薬草を求めて
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■ショートシナリオ
担当:日向葵
対応レベル:1〜4lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 0 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月26日〜03月03日
リプレイ公開日:2005年03月06日
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●オープニング
冒険者ギルドに足取り軽くやってきたのは、少なくとも冒険者という風体には見えない少女だった。
しかしここに来るのは慣れているようで、にこにこと笑顔でカウンターの親父のところへと歩いていく。
「こんにちわーっ。またお願いにきましたあっ」
「久しぶりだな、今回はどうした?」
ぱっさと、やはり慣れた様子で地図を広げる少女の職業は薬を作ることである。
「ここんとこの森に生えてる薬草がなくなっちゃったんです」
「そんじゃ、依頼はその薬草の採取でいいんだな?」
彼女は常連であるため、親父の対応も手慣れたもので、軽く地図の場所を確認して返す。
「いえ、それが……」
「ん?」
「この草、良く似た別の草と間違われることが多いんです。だから今回は、私も一緒に行って確認したいと思うんですけど」
「今回は採取じゃなく護衛ってわけか」
「はい〜。やっぱり、素人がモンスターいっぱいのトコに行くのって、無謀ですかねえ?」
一応聞いてくる彼女に、ギルドの親父は苦笑する。
無謀っちゃ無謀だが、世の中その無謀をやってのけるヤツは山ほどいる。もちろん、冒険者という護衛を雇ってだが。
「ま、おまえさんが良いならそれで良いんじゃないか? 護りながら戦うってのが護衛の仕事だしな」
「そうですかあ? それじゃあ、おねがいしまーすっ」
ぺこんっと頭を下げて仕事の詳細を話すと、少女は入ってきた時と同じように軽い足取りで、家の方へと駆けて行った。
●リプレイ本文
仕事を受けた冒険者たちは、早速、依頼人であるというキアラの家までやって来た。仕事についてのあらましはすでにギルドで聞いているが、森についての情報を集める前に依頼人本人にも会っておいた方が良いと判断したためだ。
「よろしくお願いします〜」
やってきた冒険者たちに、キアラはどこか間延びした口調で言ってペコンと頭を下げてきた。
「こんにちは、初めましてキアラさん。エリーヌと申します」
微笑みとともに頭を下げて返したのはエリーヌ・フレイア(ea7950)。続いて他のメンバーたちも、名を名乗り。
そのまま依頼の話に突入しようとしたところでキアラがあっと声を上げた。
「ごめんなさい、玄関先で。とりあえず入ってくださいな〜」
部屋の中に招き入れられた一行に、キアラが依頼の話をしてくれる。護衛だのという話はギルドから聞いているだろうと言うことで、採取すべき薬草についての話が中心だ。
「一番欲しい‥‥今回の目的はこれなんですけどぉ、ついでで良いんで見つけたらとっておいて欲しいのもあるんです」
ずらりっと並べられた薬草の数々と、今回の目的であるという薬草の図解。中にはどこで手に入れたのか、相当珍しいものもあったりする。
それに感心したふうな顔をしたのはアディアール・アド(ea8737)であった。
「さすがですねえ」
「あらぁ、わかるんでか?」
量に驚いたようには見えないアディアールの言葉に、キアラが嬉しそうに笑う。
「ええ。私も薬草師ですから。薬草の生えている様子を実際に見て自分で集めるのは楽しいですよ」
「そうですよねえ。私も薬草採取に行くの好きなんですけど、私ってぇ、どーもそういうの向いてないらしくって」
「向いてない?」
思わずといった感で漏れたレング・カルザス(ea8742)の問いに、キアラは困ったように苦笑した。
「あ、もしかして方向音痴、とかなのかな?」
シルフィーナ・ベルンシュタイン(ea8216)の言葉には首を横を振って、キアラは、
