メルヘンチック! お化け屋敷!
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■ショートシナリオ
担当:HIRO
対応レベル:1〜5lv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 31 C
参加人数:5人
サポート参加人数:1人
冒険期間:02月16日〜02月19日
リプレイ公開日:2007年02月20日
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●オープニング
商店が並び賑わう大通りから、ちょっと脇道に入ったところでしかないのに、やけにどんよりと重い空気が立ち込める日の差さない薄暗い一角に、その屋敷はあった。
屋敷の壁にはだらりと力ない蔦が覆い、すべての窓にはカーテンが閉められている。
ここ数年誰も住んでいない空家。以前は誰かが住んでいたらしいが、当時の事を覚えている人も少ない。物音もしない。やはり空家だろう。誰もがそう思う。
しかしこの屋敷については以前から忌まわしい噂話が実しやかに囁かれ続けていた。その噂話というのは・・・・出るらしいのだ。お化けが・・・・。
「そんな馬鹿げたことあるかよ」
トムは言った。
「でも、ケンが見たんだって! こ〜んなに口が裂けた化け物!」
と自分の口を手で広げてみせるシェリー。
今、子供達の間で持ちきりの噂だ。お化け屋敷の怪物。ちょっと英雄視されかけ始めている節すらある。
「いないよ! そんなの!」
「いるもん!」
「よ〜し、じゃあ、ひとつ確かめに行ってみようぜ」
「や〜よ、怖いもん」
「じゃあ、お前は嘘つきだ」
「嘘つきじゃないもん! わかったわ! いくわ! お化けは絶対にいるんだもん!」
というような、些細な言い争いから、二人はお化け屋敷へと忍び込むこととなった。
玄関の扉に錠は下りてはいなかった。二人は高い位置にあるドアノブを押して、未知の世界の扉を開いた。
薄暗い。怖いからと真昼間という時間帯を選んでやってきたのに、日の差さない屋敷内はもう別世界とも思えるほど暗かった。ただ、屋敷内は外から見るとおり、立派なものだった。広い玄関ホールの壁には老紳士の肖像画が飾られていて、来客者を睨みつけている。二階、三階へと続く立派な階段には薄汚れた絨毯が敷かれてあった。焦げ茶色だが、元は鮮やかな緋色だったに違いない。そんな立派な屋敷だが、それゆえか、より一層の不気味さを醸し出していた。
二人はおずおずと階段を上がり、二階の細い廊下へと入った。
「きゃっ!」
シェリーが声を上げる。
「なんか変な物音がしたわ!」
「鼠かなにかだろ・・・・」
トムが頼りない声で言う。
トムはもう内心びくびくだったが、強がった手前、屋敷を一通り回るまで、帰ろうとも言い出せない。
二人はある寝室に入った。大きなベッドが一つある。そこかしらにある高級そうな調度品は長年放置された痕跡を残すため、甘んじて分厚い埃を被っていた。
大きな窓があって、トムがカーテンを開くと、さすがに幾らかの日の光が差し込んできた。屋敷は上から見ると、凹の形をしているので、今二人がいる部屋からは向かいの棟が見えた。
「やっぱり何もいねえんだよ」
早く帰りたいトムは言った。
「そうかなあ」
シェリーも窓際によってきて、外を眺める。そのとき、彼女は「きゃあ!」と悲鳴を上げ、向かい側の部屋の窓を指差した。
「うわ!」
トムも同じものを目撃した。
それは・・・・なんとも形容できない悪鬼のような恐ろしい形相をした人の顔。その怪人が向こうの窓からこちらを睨んでいたのだ。しかしこちらが気付かれたと知るなり、さっと身をひいて、姿をくらました。
「きゃあああああああ!」
二人は恐怖に満ちた叫び声を発しながら、無我夢中で屋敷から逃げていった。
翌日。
二人の親から、この怪事件究明を要請する依頼が持ち込まれた。
あなたは怪人の正体を突きとめることができるか!?
●リプレイ本文
「いかにも何か出ます的な雰囲気がムンムンしてるわ」
おどろおどろしい雰囲気の館を前に、ヒルケイプ・リーツ(ec1007)は何故か楽しそうに言った。彼女は冒険者だった祖母に憧れ、ギルドの扉を叩いたという新米レンジャーだ。
「お化けいるデスか?」
と、やや赤い肌を持つ不思議な少女、エンデール・ハディハディ(eb0207)。やけに大きな荷物袋を背負っている。
「得体の知れないお化け・・・・見てみたいな」
自称ゴーレム二スト、サスケ・ヒノモリ(eb8646)の後ろにはゴーレムと埴輪が!
