3年目の浮気
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:HINA
対応レベル:1〜5lv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月19日〜09月24日
リプレイ公開日:2008年09月27日
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●オープニング
三年前に十八歳も年下のリリーという女房をもらってのう。それはそれは若くて美しい女房なのじゃ。
しかし、最近、夜中にふと目を覚ますと、一緒に寝ていたはずのリリーがいなくなっているのじゃよ。それが何回も続いておるから、家のメイドに聞いてみたのじゃ。
最初は知らぬ存ぜぬで通しておったが、問いただしたところ、リリーが夜中に身綺麗な格好で浮かれた顔をして、うちの納屋へ向かっているという話だったのじゃ。
うちの納屋は家から歩いて十分ほどのところにある。
もしかしたら、若い男と会っているのかもしれぬ。でも、リリーには直接聞けないでいるのじゃ。
若い男と会っていても、それは真実として受け止めよう。
リリーがわしの財産目当てで結婚したとは思えないからのう。何かの気の迷いで浮気しているのかもしれぬ。
納屋には外から覗けるほど窓があるのじゃ。真相を確かめにいくほどの勇気はわしは持てぬ。
誰か、真相を調べてくれぬか。
●リプレイ本文
「リリーさんはいつもきれいでねぇ。よくランチを一緒にするけど、とてもおいしそうに食べるのよ。私もリリーさんみたいに太らない秘訣が知りたいわ」
リディア・レノン(ec3660)が、近所のとてもぽっちゃりとした奥さんにリリーについて聞いてみたところ、こんな返事が返ってきた。リリーは近所では評判が良いようだ。
昼間のうちに、リリーの近所での評判や、依頼主のご主人、そして使用人に話を聞き、納屋を調べておこうと四人は話し合いの結果、決めたのだ。
「ご依頼を承りましたが、浮気疑いの他に何か心当たりはありませんか」
アイリス・リード(ec3876)は、ご主人の目をじっと見つめる。
ご主人は心からリリーを愛しているとアイリスは読み取った。
「そうじゃの。晩酌にもよく付き合ってくれるし、これといってないんだが」
「然様ですか」
「夜中にいなくなるのが、本当に不安でな。どうぞよろしく頼む」
「お任せ下さい」
アイリスはご主人に安心してもらえるように冷静に言葉を放った。依頼を受けた以上、安心して任せてもらったほうがいい。アイリスはそういった心構えをいつも持っていた。
ソペリエ・メハイエ(ec5570)は、家の裏に依頼主の家の使用人を呼び出し、家の物資の減少があるかどうか聞いた。
「そういえば、タオルをかなり洗濯しているような気がしますね」
「タオルですね。ありがとうございます」
ソぺリエは丁寧にお礼をした。タオル‥‥一体、何に使っているのだろうか。
一方で、リディアとカメリア・リード(ec2307)は、昼間のうちに納屋を調べに行った。納屋の奥には、姿見と化粧台が置いてある。化粧台の上にはたくさんの化粧品が溢れんばかりに並んでいる。
「これは浮気の線ではなさそうですよね」
カメリアが困ったように呟く。リディアも首をかしげている。
納屋の窓は大きく、中の様子を覗けることを確認した。夜はリリーが出てくるまで、納屋の裏でリリーを待ち伏せすることにしようと二人は決めた。
日が落ち、四人が納屋の裏で落ち合った。
四人が調べ、考えた結果はこうだ。
リリーは近所でも評判がよく、ご主人の晩酌にも付き合っている。そのうえ、浮気をしているなんてことがあるのだろうか。もし、浮気をしていても、浮気をしていなくても、リリーには調べていたことをリリーには黙っていよう。浮気の線については明らかに薄いと考えられる。一部始終を確認し、翌朝に依頼主であるご主人に報告する。安心してもらえる結果になるといいのだが‥‥。
そして、ついに夜がやってきた。
四人は納屋の裏で待機している。
リリーが納屋へ向かってきたのは午前一時を過ぎた頃であった。
ソベリエが忍び歩きで納屋の中の様子を伺ったが、リリーは一人のようだ。アイリスが優良聴覚を活かしたが、なにも聞こえてこない。
「ソペリエさん、肩車してもらっていいですか」
「どうぞ」
カメリアがソベリエの肩に乗り、納屋の窓を覗く。
リリーは、まず姿見のまえで自分の体型を事細かくチェックしている。二の腕の肉がついていないかどうか、お腹が出ていないかどうか。
体型チェックが終わると、化粧台の前に座り、化粧の練習をしているようだ。リリーの顔つきはどこかしら暗く見える。自分の化粧の腕に納得がいかないようだ。
化粧をしては、納屋の水場で化粧を落とし、また化粧を自身の顔に施している。
ソペリエが貴族万能スキルに含まれるナンパスキルの中の化粧を駆使して、リリーの化粧の腕前を上げる手伝いをすると、みるみるうちにリリーの化粧の腕前が上がってきたようだ。リリー自身も、自分の化粧の腕前の上がったことにびっくりしている様子だ。
カメリアはソペリエの肩から降り、仲間達に報告した。
「リリーさん、ランチとか晩酌などの付き合いでの体型が崩れるのが嫌だったのかしら。それと、いつまでも美しくいたいという気持ちがあるのね。さもなければ、こんな時間に一人で体型チェックや化粧の練習をするわけないし」
アイリスは女心を察するかのように呟いた。
翌朝、リリーがいない隙に、依頼主であるご主人に一部始終を報告した。
「そうであったか。多少、ぽっちゃりしてもいいものだがのう。女心というのはわしにはよく分からぬものじゃのう。とにかく、何をしているか分かって安心したぞよ。どうもありがとう」
「‥‥末永くお幸せに」
「ご夫婦が、これからもずっと仲良くしていけたら、とっても素敵だと思います」
カメリアとリディアが次々にご主人に話しかける。
「ご主人が自分は歳だからと、引いてしまわれる、そんなお気持ちを奥様が知ったら、‥‥悲しまれるのではないかと」
アイリスは依頼主を諭した。
「本当にそうじゃのう。四人には感謝しておる。わしの歳のせいで、若い男に‥‥なんて考えていたことは、リリーに失礼じゃったな。リリーが美しくいようという努力で睡眠不足で身体を壊したら、元も子もないのに‥‥。そのことは少しわしも考えなくてはならんな。本当にどうもありがとう」
依頼主はほっとしたような顔つきで、家に戻っていった。
四人の冒険者たちは、依頼を受けたときは、浮気であったらどうしようという気持ちであったが、リリーのいつまでも美しくいようという努力に感激し、そして、この夫婦の末永い幸せを祈り、街へ帰っていった。