【加護乃姉弟の難儀】留守宅
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■ショートシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:2〜6lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 69 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:01月25日〜01月30日
リプレイ公開日:2006年01月31日
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●オープニング
●留守の間に
物語は、とあるジャパン人の姉弟が、月道を経由して、イギリスから帰国した所に始まる。
「久々のジャパンですね、姉さん」
「ええ。本当に‥‥。あまり変わって無くて、ほっとしているわ」
江戸の町へ降り立った2人は、一年ぶりの故郷の光景を見回して、安堵の表情になっている。そんな姉に、弟はこう言い出した。
「とりあえず、ちょっと家の方見てきますね。姉さんはここで休んでて下さい」
「気をつけるのよー。一年ちょっとほったらかしたまんまなんだから」
かなりの大荷物になっているそれを預けたまま、自宅の様子を見に行く弟を、姉がそう言って送り出すと、遠くから「わかってますよー」と、答える声が聞こえた。
「さて、家の様子はどうなっているかな‥‥。あれ?」
その弟、自宅の近くへとやってきたものの、妙に人通りが少ない。元々、工房をかねていたので、そんなに人通りの激しい往来に面してはいなかったものの、あまりにも少なすぎていた。
「む? このような場所に、なんぞ用かぇ?」
しかも、自宅には、何故か見知らぬ女性が一人。年の頃なら30代前半。多少とうが立っていたが、豊満な体躯をした、色白で上品な感じの女性だった。
「え? えーと、あなたは‥‥」
戸惑う弟くんがそう尋ねると、女性は不思議そうな顔をして、こう答える。
「わらわは、ここに半年ほど前から住まいおる者じゃ」
「いやその‥‥。ここは私達の留守宅で‥‥」
その返答に、ますます困惑する彼。一年前に家を空ける時、きちんと張り紙をして、出てきたはずである。
「由々しき事を言うおのこじゃのぅ。まぁ良いわ。袖すりあうも前世の因縁。上がって茶でも飲んでくりゃれ」
「は、はぁ‥‥」
一年も家を空けていれば、そういう事もあるかもしれない。そう思った弟さんは、女性の誘いに応じ、とりあえず中でお茶がてら、事情を話す事にした。
だがその後、弟くんが姉の所に戻ってきた事はないと言う。
●依頼
さて、それから数日後。
「え? 弟さんが帰ってこない?」
「はい‥‥。留守にしていた家の様子を見に行ったまま、もう3日も‥‥」
姉の方が、ギルドでそう話していた。
「3日って‥‥。ずいぶんのんきな‥‥」
「家に帰っただけですから、もしかしたら、掃除をしているとかかしら‥‥と思ったものですから」
確かに自宅なので、暮らそうと思えば、問題なく暮らせる。元々、のんきな性格ではあるらしく、『きっと、何か材料探しや補修をしているのだろう』と、そのまま近くの旅籠に逗留していたそうだ。
「掃除って‥‥3日もかかるような広さなんですかい」
「いいえ。近所の方に確かめたら、確かに帰って来てはいるようなのですが、どうも他の方とご一緒みたいで‥‥」
あんまり遅いので、荷物を預けたまま、様子を見に行ったところ、遠目で女性と一緒だった所を目撃したそうだ。だが直後、通りすがりらしい御仁に、屋敷に近づかない方が良いと言われ、迷った挙句戻ってきてしまったそうである。