「サスケのお兄ちゃんは、まず街中でゴーレムを連れ回したがる悪癖から直すべきデスぅ」
エンデがつっこんだ時、館の扉が独りでに開いた。「ヒイィ!」と思わず声を上げる冒険者達だったが、出てきたのは小丹だった。
「脅かさないで欲しいのデスよ」
「ざっと見回ってみたがのう・・・・やはり出るようじゃ」
小丹は陰りのある面持ちで、世に語られるべきでない怪談を始めた。皆が悲鳴を上げる中、ヒルケだけが嬉しそう。
「この緊張感! これが冒険なのね!」
その一言に触発されたのが、小柄な少女ヒュー・ディ(ec1244)だった。
「初めての冒険・・・・そうですね! 恐ろしい化け物が棲みついているとなると、ご近所迷惑! 頑張って人様の役に立ちます!」
意気揚々と館に駆けていく少女を、皆は追った。
「おっとっと〜!?」
館に入った途端、何もない所であるにも関わらず、ウェイン・ハイランド(ec1269)は派手に転んだ。
「新しいお遊びデスか?」
「そう受け取ってもらえれば」
したたかに打ちつけた腰をさすりながら、ウェインは立ち上がる。
「う〜む、ここがお化け屋敷ですか」
埃っぽく空気が悪い玄関で、いかつい老紳士の肖像画が、冒険者達を威嚇していた。
スクロールを用い、周囲の気配を探り始めるサスケ。
「小さな振動音が絶えないな。鼠かな?」
「これが探索なのね!」とヒルケは夢見がちに目をキラキラさせた。一階、二階を見回って、三階へと続く階段を登っていた時の事だ。
「何て新鮮なのかしら! この舌に纏わりつくザラッとした空気! こんな空気の味、初めて!」
「それ、埃でしょ?」
と、ヒューがつっこんでいる間にも、エンデは必死に歩いていた。ただでさえ小さな体の上、荷物まで背負っているので、皆の後を追うのに汗水垂らして必死だった。
「キミ、その荷物持ちましょうか?」
ウェインが気を回したが、エンデは妖しく目を光らせ、首を振った。
「せっかくの申し出デスけど、今回ばかりは遠慮しておきますデスぅ。この中には大事なものが入ってますデスよぉ〜」
「何が入っているのです?」
「それは・・・・ヒミツデスぅ」
「でもお化けが出たら、逃げる時、困るでしょう?」
「エンデはお化けなんて、ちっとも怖くないデスぅ。だから平気デスぅ」
ふっふっふ、とエンデは謎めいた笑みをこぼした。
三階のある一室を調べていた時、足音が幾つも天井を行き交うのを耳にした。
「どうやら鼠の一行様が出たようだな」
サスケは梯子を上り、警戒しながら屋根裏部屋に顔を覗かせた。真っ暗だ。ランタンの灯を掲げてみた。鼠と思しき足音は遠ざかっていく。屋根裏部屋は広い。使われていない棚や机が乱雑に放置され、埃を被っていた。
「食べ物で釣ってみましょうか?」
ヒューの提案に皆は賛同した。
屋根裏部屋の真ん中辺りに保存食を仕掛け、皆は棚の後ろに身を潜めて息を殺す。
トタタ、トタタ、と細かい足音が伝ってきた。
「よし、今だ!」
サスケの掛け声と共に、ランタンの火を灯し、一斉に飛び出す!
馬鹿でかい鼠が10匹程度。貪欲に保存食を貪り食っていた。
エンデがダズリングアーマーを唱え、眩い光で鼠の目を眩ませる。そこにすかさずヒューが剣で斬りかかり、サスケがマグナブローで鼠達をこんがり焼いていこうと奮戦。ウェインは適度にウィンドスラッシュを放つ。
「サクラ、ごー!」と猫をけしかけたのはヒルケ。しかし猫は前足でしきりに頭を掻くだけで眠そうに欠伸した後、その場に寝そべった。
「・・・・あ、うん、鼠の方が大きいし、仕方ないか」
「何のために連れてきたデスかー!?」
そんなこんなだったが、叶わぬと知った鼠達は抜け道から、外へ逃げ出した。サスケは急いで下に降り、窓から顔を覗かせて、外で待たせていたゴーレムに声を張り上げ命令を下した。すると、ゴーレムの腕が発射、鼠達を追撃、仕留めていく。鼠掃討作戦完了である。
三階にはそれ以上の物を見つける事ができず、すごすごと一階に戻った時、はっとヒルケが声を上げた。埃を被っていた絨毯の上に、冒険者達のものではない足跡を見つけたのだ。
「子供達のものではないですねえ。何でしょ? ワクワクします!」
ヒューの言う通り、その足跡は子供の物にしては大きすぎた。むしろ、並みの大人の足のサイズに比べても、かなり大きい。
この辺りに地下への秘密通路があるのだろうとウェインはクレバスセンサーを唱え、周囲を調べ始めた。
「どうやら、この絵の向こうにあるような気配ですよ」
老紳士の肖像画の事だ。ウェインが絵画を外すと、そこの壁にはノッカーのような取っ手があり、それを引くと扉が開いた。奥には階段があり、地下へと続いているようだ。
「さあ、行きますよ! 怖がらずについてきなさ〜い!」
ふるふる嬉しそうに武者震いするヒルケとヒューが口を揃えて言った。
階段を下りると、狭い廊下に繋がっており、幾つか部屋があった。扉がないので、簡単に覗き見る事が可能だったが、あまり見ても楽しくない拷問器具やら武器類やらが雑然と並んでいた。
「趣味がよろしくないですわね、これは怖いですよ〜」ヒューが楽しそうに呟く。
しばらく進んでいくと、不自然に一室だけ、重そうな扉で閉められている部屋があった。鍵は掛かっておらず、扉はすぐに開いた。
「ヒイィ!」
部屋に足を踏み入れた瞬間、冒険者達は悲鳴を上げた。本が納まった戸棚や机があって妙に生活感があったのに、部屋の真ん中にどんと鎮座していたのは棺桶だった。
「これはいけませんデスよ〜! 何かが眠っているかもしれないデスぅ」
「ズゥンビかな?」とサスケ。
「まあ・・・・」ヒルケは重々しい息をつく。「開けてみれば、わかるよね♪」
「ちょっと待ちなさい! この怖いもの知らずっ!」
ウェインが慌てて、彼女を引き止める。だが彼女はにこやかに、
「危険を顧みない強さと勇気。それを持つ者、冒険者」
と構わず、棺桶を開けた。果たして中には何が・・・・!?
