」
 だが、それは同時にチャンスでもあった。牛達の意識が、他のギャラリー‥‥アンジェリカやギリアム達に向いている間に、フローラは壷の箱を抱えたまま、脇を掠めるように馬を走らせる。
「追いついてきた!?」
 気付いた牛達が、くるりと追いかけてくる。その走りは以外と早い上、リーダーに煽られて、ノーマル牛が数頭こちらへと向かってきた。
「く‥‥。白騎士の名にかけて、この壺は守ってみせる!」
 気分はイスパニアの牛追い祭か、はたまた華国戦国演技の一場面か。そんなフローラの妨害はさせじと、フローラの後ろかカイが、わざとダミーの壷を見えるように肩に乗せ、その鼻面へと進路妨害に走る。
「壷はこっちですっ! 手のなる方へっ!」
 そのままひきつけるように逃げるカイ。どっちに行って良いかわからず、混乱する黒い三連牛。
「見えるぞ‥‥ガイア! 貴様の動きが見える!!そこだァッッ!!!」
 その刹那、一番前の牛を勝手に命名し、それを踏み台にして、背後の牛を盛大に蹴り飛ばす。
「今だ! 確保!」
「心得たッ!」
 動きさえ止めてしまえば、後はこっちのもの。隙を見て、復活したらしい蒼威と蒼竜が、両方から黒牛へと襲い掛かる。そんなわけで、牛達は、ノーマル黒牛含めて、一網打尽にされてしまったのだった。
 なお、屋敷の前で待ち受けていた盗賊は、カイの口先三寸によって、偽者の壷を持ったまま追い払われ、響によって、こてんぱんにされてしまったらしい。
 また、ねぎらいの夕食は、もうしばらく肉は良いですと言うほど、牛の丸焼きが出た事を追記しておく。