【はじめてのゴブリン退治】とおりゃんせ
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■ショートシナリオ
担当:姫野里美
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:04月25日〜05月02日
リプレイ公開日:2006年04月28日
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●オープニング
ジャパンと言うのは、基本的に海運貿易で成り立っている国家だ。それは、江戸や京都に限らない。今回は、そんな海辺の村で起きた事件だった。
「すみませーん。僕ン家の村に、小鬼が住み着いちゃったんですけどー!」
ギルドに駆け込んできたのは、シフールの青年である。村長が出した手紙を持参しており、正式な依頼者のようだ。
「まぁ、水でも飲んで落ち着いて。何があったのかしら?」
「ああ、すいません。実は‥‥」
その場にいた紫の和服の女性から、差し出された水を飲み干して、シフールの青年は、村の事情を話す。彼が住んでいるのは、港にある小さな村だ。海から進んだ方が便利だったその村で、船が嵐で壊れ、数年ぶりに、山にある裏道を使う事から、話は始まる。
「うわぁ、何年も使ってないから、埃だらけだねぇ」
「ガラクタもいっぱいだし」
長い事使っていなかったせいか、入り口は暗く閉ざされ、まるで未開の洞窟めいた姿になっている。村人は、竹箒を片手に、そのガラクタをどけ、掃除を始めたのだが。
「あれ? この道って、あんなに明かりが近かったっけ?」
「もうちょっと遠いはずだけど‥‥」
すぐ近くに、輝く光点。
「一つ二つ三つ‥‥。いっぱいあるねぇ」
「って言うか、瞬きしてるし」
しかもそれは、次第に増えており、さらに動いている。
「え‥‥?」
顔を見合わせる村人さん達。不審に思って、焚き火の燃え端で照らして見ると。
「ゴブゴブゴブ」
「ゴブゴブゴブ」
褐色の肌をした、貧相な子供のような体格をしたモンスターがいた。よく見れば、潰れた鼻をして下顎から牙が伸び上がっている。
「うわぁ、小鬼だぁぁ」
「逃げろぉ!」
そう。そこには、どこからか入りこんだ小鬼の一団が住み着いてしまっていたのだ。慌てて逃げ出す村人達。
「遠巻きに様子を見ていると、小鬼達は、裏道に住み着いちゃったみたいなんです。出たり入ったりしてるので、正確な人数はよくわかりませんが、だいたい6匹くらいいるみたいです」
そう話すシフールの青年。村人同士で話し合った結果、空を飛べる彼が、山を越えてギルドへ行き、冒険者を呼んで来ると言う事になったそうだ。
「今すぐにどうこうと言う事はなさそうなんですが、人里だとわかってますし、いつ襲われるかわかったもんじゃありません。被害が出る前に、どうか小鬼達をやっつけて下さい」
ぺこりと頭を下げるシフールの青年。そんなわけで、冒険者に村へ向かうよう、依頼が出されるのだった。
●リプレイ本文
天神様の細道ではないが、ジャパンと言う国は、八百万の神が宿りし場所と詠われる事がある。それは即ち、数多くの精霊達が住まう、自然豊かな証。今回舞台となる村も、そんな‥‥風光明媚な田舎村だった。
「まあ、徒党連中の中じゃ、一番年上だが‥‥」
今回が初めての依頼だと言う春日乃汰樹(eb4915)が、同じ依頼を受ける先輩冒険者達を見回しながら、そう呟く。
「道に住み着いた小鬼退治ですね! 村人達も困っているみたいですし、何とかしてあげたいですね!」
張り切っているのだろう。居酒屋の看板娘だと言う香月八雲(ea8432)嬢が、にぱっと笑って、声をかけてきた。汰樹が何も言えずにいると、上杉藤政(eb3701)が嗜める。
「まぁそう興奮せずとも、良いと思うぞ」
多少古風な言い回しをする彼。パラではあるが、それなりに思慮深い性格のようだ。その証拠に、彼は汰樹にこう尋ねてきた。
「初めての依頼と言う事だそうだが‥‥。春日乃殿は、保存食は持って来ているか?」
汰樹が頷くと、彼はその理由を告げる。