「それで、判断に困って、こっちに来たと」
「はい。イギリスの方で、私達を雇っていた方が、何か困った事があったら、ギルドを尋ねて欲しいと、紹介状も持たせてくれたもので‥‥」
そう言って、羊皮紙を見せる姉。イギリス語で記されたそれは、向こうでそれなりに権威のある人物が書いたものなのだろう。もっとも、ギルドの人は、イギリス語は読めなかったらしく、すらすらと姉の依頼を紙にまとめ、こう言ってくれた。
「それは、大切に保管していてください。無くても大丈夫ッスから。おーい、これ張っといてくれ」
「うーい」
ぺたりと張られたそれには、こう書いてある。
『留守中に上がりこんだ謎の女性に、弟が誘われたまま帰ってきません。どうにかしてください』
と。
●リプレイ本文
まずは、話を聞かないと始まらない。そんなわけで、冒険者達は、依頼人である加護乃小鳥嬢を訪ねていた。
「最初にお伺いしますが、鶴之介様はおいくつですか?」
いかにも上品で育ちのよさそうな顔立ちをした、御大家の姫と言った雰囲気の甲賀銀子(eb1804)、ちょっとわくわくした表情で、鶴之助のお年頃を聞いている。
「え? 確か‥‥今年で18か19になったと思いましたけど‥‥」
「三つも年上か‥‥」
小鳥の返答を聞いて、かなり残念そうに呟く銀子。彼女のターゲット範囲は、15歳以下なので、それより上はお呼びでない。
「何か、問題でも‥‥?」
「こっちの話ですわ。てっきり弟って言うから、かわいい男の子だと思ってただけですの」
どう答えていいかわからず、困惑した表情の小鳥嬢。そこへ、紗夢紅蘭(eb3467)が憤慨した様子でこう言った。
「姉を心配させるなんて困った弟ネ。まぁ、それなりの理由はあるんだろうけど‥‥。なかったらキツく説教アル」
お手柔らかにお願いします‥‥と、心配そうな小鳥嬢。その様子に、帰ったらお仕置きアル、と心に決める紅蘭嬢。
「留守中の家に住んじゃった美人のお姉さんと、鶴之介お兄さんが3日も帰って来ない。う〜ん、どうしてなのかなぁ。小鳥お姉さんに、帰れないなら、一言あってもよさそうなのに」
改めて依頼を読み直した慧神やゆよ(eb2295)が、悩んだ様子を見せる。その様子に、セピア・オーレリィ(eb3797)がこう意見を述べる。
「その弟さんが女性の色香にほだされて‥‥って単純な話で済んでくれたら楽そうだけど、甘い見通しかしら。近づかない方が良いと噂になるぐらいだし‥‥」
と、やゆよはその意見に、はっと気付いたように、こう詰め寄る。
「謎の美人お姉さんと鶴之介お兄さんが、ラブですか? 愛ですか? 恋でーすーかー!?」
「いや、そうと決まったわけじゃ‥‥」
首を横に振るセピア。まぁ、ひと目あったその日から、恋の花咲く時もあるのは確かだが、何も彼がそうだと言う保障はない。
「もしそうだったら、わくわくドキドキだね♪ 謎の美人お姉さんが悪者で、鶴之介お兄さんを騙しているとかじゃないといいなぁ‥‥」
夢見る乙女のやゆよちゃんをほったらかしたまま、プリュイ・ネージュ・ヤン(eb1420)は小鳥にこう申し出る。
「どんな些細なことでもかまいませんから、できる限り詳しくお願いします」
家の様子を見に行った時の、周囲や鶴之介の様子、一緒にいた女性の特徴、それに家の間取り。求めたのはそう言った事前情報だ。ちなみに、彼女自身はゲルマン語しか話せない為、セピアが通訳に入っている。快くその求めに応じてくれる小鳥嬢。
「それでは参りましょうか」
伝えられたプリュイはそう言って、件の屋敷へと向かうのだった。
「まずは周辺で情報収集ネ。小鳥が『屋敷に近づかない方が良い』と言われたというのが気に掛かるヨ。料理でも売りながら話を聞こうカ‥‥。普通に聞いて回っても良いけどネ」
