【神の国探索】六大精霊の神殿
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■ショートシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:10〜16lv
難易度:難しい
成功報酬:3 G 49 C
参加人数:10人
サポート参加人数:1人
冒険期間:12月29日〜01月01日
リプレイ公開日:2006年01月09日
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●オープニング
●聖杯城マビノギオン
「まさか、『聖杯』の安置されている『聖杯城マビノギオン』が、リーズ城だったとはな」
「リーズ城を知っているのかよ?」
アーサー・ペンドラゴンは自室のテラスで、日課の剣の素振りをしていた。傍らには美少女が居心地が悪そうにイスに座っている。けぶるよう長い黄金の髪に褐色の肌、健康美溢れるその身体を包むのは白いドレス。誰が彼女を、蛇の頭部、豹の胴体、ライオンの尻尾、鹿の足を持つ獣『クエスティングビースト』だと思うだろう。
かつてのイギリスの王ペリノアの居城に、彼女は四肢を分断されて封印されていた。しかも、聖杯によって人間の女性へ姿を変えられて。
これにはクエスティングビーストを狙っていたゴルロイス3姉妹の次女エレインも、流石に騙された。
彼女を無事保護したアーサー王は、キャメロット城へ住まわせていた。
「ここより南東に50km、メードストン地方のリーズという村を治めている城だ。城主は‥‥ブランシュフルールといったな。名うての女騎士だが、聖杯騎士とは」
「聖杯は然るべき時にならなきゃ姿を現さないんだろうぜ。でも、てめぇらが手に入れなきゃ、俺だって『アヴァロン』への門を開けられねぇんだからな」
クエスティングビーストが真の姿を取り戻さない限り、神の国アヴァロンへの扉を開ける事は出来ない。
「しかし、この格好、何とかなんねぇのかよ?」
「グィネヴィアの趣味だ。もう少し付き合ってやってくれ」
クエスティングビーストは王妃グィネヴィアに取っ替え引っ替えドレスを着せ替えられていた。アーサー王との間の子供のいないグィネヴィア王妃にとって、彼女は娘のように思えたのかも知れない。
「アーサー王、失礼します!」
そこへブランシュフルールへの書状を携えて斥候に向かった円卓の騎士の1人、ロビン・ロクスリーが息急き立てて駆け込んできた。
「どうした!?」
「マビノギオンから火の手が上がっており、オークニー兵とおぼしき者達とデビルに攻められています!!」
「何、オークニー兵だと!? ロット卿は動いてはいないはずだ‥‥モルゴースか! デビルがいるという事はエレインもいるようだな。ロビンよ、急ぎ円卓の騎士に招集を掛けろ! そしてギルドで冒険者を募るのだ!!」
ロビンはその事を報せるべく、急ぎ引き返してきたのだ。
そして、アーサー王より、最後となるであろう聖杯探索の号令が発せられるのだった。
●放たれた毒矢
リーズの森に広がる一角。ちょうど、塔のふもとに広がる地帯に、アーサー王は陣を構えていた。
「御前め‥‥。全ては奴の策略だったと言うのか‥‥」
渡された通達書を見て、そう呟く議長。それには、聖教会の印章と共に、議長の名が、あちこちに書かれている。内容は、議長がバンパイアを匿い、そしてゴルロイスに手を貸していると、密告する内容。マダムの事さえ、聖教会に連なる者を暗殺した‥‥と書かれている。それは、明らかに議長を議長の座から追い落とそうとする糾弾書だった。
「どうしましょう‥‥」
「うろたえるな、レオン。ヴァレンタイン殿を保護したのは事実だ。問題は、聖教会が彼をバンパイアだと思い込ませ、先だっての事件を、彼のせいにしていると言う事にある」
議長自身は、ヴァレンタインをバンパイアだとは認識していない。もし、彼をバンパイアだと思っているのならば、わざわざキャメロットに連れてきたりはしなかった。
「どうすれば‥‥」
「簡単な事さ。彼がバンパイアでなければ良い。もっとも、その為には、あの男を捕らえてこなければならないだろうがな‥‥」
議長が言っているのは、おそらく黒の御前の事。彼ならば、ヴァレンタインがバンパイアでない事くらい、知っているだろう。育成、と言う名で腐らせた張本人なのだから。
「記憶だけでも構わぬ。魔法は、嘘をつかぬ故」
月の精霊魔法には、人の記憶を手に入れるものがある。幸い、彼の周囲にも、その使い手は少なくなかった。
