●リプレイ本文
●楽屋裏訪問・壱
劇のほうでは解説役を担当いたします、猫目斑ですこんにちは。今回は特別にみなさまを楽屋裏へご案内いたします。
あちらにおられるのは劇「ドラゴン退治」(ってそのまんまかい)でお姫様をつとめられる、御神楽澄華様です。裏方も手伝ってくださる気さくなお方ですわ。
澄華「猫目様。どうなされたました? え、え。そんな、なんの準備もできてませんのに(真っ赤)」
近頃ではそういう趣旨の企画が、もてはやされるようですよ。
澄華「難しいものですね。ところで、猫目様。いきなりでたいへん申し訳ないのですけれども、あのぅ、私なんかが姫をやってもいいものでしょうか‥‥。その、もちろん逃げようなどとは思っておりません。ですが、私よりも猫目様のほうが‥‥」
自信をもってくださいませ、御神楽さま。そうだ、私がお化粧をしてさしあげます。とてもかわいらしくなりました。ほんとうのお姫様のようです、きっとうまくいきますわ。
さて、場所を移動しましょう。あちらで衣装あわせをなさってるのは、勇者を演じられる大空北斗さまと、姫の父君役とかその他の伊能惣右衛門さまです。
北斗「ほんとうにこれ、勇者の衣装なんですか?」
惣右衛門「はい、英吉利での正装だとおうかがいしました」
どんな衣装なのでしょうか‥‥これならば私も知ってます。イギリスの公式の場では、このような召し物を身につけられるんですね。
北斗「ほんとうなんですねー(涙)」
私は嘘はつきません、ごまかしはしますけど。澄み切ったこの目を見てください。と、あら、そろそろはじめるようですわ。北斗様もさっさと行かないと遅れてしまいますよ。
北斗「なんだか、ごまかされた気がするんですけどぉ(涙)」
(澄みわたる拍子木の音、天をつらぬく渦になる)
●「ドラゴン退治」一部
それは、ちょっとだけ昔のお話。
月道使えばあっというまに到着する、はるか遠い英吉利の国のあるところ。
とある地方に人のよき領主がおり領民たちも幸せに暮らしていました。領主さまにはそれは美しく優しい年頃の娘がおりました。嫁の貰い手は引く手あまたでしたが、姫はなかなか首を縦に振る相手がいないのが領主様のちょっとした悩みだったりするのです。
「わ、わた、私にはまだ婚姻なぞ早うございます。(こっから小声)伊能様きちんと云えましたっ」
「すばらしい出来です御神楽様(ここまで小声)」
ところが、平和な日々は突然悪い「どらごん」の到来により破られてしまうのです。
(わしゃわしゃ。お姫様といっしょに通り過ぎる、がらくたのようなでっかいの)
「きゃああ(ぼーよみ)」
「あぁ、なんとゆうことだ、姫がさらわれてしまった。こうなれば街中に御触れを出そう。『どらごん』を倒した者を姫の婿とし、次の領主とするものである。御仏の加護のあらんことを!」
英吉利はジーザス教です、領主様。
領主様はお触れをだしましたが、何人もの男たちがどらごんに立ち向かうも、生きて帰ってくるものはおりません。そこに満を持して(「ご〜ん(銅鑼・佐新)」「ぷわあ(法螺貝・北斗)」「でん!どん!(太鼓・グレン)」)‥‥効果音ども統一しろ!(ごすごすごす)。
もとい登場するのが。まだうらわかき一人の青年にございます。青年は正義に燃える瞳で誓いを述べます。
