誇りか、命か

■ショートシナリオ


担当:本田光一

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:3 G 32 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月19日〜11月24日

リプレイ公開日:2006年11月28日

●オープニング

 冒険者ギルドには、今日も様々な依頼が寄越されてくる。
 何処の好事家が入れたのか、戦時には必要なさげな美術品や骨董品を探し出して持ってこいと言った類の依頼や、敵を屠るための助っ人という、正に命懸けの仕事まで。
 ただ、一つだけ言えることは全ての依頼が『ギルドの規定を通過した依頼である』と言うことだ。
 だから、正当に依頼を受け、特に不履行となる理由がない限りには、依頼は全て遂行されなければいけない。
 それは冒険者達の中に不文律としてある掟であり‥‥。
 同時に、誇りでもあった。

●誇りか、命か
「大変だ! 今しがた、湾岸の砦から連絡が有った!」
 冒険者ギルドのドアを蹴り破る勢いで飛び込んできた男が、近くで驚いた風な女性給仕の耳に聞こえる程の音で喉を鳴らして唾を飲み込んだ。
「カオスニアンだ! 奴らが海岸線で警護に就いていた騎士を襲ってる!」
「!!」
 ギルドの中に、それまで有った日々の喧騒が消え、滴下の音さえ響き渡るような静寂が訪れる。
「とにかく、動ける者は武器を! 急な話で報酬は少ないが、後から文句は言って来い! 苦情位は聞くだけなら聞いてやる!」
 男から詳細を聞いたギルドマスターが依頼を口頭で説明する横で、係が羊皮紙に内容を纏めていく。
 乱暴な話だが、今から移動してどれだけの人数が生きているやも知れない。
 また、騎士がカオスニアンと戦っているとすれば、冒険者達が到着する迄生き延びて帰還することをよしと考えるか、それすらも怪しい話だ。
 助けに行くまで、劣勢であっても混沌の下僕たるカオスニアンを殲滅せんと、最後の一兵となっても戦い続ける事を騎士ならば選択して壊滅の末路を辿るやも知れない。
「もし、間に合うのならば騎士を説得して事の次第を報告に戻るように説得して欲しい。今回のカオスニアンの動きは今までに見られない活発なもので、戦闘に巻き込まれた形であっても、生きた証人から話を聞いた方が良いからだ!」
 何時に無くギルドマスターも真剣な表情で、今にも飛び出して行きそうな冒険者達に向けて檄を飛ばしている。
 冒険者ギルドとは言っても、メイの国有ってこその存在であり‥‥同時に、世界に生きる者にとってカオスニアンと言う共通の敵を迎え討つことに当てられている気配さえある。
 その事が、今回の厳しい状況を暗に物語っている。
「騎士を救えなくても‥‥それは最悪の場合ですが、カオスニアンを倒して下さい。防衛戦が崩れることは、最悪メイの国が彼らによって蹂躙されることに他なりません!」
 軍も勿論動いているのだが、それだけでは足りないというのが現状の様子で、冒険者ギルドに話が回ってきている様子だ。
 現場は海沿いの砦。悪天候の時には灯台にもなっている場所で、建物は複雑にはなっていないが、余り直線もない曲がった構造になっている。
「通路も細いので、装備品には気をつけろよ!」
 豪奢な武具を装備していた男に声を掛け、槍は置いて行けと指摘するギルドマスター。
 いつになく親切な事も、そして口五月蠅いことも冒険者達には警鐘を鳴らしているように思えた。

●今回の参加者

 ea0130 オリバー・マクラーン(44歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0479 サリトリア・エリシオン(37歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea2019 山野 田吾作(31歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea4815 バニス・グレイ(60歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea5243 バルディッシュ・ドゴール(37歳・♂・ファイター・ジャイアント・イギリス王国)
 eb4590 アトラス・サンセット(34歳・♂・鎧騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb7850 フローラ・ブレイズ(33歳・♀・ファイター・人間・メイの国)
 eb7857 アリウス・ステライウス(52歳・♂・ゴーレムニスト・エルフ・メイの国)
 eb8297 ジャスティン・ディアブローニ(38歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb8475 フィオレンティナ・ロンロン(29歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)