「これは‥‥」
「6大精霊を示す神殿と言ったところだな」
その目の前には、ちょうど城にそうかのように、6つの小さな祠があった。
「ここには、それぞれ宝珠が祭られている。それを祠の先にある扉に仕掛けると、城の裏に出る秘密の通路が開く事になっている」
グィネヴィア王妃が自ら選んだと言う白いワンピースを着せられたクェスティングビーストによると、それらは精霊を示す祠であり、中には扉を開く鍵が用意されているとの事だ。
「中には何が?」
「さぁな。俺も全てを把握しているわけじゃない。だいたい、俺が封印されてから千年も経っている。泥棒に入られているかもしれんしな」
もっとも、その先にあるものは、決して聖杯などではなく、別の何かだとの話だったが。
「では、私どもはその泥棒さんと言う事ですねぇ。怪盗ごっこでもしましょうか」
そこへ、聞き覚えのある口調で、姿を現す少年がいた。
「あれは‥‥、カルディス殿!?」
報告書にあった容姿。弓を構えたその姿は、間違いなく聖杯騎士を目指していると言う少年‥‥カルディスのものだ。
「いえ、口調が違います。おそらく、御前によって操られた人形かと」
しかし、その瞳には精彩がない。その様子に、そう言い切る議長。
「もっとも、いただくのはあなたの命。ですけど♪」
御前そのままの口調で、弓が放たれる。狙いが自分に向けられていたのを見て、議長はとっさに避けた。
「きゃあっ」
「しまった、ウィッシュ殿!」
だが、それはカモフラージュ。議長を狙ったわけではなく、ウィッシュことクエスティングビーストを狙ったものだったのだ。
「これは‥‥毒‥‥!?」
じわりと広がる痺れは、魔法の類ではない事がよくわかる。
「半日保たないでしょうね。あなたに魔法は効きませんし。のた打ち回って死んでくださいねー」
「く‥‥」
くすくすと笑うカルディス‥‥いや、御前。議長が剣を向けると、彼はおやぁ?と言った風情で、こう言い放った。
「おっと、その剣を使うと、このお人形死にますけど、良いんです?」
「この‥‥」
人形は、人質でもあるらしい。手を出しあぐねている議長の前で、カルディスの姿をした御前は、深々と礼をする。
「では、失礼します。せいぜい足掻いてくださいね」
そう言い残し、彼は森へと姿を消してしまった。
「これは‥‥由々しき事態だな」
崩折れたクェスティングビーストを抱えるようにして、そう呟くアーサー王。
「あの男には、私も用があります。手の者を二手にわけ、追撃をかけましょう。おそらく、解毒薬くらいは持っているでしょうから」
「頼む」
そう言うと、議長は手の者と共に、神殿の方へと向かう。
「陛下。それから‥‥。閣下の事は‥‥」
「わかっている。悪い様には、しないさ」
去り際、言いかけたセリフに、アーサー王はそう答える。
「議長‥‥」
レオンが、心配そうにそう呟いた。おそらく、ゴルロイスが混乱に乗じて、直接アーサー王を狙ってくるのは確実だろう。そう簡単に引くとも思えない。
「陛下も、私が糾弾されている事はご存知の筈。全てを清算するのは、話が終わってからだ‥‥」
だがそれでも議長は、与えられた役目と、自らの過去に決着を付ける為に、そう答えるのだった。
●リプレイ本文
毒矢に撃たれたウィッシュを、陣の奥へと休ませ、一行は黒の御前がいると言う神殿へと、進路を定めていた。
「丁度おあつらえ向きに、水時計がある。そして残りの水槽は6つ。つまり、あの水槽が空になる前に、神殿を突破しなければならんという事か」
真幌葉京士郎(ea3190)が、中庭に設えられたそれを示して、そう言った。見ればそこには、庭園の噴水に見立てた、水時計が設置されている。
「しかも今回はデビルの大物が相手か。聖杯や神の国とやらに興味はないが、早い所この騒動にけりを付けない事には、他にも支障がでるからな」
友人からその特徴や魔法などは、一通り耳にしている。聖杯が云々とか言う以前に、そんな危険なモノを放置していては、キャメロットに不安の影を落としてしまうだろう。そんなゼファー・ハノーヴァー(ea0664)の言葉に、頷くアルカード・ガイスト(ea1135)。
「長年の資料や報告書が証明しています。悪魔は‥‥倒せます」
「俺達のやる事は、毒矢で倒れた女神‥‥ウィッシュを救う為、六大精霊神殿を突破し、黒の御前を叩きのめす。それだけだ。この世に邪悪がはびこる時、それを打ち破る希望の闘士は必ず現れるものだからな」
リアナ・レジーネス(eb1421)がそう言うと、京士郎は空を見上げながら、檄を飛ばす。