「領主よ、出立の前に。おたずねしたいことがございます」
「どうしたのじゃ」
「(素)この服、ほんとうに女物じゃないんですねー?」
汚れを知らない心身を包むのは、ひらひら〜ふわふわ〜ほわわわ〜♪なドレスです。着物の裾は乱さないように、開いた胸元は翻らせないように。 もちろん女装をうたがうなどといった、はしたない勇者など存在していようはずもありません。
「澄華さんのと色違いなだけですし」
「結ばれるさだめのふたりが、おそろいの衣装を身につけるのは、ごく自然だと思いますが」
「でも‥‥」
「二人では物足りないのですか? それでは、私めも同じものを身につけましょうぞ」
「これでいいような気がしてきました。がんばります」
こうして勇者はきびしい試練へと旅だってゆくのでした。
「せっかく男らしい役をやれるってきいてたのに。ぶつぶつ」
勇者はひとり森をすすんでゆきます。とてもさみしい道行きでした。
「でも、がんばらなくっちゃ。まずは、仲間を捜して。魔法の盥を探して‥‥たらい?」
樹。
「‥‥」
勇者がふくりむくととそこには、やたら存在感のある、みょうに男前の樹木がメンチをきっているではありませんか。
「私は一介の樹木。この地に生を受けてからただ真っ直ぐに天を目指し、また枝を伸ばして葉を広げていた木。そこの旅行者よ、私のそばで休んでいかないか?」
「‥‥ふつうの樹木は、口をきいて誘ったりしません。ともかく、僕には行かなければいけないところがありますので」
「どんな用事だい」
「ドラゴンを倒すための魔法の盥を探しに、森の泉へ参ります」
「あぁ。ドラゴンなら、」
この木なんの木奇になる木(正式名称)は、枝をゆらして道を示します。
「そこに」
いきなりかい(ぴしっ)。
この続きは第二部だったりしますけど。おたのしみにー☆
●楽屋裏訪問・弐
グレン・ハウンドファングだ。今回は私が案内役だ。だが私は木だ。木がべらべらとしゃべりまくるのも興醒めになろう、しばらくは「書木(記)」と呼んでくれてもいい。
佐新「‥‥あまりおもしろくない」
信じる者は救われる。というか、君にだけはいわれたくないのだが。齢二十六になってまで、猫にゃんにゃんな格好(まるごと猫かぶり)の周防佐新さん。
佐新「こ、これは、事情というものがあって」
?「やーん、佐新様かわいいーっ(ガシ)」
またひとり迷える衆生(仏教用語)を救ってしまったようだね。さて、此度は、おもに「どらごん」の制作現場からだ。――おまえはどらごんがなにか知っているのかって? もちろん私はイギリス出身だからね、知っている。意外と可愛い声で鳴くのだよ。だね、おなじイギリス出身のレナード・グレグスンさん?
レナード「ギシャー? 僕としては上品ではないと思うのだけど、のぼりつめるとそう叫びたくなる男性もいるかもしれないね。ボヘー――まぐろはどうだろう。トントントンカラリン、ふむ。道具にたよりすぎるのはよくないんじゃないかな」
レナードさんはものしりだね。まぐろという種類のドラゴンがいるのか、さぞかし美味なんだろう(※ドラゴン「まぐろ」はいません。たぶん←たぶんか)。
ニキ「あ、あの。それ、ちょお違う思いますえ」
これは、ニキ・ラージャンヌさん。ではどんなのがドラゴンだったろうか。