●リプレイ本文

●誇りか、命か
 炎が舐め上げる様に燃え盛る。
 岩造りの城砦が火炎に巻かれ、周囲の空気が轟と言う音を立てて巻き込まれ、膨れ上がり、更に火炎を業火と化す地獄絵図がそこにある。
「‥‥初めてなんだよね、カオスニアンと、まともに戦うのって‥‥」
 呟くフィオレンティナ・ロンロン(eb8475)達は仲間の空飛ぶ絨毯で現地に直行しようとしたが、断念した。初めは地上からの射撃に備えることを相談していたのだが、近付くことではっきりした火災によって直上まで乗り込むことは不可能だと判ったからだ。
 だが――。
「同じ騎士として、仲間の窮地を見捨てる事など出来ない‥‥! 一人でも多くの騎士を助けねば! 」
 ジャスティン・ディアブローニ(eb8297)が地面に降り立ち、背にした荷物を絨毯と一緒に茂みに隠して立ち上がる。
「まずは騎士を探さねば‥‥」
「カオスニアン。何があっても倒すべき存在だけど、でも戦うだけが全てじゃないって事もあるんだね‥‥」
 城砦を見上げるジャスティンの横で、緊張した趣のフィオレンティナの横に並ぶ騎士が居る。
「‥‥注意を!」
 短く発したオリバー・マクラーン(ea0130)の声と、茂みを示した指先が仲間の意識を引き締める。
「聖なる母の神の僕として、魔を討とう」
 サリトリア・エリシオン(ea0479)が数名に判る言葉を口にして、神に仕える戦士として静かに闘志を燃やしていた。
「‥‥武人とは、難儀なものだな‥‥」
 少し前に到着し、仲間と合流して走りながら、城砦を焼く炎の中に剣劇の音を聞いたような気がしたバルディッシュ・ドゴール(ea5243)が呟く。
 たった一つの命を賭して、護るべきものの為に戦う存在という愚直な者に想いを馳せて‥‥。
(‥‥そういう私も、かくありたいと思うのは一つの矛盾か‥‥)
 唇の端を上げて自嘲したバルディッシュの目に、闇の色に染め上がった肌を纏う鎧の隙間から覗かせる存在が飛び込んできた。
「! キミ!」
 同時に、その足下に横たわるエルフの姿が、仲間の頭二つ高い位置からバルディッシュに見える。
「‥‥っく」
 身じろぎするのは、その背に受けた矢が折れたまま突き刺さっているアリウス・ステライウス(eb7857)。
 彼がフライングブルームで先行したまではバルディッシュから聞かされていたが、カオスニアンの足下に平伏す様に崩れ落ちた姿は、彼らの怒りを滾らせるには十分すぎた。
「押し返そう。ウィザードが減るのは困る」
 ジャスティンの冷静な言葉に違和感を感じ、一瞬視線を交わしたフィオレンティナがぎこちない笑顔を浮かべて走る。
「判ったよ。ここを切り抜けないとね!」
 『ライトサンソード』を鞘走らせ、一閃斬りつけて駆ける彼女の直ぐ後ろから、オリバーとサリトリアが『ライトソード』と『ライトサンソード』の剣戟唸る攻撃で仲間にとどめの一撃をと振りかぶっていた巨漢の一体を吹き飛ばす。
「後陣の憂いを断ったつもりでしたが‥‥」
「傷は浅いぞ。さぁ、これを」
 カオスニアンが後続の部隊を迎撃できないようにとファイヤーボムを打ち込んだものの、回避しきれずに撃たれて地上に落下したとアリウスが咳き込みながらバニス・グレイ(ea4815)がバックパックから取り出した『リカバーポーションエクストラ』をエルフに流し込むようにしている間にも、山野田吾作(ea2019)が掴んだ右腕の日本刀「霞刀」が重鈍な手応えを返す筋肉を切断していく。
「我らが来たからには、此処を墓場と心得よ‥‥」
 すっと、睨む目を細めた田吾作の刀を握る拳に力が込められて‥‥。
「覚悟!」
 陽光煌めく一閃に、深々とカオスニアンを‥‥
「甘いわ!」
「!?」
 袈裟懸けに引き裂くはずが、僅かの所で転じて飛び逃げると同時に、田吾作の懐を引き裂く鉤爪があった。
「行きがけの駄賃にとは‥‥」
 決して手加減した攻撃では無かった筈だと、己の手に残る感触を思い出した田吾作は冒険者ギルドで言われたことを思い出して戦慄する。
「あの様な手合いを相手に、城砦を守るために残った武士(もののふ)が居るというのでござるか‥‥」
「急ぎましょう。城砦までの道程は覚えましたか?」
 戦場の地形、構造を頭に入れて戦う事を唱えるオリバーに、バニスの肩を借りて立ち上がったアリウスが途中の跳ね橋が落とされていることを語り、迂回するしかない事を悔しげに告げる。
「援兵が派遣されてる旨を伝え、死に急がないように注意したところで、先程のカオスニアンに射抜かれて‥‥」