「ウィッシュ様だけではございません。過分ですが、あの方に認められた騎士として、カルディス様‥‥、いえカルディス卿の危機を見過ごすわけには参りませんわ」
セレナ・ザーン(ea9951)の目的は、ウィッシュだけではなく、御前の手駒に使われてしまったカルディスを助ける事でもあるようだ。
「ギル。今度こそ、あの男を‥‥」
そんな中、誓いを立てるかのように、議長へそう告げるフローラ・タナー(ea1060)。じっと見つめれば、彼はやおらフローラの手を取り、まるで貴婦人にそうするかのように、口付ける。
「‥‥気を付けて。どうか、武運を」
言葉こそ少ないが、表情が雄弁に物語っていた。「待っている。必ず帰って来てくれ」と。
「はい‥‥」
私は、運の強い女ですから。と、微笑んでみせる。そこだけは、『フローラ』の表情を取り戻し、彼女はそう頷くのだった。
神殿は、水時計を囲むように、半螺旋を描いて、下り坂に立てられていた。ちょうど、城へ向かう道の様になっている。そこを、ルシフェル・クライム(ea0673)は隊列を組んで進んでいた。
「神殿には、御前の手の者が待ち受けているはずだ。罠を張られている可能性はある。陣形を崩すなよ」
そう言う彼。前衛は彼、京士郎、セレナ、ゼファー。中ほどにフローラ。シスイ・レイヤード(ea1314)、アルカード、ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)、ディアッカ・ディアボロス(ea5597)、そしてリアナは、後方で援護と言った形である。
「神殿は、月陽、地水火風の順にならんでいるそうです。中に祭壇があって、そこに宝珠が安置されているらしい」
「太陽殿の話では、神殿自体は、それほど大掛かりではないそうじゃ」
ディアッカとユラヴィカがそう言った。サンワードで確かめた結果、だいたいの規模が判別したようである。
「敵が出て来るとすれば、その前ですね‥‥。厄介な置き土産が出てこないと良いのですが」
建物内なので、サンワードでは判別出来ないが、おそらく待ち構えているとすれば、その中だろう。デビルやアンデッドが歓迎してくれると見て間違いないと、アルカードが警告する。
「もしくは、ここが神殿だと言う事を考えると、元々仕掛けられていたトラップあたりだな」
古い神殿に、侵入者防止の為のトラップが仕掛けられているのは、よくある話だ。だが、そう主張するゼファーに、ディアッカは首を横に振る
「いえ、リーズの城は、極々普通に祈りの場として利用されていたそうです。アーサー王から話を聞く限り、そう言った類のものは、まずないと見て良さそうですよ」
神殿は、天地創造の神話にならぞえて、六大精霊を祭ったものだと言うから、おそらくそれに対する祈りの時間を計る為のものだろう。
そんな彼らが、地の神殿へと足を踏み入れた際、それは起きた。見渡せば、だいたいの大きさが分かる位の神殿には、正面に祈りの場と思しき祭壇がある。だが、そこに安置されているはずの宝珠は、影も形もなかったのだ。
「おそらく、御前が奪って行ったのだろう。だとすれば、この先は敵か‥‥」
ゼファーが、祭壇に降り積もった埃を確かめながら、そう言う。
「ディアッカ、パーストはどんな感じだ?」
「やはり、御前が通り抜けて行った様子です」
その彼女に尋ねられ、魔法で確かめて見ると、宝珠は御前が確保していった様子が、見て取れた。
「だとしたら、静か過ぎるの。ちょっと見てみるのじゃ」
その割には、敵の姿がない。それを危惧したユラヴィカは、エックスレイビジョンで、周囲の様子を探る。その結果、神殿を出た辺りに、二桁単位のデビルが潜んでいると判明する。
「この程度は雑魚だ。一気に片を付けるぞ」
前衛のルシフェルがそう言うと、頷く京士郎。その直後、出口付近にアルカードのファイヤーボムが炸裂し、何匹かのデビルが宙へと舞う。それを合図に、いっせいに踊りかかる冒険者達。
「ユラヴィカさん、敵はこれだけです?」
「あっちに何匹か隠れているのじゃ」
リアナが隠れているデビルを撃とうと、ユラヴィカに確かめると、柱の影に2〜3匹いると教えてくれた。
「むう。あそこじゃ魔法が通じないじゃないですか‥‥」
彼女が使えるライトニングサンダーボルトは、石の柱で吸収されてしまう。悔しそうに口を尖らせるリアナ。
「あまり構ってられないな。強行突破するぞ」
そこへ、ルシフェルがそう言った。雑魚とは言え、量が多い。その1匹づつを相手にしていては、タイムリミットに間に合わない、と。
