耳職人の願い

■ショートシナリオ&プロモート


担当:HINA

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月13日〜04月18日

リプレイ公開日:2009年04月22日

●オープニング

「なんか困ったことでも?」
 冒険者ギルドの受付嬢があまりに困った顔をしているので、その様子を見かねた冒険者は声をかけた。
「ええ。何というか、依頼書作りがちょっと」
 どうやら依頼書を書くのに困っているようだ。
「どんな依頼?」
「あの、耳職人と名乗る人が現れまして、本物の皮で耳を作ってみたいと」
「耳職人!?」
 冒険者は身を思わず乗り出した。
「いや、自称耳職人です。おそらく個人の趣味だと思うんですけどね。ここに現れたときに、ネコの耳と思わしきものが頭についてました」
 受付嬢は苦笑した。
「本物の皮かぁ」
 冒険者は皮を作れそうなモンスターを思い浮かべる。
「まあ、ドッグか、コヨーテといったところでしょうか」
 受付嬢は遠い目をしている。
「耳にされたモンスターが浮かばれることを祈るばかりだな」
 冒険者は、そう願うしかなかった。
 受付嬢はいつまでも困っていても仕方がないので、依頼書を書き始めた。
【冒険者募る!ドッグの皮を剥いできてちょーだい☆】
 ちゃかして書いてみた。いや、真面目に書けなかったのだ。

●今回の参加者

 ec6111 セシル・アメン(30歳・♀・僧侶・シフール・インドゥーラ国)
 ec6401 エレーヌ・カーン(28歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 ec6406 バジル・レジスター(22歳・♂・ウィザード・パラ・イギリス王国)
 ec6407 エリック・ストーマー(23歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

「耳職人か。僕、ちょっと憧れるんだよね。どんな人なのかな?」
 バジル・レジスター(ec6406)は、依頼内容に目を爛々と輝かせている。
「趣味の範疇じゃないだろうか。そのために、モンスターを殺生するとは些か心が痛むな」
 意気揚々としているレジスターを尻目に、エリック・ストーマー(ec6407)は遠い目をしている。
「とりあえず、耳職人の家、訪れよう」
 レジスターの提案にストーマーは同意し、冒険者ギルドを訪れ、耳職人の居場所を聞き出した。
 レジスターとストーマーが辿り着いたのは、村の奥の辺鄙《へんぴ》な場所にある古ぼけた一軒家であった。
 レジスターが扉を叩くと、家の中からぬっと顔を出したのはいい歳をしたおっさんである。頭の上にはフェイクファーで作ったであろう猫耳がついている。
「ワシの願いを叶えてくれるという冒険者方かな?」
「ええ、まあ」
 ストーマーは、猫耳から視線をそらさず、いや、そらせないまま答えた。
「まあ、家の中に入りたまえ」
 どこか偉そうな猫耳おっさんが、レジスターとストーマーを家の中へと案内した。おっさんが背を向けた途端、二人の視線はおっさんの尻に集中した。
 おっさんが履いているズボンの尻に、うさぎの尻尾のような可愛らしいポンポンがついているのである。
 ストーマーは思わず眉間に皺を寄せる。それとは対照的にレジスターは、何かに芽生えたような顔をしているのだ。
「あの、どこらへんで、ドッグがいるか分かるか?」
 ストーマーはあえて平常心を保ち、おっさんに尋ねる。
「近くの森の近くにうろついているって聞いたことあるな。俺じゃ狩れないから頼んだ訳なのだ」
 おっさんは胸をはり、答えた。
 家の中はいろいろな耳が大切そうに飾られている。耳だけではなく、着ぐるみも製作しているようだ。
「これ、どうやって作っているのかな?」
 レジスターは興味津々に尋ねる。
「全部、手縫いなのだ」
「へえ、手縫いなんだね」
 偉く感心しているレジスター。
「じゃあ、そろそろ狩りに出かけるか」
 ストーマーはコホンと咳払いをし、レジスターをおっさんの家から連れ出した。
「僕にも、作ってくれないかな?」
 レジスターはおっさんの耳コレクションを見て、えらく感激したようだ。
「おまえ、これから狩りに行くんだ」
 どこか夢心地なレジスターをストーマーはたしなめた。
「しかも、森はそっちじゃない」
 あらぬ方向へ歩いていこうとするレジスターをストーマーは連れ戻す。
 村から少し歩いたところに、おっさんが言っていた森があった。
「罠でも仕掛けるか」
 ストーマーの提案に、レジスターは地面の柔らかいところを探し出し、ひたすらスコップで掘り出した。
「ここ、けっこう掘れるんだね」
 地面の柔らかさに感動しているレジスター。ひたすら掘り続けたレジスターのおかげで、落とし穴が完成した。
「後は待つだけだな」
 ストーマーはレジスターと共に、落とし穴から少し離れた木陰に隠れて、ドッグが現れるのをじっと待った。
 数時間は経過しただろうか。
 ワンワンッ。
 ドッグの鳴き声に、ストーマー達は木陰から様子を見守った。
 現れたドッグは二匹であった。
 ストーマーとレジスターはドッグに近づき、落とし穴への誘導作戦に移った。
「おーい、こっちだよ〜」
 レジスターはドッグの注意を引きつつ、落とし穴へと導いていく。
 ストーマーは、少し離れたところからドッグに向かって、弓を放った。
 だんだん、弱っていくドッグ。どうやら落とし穴に落としこむ前に仕留められそうだ。
 ストーマーはドッグへ近づくと、素手で二匹に攻撃を仕掛けた。目にも止まらないような早業で、ドッグを仕留めるのに成功した。
「皮を剥ぐのは俺だ」
 ストーマーの言葉に、レジスターは何故という表情をする。
「俺はレンジャーだからだ」
 ストーマーは、レジスターがこれといって反論をしなかったので、ドッグの皮を剥ぎ始めた。
「この肉、もったいないし食べちゃおう!」
 レジスターはストーマーが皮を剥いだドッグを生のまま食べ始めた。
「新鮮なまま食べる生食は立派な調理法だよっ」
 ストーマーにも、ドッグの生肉を差し出したが、あっさり拒絶された。 
 レジスターが生肉で腹を満たすと、剥いだ皮を冒険者ギルドへ届けた。
「ありがとうございました」
 受付嬢は丁寧にお礼を述べた。
 これで依頼の内容は終わったと安堵しているストーマーの横でレジスターは何かを企んでいるようだ。
「僕も耳作ってもらえるかな?」
 レジスターは、冒険者ギルドからそのまま耳職人のおっさんの家へ向かった。
 耳職人のおっさんが家の扉を開けた途端、
「僕にも耳を作ってくれないかな?」
 レジスターはおっさんに頼み込んだ。
「シャァー!!」
 おっさんは奇声をあげ、レジスターを威嚇した。
「お願いー」
 威嚇されても、めげないレジスター。
「ドッグの皮は俺専用なのだ」
「僕、めげない。また、来ますから」  
 おっさんとレジスター。これから仲良くなることはあるのだろうか。