「それは良かった。いかに手間賃が貰えるとは言え、往復の食費は概ね自費なのでな。それに、中には保存食を持ち合わせていない輩もいる。消耗品は多めに持っていたほうが無難と言う事だ」
「なるほど‥‥。酒だけではダメだと言う事か‥‥」
そんな先輩冒険者の助言に、汰樹はひょうたんに入れた酒を確かめる。彼の場合、三度の保存食より、お酒がきれないようにする事が、肝要のようだ。
「でも、あまり荷物を持ちすぎると、動けなくなっちまいますよ。こんな風に運ばせるにしても、彼らは戦場には連れて行けないっすから」
以心伝助(ea4744)が、重かったら荷物を福助に積んでもいいっすよーと提案しながら、自分が持てる量を確かめておくのも必要だっすよ。と、助言する。
「ま、今回は燃料切れにならないよう、自粛するさ」
時には、耐える事も必要だと、その助言から感じ取る汰樹だった。
数日後、件の村へたどり着いた冒険者一向は、伝助の提案で、まず村長宅へ向かう事になった。
「なるほど‥‥。では、裏道までは、村を横切って、畑を突っきる訳っすね。広さは、人間何人分っすか?」
本当は、伝助くらいの腕があれば、小鬼などあっという間に蹴散らせそうなものなのだが、今回は人数が少ないうえ、初めて依頼を受ける者も少なくない。慎重にやらざるを得ないのだろう。
「あと、詳しい人数も聞きたいんでやんすが」
伝助の問いに、村長は詳しい状況を伝えてくれる。幅は大人2〜3人。パラやシフールなら、もう少し通れる程度。中の人数は、ガラクタ置き場にあった錆びた斧が6本消えていたから、その程度だろうと教えてくれる。その話から算出するに、中にいるのは6匹で、3匹づつ交代で行動しているんだろうと推測できた。
「村を抜けるとすると、大きな武器では警戒されますね‥‥。流石に服装は怪しまれないでしょうけど」
香月がそう言いながら、金剛杵を懐に入れている。目立たないように旅装束を直した彼女は、汰樹に説明するように言った。
「こうしておけば、うっかり小鬼に見つかってしまった時、逃がし難くなるかもです」
小鬼は、臆病ではあるが、無抵抗な者や、力のないものをいたぶるのを好む。丸腰だと思い込めば、油断もするだろうと。そう言う意図らしかった。
「だいたいの状況は分かりやした。それなら、ちょいと卑怯な感じもしやすが‥‥な流れはどうでやす?」
話を聞き終わった伝助、こそこそと他の4人に、作戦を耳打ちする。
「なるほど。それは妙案だが‥‥。春日乃殿は、何か策を練っているか?」
「いや。俺は皆ほど技量が高くない。下手な策を弄するより、コイツで叩っ切った方が良さそうだ」
上杉が、確かめるようにそう尋ねると、汰樹はそう言って、腰の日本刀を見せた。普段はどこぞの警護に赴いているそうだから、前衛が一番性に合っているのだろう。
「それは結構でやんすが、いきなり正面突破仕掛けて、大勢に取り囲まれると危ないっすよ」
「うむ。まずは以心殿の策に従い、確実に仕留められる瞬間を狙うと良いと思うぞ」
伝助の助言に頷く上杉。こうして一向は、その為の準備に勤しむのだった。
翌朝。
上杉のサンレーザーが、有効に使えるようにとの配慮で、冒険者達は、陽が昇ると同時に、小鬼達の巣食う裏道へと向かっていた。
「ゴブリン側から見ると、棲家にいきなりあっしらが現れた感じなんすかねぇ‥‥」
付近に穴を掘りながら、伝助はそう呟く。
「‥‥といけないいけない。人数ギリギリっすし、ちゃんと集中しないとこっちが危ないっす」
我に返った様にそう続けて、穴を掘り進める伝助。上杉のサンレーザーが当たりやすいよう、日向に近い場所を選ぶ。
「何だかどきどきしますね」
入り口近くの物置小屋の影に隠れた香月が、落とし穴の様子を見張りながら、そう口にする。
「念の為、家から出ないように言ってくるでやす」
伝助が愛馬を連れて、村長宅へと連絡しに行った。一応話は聞いたものの、性格な数がわからないので、頼むついでに、警戒を強めて欲しい旨を、告げてくるそうだ。
「上手く引っかかってくれれば良いのだが‥‥」
同じく生垣の後ろに身を潜めた上杉も、少々心配そうだ。見れば、落とし穴の上に、保存食の切れっぱしが置いてある。
「ゴブ、ゴブゴブ」