「道を作ります。その隙に突破してください‥‥」
デビルを退けるかのように、リアナは雑魚デビルに向けて、ライトニングサンダーボルトを放つ。一直線に放たれたそれは、出口へとの獣道を作りだしていた。
「俺も援護しよう。むやみやたらに、魔力を使っては勿体無いしな」
群がろうとしたデビルに向けて、京士郎がソードボンバーを放ち、ソニックブームを当てる。ゴルロイス公との戦で学んだ、多人数対応の技を。
「私と京士郎で押さえている! 後衛組はその間に走りぬけろ!」
ルシフェルがレジストデビルをかけた体にモノを言わせて、デビル達の前に立ちはだかる間、後衛組はその指示に従い、神殿を駆け抜けるのだった。
「ふう。ここまでくれば大丈夫かな‥‥」
全力疾走を終えたシスイが、ほっとしたように息をつく。振りかえっては見たものの、追いかけてくる様子はなさそうだ。
「しかし‥‥。これ‥‥大掛かりじゃない‥‥のか? けっこうな‥‥装飾だが‥‥」
「御前も、これを見ていましたから、何かあるのかもしれません」
安心したように、周囲を見回す彼に、ディアッカがそう答える。天井画の様に掘り込まれたレリーフは、手がかりの様にシスイには思えていた。
「やはり、ここにも宝珠はない‥‥か」
しかも、神殿にあるはずの宝珠は、再びその姿を消している。
「御前がそうまでして求める品なのかな‥‥。何か分かれば良いのだが‥‥」
「じゃあちょっと見てきます」
リアナがそう言って、リトルフライの魔法を使った。ふわりと浮き上がった彼女は、至近距離で天井に描かれたレリーフを観察する。
「これは‥‥」
遠目では分からなかったそれには、古代の言葉が小さく添えられていた。それによると、天地創造の神話に見えたのは、この神殿の由来を表すものだったようだ。
「何か、手がかりが?」
「はい。この神殿、昔は城の背後を守る要として利用されていたと言うのです。殿を守る重要な位置をしめすこの神殿の守り主には、代々、聖なる槍が与えられていたとか‥‥」
シスイが尋ねると、彼女は見てきた内容を教えてくれる。
「その槍を奪って、この裏ルートを潰し、聖杯を手にさせないようにするのが、奴の目的か‥‥」
もしそうだとすると、ここに宝珠がないのも頷けると言うもの。御前が持って行ったか、あるいはどこかに隠してしまったか。自身の考えを述べるシスイに、リアナはこう提案してくれた。
「念の為、ブレスセンサーを使ってみましょうか?」
「ああ、頼む」
彼女が要求された通りの行動をすると、その意識に、シフール位の大きさの反応があった。
「やはり‥‥いたか」
結果を聞いて、何か気付いた様子を見せるジャンヌ。リアナが首を傾げるが、彼女はそれには答えず、あるべき場所へこう叫んだ。
「悪戯者のシフール、いや‥‥悪魔の道化師、いるのだろう!?」
「あははははっ。やぁぁっぱバレちゃったかぁ」
直後、姿を見せたのは道化師姿のシフール。神聖な空間に、場違いな笑い声が響く。
「ああーーーー! 1匹いれば30匹ーーーー!」
「えーん。そんな事言うなら、これあげないもーん☆」
ユラヴィカに文句を言われたリリィベルが取り出したのは、今まで通過してきた神殿にあるはずだった‥‥宝珠。
「ほーら、こんな事しちゃうぞー」
しかも彼女は、その宝珠を、まるでボール遊びの様に、くるくると回してみせる。その姿が示す通り、道化師が手品を見せるが如く。
「大切に扱わんかぁぁぁ!」
「やだぷっぷー」
ユラヴィカが向きになって取り返そうとするものの、彼女は持ったまま器用に逃げ回る。
「させません! 捕まえろ!」
ジャンヌがそう言って、フライングブルームを取り出す。愛馬で鍛えた騎乗能力は、不安定なそれを、問題なく操り、彼女はそのままフライングブルームごと体当たりを食らわせていた。
「わわっ。もー、しょうがないなぁ!」
バランスを崩した彼女、即座に彼女へ向けて、ファイヤーボムを放つ。以前よりも魔法の技量が上がっているのか、その炎はジャンヌに軽傷では済まされない傷を負わせてしまう。
「これでも食らうのじゃ!」
「わぷっ!?」
劣勢を見て、ユラヴィカが妖精のシャツを投げつけた。燃えやすい素材で出来た、かさかさしたそれを、はねのけるリリィベル。
「それだけじゃありませんよ! ライトニングサンダーボルトッ!」
そこへ、時間差をつけたリアナが、牽制攻撃を放つ。
「貫け! 太陽の光よ!」
そこへユラヴィカが、今までの恨みを込めて、サンレーザーを解き放つ。集積された太陽光が、間違いなくリリィベルを貫く。
