●リプレイ本文
依頼を受けた四人の冒険者。
目撃者の情報によると、強盗犯は背中に深い傷を負っているとのことだ。
ということは、強盗実行時には上半身、または全身裸だということなのだろうか。
「秋も深まるこの時期に服を着ないとはな。理由あっての行動か、ただの変態か」
レオン・クライブ(ea9513)が不可思議そうに呟く。
「理由あっての行動であれば、どういった理由でしょうか」
黒宍蝶鹿(eb7784)がレオンの呟きに答えた。
「兎にも角にも、村に行ってみないことには分からないであろう。自分が先行して行こう」
陰守森写歩朗(eb7208)が、颯爽とフライングブルームで村に向かう。もちろん、忍犬が追いつける速度でだ。
陰守は村へ着くと、忍犬を連れて、強盗が起きたという家を訪ねた。どうやら、昨晩はこの村で強盗事件は起こっていないらしい。
「背中の深い傷の他に、何か特徴はあったか」
「暗がりでよく分からなかったが、金髪の長髪だったような気が」
強盗にあったという家主が答える。
(「金髪の長髪か。この村は大きくない。もし、村にいるならば、ある程度絞り込めるであろう」)
一方、遅れて村に着いた三人は、それぞれ行動を開始した。
レオンは旅人を装い、宿をとり、待機。強盗犯にこちらの行動を気づかれては面倒であるからだ。
セフィード・ウェバー(ec3246)は、村人に話を聞いて回ることにした。
僧侶万能の対人鑑識スキルを使って、相手の反応を見極めようとしたが、怪しいと思われる者はいなかった。
「強盗犯に関して、何か気づいたことはないか」
「そういえば、金銭に関しては被害が少なく、食材を食い散らかしているようだのう」
村人はセフィードの質問に対して、思い出すように答えた。
黒宍は、村の長老と一緒に、村を捜索することにした。
「あの木陰にいる若者はあまり見たことがないぞ」
長老が目を細めて、金髪の長髪の若者を見ている。
黒宍はそっと木陰に近づき、若者に声をかけた。
「こんにちは」
声をかけながら、そっと若者の背中をさする。
「いきなり何ですか!?」
若者はびっくりしたように飛び上がり、警戒している。
「いえ、何でもありません」
「いきなりやめてくれよな」
若者はぶっきらぼうに言い、その場を去った。
黒宍の手には背中の深い傷の感触が確かに残っている。
(「あの者か?」)
黒宍は一人ではその若者を拘束することができないと考え、行動は何も起こさなかった。若者がどこか行ってしまわないように確認しつつ、陰守に怪しい者がいたことを伝える。
黒宍はその若者に顔ばれしているため、陰守だけに若者に近づいてもらった。
陰守はSCROLLofエックスレイビジョンを使い、その若者の背中を透視した。確かに背中に深い傷があった。
(「背中に深い傷があるからといって、まだ手を出すのは早いだろう」)
夕方、四人は落ち合い、これまでの情報を交換した。
もう犯人には目星がついている。あくまで現行犯逮捕でいくつもりだ。
陰守から村長に各家々にランタンなどを吊る下げてもらうようにお願いしてある。夜の死角をなくすためだ。
「今夜、強盗犯は行動を起こすだろうか」
レオンは考えあぐねている。
「食べ物に困っているようなので、起こす可能性は高いかと」
セフィードが答えた。
いよいよ、日が落ち、夜も深まってきた。
村には各家々にランタンが灯されている。
カシャーン。
窓ガラスが割れる音が響いた。
四人は現場へ急行する。
「逃すな、捕らえろ!」
陰守が忍犬に声をかける。
割れた窓から入ると、金髪の長髪に背中に深い傷を負っている若者がいた。上半身だけ裸である。
「な、なんだ。お前らは」
レオンが初級のサンダーボルトで先制する。
「俺の魔法で死ぬことはないだろうが、死ぬほど痛くても知らんぞ」
稲妻が一直線に若者に走る。
「痛っ!」
若者がうずくまる。
間髪をいれず、陰守がスタンアタックを放つ。
もはや、若者は気を失いかけている。
セフィードがコアギュレイトを高速詠唱し、若者を呪縛し、動けなくした。
「なぜ上半身裸なのだ?」
レオンが動けなくなっている若者に聞く。
「傷を見せたほうが箔がつくと思って。今、職がなくて、飢え死にしそうなんだよ。しかし、痛いよ。どうにかしてくれよ」
「ちゃんと職につくと約束するか?」
「するよ、するよ。もう十分だよ。許してくれよ」
セフィードがテスラの宝玉を使い、若者の傷を回復した。
「もう二度と強盗などしないな?」
陰守が念を押す。
「もう懲り懲りだよ。明日から職を探すよ」
「ならば、いい。家主に謝ってから、去れ」
若者は家主にガラスを割ったことを詫びている。家主はびっくりした様子でおどおどと対応している。
これで強盗犯の発見、捕獲に至った四人だが、誰もが職にあぶれた若者であるとは想像もしなかったであろう。そのうえ、上半身裸で強盗する理由が背中の深い傷で箔をつけたかっただけとは。
若者が二度と過ちを繰り返さぬよう願わんばかりだ。