「私、運動神経悪くって。森の中とか行くと、しょっちゅうつまづいちゃうんですぅ」
アハハ、と声に出して。やはり、困ったように笑ったのだった。
早ければ早いほど良いという話だが、一行が依頼を受けてキアラ宅に来たのは夕刻近く。今から出るのはどうかということで、出発は翌朝ということになった。
「なら、今日のうちに森について聞いておきましょう」
「そうねえ。少しでも知っておいたほうが有利になれるものね」
マクファーソン・パトリシア(ea2832)とクラウディ・トゥエルブ(ea3132)がそう言い出し、森についての情報収集を行い。
そして翌朝一行は、森に向かって出発した。
◆ ◆ ◆
キアラは、体力は、あった。短いとは言えきちんと旅程についてこれるくらいには。
しかし。
「ご、ごめんなさい〜っ」
「大丈夫ですか?」
森に入ってから、それは顕著にあらわれはじめた。本人も言っていたことだが、確かに、キアラはよくころんだ。
まあ、その辺のフォローも護衛の仕事の一環と言えば一環だが。
キアラの傍にクラウディとアディアール。主にモンスターの警戒を担当しているのがシルフィーナとレングとマクファーソン。
「今のところ、近くにモンスターはいないみたいね。この先、少し開けたところに出るわ」
ヒュッと空を飛んで戻ってきたのはエリーヌだ。シフールであるエリーヌは、一行より少し先に出て、斥候役にまわっていたのだ。
「それじゃあ、そこで一旦休憩かな?」
にこりと笑顔で告げたのはシルフィーナ。仕事というより半ピクニックな雰囲気だが、もちろん警戒を怠ったりはしていない。
「お弁当もちゃんとあるわよ」
なにやら嬉しそうに告げたのは、マクファーソン。彼女は料理を作って人に食べてもらうのが趣味なのだ。
一応、モンスター出没地域を歩いているのだが、一行の雰囲気はなかなか呑気なものだった。
「そうですね。キアラさんは一般の人ですから、危険な場にはあまり慣れていないでしょうし、このくらいでちょうど良いのかもしれませんね」
上品な笑みを浮かべてクラウディが言う。
キアラがコケたり躓いたりで歩みは遅くなっているものの、一行は総じて順調に、森の奥へと歩を進めていた。
それを見つけたのは、お昼も終わってまたさらに森の奥へと進んでいた時。
「あーっ、あそこです、あれですぅ!」
それなりに遠くにあるのだが、キアラはそれを指さしてしっかり自信満々に断言した。
「とすると、彼らにどいてもらわなければいけませんね」
キアラの指差した先を見てアディアールが呟く。
薬草が生えているのは森の中にある泉の近くで、その周囲にはモンスターが数体たむろしていたのだ。
「一体だけだったらあたしのスリープで眠らせられるんですけど‥‥」
モンスターの数は三体。
「それじゃあ、一体はそれで片付けて‥‥残りは分担して一気に倒すか?」
遠距離攻撃組と近距離攻撃組がちょうど数名ずついるわけだし。狂化の可能性を抱えるレングとしては、短期決戦で一気にケリをつけたいところ。
反対意見もなかったことで、キアラには少々下がってもらって、一気にモンスターに向かって攻撃を放つ。
水辺でのんびりしていたところの攻撃に、モンスターたちは対応が遅れたらしく、決着がつくのは早かった。
「はふ〜。さすがですねぇ」
戦闘直後の緊張感をぱっと打ち消し、キアラがにこっと笑って早速薬草へと手を伸ばす。
「えーと、そんじゃあ、ついでなんで。これと似たのか、先にお見せした薬草と同じの見つけたら教えてくださいね」
「あ、そうそう。キアラさんの所望以外の薬草、毒草があったら少しいただいてもよろしいですか?」
頷きかけたアディアールはふと思い出したように問う。
「はい、構わないですよ〜」
「山菜もついでに摘もうかしら。あとで皆さんにも振る舞いますね」
「うわあ、楽しみ。ありがとう」
マクファーソンの言葉に、シルフィーナが元気に答える。
‥‥モンスター出没地区での会話である。
なかなか呑気な雰囲気だが、もしかしたら殺気立たないその雰囲気が良かったのかもしれない。
以降もこれといったモンスターには出会うことなく、一行は無事にたくさんの薬草を採取し、街へと帰還したのであった。