「カオスフィールド」
彼女を中心に広がる黒き闇の結界。直径6mほどのそれは、サンレーザーを無効化させてしまう。ルシフェルが回りこんだものの、とき既に遅し。リリィベルの姿は影も形も無かった。
「逃げたな。念の為、これをつけておいてくれ」
そこへ、ジャンヌが空から降りてきて、持っていた小さな布切れを渡した。それには、精緻な模様が織られ、一品物‥‥と言った風情が見てとれる。議長、ここにきてまで、結構マメな事をしているようだった。
「来たな。冒険者どもめ‥‥」
火の神殿で、どこからともなく響いた声。直後、神殿の両側に備え付けられた明かりが、いっせいに灯される。
「死ね‥‥!」
「何っ!? うわ‥‥っ」
一瞬、目を眩ませる冒険者に、降り注ぐ矢。放たれた二本のそれは、よけようとしたセレナの身体に突き刺さる。
「大丈夫?」
「このくらいは、かすり傷です!」
駆け寄るジャンヌに、彼女はそう答えて、突き刺さった矢を引き抜いてみせる。リカバーをかけてくれる彼女に、礼を言ったセレナは、矢を放ったであろう御仁に向けて、こう叫んだ。
「カルディス卿‥‥! 目を覚ましてください!」
その言葉に、闇の中から姿を見せたのは、表情を消したカルディス。
「返答はなし、か‥‥。どこかに操ってるデビルが潜んでいるようだな‥‥」
ルシフェルがデティクトアンデッドの結果を、そう告げた。魔の者を告げるその魔法は、すぐ近くに潜んでいる事を知らせている。
「どうやら、自由意志はないようですね。だったら、目覚めさせるまでです!」
シルバーナイフを手に、挑みかかるセレナ。
「その弓、落とさせていただきますわ!」
カルディス卿がもっとも得意とする武器は、手にしたヘビーボウだ。そう知っている彼女は、上段から弓ごと破壊しようと、ナイフを振り下ろす。
「ほほぅ? やるな!」
受け止めるカルディス。弓が砕け散り、無防備になった様にセレナには見えた。
「今です! ルシフェル卿!」
「心得た!」
その刹那、忍び寄ったルシフェルが、彼のみぞおちに、ルーンソードの柄で、スタンアタックを食らわせる。
「く‥‥」
膝を折るカルディス。そこへ、セレナが心を揺さぶるように、こう叫んでいた。
「あなたがわたくしをも認めてくださったように、わたくしもあなたを認めているのです。デビルなどに負けないでください!」
衝撃を与えれば、目を覚ましてくれるはず。互いに高みを目指す騎士なればこそ信じれる思い。しかし。
「‥‥避けて! セレナ!」
「え‥‥っ。きゃあっ」
ジャンヌが警告する最中、煌いたのは闇に光る刃。
「何故‥‥」
肩口をやられながら、悲しそうにそう言うセレナの前で、ジャンヌはこう申し出る。
「確かめたい。注意を引いてくれ」
「わかった」
ゼファーが鬼神ノ小柄を構えた。そして、糸をくくりつけたそれを、カルディスに向かって投げつける。持っていたナイフで、それを叩き落とそうとする彼。注意がそちらに向いた瞬間、ジャンヌが動いた。
「正体を現せ! デビル!」
そう言って、魔法を叩きつける。浄化の副作用を持つクリエイトハンドを、カルディスに向けて。もし、彼が何かに憑依されているのなら、悪魔を追い出せるはずだと。程なくして姿を見せたのは、カルディスとは全くの別人だった。
「なんだ、やっぱバレちまったか」
軽薄な笑みを浮かべるは、黒の御前配下‥‥炎をあやつりしデビル‥‥メギド。
「カルディス卿をどこへやったのです!」
セレナが問い正すと、彼はニヤリと笑って肩をすくめて見せた。
「さーな。一人狙いたいって奴がいたから、渡しちまったぜ。今頃は、ヤギにでも姿変えられてるんじゃねーの? ま、これで余計な演技しなくても良いってもんだぁな!」
「なんて事を‥‥」
ケケケ、と耳障りな笑い声を立てる彼。ややあって、持っていたナイフをかなぐり捨てる。その手には、そのナイフもかくやと思える長い爪があった。
「炎の神殿にふさわしい戦いだな。デビルなら、遠慮する事もなかろうっ」
ゼファーが、そう言って鬼神ノ小柄を投げつける。しかし、当てる事は出来るものの、彼女の腕力では、デビルに致命傷を与える事が出来なかった。
「邪魔だぜ! 姉ちゃん!」
「うぁっ」
それどころか、逆に攻撃を食らって、下がらざるを得なくなる。そこへ、メギドの爪が振り下ろされようとした刹那だった。
「邪魔なのはそっちだ!」
京士郎の声と共に、ソニックブームがぶつけられる。避けようとのけぞったメギドの懐に飛び込みながら、彼は叫んでいた。