ニキ「欧州やとときどき、ドラゴンパピィとかフィールドドラゴンとか見かけたりしますやろ。あれをもっと大きゅうしたのと違います?」
そんなのもいた、かもね。ときどきふたつに分裂して、目から怪光線を出すんだった(※いうまでもなく嘘)。
レナード「うん。で、黄色地に桃色の星模様なんだ」
なつかしい。もっと思い出にふけりたいところだが、時間だ。そろそろ切り上げよう。
ニキ「それもなんかちが‥‥って、こ、これ、意味があったんどすか?(汗)」
(真相と再開は闇からの訪問者のごとく、閑寂の、そのさき)
●「ドラゴン退治」二部
勇者が(前略)木の枝さす方向に目をやりますと、そこにたたずむ魔の影とは(「ご〜ん(再び銅鑼)」)。
「よくぞここまで来た、勇者よ。我が神技をもってお相手しよう!」
なるほど。銅鑼をご〜んと鳴らして、どらご〜ん。
「俺なりに考えてみた結果が、これだ。せっかくだから説明しとこう。『どらごん』ってなぁ恐ろしいもんなんだろ? 馬胴鬼面の妖怪が駆けてったらすっごい恐ろしくないか? でもな、馬の変装道具はないし、猫ならまぁ四つ足だし似たようなもんだろう。顔はひとつだけじゃ物足りないから、般若と鬼と天狗の三つつけて、銅鑼も前とうしろにさげて(真剣)」
よく分かりました佐新様。
(ごすっごすっごすっ爆投三連撃)
「すごい。さすが魔法の盥、っぽい木桶。僕がなにもしないのに勝手にあらわれて勝手に銅鑼ご〜んを倒し‥‥それ、僕がいる意味ないですよーっ(ちゃぶ台がえし)」
猫かぶりだけで終わってくれたら、とっても愛らしかったですのに。どうしてそこで、余計なことをしてしまうのでしょう。人は哀しい存在ですわ、だから木桶を投げずにはおられませんの。
――‥‥あら、申し訳ございません。脱線してしまったようですね、
今のはただの余興でございましてよ(微笑)? あらためまして「そこにたたずむ魔の影とはっ」(ぼろくずになって倒れてる佐新の遺影という説もある)。
「きゃああああ。助けてくださいまし、勇者様(ぼーよみ久しぶり)」
(「惣右衛門さん。てつだってもろて、すんません」)
(「いえいえ。こういうのもおもしろいですなぁ」)
地を響かせ天を轟かせる、あぁ、なんとおそろしげなその姿はっ。
‥‥――なんで、黄地に桃色の星模様のでっかい素足、しかも人間の、なんですか。一本足妖怪の超巨大かわいい版みたいじゃないですか。
(「全体つくる時間あらしまへんでしたもん。部分部分でおしてったほうが迫力でますし。柄はレナードさんがこれやて云うてはったんです。足は自分のを参考にしましたけど」)
(「それにしても、繰演というのはおもしろいですなぁ。この棒はひっぱってもよいのでしたかな?」)
(「あ、そっちは」)
銅鑼ご〜んの出現が逆鱗に触れてしまったのでしょうか、どらごんが暴れ出してしまいました。なんということでしょう、理不尽な暴力のまえに(前略)木はなぎたおされてしまいます。「健気な木が或る日、突然現れた巨大な存在に惨たらしく折られて生を終える。何と哀れな大木。おのれドラゴン許すまじ」――いや、設定上はそうなってるんですって。健気、の部分に疑問をもたれる方もおられるようですが、あなたの心にだけしまっておいてください。
「キシャーああああ!」
木があばれてる? え、狂化? なんですそれは?
