冒険者を夢見る少年
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:HINA
対応レベル:1〜5lv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:03月25日〜03月28日
リプレイ公開日:2009年04月01日
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●オープニング
冒険者たちが賑わいを見せている冒険者ギルド。
受付嬢は、この頃気になっていることがあった。
年齢は十歳前後であろうか。金髪の短い髪に青い眼を持った少年が、毎日のように冒険者ギルドに出入りしているのである。
ギルドに屯《たむろ》している冒険者たちを遠巻きに見ているのだ。その眼差しは羨望に満ちたものだった。
「坊や、いつも何をしているの?」
椅子に座っている少年に、受付嬢は思い切って声をかけてみる。
「僕、大人になったら冒険者になりたいんだ。すごい強い冒険者になるんだ。一度でいいから闘っているところを見てみたいんだよ。誰か連れていってくれないかなって思ってさ」
少年の名はマリオット。どうやら闘いを見学したいらしい。
「坊やが危険にさらされることだってあるのよ」
受付嬢は諭すように言った。
「大丈夫だよ。冒険者が守ってくれるんだ」
なんて楽観的なんだと受付嬢はずっこけそうになった。
「そうねえ。連れて行ってくれる冒険者なんているかしらね」
受付嬢は、最近ポイズン・トードが単体で現れるという噂を冒険者たちが話していることを思い出した。
出現場所はギルドからそんなに遠くない水辺である。
少年は遠巻きで見ていれば、被害に遭う可能性も低いはずである。いや、少しくらい危険な目に遭ったほうがこの子のためかもしれないと思ったりもする受付嬢であった。
「じゃあ、冒険者さんたちに頼んでおきましょう」
「本当?うわぁ、すごい楽しみだなぁ」
少年は目を輝かしている。
何とか冒険者に頼まなければと受付嬢はため息をついた。
●リプレイ本文
「将来、冒険者になりたいから闘いを見学してみたい。何と好奇心旺盛な少年だ」
ジン・アツシ(ec6309)は呟いた。
少年マリオットが住んでいる村へ、マリオットを迎えに行く冒険者たち。
「そうですね。男の子が冒険に憧れるのは仕方のないことでしょう」
188?pの長身ながら、上品に見受けられるラファエル・シルフィード(ec0550)は、丁寧に言葉を返す。
「好奇心があることは良いことですが、危険と隣り合わせということもわかってほしいです」
スト・ハン(ec5617)は、マリオットの好奇心を理解しつつも、冒険は常に危険が伴うことも理解して欲しいと思った。
「ポイズン・トードの退治も兼ねていますからね。あ、ポイズンという名がつくからには毒があるのでしょう」
パチンと指を鳴らし、神名田少太郎(ec4717)は、動物万能スキルでポイズン・トードを思い出したようだ。少太郎は志士らしからぬ出で立ちである。上着に半ズボン、そして、ブーツ。この格好から、誰が少太郎を志士と思うだろうか。
「あ、村の入口に少年が立ってますよ」
シルフィードの一声に、全員が村の入口に注目する。そこにはマリオットと見られる少年とマリオットの両親と思われるであろう中年の男女が立っていた。
少年はこちらに気がついたようで、大きく手を振っている。
「マリオットか?」
少年に近づくと、アツシは少年に名を確認する。
「うん。冒険者の皆さん、よろしくお願いします!!」
元気な返事が返ってきた。
「皆さん、ご迷惑をおかけすると思いますが、どうぞうちのマリオットをよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げるマリオットの両親。
マリオットを預かり、ポイズン・トードとの闘いに挑むという責任感を冒険者たちは改めて感じた。
「私たちにお任せください」
両親を安心させるように、ハンは優しく言葉をかけた。
「では、行きましょう」
少太郎がマリオットの背中を押し、冒険者たちは歩き出した。
受付嬢から聞いたポイズン・トードの出現場所はそう遠くはない。
「この辺って結構暖かいですね。もっと寒いかと思っていました」
春の訪れだろうか。少太郎が額ににじんできた汗を拭う。
目を爛々と輝かせ、まるで目に入る景色そのものが新鮮という感じのマリオット。
しばらく歩くと、水辺に辿り着いた。ここにポイズン・トードが現れるはず。
「マリオットはちょっと離れたところにいましょう」
マリオットに、あまり水辺に近づかぬよう指示するシルフィード。少々、不満顔のマリオットだが、すごすごと遠巻きに冒険者を観察している。
ボッチャーン、ボッチャーン。
水しぶきをあげて現れたのは、見るからに毒々しいポイズン・トードであった。
少太郎はマリオットに近づき、マリオットが前に出ないように制止するような体勢を取った。マリオットは初めて見るモンスターに目を見開き、足ががくがくと震えている。
先制攻撃を仕掛けたのは、手から稲妻を一直線に走らせるシルフィード。
バリ、バリバリ。バチャン、バチャン。
ポイズン・トードは、いきなり身体を走った痛みに驚き、そして悶えている。しばらく経つと、ポイズン・トードは攻撃態勢に入った。
「そうはさせますか!!」
臨戦態勢をとったハンが、ポイズン・トードの腹をナイフで切り裂く。
ブシュッ!!
返り血を浴びぬよう、ハンは素早く身を引く。何で毒に冒されるか分からない危険性があるためだ。
ヒューン!
少太郎が投げた氷でできた円盤がポイズン・トードに、息をつく暇なく追撃を加える。
ポイズン・トードから距離を置いたハンが弓を引く。
マリオットは何も口にしないまま、ただ、ただ闘いを見つめるだけだ。
ボッチャーン。
ハンが放った矢がポイズン・トードの頭部に刺さり、致命傷となったようだ。ポイズン・トードはぐしゃりと身体を崩していった。
「もう大丈夫だろう」
ポイズン・トードが動かないことを確認するアツシ。
冒険者たちはマリオットの身に危険が及ばなかったことに、ほっと肩を撫で下ろした。
「すごいんだね。闘いって」
目の前で繰り広げられた闘いに、マリオットは感激している。
「今回、私たちは無傷で終わりました。でも、今まで冒険してきた仲間たちの中には傷を負う者もいたのです。ポイズン・トードだって、下手をしたら、私たちは毒に冒されていた可能性があったでしょう」
マリオットに冒険者であるが故の危機を懇々と諭すシルフォード。
決して、闘いは格好がいいだけではないのだ。それを冒険者たちは教えたかった。
「ポイズン・トードを見て、本当は怖かったんだ。でも、お兄さんたちの勇気はすごいと思った。僕、お兄さんたちみたいになれるように頑張るよ」
手を握りしめ、マリオットは決心した。
「これをあげるよ」
少太郎は一枚の絵をマリオットに渡した。
そこには勇敢な冒険者たちの闘う姿が描かれていた。
「ずっと大事にする。そして、いつかお兄さんたちと一緒に冒険するよ!!」
マリオットは絵を握りしめ、目を輝かせた。