「時間がない、ここは俺にまかせてお前達は先に行け!」
「京士郎様!?」
1人でとめようとしている彼に、セレナがそんな事は出来ないと、首を横に振る。だが、それでも京士郎は、メギドの爪を愛刀で受け止めながら、こう言い放つ。
「安心しろ、俺も直ぐに後を追う。この中の誰か一人でも良い。御前から解毒剤を奪い取った奴が、ウィッシュを助けるのだから!」
「しかし‥‥」
メギドは強敵だ。全員でかかっていては、時間がかかりすぎる。ウィッシュの命を救う事が、絶対条件である以上、犠牲は仕方がないと。
「いくぞ。他の者の手が空けば、それだけ早く片付けられるからな」
そんな彼女に、ゼファーがそう言った。その言葉に、しぶしぶ頷くセレナ。
「こっちだ! デビルめ!」
「メギドって呼んでくんな!」
ひきつけるように、小柄を放つゼファーに、メギドは自らの名を口にしながら、接近戦を挑もうとする。
「させるか!」
彼らを近寄らせまいと、ソードボンバーを放つ京士郎。当たる確立こそ低いが、範囲の広いその攻撃は、彼を仲間から引き離すもの。
「へぇぇ。一人かい」
駆け抜ける他の冒険者を見送るように、立ちはだかる京士郎へ、多少興味を抱いたのか、メギドは攻撃の手を緩め、そう聞いてきた。
「お前の相手はこの俺だ」
刀を突きつける格好で、そう言いきる京士郎。
「ははは! サシの勝負ってかい! おもしれぇ! 焼け焦げにしてやるよ!!」
そう言うと、メギドは指先を鳴らした。その刹那、彼の身が赤く輝き、その爪に炎の力が宿る。同じ魔法を何度も目にした事がある京士郎、燃え上がるその爪は、どれだけの威力を持っているのか、痛いほど知っている。軽薄そうな態度であっても、力持つデビルである事は変わらないようだった。
「それほどの力を持つ御前が求めるのは、やはり聖杯か‥‥」
「さぁな。もっとも、神の国ってんだから、俺達デビルが蹂躙したら楽しそうなモンが、ゴロゴロしてんじゃねぇの?」
京士郎の問いに、メギドはそう言って、地を蹴った。人より大きな膂力を乗せて、その爪を振り下ろす彼。
「ぐあっ」
超近接距離に持ち込まれた京士郎の身に、血飛沫が舞う。
「このまま燃やし尽くしてやるぜ!」
接触したそこから、京士郎を焼き殺そうと言うのだろう。だが、彼はその瞬間、剣に力を込めた。
「ならば‥‥貴様を倒して、御前の野望を討ち貫くのみ!」
パワーチャージの要領で、メギドの爪を体ごと弾き飛ばす。その身を包むオーラが、決してデビルに遅れは取らぬと、自らの士気を高めているのだ。
「燃え上がれ、俺のオーラよ‥‥!」
そのオーラを、京士郎は自らの刃へ宿す。自身をつつむ薄紅色の光。それはメギドの爪に宿された紅蓮の炎と同じだけの威力を備えてくれる。
「鳳龍烈風斬!」
「ぐぁぁぁぁ!!」
その刃から放たれるソニックブーム。ソードボンバーと組み合わされたそれは、メギドに避ける隙を与えず、確実にダメージを与えていた。
「やったか!?」
「覚えとけよ‥‥。俺様をここまで追い込んだ奴‥‥御前の元を離れたとしても、追いかけてやるぜぇ!」
人々を騙してきた悪魔の美貌に、大きく傷が走っている。その姿のまま、ゆっくりとかき消えてくメギド。
「逃げたか‥‥。まぁ良い。脅威はなくなったのだから」
彼が駆け込むとすれば、御前のところだろう。そう判断した京士郎は、メギドを追いかけるより、仲間達の元へと合流する事にするのだった。
その頃、他の面々は、風の神殿を抜けようとしていた。
「いた!」
先頭を走っていたルシフェルの指摘に、緊張の色を載せながら、魔法を唱えるゼファー。彼らが、黒の御前を発見したのは、その祠の扉を開け放った時だった。
「おやおや。見付かっちゃいましたか」
ちょうど、宝珠を収める祭壇に、手をかけた所の御前。穏やかな表情でそう言う彼の手元には、6つ目の宝珠があった。
「宝珠は神聖なもの。その手をどけてもらおうか」
「えー、離すんですか? 構いませんけど、知りませんよ」
ルシフェルがルーンソードを突きつけながらそう言うと、御前はあっさりと宝珠を離した。と、それは祭壇に吸い込まれていくように消えてしまう。
「ほーら、無くなっちゃいました」
「貴様‥‥!」
驚く彼らの前で、御前は最初から分かっていた事の様に、そう言い放つ。
「じゃあ、お先に」
そして、宝珠と入れ替わるようにして、開いた隠し扉の向こう側に、足を踏み入れようとした。
「待て! 逃がすか!」
その歩みを止めようと、ルシフェルが攻撃を仕掛ける。それを見た御前は、うっとおしそうにこう言った。
