求む! 芸人!!

■ショートシナリオ


担当:日向葵

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月19日〜09月24日

リプレイ公開日:2004年09月26日

●オープニング

 ある日、冒険者ギルドに駆けこんで来たのは、妙に身なりの良い中年の男性だった。
「すみませんっ、こちらで人手を探せると聞いたのですが!」
 あまりの勢いに少々驚きつつも、ギルドの親父は頷いて先の話を促す。
 すると男は、なにやら大袈裟に涙しつつ事情を説明し始めた。

 もうすぐ、仕える屋敷のお嬢様の誕生日がある。
 屋敷ではその日のために食材を用意し、優秀なコックを用意し、また余興として旅芸人を呼んでいた。
 ところが。
 旅芸人の一座は運悪く途中でモンスターに襲われ怪我を負い、誕生日までに来るのが不可能になってしまった。
 しかし娘にとことん甘い屋敷の主人と、旅芸人の余興をとてもとても楽しみにしていたお嬢様。
 事が知れたら、誕生日のパーティを取り仕切っている自分はクビになりかねない。
 そこで男は、余興のできる人材を探してここ冒険者ギルドにやってきたというわけだ。

「冒険者の中には歌や踊りに秀でている方もいると聞きましたし、珍しい特技をお持ちの方もいるかもしれません。どうかどうか、私に力を貸して下さい!」

●今回の参加者

 ea2004 クリス・ラインハルト(28歳・♀・バード・人間・ロシア王国)
 ea2954 ゲイル・バンガード(31歳・♂・神聖騎士・ドワーフ・ロシア王国)
 ea3338 アストレア・ユラン(28歳・♀・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 ea4873 リール・ハザード(26歳・♀・バード・人間・フランク王国)
 ea5242 アフィマ・クレス(25歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 ea5488 シアルフィ・クレス(29歳・♀・神聖騎士・人間・イスパニア王国)
 ea6349 フィー・シー・エス(35歳・♂・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)
 ea6561 リョウ・アスカ(32歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)

●リプレイ本文

 招かれた屋敷の一室で。
 今回の主役であり本日誕生日を迎えるお嬢様を前に、一行はゆるりと穏やかに礼をした。


 クリス・ラインハルト(ea2004)の事前調査によれば、我侭と噂のお嬢様はじっとしているのが苦手なタイプ。
 屋敷の者の話では、確かに我侭とも言えるけれど、我侭というよりはおてんばと言う方が正しいような感じの少女であるそうで。
 ゆえに一行は方針をこう固めていた。
 お嬢様がなにか言って来たら、上手く出し物に引っ張り込んで楽しんでもらおう――と。


「本日はお誕生日、おめでとうございます」
 まず最初に代表としてそう告げたのは、クリスである。お嬢様の人となりを先に見ておこうという時に、クリスが代表して行ったため、いつの間にやら一座の代表ということになってしまった。
 続いてシアルフィ・クレス(ea5488)がにこりとたおやかに笑んで、前座の芸をやる予定の面子の紹介をする。
「では本日は、どうぞよろしくお願いします」
 告げて頭を下げて、クリス以外の全員が一旦後ろに下がる。
 クリスの芸は声色だ。それもプロの。お嬢様の身近な人のモノマネから、エルフの森の雰囲気――鳥や獣の泣き声や木々を渡る風の音など――まで。それらを見事に声ひとつで表現する。
 時折お嬢様のリクエストも尋ねながらの披露だったおかげか、お嬢様は飽きることなく大変喜んでくれたよう。
 続いて前に出たのはフィー・シー・エス(ea6349)。軽業師の身軽さを生かし、テーブルを借りての華麗な演技を見せる‥‥が。見てるだけは苦手らしいお嬢様。次第に表情に『退屈』の二文字が刻まれていく。
 次の出し物はアストレア・ユラン(ea3338)。表情があまり変わらない分、羽根や身体がよく動く。アストレアは冗談めかした雰囲気でコップを借りて、水を入れ、即興の楽器で綺麗な曲を演奏してみせた。
 お嬢様のリクエストにも次々応え、大好評ののちに次の人へとバトンタッチ。
 四番手はリール・ハザード(ea4873)。竪琴を使っての弾き語りをしたが、こちらは少々お嬢様の好みではなかったらしい。綺麗ではあるが、こういった弾き語りはすでに聞き飽きている様子。
 個人別の出し物のトリはリョウ・アスカ(ea6561)。流れるような見事な剣舞ではあったが、やはりこのお嬢様、見ているだけというのは苦手らしい。最初こそ喜んで手を叩いていたものの、一分としない間に飽きた様子を見せていた。


