スケベ爺さんにお仕置きを!

■ショートシナリオ&プロモート


担当:HIRO

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 31 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:11月17日〜11月20日

リプレイ公開日:2006年11月24日

●オープニング

 平和な秋の街に木霊する女の悲鳴。何かおぞましい事件でも起きたのだろうか? 華麗なる怪盗出没? 優麗たる幽霊現る? はたまた首なし死体殺人事件か? いやいや、もっとおぞましい事件。
「いやああああ!」
 酒場の看板娘が老人の脳天に打ち下ろした木のジョッキは真っ二つに割れた!
 もんどりうって倒れる老人。撲殺事件か?
 いやいや。
「もうこんな店イヤ! わたし、辞めます!」
 怒り心頭の看板娘は大股で店から出て行った。
「あ、ちょっと! 君!」
 と引き止める主人の声も虚しく空回る。
「お〜、痛い。最近の娘っこは気が強うていかんわい」
 こぶのできた額をさすりながら起き上がる爺さん。どうやら殺人事件ではなかったらしい。
 酒場の主人は冷ややかな目でじろりと老人を睨みつける。
「今度は何をしたんだい、ハンス爺さん?」
「いや〜、何もしとらんよ。ただちょっとお前さんとこで出す干し肉が老人の脆い歯には固いから、もうちっとばかし柔らかくならんかな〜とあの娘に言っただけじゃ」
「本当にそれだけ?」
「もうちっとばかし柔らかくならんかな〜、お前さんのお尻のように・・・・」
 好色な笑みを浮かべる老人の五指が空気を揉みしだいた。
 主人は怒気に声を張り上げた。
「爺さん! あんたが来るようになってからというものの、女の働き手はつかんし、女性客の入りもめっきり減っちまったんだ!」
「そんなに怒らんでも! 老人のささやかな愉しみに!」
「歳を考えろ、爺さん! 若造がやる分ならまだ可愛気もあろうが、頭の禿げ上がった爺さんがいつまで色気づいてんだ!」
「恋に歳は関係ないもの!」
 ハンス老人はつぶらな目を潤ませて反論する。
「夢見がちな少女でも言わんわ、そんな台詞!」
 主人は呆れ果ててしまった。
「とにかくだ、爺さん、今後俺の店で不埒な行いをしてみろ! 二度と店の敷居を跨げないようにしてやる!」
「おっおっ! ええ若いもんが憐れな老人を脅迫しとる! いいもん、いいもん! 裁縫婦のアンナちゃんに慰めてもらうから〜!」
 老人は泣きながら、店を飛び出していった。

 だが翌日。ハンス老人は再び酒場に現れ、女性客にちょっかいを出す。見かねた主人は手に棒を握った。
「おい、ハンス爺さん! 昨日言っておいたよなあ! 今度店で暴れたら、容赦しねえと! この万年発情期爺、覚悟しやがれ!」
 主人は勢いよく棒を振り下ろした! が、老人はひらりと身をかわす。追撃の手を休めない主人だが、棒は老人にかすりもせずに宙を虚しく空回るだけ。
「くっそう・・・・なんてすばしっこいジジイなんだ!」
「へっへ〜ん! お前さんみたいな青二才なんかに捕まらないよ〜だ!」
 老人はそんな捨て台詞を残すと、つむじ風のようにその場から消え失せた。
「・・・・憎ったらしいジジイだぜ!」
 
