【京都救援】月に遊ぶ

■ショートシナリオ


担当:紺一詠

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 46 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:06月16日〜06月19日

リプレイ公開日:2005年06月24日

●オープニング

 目の前では、江戸の冒険者たちを統括する幡随院藍藤という男が、静かな面持ちで茶をすすっていた。
 どうやら、普通にギルドへと出すにははばかられる、内々の話ということらしい。
「ま、話というのは月道についてのことだ。次の月満ちる夜に、先ごろ発見された京の都への月道が開かれる」
 噂に寄れば先月、江戸の地下に都に通ずる新たな月道が発見されたとのことだった。それを常に使えるようにと、整備に向けての作業が急いで行なわれているという話も、やはり市井の噂。
「これは家康様のご判断でな。噂にも聞いていよう、都の死人の群れのことを。奴らを討伐するために此度月道を用い、物資やら心あるものたちを東国から向かわせるのが、今回の目的だとか‥‥」
 その目的を優先させるため、源徳家は月道を公開せず、ギルドに依頼を出して人を集めよう、ということらしい。
「詳しい内容は係のものに任せることになるが‥‥受けてくれるかね?」

 そういうわけで、京都。神皇さまのおひざもと、陰陽術を盤石とするいにしえの都。家康公じきじきの賜命、いやさ、依頼により大和の討伐隊への参加をうけおった冒険者たち、月を抜けて、今、ここに降り立つ。が。
「‥‥江戸とちがうなぁとは思うんだけど」
「なんだかぴんとこないや」
 冒険者たちは、物珍しげに京の町をみわたした。月のみちびきによる瞬間移動には、どうにも現実感がともなわない。そして、家康公からの急な依頼、という事情も彼らの血流をたぎらせていた。眼がさめる。雲の上を歩くがごときふわふわとしたこころもち、不思議とじっとしておられない。月夜の狼とはきっとこういう具合なのだろう。
「‥‥どうする?」
「朝まで時間はたっぷりあるなぁ‥‥」
 この夜更けだ。開いている店など、そうあるまい。冒険者ギルドに行けばこれからの方針も見えてこようが、いきなり殺伐とした本題にはいるのもなにか不粋な気がする。己をもてあました冒険者たちは、たがいがたがいに指向を求めた。
「どうする? どっか行きたいとことかある?」
「女郎屋」
「それは、なし」
「‥‥どうだろう? みんなで一晩過ごすというのは」
「それいいんじゃない? こんないいお月さんだもん。すぐに宿とって寝るのももったいないよね」
 冒険者たちはふらりと歩き出す。月の光が彼らの背中を明るくする。ぞろりと伸びた影があとから追い掛ける。明日からは――朝からは、死をすら敵に回す血なまぐさい日々への序章。また同じ顔が生きてそろうとはかぎらない。
 だから今日は、今日ぐらい、
 とことん月に遊ぼうか。

●今回の参加者

 ea0062 シャラ・ルーシャラ(13歳・♀・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea0348 藤野 羽月(27歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0352 御影 涼(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea2751 高槻 笙(36歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3880 藤城 伊織(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3900 リラ・サファト(27歳・♀・ジプシー・人間・ビザンチン帝国)
 ea4530 朱鷺宮 朱緋(36歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea9460 狩野 柘榴(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●サポート参加者