 ‥‥こうなると、心配になってくるのはメイン出し物、歌劇である。
 お嬢様が口を挟むなりしてきたら、すぐさま飛び入りとみなして舞台に上げよう。再度きっちり確認しあい―――特にナレーションのアフィマ・クレス(ea5242)は気合を入れて。
 舞台の幕は、あがるのだった。

◆ ◆ ◆

 ゆったりと、アストレアとリールによる演奏が流れた。効果音はクリスの担当である。
 お嬢様の表情がわくわくと輝いているのを見て、アフィマが人形を動かした。人形師であるアフィマには、このくらいは朝飯前。人間の劇を人形がナレーションするのも面白いんじゃないかという案は大成功であるようで、お嬢様は大変興味を示した様子。
 最初に舞台に出るのは町娘役のシアルフィと、旅の剣士役のリョウである。
 町娘に絡む男を旅の剣士が追い払ったことから惹かれ合う――というのが最初の話の流れだ。
 女の子というのはたいがいにおいてこういうロマンスに憧れるものだ。お嬢様も例外ではなく、まだ、飽きはきていない様子。
 さて、二人は惹かれ合い恋に落ちるが、旅の剣士は追われる身であった。
 追手を演じるのはゲイル・バンガード(ea2954)とフィーの二人。
 リールとアストレアの演奏が緊張感みなぎる曲へと変化する。クリスが荒涼たる風の音を出してさらに場面を盛り上げる。
「追手に攫われてしまった町娘。旅の剣士のもとに届けられたのは町娘のハンカチと一枚の石版。石版に書かれていたのは、旅の剣士を誘う地図だった」
 ぺぺんっと大道芸を交え、アフィマ操る人形が臨場感たっぷりに場面を告げる。
 旅の剣士はもちろん町娘を助けに向かう。
 一番のクライマックスは追手と剣士の剣劇だ。
 二対一という不利をものともせず、町娘への想いを胸に戦う剣士!
 キンッ! と高く鳴る剣戟。フィーは盾の代わりにマントを持ち、縦横自在にマントを操り華麗に魅せる動きをする。軽業師だけあって、アクロバットはお手のもの。避ける時にもバク宙など見せ、お嬢様はぱちぱちと拍手を送っていた。
 ゲイルも負けじと斧を手にして、いつもよりも大振りの動きで戦いを見せる。
 しかしもちろん最後に勝つのは主人公――剣士である。
 曲の盛り上がりとともに激しくなっていった戦いは、剣士の渾身の一撃により終幕を迎える。
 流れる曲の雰囲気が変わり、囚われの町娘は救出された。
 ハッピーエンドで終わった物語に、お嬢様は飽きることなく楽しんでくれた様子で、一同ほっと胸を撫で下ろした。

◆ ◆ ◆

 最後を締めくくるのは誕生日の定番の歌である。
 賑やかかつ美しい演奏とともに、大きな花束を送ると、お嬢様はにっこりと満面の笑みを浮かべた。
「最初のはちょっとつまんないとこもあったけど、劇はものすごく面白かったわ。ありがとう」
 ‥‥子供ゆえと取るべきか、こういうところから我侭と言われるのか。
 お嬢様は、とてもとても正直に感想を言ってくれたのだった。

●ピンナップ

アフィマ・クレス(ea5242


PCシングルピンナップ
Illusted by 玖珂つかさ