「・・・・と、いうわけなのですよ」
 酒場の主人は事情を受付嬢に話し終えた。
「とんでもないお爺さんのようですねえ」
「ええ、おかげでうちの商売は上がったり。聞くところによると、うちの店近くの裁縫婦や花売り、宿屋なんかにも出没するらしいんですよ。みんな、ほとほと困り果てている次第で」
 受付嬢はペン先にインクを浸した。
「とにかくそのお爺さんに淫らな行為を慎んでもらうように言って聞かせればいいんですね?」
「ええ、お願いします」
 主人が答えたその時!
 ギルドの扉が強風に煽られたかのように勢いよく開いた!
 現れたのは、なんとハンス老人!
 彼はギロリと酒場の主人を見据える。
「困った奴じゃ! こんな事でわざわざギルドまで依頼に来おって!」
「全部てめえのせいじゃねえか!」
「ふん、一重に貴様の修行が足りん・・・・む!」
 邂逅。老人と受付嬢の目線が交じり合う。
「おお! なんと可愛い姉ちゃん!」
 老人は受付嬢に襲い掛かり、彼女の頬に口づけする!
「きゃああああ!」
 ギルド中に木霊する劈くような悲鳴。
 酒場の主人は何とか老人を受付嬢から切り離した。
「ふん、わしゃあ、ギルドの若造なんかに捕まらんもんね! 見ておるが良い、主人! お前さんの酒場の女客はみ〜んな、わしのもんじゃ!」
 耳につく甲高い笑い声とともに、老人は去って行った。
「・・・・わかりました。依頼内容はお爺さんに淫らな行為を慎んでもらうよう、体に言って聞かせればいいんですね・・・・!」
 受付嬢の目は悪寒に血走っていた。

●今回の参加者

 ea0424 カシム・ヴォルフィード(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea1168 ライカ・カザミ(34歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea3179 ユイス・アーヴァイン(40歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea4905 斎穏 夢(38歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb3349 カメノフ・セーニン(62歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb5522 フィオナ・ファルケナーゲ(32歳・♀・バード・シフール・フランク王国)
 eb7226 セティア・ルナリード(26歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)
 eb8175 シュネー・エーデルハイト(26歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)

●サポート参加者

南雲 要(ea5832)/ 鳳 双樹(eb8121

●リプレイ本文

「本当に僕が女装しなきゃいけないんですか?」
 納得がいかないまま、メイド服に着替えさせられているカシム・ヴォルフィード(ea0424)にセティア・ルナリード(eb7226)が言葉を返した。
「決まった事をぐちぐち言うなよなあ〜、男だろ?」
「元気なお爺さんみたいですね〜 。元気な事は良い事です〜 。あら〜? 元気すぎるのが問題なんですか〜?」
 たおやかに言うのはユイス・アーヴァイン(ea3179)。
「僕は女装するのに何故ユイスさんはしないのですか!」
「だって〜、カシムさん、私は物陰でこっそり覗き見する役ですから」
「何ですか、それ・・・・」

「この誇り高き英国で婦女子に痴漢行為なんて! 一児の母の立場としても、駄目な大人は放っておけません!」
 テーブルに席を取り、ライカ・カザミ(ea1168)は竪琴を携えた。
 今回は依頼主の経営する酒場を借り切って、ハンス爺を誘き出す作戦。
「こういう爺君には一度きっちりお灸を据えないと、棺桶に入っても変態行為のために甦って来そうだからね! キャメロットの娘君達のためにも、老いてますます盛んな煩悩退治と行きますか!」
 斎穏夢(ea4905)の突き抜けた明るさは、酒場の主人の胸に不安を過ぎらせる。
「店を壊さない程度にしてくれよな・・・・」

「シュネー、酷いよー!」
 と双樹はシュネー・エーデルハイト(eb8175)は責め立てていた。無理もない。ちょっと来いと言われて来てみれば、痴漢爺を誘き出すためメイドに変装させられている。
「何も酷い事などない。ただ爺を一匹誘き出すだけ。簡単な任務」
「シュネー、そのお爺さんは女の敵なの! スケベ爺さんなんだから〜!」
「スケベって何? よくわからない」
「え〜!」
 双樹は嘆かざるを得なかった。

 この依頼、密かに燃えていたのはカメノフ・セーニン(eb3349)は、カウンター席の一角に陣取り、クールに温かいスープで来たる聖戦に備えて栄養補給。彼は思う。歳もわきまえず、幾多もの不埒な行為に走るというハンス爺。同じ男として許せん。それに・・・・
「それに今回の依頼、女の子が多いんじゃもーん!」
「おい、声に出てるぜ、ジジイ」
 セティアがカメノフの禿げ上がった頭を小突いた。
「おお、セティアちゃん! わしはただふざけたスケベ爺を懲らしめるための〜」
「誰がスケベ爺なんだ?」
 カメノフの手が彼女の太腿を撫でていた。
「この手はなんだ〜!」
 セティアの拳が容赦なく老人をふっ飛ばしていた。