「ならば、怪我人の為にも急ぐしかない‥‥どうする?」
 応急手当にと荷物に詰め込んできた布の位置を気にしてサリトリアが高い城壁を見上げれば、念のためにと持って来ていた空飛ぶ絨毯をバニスが苦い表情で差し出した。
「あくまで、急ぐが故に。危険は承知で行かねばならんだろう」
 カオスニアンによる射撃は、アリウスが事前にファイヤーボムで『ならし』をしてくれている為に恐れる必要はないだろうが、どうしても発見されれば集中攻撃を受ける事に成りかねない。
 その危険性を説きながらも、老騎士の目には若き戦士達の誰も怯えた光を宿す目はないと映っていた。
「それが在るのならば話は早い。跳ね橋からの突入が無理なら、この城壁を昇れば死角になる‥‥」
 今、炎が上がる城砦の中をカオスニアンの姿が動いているのが見えるのだが、それらからそう距離を置かずに、木立で影となる場所が在るのをオリバーは見つけていた。
 彼の言う道で行けば、城砦内部には城壁の上にある通路から一直線となる筈だ。
「アリウスの話では、砦の騎士達が中庭でも戦って居て、体勢を立て直す為に、敵カオスニアン後方へ魔法を打ち込むまでは出来たそうですから」
 まだ時間はあるはずだと、アトラス・サンセット(eb4590)が様子を探りながら突入の機会を探っている。
 仲間の武器を見て、必要に応じてバーニングソードを付与することを言うアリエスを中心に、空飛ぶ絨毯で城砦へと突入する為に城壁に沿って上昇する。
 壁の上に辿り着いた時には、咽せ返る鉄の錆の匂いに眉をひそめるしかなかった。
「鉄の錆‥‥血の匂い‥‥」
「遅かったのか‥‥いや」
 バルディッシュは城壁の上部に走る通路に降り立って走り出す。
「敵だ!」
 その声に、サリトリア達が追従する。
「‥‥行ける」
 世界から消さねばならない存在を前に、剣を振るうサリトリアの腕が徐々に重くなってくる。
 だが、敵の勢いも彼女達十人の突然の乱入に対応しきれないのか、城砦に突入した後は突きに切り替えた田吾作の攻撃や巨体を駆使して仲間の援護と絡めた攻撃で押し返すバルディッシュの一閃が城砦を席巻していたカオスニアン達を徐々に後退させていた。
「‥‥聞いていたよりは、引き際が見事‥‥」
 さてと、首を捻るとバニスは己の中に湧いた疑念を振り払うように首を振ると、騎士達が籠城しているらしい部屋に近付いた。
「貴殿等は、この城砦を守る騎士か? 我等はギルドより城砦防衛に派遣された者也!」
「見慣れぬ方だが?」
 カオスニアンを屠った姿は城砦から見られていた様子で、バニス、オリバーと言った異世界からの来訪者の姿に見慣れない空気を感じたのだろう。
「ここでカオスニアンの一、二を倒して斃れるのと、国のこれから、仲間のこれからの為に情報を持ち帰り万のカオスニアンを倒すこと、どっちを犠牲になった騎士たちは喜ぶと思う?」
「貴殿は? メイの住人の様だが、この現状を見てもそう言えるのかね?」
 フローラ・ブレイズ(eb7850)に淡々と語る騎士の鎧には今切り結んだ跡と覚しき金属が擦れた跡があり、剥がれた徽章が激しい戦闘を物語っていた。
「‥‥ここで、無駄死にして兵力を減らすことが、後に市街まで戦火を広げる原因になるかもしれないのよ。そうなったらどうなるの? 私と同じ位かもっと下の、それも訓練もしていない女子供が戦う羽目になるかもしれない。それを防ぐためにも、貴方達は生きなきゃいけない!」
 自分も今カオスニアン達と切り結び、仲間の支えがあって始めてここに立っている。激しさを増す戦場の喧噪に気圧されながらも、フローラは騎士を見る目を外さない。だが、彼女をやや見下ろす形で騎士の瞳はあくまで湖面の如く澄んでいる。
「我等は、死は恐れては居ない。ここで防がねば誰がこの城砦内に居る民を護る? 君が彼らを見捨てろと言っているのではない事は判るが、実際に我等が離脱すれば、彼らを見捨てるのとは同意なのだ。卑怯者のそしりを受けてまで、我等は生きるつもりはない」
「そんな‥‥」
 相手が、決して自暴自棄になっているのではない事が判っただけに、フローラにはそれ以上続ける事が出来なくなっていた。
 確かに、城砦となればそれを全て運営しているのが騎士だけではない。普通の戦争ならば戦場に立つ者以外にむやみに手を掛ける事は無いだろうが、相手はカオスニアンだ。
「しかし、これは誇りある撤退にござる!」
「!?」
 凛とした声に、フローラも横に立つ異世界の戦士を見上げて驚きの表情を隠せない。
「敵に背を向け、退く事が貴殿らの騎士道に適わぬのは百も承知。同じ士分として、そのご無念は痛い程に分かり申す」