紅蘭が、愛用の調理器具を出してきてそう言った。世の中どうかは知らないが、飯をおごると言われて、口の軽くならない奴は、割と少ない。そんなわけで一行は、紅蘭が作った華国伝統の点心料理をえさに、調査を開始する。
「ふむ‥‥。やはり話がおかしくなったのは、あの女性が来てからのようだな‥‥」
イギリスでの知己と名乗り、コバルト・ランスフォールド(eb0161)が、そう言った。彼が比較的人が多い地域で、屋敷の周辺での事を聞いてきたところ、屋敷の周囲に人払いがかかったのは、その女性が引っ越してきてからだそうだ。
「小鳥殿、鶴之助殿とその美女が一緒だった所を目撃した時、どんな雰囲気だったかな?」
「なんだか、とても仲がよさそうだった気もします‥‥」
ギーヴ・リュース(eb0985)の問いに、そう答える小鳥。それを聞いて、彼は眉を潜める。
「うーむ。だとすると、何かの呪いと言う線は消えたかな‥‥」
幾つかの可能性があった1つだったらしい。と、そこへ上杉がこう言った。
「聞いてきた話では、あの女性は、いつの間にか住み始めていた‥‥らしい。一応、伝えたは伝えたが、筋は通した筈、とつき返されたそうだ」
「身内と偽ったと言う話は聞かないから、誰かが空き家だと思って、仲介した可能性が高いな」
コバルトが聞いてきた話では、小鳥達の知り合いと言うわけではなさそうだ。貼り付けていた紙がはがれ、誤解した誰かが、女性を送り込んだと言う噂だった。紅蘭の話では、その女性が住みついた後、次第に過疎化が進行したそうである。
「うーん。どうして危なくて、近づいちゃいけないんだろう? もしかして、過去に何かあったとか」
「それなのですが、気になる話を庄屋様から聞いてきたんですの」
プリュイがそう言った。セピアが聞いてきたと前置きしたその話では、このあたりでは昔から妖怪女人伝説があり、それに登場する妖女の容姿が、あの女性にそっくりなんだそうだ。おそらく、人が寄り付かなかったのは、その辺りに原因があるのだろう。その上、半年前には、こんな事件もあったそうだ。
「その時期、この辺りで落雷が起こって、火事があったそうです。幸い、死人や怪我人はでなかったそうなのですけど‥‥、場所が墓地だったそうで、ずいぶん恐れられたそうですわ」
「その時に、何かの封印が解けたと考えるのが妥当だな」
そう答えるコバルト。と、上杉藤政(eb3701)がこう言った。
「妖怪を恐れるのは、一般人なら当たり前だろう。そう言う意味で、近づかせないようにしたのだと思うが」
「しかし、誤解されているとすれば、その女性の方が被害者だ。あちらの女性陣に聞いた限り、三日に一度は、買出しに出かけているらしいから、今日か明日あたりには、外に出てくるだろう」
そう答えるギーヴ。彼にしてみれば、どうしても美人を悪者にはしたくないらしい。
「では、いつ出てきたか、お天道様に聞いてみますわ」
やる気ゼロだった銀子、それでも仕事だから、と言わんばかりに、サンワードのスクロールを広げている。それによると、夜には戻ってきて、朝までは家から出ないそうだ。
「日没前に、小鳥さんの宿に集まりましょう。乗り込むのは、明日の朝‥‥で、良いですね?」
「わかったアル。もうちょっと話を聞いたら、作戦決行アル」
プリュイがそう言うと、紅蘭が、夜食やお弁当用に、点心料理を追加作成してくれるのだった。
翌朝、冒険者一行は、班分けをして、彼女鳥の家へと向かっていた。
「太陽の話では、鶴之介と思われる御仁は、入ったまま出てこないそうですわ」
銀子がサンワードのスクロールを使った後、そう言った。詳細はわからなかったが、在宅中なのは、確かなようだ。
「ちょっと様子を見てみるね」