「来たな・・・・」
 主人が生唾を呑みこんだ時、酒場の扉は勢いよく開かれた。逆光の最中に佇んでいた小柄な老人・・・・彼こそが世の邪悪ハンス爺!
「私と話が合いそうなお爺さんはっけ〜ん♪」
 妖艶なシフール、フィオナ・ファルケナーゲ(eb5522)が愉快そうに鼻歌を口ずさんだ。
 ハンス老人は早速女に飛びつくかと思いきや、なんのなんの。まったく動じた風もなく、落ち着き払ってカウンターに席を取る。そして、
「主人。エールじゃ」と一杯の酒を注文。
 颯爽と爺に羽ばたき寄るフィオナがこう話を持ちかけた。
「どう? いい子達を揃えたでしょう? 青いのから熟れたものまで選り取りみどり。あの人なんてどう? きっと人妻ね。見て分かるわ。胸とか腰とか本当にそそるわよね〜」
 ハンス老人が震えている。どうしたのだろうか? 持病の癲癇でも起こしたのだろうか? いや・・・・違った。振り向いた老人の顔。あの鼻の下が伸びきったスケベ面ときたら。
「どの娘もええのう!」
「そうでしょ。お爺さんはどの娘が好み?」
「あんたみたいな色っぽい娘が好みなんじゃが、小柄なシフールじゃさすがに手が出んのう・・・・残念じゃー」
 と涙するハンスの前に、遂にカメノフが立ち塞がる!
「ふ、お主がハンスか」
「誰じゃ、お前は?」
 直感的に感じあう処があったのだろう、二人の目線が交じり合い、火花を散らす。
「お主にこんな事が出来るかのう?」
 カメノフが不敵に笑った瞬間、周りにいた女冒険者のスカートが捲れ上がった! 彼女達の健康的な太腿がスケベ老人達の前に晒される。
「おお!」
「どうじゃ! わしの念力は?」
 カメノフの勝ち誇った笑いに、ハンスの肩が震えた。そして・・・・!
 二人は手を取り合っていた!
「その技をわしに教えてくり! 辛い事以外なら何でもするから!」
「わしの修行はちと厳しいぞ!」
 生き別れになった兄弟が再開したとでもいうように熱く抱き合う爺二人。
 そこでセティアの蹴りが入った。
「この似た者同士が!」
 ハンスは颯爽と立ち上がり、
「わしのどこがこんな陰険スケベ爺に似とるのじゃ! わしはもっと健全じゃ! 汚い小細工など使わんわ。このようにな!」
 と、自らの手でセティアのスカートを捲った・・・・が、彼女は下に短いズボンを着込んでいた。
「つまらんのう・・・・反則じゃ、反則じゃ」
「このスケベ爺が〜!」
 ハンスにセティアの飛び蹴りが入った。爺はその勢いのままにふらふらとある女性のふくよかな胸に飛び込んだ。
「おお! 何という柔らかさ! そして・・・・おお、何と清楚なご婦人!」
 老人を赤子のように胸に抱くのはライカだった。彼女は触られても平気なのか、にこにこと老人に微笑みかける。
「おお、この暖かさ! まるで聖母じゃ」
「可愛らしいお爺ちゃんですわね。あたしの歌を聴いて頂けるかしら?」
「喜んで」
 ライカはくすりと笑い、竪琴で魔力の込めた音楽を奏で始めた。老人の目がその美しい音の前にとろんと落ちる。その頃合いを見計らい、ライカは、
「随分女性がお好きみたいですけど、女性の気持ちをお考えになった事はあるかしら?」
 と説教にかかる。
「女を怒らせると、それはもう火山の噴火のように恐ろしいものなのよ」
「そうじゃ、そうじゃ」
 と爺は相槌を打つ。
「つまりじゃ! 女の子を怒らせんように体に触れねばならん! よ〜し、練習じゃあ!」
 その場にいた誰もの顔色が怪訝な色に染まった。そして悟る。この爺のスケベは筋金入りなんてものじゃないと。「噂通り、元気なお爺さんですね〜」と、ユイスだけが一人楽しそうに艶笑。
「お〜! こんな処に東洋の神秘が〜!」