 黒髪の戦士は武器を腰に納め、真っ直ぐに騎士の瞳に向かって立っていた。
「全ては、後に続く者たちのために、我と我らが背中に守る者たちの為に。貴殿ら一人一人のお命に、幾万の民の無事が懸かっておりますれば!」
「‥‥しかし‥‥」
 田吾作の言葉の言葉を得て、騎士を見つめるフローラの瞳に気圧されて騎士は言葉を呑んだ。
「士分たる者は、命に代えても誇りを守らねばならぬ。しかし、この場に於いてこの上なお徒に命を散らすは、誇りには成り得ませぬ! ‥‥それに、どうかご安心召され」
 一転し、激しい言葉を収めた田吾作に騎士が訝しむ。
「我と我らの誇りにかけて、此処は絶対に抜かせぬ!」
「!?」
「そのご無念、我らが代わり万倍にして奴等に返して進ぜる!」
 無謀とも言えるこの言葉。
 だが、オリバーも田吾作に並んで彼の言葉を裏付けるように静かに騎士を見つめる。
「アリオ王が、何故天界人にさえ名君と受け入れられるか知っていられるか? それは、命の価値を誰よりも知るが故だ。 時に心砕いて仁慈を尽くし、時に涙を呑んで非情の命を下される。卿らは拾った命を薪とくべられるか? カオスの悪逆を伝え、次の戦いにて朋を救い幾多の民を救う事もせず‥‥勇士よ、ここは耐えられよ。後に続く誰かの為に!」
「王の‥‥」
 戦場の音が響いてくる。
 徐々に押されていた闘いの勢いを取り戻し、カオスニアンを押し返せるようにもなってきたのだ。
 一方的に重傷者が出るだけではないのが、サリトリアが回復させる騎士達が回復間もなく戦場に戻っていくので判った。
 彼らの仲間が外で戦って、今も戦線を支えているのが判る。
「今はこんなことを言われては腹も立つだろうし、それは判る。判るが‥‥民のことも考え、ここは飲み込んでくれんか? 終わった後で殴らせろというなら幾らでも殴らせてやるでな」
 口元に笑みを浮かべながら、しかし目は全く笑っていないバニスの言葉に、騎士の頭が深々と倒された。
「卿らに、共に戦場に立つ身として願う。どうか憎きカオスニアンどもから民を護り、城砦を守り抜く助力を願いたい。一人でも多くの民を逃し、撤退を!」
 苦渋の決心を騎士が下し、それが彼の部下らしき騎士達に広がっていく中を、サリトリアが回復魔法と仲間がそれぞれ持参した『ポーション』等で出来る限りの回復はしたと告げる。
「撤退戦ですか? 騎士として民の盾になるのは当然のことですからね」
 城砦の騎士と共に戦っていたアトラスが、カオスニアンの動きがようやく抑えられそうだと読んでいた。
 それは、前線で一騎当千の勢いで戦い続けるバルディッシュと、彼の背後を守るようにアリウス、ジャスティン、フィオレンティナらが脇を固めて戦線を維持出来たからだった。
「ここの通行料は高いですよ。あなた達の命では購えない程、ね」
「‥‥」
 アトラスが静かに告げるのを、オリバーの『ライトソード』とバルディッシュの『グレートブレーメンソード+2』の輝きが裏付けるようにカオスニアンを一撃し、城壁から地上へと叩き落としていた。
「‥‥ふふふふ。いいさ。この砦だけが、そうじゃない‥‥」
「待て。それはどういう意味?!」
「いかん!」
 フローラが踏み込むのを、ジャスティンが腕で制止する。
 その間にも城砦から身を躍らせたカオスニアンが、投擲した剣がフローラが走っていれば突き刺さっただろう位置を走って岩に突き刺さっていた。
「まだ、これだけの力を持っていたの‥‥」
 戦慄する冒険者達の前で、カオスニアンは城壁の側に生えている木立の下を走り出す。
「木で落下の衝撃を和らげたとしても‥‥」
「いや、だが深追いは禁物だ。これを見ろ」
 相手の技量を計るバルディッシュに、サリトリアが先程岩に突き刺さった剣を取って見せる。
「鉱物の毒と、植物の毒‥‥恐らく、二種類の毒が同じ剣に仕込まれている‥‥油断ならない敵だ」
「正しく、外道ですね」
 オリバーが唸り、まだ闘いの喧噪止まぬ城砦から脱出する民を護っている騎士達を確認する。
「生き残ったのは、僅かに彼らだけ‥‥いや、彼らだけでも生き延びてくれれば‥‥」
「何とか、護り切れそうだからな‥‥」
 突如城砦を襲ったカオスニアンは彼ら冒険者をもってしても完全に撤収させるには至らず、戦術的な撤退を取ったとしか見られなかった。
 まだ戦えると、剣を持つバルディッシュと共にカオスニアン撃退に向かう冒険者達の背には、あと少しもすれば落ち着きを取り戻すだろう城砦の姿が頼もしく、聳えていた。

【END】