御影 祐衣(ea0440

●リプレイ本文

 壺中の天。澄んで揺らぐ液状の夜である。蚊柱が燈火に灼かれての喧噪、西へ東へ、しゅうしゅうと飛蝗の鬨がくさむらからせりあがり、川の往くは還らぬの哀を愁いて恋ふ。夜降ちの寂寥は、浮雲たちの謡に舞に、しかし存外ににぎやかしい。
「きれいなお月さんだねぇ」
 藤城伊織(ea3880)、真鉄の煙管をおもむろに吹かせば、けぶった気息は夜気のとがりにぶつかり完膚なきまでくだけてちった。今夜の月はまるい。天満月、と人は云う。伊織のまた一差しが、光と光をあつめるものをかりそめのもやに隠す。透いた風がさぁっとそれをすっかりはらったところで、高槻笙(ea2751)は月の真下、仰向いた姿勢で縫い止められていた。黒い瞳の底で、月色がぐずぐずにとろける。
「ほんとうに‥‥いい月ですね」
 江戸の月と京の月があからさまに変わるわけはないが、たしかにどこかがずれているようだ。心持ちの問題といってしまえばおしまいだけど、それだけで終わらせるのもものがなしい。愛しいみどり児に鈴を付けてやるように、小粋なよすがをつけてやろうではないか。笙はそれを、祈り、とする。京を居場所とするものたちの。京に生き、笑い、泣く、笙にとってかけがえないものたちへ贈る、贈られる。
 ――合掌という名の定義式を経ずとも、祈りは完成させられる。胴をくるむ志士の羽織、腰に佩いた日本刀、力でなくしばる桎梏を手にしたとき。しめやかに。
「どうした笙?」
「いささか月に酔ったようですよ」
「いかんね、そんなことじゃ」
 ほんものの竹露も入れていないうちにどうする、と、伊織はとっくりを笙の目上でころころと振ってみせた。けれどそれに、より興味をいだいたのは狩野柘榴(ea9460)のほうだ。器の軌道をせわしなく瞳で追いながら、いいないいな、と譫言をかさねる。
「俺にも分けてくれる?」
「お子様は草でも噛んでろ」
「ええー。せめて甘酒ぐらいは許してよ」
 もう十八歳なんだし、いいじゃない。ねぇ? 狗尾草に釣られた仔猫のように、大股で伊織にまとわりつく。
 彼らが散策するのは、京の東の鎮守、鴨川のほとりだ。晴れた夜天はのどけらかまし。流水の滔々はいかにも涼しい位相となった。京は平穏、柘榴はいったん行動を止めると、自身をでんでん太鼓とでもとらえてるかのように、まわした両腕で水平を切りとる。しっ、と虚をあいての徒手空拳。
「元気に歩いていこう! 俺たちが苦しい顔をしていたら、町の人は不安になってしまうもんね」
 しかし御影涼(ea0352)は怪訝なおももちで、柘榴を見遣るのだ。
「こんな時間に往来を交通するのは、盗っ人か見廻組か新撰組ぐらいなものじゃないか?」
「‥‥そーともいう」
「まぁ人のことを云えた義理じゃないんだが」
 涼の口添えたうしろふたつの組織にくわえ、検非違使、黒虎部隊、いっけん典雅な京はしかし警察ですら跳梁跋扈のおもむきがあった。涼は整った眉に戒心を刷く。たとえば新撰組の隊士などのなかには志士(彼らは八名中三名が志士、どうして京向きの人員である)にたいして過剰な敵愾心を燃やすものもいると聴く。こんな深夜の行状に難癖でもつけられようものなら――‥‥。しかし闇はうつくしく闇であり、隠者の沈鬱にひたりこみ一途に黙するのみである。
 安堵のついでに思いやるのは、過去、とわりきれるほどには彩の落ちていない、過去。月影ですらそれを翳らすことあたわず。磧にうちかさなる小石どもを間仕切りになぞらえて投射するのは、すみれほどにもちいさな生訣だ。