中は空っぽだった・・・・。
「・・・・・・・・」
長い沈黙。しばらくして、サスケが言った。
「まあ、現実はこんなものか」
そんな時、エンデは隣の部屋にちょっと気になる事があるといってその場を抜け出した。
エンデが一人がさごそ荷物袋から何かを取り出そうとしていた。
「ふっふっふ・・・・じゃ〜ん! まるごとくまさんデスぅ! これを着て、皆を脅かすデスぅ!」
彼女はいそいそぬいぐるみを着込み始める。
「よし、装着完了! 問題はどうやってテーブルの上に登るかですぅ」
高い脚を持つテーブルを見上げ悩んでいたエンデを、誰かがテーブルの上に乗せてくれた。
「ありがとうデスぅ・・・・」言いかけて、ある根本的な問題に気付いた。「だ、誰デスぅ?」
彼女が見たもの。この世のものとは思えぬ恐ろしい化け物だった。
「うっきゃ〜〜〜!!」
エンデの叫び声に皆はその部屋に駆け込んだ。そこにあった物、それはテーブルに横たわるぬいぐるみ。
「か、可愛い!」
ヒューが力一杯ぬいぐるみを抱きしめると、バキバキ音が鳴り、
「痛い、苦しい! あたしデスぅ! むしろこのままじゃ、エンデがデス(death)ぅ!」
その声に気付き、ヒューがエンデを放した。
「どうしたんですか、大声上げて」
「あたし見たデスよ! すっごい怖い顔を」
エンデはがくがく震えて泣き声を上げた。
地下をしばらく調べた後、玄関ホールに戻った。するとどこからか食欲をそそるいい匂いが漂ってくる。皆はその匂いを追い、食堂の扉を開いた。
「ヒイィ!」
誰が用意したのか、部屋のテーブルには6人分のディナーが用意されていた。どうやら謎の晩餐会の招待にあやかったらしい。
皆で謎の食卓に震えていた時、向こう側の扉が開き、一人の小男が入ってきた。男は恭しく一礼すると、自分はこの館の主に仕える執事だといった。
「実はこの館は元来主人の持ち家でして。長い大陸旅行の果てに最近ようやく帰ってきたのですが、館は荒れ果て、鼠が棲みつく始末。主人はそれを退治してくれたあなた方にお礼をしたいと申しまして。うひゃひゃ」
執事は怪しく笑う。
しかし事情が呑み込めた冒険者達は幾らか安心し、席に着いて主人を待つ事にした。
しばらくして主人が姿を現した。
「私がこの館の主、アグリネスです」
冒険者達は愛想笑いを浮かべて振り返ったが、その表情は瞬く間に凍てついた。
「ヒイィ!」
肌の色は死人の色だった。出っ張った額と顎。ぎょろりと飛び出る灰色の目。分厚く小さな口。歯は不揃いで黒ずんでいて、耳が片方だけ異様に大きかった。
「怖! 主人の顔、怖ぇ!」と心で叫ぶ冒険者達。
間違いなく、エンデが、そして子供達が見たのはこの人だろう。お化けの正体は館の主だったのだ。
「さあ、皆さん、どうぞ遠慮なく」
主人は気さくに言うが、誰一人料理に手をつけようとする者はいなかった。
執事が言うには、この家系の人間は生まれつきこのような顔を持って生まれてくるらしい。だが、主人は自身の顔の怖さに気付いていないのだとか。
「地下室の棺桶はいったい何だったのデスか・・・・?」
「ああ、あの中で眠ると、煩くなくてぐっすり眠れるのですよ」
「ヒイィ!」
冒険者達はその光景を想像して、恐怖に打ち震えた。
これがお化け屋敷の怪異の真相である。