少し離れた場所から、そう言ってやゆよがエックスレイビジョンの魔法を使う。それによると、たった今鶴之介と、謎の美女が、家の奥へ向かったそうだ。
「とりあえず、入ってみましょうか」
「あわわ、なんだかイケナイ事をしてるような気もするけど、大人の恋を知る為に、じゃなかった、依頼の為には仕方ないよね、うん」
銀子が裏口へと向かうのに同行するやゆよ。緊張した面持ちで、自己弁護に走る彼女に、同じ裏口組の上杉がこう諭す。
「考えが間違っていることもあろう。取り下げておけばよかったと後悔することもあるやも知れぬが、神ならぬ身であるのであるから、行動するときにわからぬのも仕方あるまい」
古風な言い回しだったが、要は恐れていては何もはじまらないと言った所か。
「念の為、イリュージョンをかけておきましょう」
そう言って、銀子が魔法を使おうとした刹那である。
「誰じゃ? そこにおるのは」
古風な言い回しの声がして、件の女性がこちらへ向かってくる足音がした。
「わわっ、見つかった!?」
「しっ。黙ってて」
このままでは、見付かってしまう‥‥と思われたが、銀子は迷わず魔法を発動させた。
「私は夢神さまの使者。これなるは、そなたにあてし文。心して受け取られよ」
そう言って、彼女が渡したのは、ギーヴの名前で書かれた文だ。丁重な飾り折をされたそれを受け取った美女は、目を細めて、それを開いている。
「今のうちに‥‥」
彼女がそうしている間に、3人は廊下を走りぬけ、奥の工房へと向かう。
「わらわをこのような文で呼び出すとは、なんぞ深刻な用かの?」
その頃、当のギーヴはと言うと、コバルトと共に、その美女を外へ呼び出していた。
「いや‥‥。ここで美人に会えると言うので、是非顔を見に」
不審がる彼女に、ギーヴはそう言って笑いかけてみせる。吟遊詩人としても確かな腕を持つ彼、女性を惹きつけるのに、弁は惜しまない。
「疑うならば構わないさ。君のような綺麗な御仁と、お近付きになれるなら、誤解もまた魅力の1つ‥‥」
ともすれば、そのまま恋詩でも捧げかねない勢いである。そんな彼の様子を見ていたコバルト、咳払い1つ。
「まったく。任せておいたら、そのうち別の宿屋に行ってしまいかねないな。実は尋ねたい事があるのだ」
雰囲気の違う彼の姿に、少し表情を厳しくする女性。何かが違う‥‥と考えたコバルト、鎌をかけるかのようにこう尋ねた。
「‥‥京女性らしい趣の有る口調だが、ジャパンの伝統的な遊戯にもお詳しいか?」
鶴之介は、イギリスで覚えてきたチェスが好きだと言う。もしかしたら、その教授や、賭け将棋のような悪い遊びに引きずり込まれ、帰ってこられないのかもしれないから。
「遊戯か。確かに賽を振った事はあるが、専門と言うわけではないの」
どうやら彼女、多少の心得はあるようだ。脈在りとみたギーヴ、ここぞとばかりにこう言った。
「どなたかと、勝負されたことは?」
「ふむ‥‥客人と勝負をしたはあるが‥‥のぅ。なぜそのような事を聞く?」
そのセリフを見るに、もしかしたら丁半博打で、鶴之介を取り戻せるかもしれない。そう思ったコバルト、こう彼女に申し出る。
「いや、興味をそそられたものでな。君に」
「やはり口説いておるの。まぁ良い、相手をして進ぜよう」
それを、彼女はギーヴと同じ様に、自分を誘い出そうとする文言に受け止めたようだ。
「今のうちに、鶴之介さんをどうにかするアル」
その間に、紅蘭が奥の工房へと向かった。
「といっても、普通に説得して戻るような状態ならこんなことになってないわよね‥‥」
反物なんかも放置で生活感がなさそう‥‥。と、続けるセピアのセリフ通り、工房はがらんとしており、人気がない。その工房すぐ横にある離れに、彼は居た。
「いたぞ」
見つけた上杉がそう言った。だが、様子がおかしい事に気付き、駆け寄ろうとしたセピアを制している。