しばらくして、小鬼達が巣穴から出てきた。匂いに惹かれたのだろう。置かれた保存食を指差しては、鼻をひくつかせている。どうやら、保存食の他に、人の匂いがするらしく、疑っているようだ。
「ゴブ!? ゴブブゴゴ!」
1匹が、物置小屋を指差して、何やら叫んだ。隠密行動には素人の香月が、見付かってしまったらしい。
「わーん、こっそり各個撃破するつもりだったのにー」
そう言いながら、応戦する香月。普段は居酒屋で愛想を振りまいている身分だが、僧兵でもあるので、小鬼の攻撃も、中々当たらなかった。
「回復役を攻撃するなんて、卑怯ですー」
油断させる為か、香月は文句を言いながらも、金剛杵で一撃を食らわせる。しかし、いかに小鬼とは言え、あたりはするものの、あまり手傷を負った様には見えなかった。その姿に、相手は調子に乗ったのか、上杉の潜む辺りへと近付いてくる。
「今だな」
一匹が落とし穴に引っかかった。決してかすり傷ではない怪我を負っていると見た上杉は、隠れた場所から、サンレーザーの魔法を唱える。太陽の魔法は、穴から出ようともがく小鬼を、容赦なく焦がしてくれた。
「とりゃあっ!」
彼らが、あまり回避能力に長けてないな‥‥と判断した汰樹、残った2匹のうち、1匹に刀を振り下ろす。我流ながら、専門職の腕力で振り下ろされた日本刀。小鬼は避ける事が出来ず、決して軽くない傷を負ってしまった。
「逃がさないでやんすよ!」
仲間2匹がやられたのを見て、巣穴に逃げ帰ろうとした残りの1匹に、戻ってきた伝助が、忍者刀で斬り付けながら、小鬼を蹴り上げた。刀を使わずに戦える陸奥流だからこそ出来る、COのダブルアタックだ。
「「「ゴブゴブブ〜」」」
手傷を負った小鬼達は、臆病な彼ららしく、あっさりと降伏してきた。そのままにしておくわけにも行かないので、穴に転がしておく事にする。
「さて、乗り込みやすかねぇ」
仲間が戻ってこない事で、中の小鬼達も、警戒して出てこないだろう。そう判断した伝助は、残りの小鬼達がいるであろう裏道へと向かう事を提案するのだった。
薄暗い裏道は、昼間にも関わらず、灯りが必要な程だった。
「出来れば、入り口付近で、戦いたかったんでやんすがねぇ‥‥」
伝助がそう言ったものの、それは難しいようだ。
「気付かれやすさより、戦いやすさの方が重要だと思います」
灯り持ちの香月が、慰めるようにそう答えている。
「案ずるな。裏道は1本道ゆえ、我等がこうして追いかけていけば、反対側に逃げるであろう」
そこへ、上杉がもっともらしい事を言う。小鬼達は、臆病な生き物だが、悪知恵も回る。外へ行った連中が帰ってこない。提灯持った冒険者が迫ってくる。とすれば、逃亡するのは必至‥‥と言う判断だ。
「いたぞ」
その証拠に、しばらく歩くと、小鬼達に追いついていた。ちょうど、反対側の出口付近だ。
「ゴブ、ゴブゴブ!」
やはり、手には錆びた斧を持っている。1匹、体がひと回り大きい小鬼が居た。
「芝丸、上杉さんと香月さんを頼むでやんす」
おそらく、そいつが頭目だろう。そう判断した伝助は、愛犬の芝丸を、術師の護衛に残し、忍者刀に手をかける。
「担当は1人1匹と言った所かな」
「あっしはあの大きいのを倒すでやんす。春日乃さんは、残りを頼むでやんすよ」
だいぶコツのつかめてきたらしい春日乃に、伝助はそう頼む。そして、忍者としての敏捷さを生かして、即座に地面を蹴った。
「せぇいっ!」
気合と共に、伝助が、大きな小鬼のどてっぱらに、拳を突き入れた。空いた右手で、忍者刀を振り下ろし、オマケとばかりに、頭突きまで食らわせている。CO、ダブルアタックEX。別名‥‥トリプルアタック。
「逃がしませんっ」
頭目がやられている事に、子分達が浮き足立った。踵を返した小鬼に、提灯を置いた香月が、金剛杵を手に、飛びかかる。貧相な体格の小鬼は、標準的な体格の女性でも、押しのけるのは難しいらしく、お尻に敷かれて、もがいている。動けないそこへ、上杉がサンレーザーをお見舞いしていた。
「ああっ。もう一匹が!」
「任せろっ!」
残った一匹は、最後に汰樹が、日本刀で切り伏せる。こうして、小鬼達は裏道から出る事無く、一網打尽にされるのだった。