 涼の妹である御影祐衣は、本懐を遂げろ、と彼に云った。あとは祐衣に任せた、いってくるよ、と告げる涼に。ふたり、それ以上ことばを足さず。妹は――泣いていた。おそらく当人は意識していなかっただろう、まなじりから音も意図もなく伝った滴を彼女はどういうふうにも自覚していなかったのだろう。それでは、自分はどんな顔をしていたのかといえば、これがよく記憶にない。思い出をきざむのは、やはり、月で、夜で、自分はそこにいたという、そこ以外にはいなかったという、妹のまんまえに立ちつくしていたという、それでいて別れる友の存在も妹の姿にかさねていたなという、それぐらいのこと。
 ――江戸の月はあのときとおなじにまどろんでいるのだろうか。愛し子をかいなにつつむ母のごとく、めばえたばかりの緑にそそがれる露のごとく、願わくば彼女にもあたたかな高配を。
 振り仰ぐ、と、いつもはそこに無意識の気をまわしているはずの帯縛り――つまりは士分の象徴とも帯刀の箇所――にありあまる質量が急に増えたのを感じる。柘榴がぎゅっと体をよりかからせていた。
「だーかーらー、元気出してこうって」
「べつに俺は気を落としてなどいないが」
「そう? だったらごめん」
 くつくつという忍び笑いととともに、紅い雪洞が濃紺の地平をすべってゆく。と見えたのは花帽子をといた朱鷺宮朱緋(ea4530)のつむりで、みぐしの一筋一筋、夾竹桃の花のあざやかさが篝をあざむく。茶というよりはもっと紅殻に寄った瞳があらわになり、じゃれているものたちにどこか翳ったいつくしみを投げかけている。
「円満であるに越したことはございませぬが、そんなに騒がしいと、ほんとうに町の皆様に叱られてしまいます」
 えんまん、という字面からしてお月様のようなまるみのある単語。それ、を別の方角にもながしてやって、
「そう思いません? リラ様、羽月様」
 リラ・サファト(ea3900)と藤野羽月(ea0348)。むつまじく手を繋いでいる。京を知る羽月が、彼方の寺社の輪郭を指さして、何事かリラにささやいた。受けたリラは初めての眺めを、なつかしく見澄ます。旧い親友の消息を思いがけず知った目付きで。羽月は四つの齢まで、京で育ったという。義兄も現在は京にいる。ならば「ここ」はとても近い場所。
 リラに抱かれた羽月の仔猫(たま)に注進されて、リラと羽月はようやっと、朱緋から声をかけられていたことに気がついた。もちろん悪気はないし、朱緋とてそうとは露ほどにも考えていない。が、朱緋の瞳を覆う蔭はいっそう暗みを増した。まぶしいものにでも目を奪われたかのごとく。――蔭の名を悲しみという。人の輪にはじかれたようで、朱緋が識らず目を伏せたとき、さっき涼が感じたのと似たように朱緋も手にやわらかな質量を感じた。シャラ・ルーシャラ(ea0062)だ。
「なかよくしましょうです」
「にゃあ」
「こるりもいます。じゅうごやのおつきさまにはうさぎさんもいます。‥‥じゅうごやってなんですか?」
 朱緋は、満月のことでございます、と諭した。私たちがこうして参りましたように、十五日の夜にはお月様が開くでしょう? だから十五夜というのです。へぇ、とシャラが賞歎をあげる。
「おつきさますごいです。あけひさんもものしりせんせいですぅ」
 このぐらいはジャパンに育ったものならば、雑学の範疇にも入らない。らしい謙遜でシャラの尊敬をやんわりとなだめようとした朱緋、けれどシャラの握るてのひらのぬくもりにはばまれて、朱緋の云い口はもやくやになり、
「だから、みんななかよしです」
 シャラのねっからの笑まいに、じきゆるゆる溶けていった。シャラにせがまれ、朱緋はともに月の唄を合わせる。うさぎはなにみてはねる‥‥の韻律。