「しつこいですねぇ。そこの方、ちょっと相手しててください」
「く‥‥、やはりスタンアタックを‥‥!」
やはり、姿を変えても操られてしまうのだろうか。そう思ったルシフェルが、他に被害が出る前に、スタンアタックを仕掛けようとした刹那だった。
「安心しろ、私は無事だ!」
固まったジャンヌとは別に、首に布を巻いたジャンヌが姿を見せる。その側に、ディアッカがいる所をみると、ルシフェルが御前と相対しているどさくさに紛れて、彼女の幻を出現させ、注意を引いたのだろう。
「ほぅ‥‥。ただの幻影でしたか。まぁ良いでしょう。その程度で、私の呪縛は打ち破れませんから」
感心した様にそう言う彼の首元には、見なれぬ白い玉が、まるでペンダントの様にぶら下がっていた。
「あれは‥‥。デスハートンの玉!? そうか、そういう事か‥‥」
マダムの時とは違い、何やら書かれたそれに、はっと気付くアルカード。
「おや。気付かれましたかな」
「ああ。印は、操る為の目印だと思っていたが‥‥。よく見ろ、フローラの名前が書いてある。おそらく、一度捉えた時に、言霊で書かせたものだろう」
観察力に優れた彼、イタズラっぽくそう言う御前に、そう指摘してみせた。報告書によれば、フローラは一度、御前に力及ばず、倒れた事がある。その際、力を奪われたのだろう。
「そうなんですよ。だからこうやって操れるわけです。たとえ姿を変えていてもね」
「きゃあっ」
御前が、そう言いながら、玉を撫でる仕草を見せる。と、姿を変えていたはずのフローラが、悲鳴を上げてのけぞった。
「だったら、あれを吹き飛ばせば良い話だ!」
シスイがそう言って、トルネードの魔法を唱えた。
「時間もないし‥‥一気に行く‥‥怪我したら‥‥運がなったと思え‥‥!」
口調こそ静かだが、その動きは素早い。高速詠唱を併用し、一瞬にして魔力を組み上げる。
「動きを止めます! シャドウバインディング!」
あわせるように、ディアッカが御前の動きを、地面の影へと固定する。
「サンレーザー!」
操作を妨害するように、ユラヴィカも魔法を放った。着火するそれは、じゅいんっと音を立てて、御前の意識をそちらへそらす。
「ごめんなさい、フローラさん!」
その隙に、リアナがロープでフローラを拘束する。多少傷は付くだろうが、彼女自身、リカバーの使い手。後で治せば、議長への言い訳は立つ。
「今の内に玉を!」
彼女が押さえ込んでいる合間を縫って、アルカードが覚えたばかりのアグラベイションを使い、御前の動きを鈍らせる。
「その程度、私には通用しません!」
しかし、彼の分厚い面の皮には、抵抗されてしまったようだ。
「目的は、貴様の持つそれだ!」
刹那、シスイが、ストームを食らわせる。大きく後ろへと後退した御前の首から、デスハートンの玉がはじけ飛んだ。
「ち‥‥。ならば報いを受けるのです」
「うわぁぁっ」
代償は、身代わりに受けたデスハートン。奪われた生命力が、新たな白い玉を作り出す。だが、それに名前は記されていない。
「あれを使われるのはまずいです。リシーブメモリー!」
その玉への対処とばかりに、御前の記憶を覗き見るディアッカ。万が一、御前を取り逃がした時の事を考えて、ある。尋ねるは、ヴァレンタインに関するものだ。あそこまで心の掌握に利用できた例を考えれば、妥当なラインだろう。
「これは‥‥!」
その記憶が、示すものに驚愕するディアッカ。
「悪魔に白の神官着など似合わぬ。セレナ!」
「はいっ」
そこを狙い、ジャンヌがピュアリファイを炸裂させる。身に付けた服を、セレナのバーストアタックが砕き、御前の持っていたデスハートンの玉を、奪い取らせていた。
「あらら。気に入ってたんですけどねぇ、これ」
ボロボロになった上着を脱ぎ捨て、そう言う御前。その身体がむくり、と大きくなった‥‥ように彼らには見えた。
「あれは‥‥」
いや、間違いない。見る見るうちに、御前は人の姿をかなぐり捨て、巨人へと変わって行く。
「ご褒美に、本当の名を教えてあげましょう。私はダバと申します。東洋では、天魔とも呼ばれておりますけどね」
容姿端麗な美貌を残したまま、立派な体躯となった彼。その身には、魔力で織り上げられた鎧がまとわりついている。
「一体何が見えたのじゃ?」
「ヴァレンタインを、悪の道に引きずり込んだのも、聖人を殺したのも‥‥この男‥‥」
ユラヴィカが尋ねると、彼はその内容を教えてくれる。バンパイアの都を離れた彼を、言霊、フォースコマンド、そして‥‥デスハートンを駆使して、闇の貴公子に育て上げたのは、他ならぬ御前だった。そう、自身で聖杯伝説を受け継ぐ聖人を殺しておきながら。