「なんだか生気がないなぁ‥‥」
彼の後ろの方から、鶴之介を見た彼女、そう感想を述べる。虚空を見つめ、ぼぅっとした表情。小鳥から話を聞いたような姿ではなかった。
「確かに私好みの少年ではありませんわね」
銀子、もう少し年若い方がいい‥‥とこぼす。しかし、そこまで話していても、鶴之介はこちらに気付く様子はまったくない。
「憑いてる時に、ピュアリファイって効くのかしら‥‥。それで駄目なら、あのお姉さんに誘われた時以上の誘惑とか‥‥」
その様子を見て、セピアが冗談めいた提案をする。あまり、本気で取られるとは思っていなかったようで、「いや。やってみる価値はある‥‥」と上杉はそれを勧めていた。
「なら、試してみようかな‥‥」
その勧めに応じ、セピアはそう呟いて、布団の上でぼんやりしていた鶴之介の顎に手をかけ、じーっと目をみつめる。そして、指でなぞるようにして、ピュアリファイをかけた。
反応はない。どうやら、何者かにとり憑かれていると言うわけではなく、何やら言霊をかけられているのではないか‥‥とは、上杉氏の弁。
ところが。
「何をしておるのじゃ」
「あちゃ、見つかっちゃった」
魔法をかけたせいで、派手に光が飛び散り、玄関先で相手をしていた女性が戻ってくる。悪びれもせず、舌を出すセピア。イタズラっ子な表情を浮かべる彼女とは対照的に、囲まれた形の女性、険しい表情を見せる。その刹那、銀子は高速詠唱でイリュージョンの魔法を発動させた。
「対象年齢外でも、たぶらかすのは許せませんのでねっ」
送り込んだのは、矢が胸に刺さった幻覚。しかし、彼女はむしろ平然とした表情で、それをはねのけていた。
「‥‥なんじゃ、わらわの正体を知っておるようじゃのぉ」
「どうやら、円満退去‥‥と言うわけには行かないようだな」
コバルトがそう言った。と、彼女は鶴之介の後ろに回り、彼を人質に取る格好で、こう突っぱねる。
「せっかく見つけた住まいじゃ。冒険者相手でも、出てなんぞいかぬぞぇ」
「気をつけて! あの人、やっぱり人じゃない!」
リヴィールマジックを使っていたやゆよが警告する。その直後、工房の方からひらひらと飛んできたのは、一般に『一反妖怪』と呼ばれる連中だ。
「悪党なら、懲らしめてやるだけネ!」
相手が妖怪変化の類なら、見物している道理はない。紅蘭がそう言って、ストライクを叩きこんでいた。
「鶴之介さんの安全が先ですからね!」
「わかっている」
ウインドスラッシュのスクロールを広げるプリュイに、頷く上杉。しかし、それはさせまいと、一反妖怪が行く手を塞ぐ。
「邪魔アル‥‥。あの反物‥‥」
「私が何とかします」
空中を飛んでいるそれは、紅蘭には、手を出しづらい相手のようだ。それを見て、プリュイは別のスクロールを広げた。
「我が手に集いしは雷帝の吐息 破壊の煌きとなりて 解き放たん!」
放たれたのはライトニングサンダーボルト。威力の大きなそれは、一反妖怪を一撃で退却に追い込んでいた。
「今だ! 神よ、悪しき者に裁きを!」
「太陽の力よ!」
壁がいなくなった所で、コバルトがブラックホーリーを、上杉がサンレーザーを叩きこむ。
「ちっ。おのれ‥‥覚えておれ!」
そう、声がして。女性から何かの影がふわりと抜けた。その直後、まるで糸が切れたかのように、倒れこむ女性。
なお、目を覚ました彼女の話では、半年前、上方から出てきた直後、この屋敷の軒先を借りて休憩していたあたりから、記憶が飛んでいるとの事。
紅蘭の点心をつまみつつ協議した結果、プリュイの提案で、他に住みかを探すので、ここは立ち退いてもらおうと言う事になった。まぁすぐには家も見付からないだろうと言う事で、それまでは逗留してかまわないそうである‥‥。