蔓延する病

■ショートシナリオ


担当:日向葵

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 20 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月19日〜03月24日

リプレイ公開日:2005年03月27日

●オープニング

「すみません、助けてくださいっ!!」
 バタバタと駆け込んできた青年の様子は、ただ事ではなかった。
 おそらくほとんど休まずに駆けてきたのだろう、息も絶え絶え、体中汗がびっしょりという状態だ。
「ともかく落ちつけ。何があったんだ?」
 蒼白な顔をした青年に、ギルドの親父はあえてゆっくりとした口調で声をかける。
 しかし親父の努力は、たいした成果をもたらさなかった。
「とにかく、大変なんですっ!」
「だから、何がだ」
「村が、大変なんですってば!」
「だから、事情を話してくれ」
 ……似たようなやりとりを何度も繰り返し、ようやっと落ちついた青年はいまだ荒い息の下ではあったが、何があったのかを話し出した。

 青年の住む村が、数日前から伝染病に襲われたのだ。
 その伝染病は珍しい病ではあるものの、薬も治療法もきちんとわかっている病だ。
 だが不運なことに、その時その村には問題の伝染病に効く薬がなかったのだ。
 そのためあっという間に病が広まり、まだ感染していなかった青年が慌てて助けを求めに来たのだった。

「薬になる薬草がある場所もわかっています。どうか、薬草をとってきてもらえませんか?」

●今回の参加者

 ea5855 ジョエル・バックフォード(31歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea6480 シルヴィア・ベルルスコーニ(19歳・♀・ジプシー・シフール・ビザンチン帝国)
 ea6942 イサ・パースロー(30歳・♂・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 ea7950 エリーヌ・フレイア(29歳・♀・ウィザード・シフール・フランク王国)
 ea8737 アディアール・アド(17歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea9449 ジム・ヒギンズ(39歳・♂・ファイター・パラ・ノルマン王国)

●リプレイ本文


 ちょうど良いタイミングで仕事を探しにギルドにやってきた冒険者達がいた。
 青年の必死の懇願もあり、冒険者達ももとより仕事を探しにギルドに来たのだ。仕事を受けるという話はトントン拍子に先に進んだ。
「大変だったわね。でも、あなたは大丈夫なのかしら。発病までの潜伏期間はどれくらいなの?」
 早く薬をと急かす青年を宥めつつ、冷静に問い掛けたのはジョエル・バックフォード(ea5855)だ。
「え?」
 自分のことなど考えてもいなかったのだろう、きょとんとした顔をする青年を前に、イサ・パースロー(ea6942)も同意を示して頷いた。
「そうですね‥‥まだ発病していないだけかもしれませんから、予防は必要ですね」
 しかし問題は、その予防方法なのだが‥‥。わかっていて、しかも実行できるものであれば、あっという間に村に広まることなどなかっただろう。
 青年の困ったような表情にすぐにそれを察したエリーヌ・フレイア(ea7950)は、推測だが半分以上は確信している問いを投げかけた。
「その薬草は病を治すだけじゃなく、予防する事も出来る?」
「あ、はいっ。というか、他の予防方法って、ないんですよ‥‥」
 青年の答えに、アディアール・アド(ea8737)の表情が少々硬いものになる。
「ある意味時間勝負の依頼ですので、急いで出発しましょう。ただその前に、問題の伝染病に効く薬草や、せめて熱だけでも抑えられる薬を手に入れられないものでしょうか」
「ここで探してみるか?」
 そう言い出したのはジム・ヒギンズ(ea9449)だ。
 確かに、ドレスタットは大きな町だし、村にない薬でもここにある可能性は大きいだろう。
 そこで一行は、急ぎ町の薬草師や医者をまわり、それから出発することになったのであった。