「ご名答。いやぁ、だって面白そうじゃないですか? 聖餐の生贄に選ばれたバンパネーラを、聖杯伝説の後継者から、デビルの手先に貶めるって」
「それは‥‥!」
くすくすとそう言って、自らの罪状を認めるかのように彼が出してきたのは、聖者が好んで使用すると言う、装飾が施された槍。
「白いものを黒く染め上げるって、魅力ですよねぇ。皆さん」
聖槍を手に、怪しく微笑むその姿は、まさしく悪意に満ちたデビルのものだった。
御前は、その名が示す通り、中々傷付かなかった。
「‥‥ふう、やってもやっても‥‥きりがない‥‥。しぶといし‥‥ゴキブリ並みの‥‥生命力か?」
疲れた様にそう呟くシスイ。何しろ、生半可な魔法は抵抗されてしまうし、素の攻撃では、かすり傷程度しか与えられないのだから。リアナがライトニングサンダーボルトで援護をしているものの、7割は抵抗されてしまう始末だ。
「今度はこっちから行きますよ」
「間に合わない!?」
御前の槍が法衣の内側で翻る。ルシフェルが、剣で受け止めようとした刹那だった。
「鳳龍闘気斬!」
遥か後方から、オーラパワーを乗せたソードボンバーが放たれる。
「‥‥みんな、待たせたな。黒の御前、お前の陰謀もここまでだ」
「メギドが役に立たなかったようですね」
姿を見せた京士郎を見て、御前が忌々しげにそう呟いた。見れば、範囲型のそれは、御前に傷を負わせたらしく、法衣が破れている。それを見て、アルカードは気付く。
「いくら魔力が高くても、無尽蔵ではない筈! 当てる事が出来れば、いつかは倒せる!」
「数を当てれば良いと言うものでもありませんよ」
アグラベイションを使いながら、戦況を分析するアルカードにも、彼は動じていない。逆に、槍を当てられ、利き腕をやられる彼。しかし、ゼファーにとっては、そうやって慢心している御前の態度こそが、チャンスになった。
「攻撃が通用しなくとも、その隙を作るくらいは出来る! いや、作ってみせる!」
紐をつなげた鬼神ノ小柄が、複数放たれる。ダブルシューティングを使えない彼女、両手は使えても、二撃必殺と言うわけには行かない。
「下らない攻撃ですね!」
「あうっ!」
難なく避けた御前が振り下ろした槍が、ゼファーの小柄を叩き落とし、その腕を切り裂いていた。
「デビルにはデビルに対する戦い方がある! 食らえっ! 聖なる力を!」
注意が彼女に向いている隙を使い、ルシフェルがフェイントアタックの要領で、清らかな聖水を投げつける。
「ちっ。うっとおしい水を!」
それは、デビルに回復の出来ぬダメージを与えていた。かすり傷程度しか負わせていないが、ぶすぶすと煙を上げる御前。
「死になさい!」
「倒されるのはそっちです!」
ルシフェルに制裁を加えようと、聖者の槍を振り下ろす御前。その一撃を、受け止めたセレナ、ジャイアントの腕力でもって、ラージクレイモアを無理やり振り上げる。
「カルディス卿の仇! 覚悟!」
力強く振り下ろされるスマッシュEX。多少命中力は下がるが、一撃必殺の剣技は、決して軽くない傷を、御前へと与える事に成功する。
「おこがましいっ!」
「がはぁっ」
自身へのダメージなど、この際構って入られない。
「ジャンヌは仮の姿。オルレアンの白騎士フローラ・タナーの名の下に主の祝福を!」
魔法を使う力を失ったと見て取ったジャンヌは、巻いた布を取り去り、白き騎士の姿となって、御前へと斬りかかる。
「諦めろ、お前は‥‥邪魔だ」
「流した涙の報い、今受けるがいい!」
勝機の見えたそこへ、シスイがウインドスラッシュを撃ちこみ、オーラの力を乗せた京士郎の刀が、スマッシュを放つ。それは、狙い違わず、御前を重傷へと追い込んでいた。
「うがぁぁぁっ! おのれぇ‥‥。我が吐息を食らうが良いっ!」
温厚な仮面をかなぐり捨て、御前はその秀麗な唇から、炎の吐息を吐き出す。全員に襲いかかった炎は、文字通りあちこちに飛び火し、視界を隠してしまう。
「人間どもめ‥‥。この報いは‥‥必ず‥‥!」
阻まれた炎の向こうで、何かが転がる音。姿を消した先は、城とは反対の方角だ。
「薬が残ってる‥‥」
アルカードがファイヤーコントロールを使って消火をした後に残ったのは、矢に塗られていたであろう毒とその解毒剤。
「よし、帰るぞ。ウィッシュが、待ってるしな」
事件が片付いたと判断したルシフェルは、そう宣言して、精霊の待つ本陣へと引き上げる。
こうして、冒険者達は、ついに魔の野望をくじく事が出来たのだった‥‥。