 夢、要、双樹が並んで座るテーブルが老人の目には桃源郷に見えていたに違いない。むしゃぶりつくように襲い掛かる!
「いや〜!」
 双樹は飛びついてくる老人の顔に鉄拳を喰らわせ、泣きながらに酒場を飛び出した。しかし老人はめげない! 今度は夢に襲い掛かる。だが、夢は爺の手を間一髪、真剣白刀取り!
「この僕のお尻、容易く触れるとは思わない事だよ♪」
「なら胸ならどうじゃ〜」
 と胸に頬ずり。
「この変態〜!」
 夢の平手をひらりと身軽にかわす老人だったが、二発目が飛んできた時、何故か体の自由が利かなくなり、もろに一発手痛いのを頬にもらう。
「むむ、どうしたわけじゃ?」
 老人の動きを鈍らせていたのはユイスのスクロール。
「ちょっと元気がありすぎるようですからね〜」
 クスクス笑いながらまだまだ様子を窺う、ますます楽しそうに。
「変じゃのう。まあ、ええわい」
 と今度はカシムに目をつける爺さん。触れられれば、男とばれてしまう。そうでなくとも、こんな卑猥な老人に体を触られたくはない。カシムは必死だ。
「あなた、いい年してこんな行為に及んで! 恥ずかしくないんですか?」
「悟りを開いたわしに恥などという低劣な感情はないわ!」
 壮絶な組み手争い! だが分配は老人にあがった!
「む!」カシムの胸に触れた時、爺の眉間に深い皺がよる。
「お主、男じゃな! 人を貶めるとは碌な死に方はせんぞ!」
「あなたがそれを言いますか!」
「男に興味はないわーい!」
 と、ゴキブリ並みの素早さと汚らわしさでシュネーに詰め寄る。
 まずい! スケベの意味を知らず、爺の恐ろしさを理解していない上、露出の激しいシュネーは正に絶好のカモ!
「おお! なんという豊満な肉体! 素晴らしい!」
 ハンスは遠慮なくシュネーの胸に頬ずり。
「・・・・何か変な気分・・・・くすぐったくて、そわそわする。やだこれ・・・・痛い事されたわけじゃないのに凄く嫌・・・・! こんな人、斬っちゃ駄目なんて、凄く困る・・・・」
 シュネーの顔色がさっと桃色に染まった。自分が何をされているのか頭では理解できないが、体は老人を本能的に拒絶していた。
「うぬう〜、羨ましい〜!」
 嫉妬に黒い炎を燃やすカメノフが、
「わしもまぜて〜! シュネーちゃ〜ん!」
 とシュネーに飛びつく。
「もう嫌ぁ!」
 カメノフまで寄ってきて遂に限界を迎えたのか、シュネーはポロポロと泣き出してしまった。
「いい加減にしろ、てめえら!」
 セティアが二人を叩きのめす。女性陣はいつの間にか二人の老人を取り囲んでいた。
「まったく、泣かせるまで痴漢するなんて男の風上にも置けないね。親の顔が見てみたいよ」
 と、夢が軽蔑の眼差しを向ける。他の冒険者の視線も白い。
「しょ、しょんな・・・・わしらは皆にも気持ちよくなってもらおうと・・・・」
「どこの世界に爺に体触られて気持ち良くなる女がいるんだよ!」
 たじたじの老人二人を相変わらず物陰から眺めるユイスは何やらひとり悪巧み。
「そろそろ止めといきますか〜」
 開かれたスクロール。紡ぎだされる幻影が老人達を襲う。
 世にも恐ろしい幻覚だった。女性への恐怖心を心の底に植えつけるような。その内容はここに書き出すには憚られるほどに凄まじい。
 二人の老人はあまりの恐怖にしくしくと泣き出してしまった。
「女、怖いよ〜、怖いよ〜」
 ようやく反省したのだろうか、ハンス爺は、
「こんな怖い女達は嫌じゃー!」
 と酒場を飛び出していった。
「何とかなりましたね〜」
「こっちの爺はどうするんだ?」
 すすり泣くカメノフを見下ろすセティアに、微笑を絶やさないユイスがこう答えた。
「幻影はすぐに消えますけど〜、二、三日は立ち直れないかもしれないですね〜」