 なんとか熱さましの薬は手に入れられたが、問題の伝染病に効く薬は生憎切らしているのだと言うことで、結局一行はそのまま出発する事になった。
 薬草があるという山の地図をもらい、大まかな地理を教えてもらう一方で、伝染病についての話も聞いた。
 病気の潜伏期間は個人差はあるが五日から十日ほどで、空気感染するとの話。青年がすでに病にかかっている可能性は高いと思えたが、発病していなかったため、熱さましの薬を持って先に村に行ってもらうことにした。
 山へ向かう方と村へ向かう方との分かれ道で青年と別れた一行は、極力急いで。だができるだけ休憩もとりながら先に進む事となった。体力が落ちれば発病する可能性が高くなるからだ。

 その一方で、エリーヌは他の者たちより一足先に薬草のところに向かうことになっていた。
 薬草を届けるべき自分達が先に倒れるわけにはいかないからだ。薬草の場所はわかっているし、エリーヌ一人ならば空を飛ぶ事でモンスターを避け、薬草を摘んでくることができる。
 ただ、体の小さな彼女ではもちろん村人全員分の薬草を持ってくることは不可能だから、彼女が先行するのはあくまでも、冒険者達自身の発病予防のためだ。
「私も気をつけるけれど、皆もあまり無理はしないでね」
「大丈夫だよ! エリーヌさんこそ、一人なんだから気をつけなきゃだめだよ」
「無理だと思ったらすぐに戻ってきてくださいね」
 分かれ道から山まではそう遠くなく、歩いて一日ほど。
 仲間たちに見送られて先に行ったエリーヌを追うかたちで、残る一行も山へと向かう。


 ――だが、その半日後。

 最初は少し寒くなったなあ、とそんな程度のものだった。
 けれどそのアディアールはすぐにその体感温度の変化の理由に気がつき、顔をしかめた。
 運悪くも、発病してしまったらしい。幸いアディアールは念のためにと熱さましの薬を持っていたから、最初はそれでなんとか誤魔化すことができたのだが……。
「大丈夫ですか?」
「エリーヌが戻ってくるまではもう少しかかるわよねえ……」
 熱さましの薬のおかげでなんとか動くことはできるものの、さすがに一緒に行動している仲間たちにまで隠すことはできなかった。
 心配そうに告げるイサやジョエルにはなんとか笑みを返して、同じく心配そうな表情をするジムに声をかけようとした時。
 アディアールが言うより先に、ジムがスッと手を差し出してきた。
「おいらが背負って行こうか? こうなったらできるだけ早くエリーヌさんと合流した方がいいよね」
 しかしすでに道は山道。そう急な道ではないとはいえ、ジムの身長はアディアールよりも低い。背負って行くのは大変だろう。
 アディアールの懸念の表情に気付いたのか、ジムはすぐに言葉を続けた。
「大丈夫。体力と腕力は自信あるんだよ、おいら」
 確かに本人の言う通り、彼の体型は筋肉質で、見るからに力はありそうだ。
 だが、モンスターがいるという話は聞かない場所でも、獣が人を襲うということは十分にあり得る。この面子の中では一番戦闘を得意とする人間が咄嗟に動けないのも……。
 けれど迷いは一瞬だった。
「その方が良さそうね、急ぎましょう。獣に襲われたら私が炎で追い払うわ」
 すぐさまそう答えを出したのジョエルであった。

 そうして歩き出してから半日ほど。

「お待たせ。持って来たわ」
 人数分よりちょっと多いくらいの薬草を持って、エリーヌが一行と合流した。
 そこから先は、楽な行程だった。
 もともと村人が行き来できるような山だ。時折獣が現れるくらいでモンスターはおらず、また、道もそうキツくはない。
 しかもすでにその場所を自分の目で見て来たエリーヌがいる。
 彼女の適確な道案内であっさりと薬草を入手した一行は、すぐさま病人の待つ村に向かった。
 青年が助けを呼びに行ったのが比較的早かったこと。そして冒険者たちの迅速な行動のおかげで、死者を出すには到らず、村人たちは無事に健康体にと戻ったのだった。