勇者様、そろそろがんばって。
「そうでした。『どらごんを倒さねば真の平和はありえない!』‥‥あの、どらごんより木のほうがやばいような。と、ともかく、いっきまーす!」
単身、勇者はどらごんに挑みます。ふりあげた剣は半月の軌跡をえがき、ドラゴンの腹にめりこみます。銀の血飛沫が噴き出し、星となって飛び散ります。凝ってますねぇ。
(ぎぎぎぎぎ。ばたーん)
(「惣右衛門さん、あとおねがいします」)
(「はい。がんばってきてください」)
「勇者様、助けてくださってありがとうございます。私は旅の博士。どらごんに呑み込まれて、いままで腹のなかに閉じこめられておりました」
それは、待て。なんだかすごく、おかしいです。
「一言だけっ。一言だけいったらあとはもう引っ込みますし、ほんま」
「‥‥まぁ、一言ぐらいならどうぞ」
「おおきにどす。ほな『あれが最後のどらごんとは思えない』‥‥あぁっなんかインドゥーラっぽいっ(満足)」
「そのとおりだ。さすがはコバヤシくん(誰) 僕こそが真のどらごん、どらごんのなかのどらごん、ろーどおぶざどらごんだよ」
だから、くぉら。次から次へと気ままに出てきやがって、人が話をまとめるのにどれだけ苦労すると‥‥こほん。
‥‥いや、もうつっこみたくないですし。仕方がありませんから、解説だけはしますけど。足どらごんのうしろからあらわれたろーどおぶどらごんは、足どらをも超えるおそろしい姿をしておりました。黄地に星模様はおなじですが、なんとっ、まんなかに三本目の足こと、天狗の面のおもに鼻梁の部分が天にむかって雄々しくそびえたっているではありませんか! ふっ(遠い目)
「僕は権力なんかには興味がない。君さえいればいいんだよ、それとももうちょっと悪いほうが好みかい? 俺なしじゃいられない体にしてやるぜ、ってどうかな」
「レナードさん。よく見てください。僕です。澄華さんじゃなくって大空北斗です」
「‥‥待ちたまえ。なんで勇者がドレスを着ているんだい?」
「やっぱりこれって女物?!」
そのすきに!
「目くらましにかかったな。今度こそ、姫はいただいていく!(ご〜ん)」
「きゃああああ‥‥腹筋のつかいすぎでちょっとおなかが痛いです(ふみぃ)」
なんと! 勇者のすきをついて、死んだと思われていた銅鑼ご〜んが横から姫をさらってゆきます!
そう来ましたか。
「佐新様のバカぁ、余所の女性に手を出すなんてーー!(ごすごす無限増加)」
「お、落ち着け。こ、これはあくまで役柄で」
木桶はあっというまにどらごんのうえに積み重なってゆきます。勇者さまの勝利です。というか、私の勝利です。
「‥‥なんか納得いかないけど、でもっ。これで平和はとりもどせたんですね!」
「そうじゃ、よくやった」
「うわぁ。領主様、唐突に森のなかにあらわれないでください!」
「若者よ、褒美として姫を嫁にとらそう! もっけの幸いだ!」
「きゃ」
領主はずずっと姫を勇者のまえに突き出します。ものすごい押しです、最強です。
「さぁ誓いの接吻を!」
「「ええっ(二重奏)」」
きゃあ本番ですのね。わくわく。
「さぁ」
「え、え。あの私はまだ‥‥ほんとうにごめんなさい、大空様!」
追い詰められた姫は偶然、手につかんだなにかをふりまわします。それは、銅鑼ご〜んがのこしていった天狗の面です。十割命中! ぺきっと小気味いい音をたてて鼻を顔面にうけた勇者は、声もなく仰向けになって倒れてゆくのでした。
「さすがだ、姫。勇者をも倒すとは、なんという腕前。褒美として姫をつかわそう‥‥おや?」
「はい?」
そして、うっかり生き残ってしまったろーどおぶざどらごんは、
「こ、この、レナード・グレグスン。男を口説くとは技を落としたか‥‥こうなれば森の妖精をさそうところからでなおしだ」
「キシャー」
「森の木もなぐさめてくれる(違)」
あたらしい野望に燃えておりました。
(めでたしめでたし♪)
(結局どらごんってなんなんだ。水○があるかもしれない足のこと? そりゃ怖いけど)
(「そんなのあらしまへん!(大声)」)
●配役表
周防佐新(ea0235):『ドラゴン退治』銅鑼ごーん
猫目斑(ea1543):『ドラゴン退治』解説役
ニキ・ラージャンヌ(ea1956):『ドラゴン退治』博士
御神楽澄華(ea6526):『ドラゴン退治』お姫様
大空北斗(ea8502):『ドラゴン退治』勇者
レナード・グレグスン(ea8837):ドラゴン?
グレン・ハウンドファング(eb1048):奇になる木
伊能惣右衛門(eb1865):『ドラゴン退治』領主とか