 白い花。夏椿。薫り高い百合。小さい舟のように揺らいで、では櫂は彼らの思慮か。うつつに漕ぎ出す松風月の真中。

 朱緋の発案で、冒険者たちは今日の記念になんらかの品を互いに交換しあうことを決めた。誰に誰が贈るかは、小石をつかったくじで決める。精霊のおみちびきに従って――偶然とはときにどんな戯作者よりこそばゆい演出を試みる。
「あら」
「これも縁か‥‥?」
 リラへ品をわたすことになったのは、彼女の夫である羽月だ。普段でも絵からぬけだしてきたような鴛鴦之契のふたりでも、改まって贈りものをとなると、どうしてだかやたらにきまりがわるく感じられた。ひとしきりおもはゆくきっかけを探り合ったあと、
「手を出してくれ」
 羽月にうながされて、リラはたまを下へやると、すなおに両の手で皿をつくった。羽月は蝶の羽をつまむように、それをゆっくりとリラのもとへ寝かせる。鋭敏な尖端をもつ多面体は、一見とげとげしい輪郭とは別に、まるで小さな卵に見えた。
「これは‥‥」
「石英だ。上手く磨いてやれば水晶となるのだろうが、これは無理だろうな。曇りが多すぎる」
 だが白く濁った石なれど、元は水晶になれなかった石。光るものでなくても存在する、冒険者はそう言うもので良いと願いを込めて。――由来を言い果て、羽月は口をつぐむ。こころよい静寂にひたひたとくるまれる。
「‥‥感傷にすぎただろうか」
「どうして? すてきなおはなしではありませんか」
 リラ、くすりと片頬笑む。取った石英を頬にあてれば、石の冷たさと羽月の温もりが身よりもいっそう深く沁みる。
「たいせつにします。この石も、京の町も、今日という日も」
 針で縫うように、ひとつひとつ、羽月が話してくれた京の思い出も。羽月が幼いころに見かけたという織物の話。幼い目を撃った美麗、子どもごころを撃った鮮烈、。あれに少しでも近づきたくて華道家をえらんだということ。――リラは蜘蛛の糸を手繰るように、それを心にしまいこむ。
「ずっと忘れません」
「では、俺も誓おう。今宵の月に。日ごとに生まれて姿を変えるあの不実な天儀でなく、今日という永久の月に」
 しかし、その傍ら、ちょっとした犠牲者がひとり。
「俺、忘れられてる?」
 で、うずくまってひとりぽつねんとしていたのが、柘榴。羽月のためせっかくいい空気をつかまえてきたのに、とすっかりいじけまくっている。さきほどの空拳のことだ。そんなときもある、とひとりものにはなぐさめにもならぬ言葉を吐いて、伊織、柘榴の後背部をごつんと軽く拳固でやった。
「おら、印籠だ。若いつっても怪我するときもあるだろう、薬でも入れておけ」
「ありがとう。‥‥むー、でも」
「薬は嫌いか?」
「おまけでいいから、お酒もつけて」
 あきらめてなかった。
 そして、一方で、
「あけひさん、どうぞです」
 おおよそ一尺半の背丈の段差。シャラがいっしょうけんめい背伸びしないですむように、朱緋は腰を屈めた。シャラが、はい、と両手でわたしたのは、
「こるりといっしょにみつけました」
 三本ばかり放埒に走った線が見ようによっては、福の神にも似る石であった。まっしろい猫が、にゃあにゃあ、と催促するよう鳴くので、朱緋はそうっと受け取る。
「わらってるみたいなおかおしてます。えがおのおまもりがずっとあけひさんをまもってくれます」
 朱緋は胸におしいだく。笑顔。ずっと絶やさずにいられるだろうか。
 む、とその朱緋の仕草をどうとったのか、シャラはちょっと小首をかしげた。
「おつきさまもわらってます」
 雲間にほどける月の模様、たしかに、そのようにも見える。シャラは月を真似るように、いとけなく微笑した。
「わらっているおつきさまがおそらにいてくれるから、シャラにはできることがあるんです。――えと、えっと、だれがおしえてくれたかわすれちゃいましたけど。でも、シャラはいつかつきのみちをひらきたいです。そしてがいこくにいってしまわれたとと様をむかえにいくのです」
 シャラのつたないが必死の所見を耳に入れて、朱緋、『ととさま』の単語から昔を追想する。ある意味では朱緋はシャラとはまったく対局の立場にあった。置いていかれたシャラと、みずから家族と離れ江戸に起った朱緋。ジャパンの人となりとしては少々特殊な赤に籠められた己の容貌を忌んでのことだが、係累が彼女を責め立てるなかでの、父と兄の優しさと強さは彼女の誇り。彼らの息災をねがっても、現実の帰宅がかなうことはないけれど。
 だから朱緋はシャラに告げる。託すような、祈るような。
「きっと‥‥。シャラ様の御父上もシャラ様との再会を楽しみにしておられますよ」
「えへへ。シャラもそうおもいます」
 笙からもらった提灯をかかげて、シャラは天を支えるようなバンザイをした。
 贈り物交換、他の組み合わせとしては、涼へ朱緋から月に似せた銅鏡、その涼からは伊織へ月を模したごとき白く丸い石、リラから笙へ小さな巻き貝。
 これを耳に添えれば波の音がしますよ。リラはそんな断り書きをつけて笙へ手渡す。
「京は現在、どのような具合ですか?」
「そうですねぇ‥‥。南風は苦い、こんなかんじでいかがでしょうか」
 ほとんど蜻蛉返りで江戸から京へ、京から江戸、ふりかぶって江戸からまた京への旅烏の笙、京の雰囲気といってもそれほど微に入り細に入り知っている由はない。が、畿内をおおう暗澹の帆、陰惨の翼、隠そうとしてもしきれない悲劇の予兆はまぶたのうらにすらたちこめる。一瞬ではあるが明確な映像。たとえば、親を失った子が木陰で途方に暮れて泣く。子とはぐれた親が辿り着くことなくさまよい果てる。自分たちが笑っているあいだにも、今、誰かがどこかで――生命の芯を犯す痛痒にさいなまれているのだろう。
 柄にやりかけた指、爪が月をはじいて冷たく光る。瘧のごとき震え、いいや脅えか。はかない蜉蝣を思わせる振動。それをふりきるように、笙は顔を上げる。
 分かっている。剣をとるべきは、今、ではない。
 死を凌駕する、来るべき生の戦場にて。
 笙の逡巡がつたわったのだろうか。涼も月を見る。彼の誓いは月にかざしたてのひらに透ける薄明光線、刀ををとる仕草で手を握る。
「そのために俺たちは来たのだからな」
 誰も彼もが江戸へ何かを残し、あるいは捨て、それとも忘れてきた。しかしそれは永遠ではない。きっと取り返せる。黄泉の兵に傷つけられたものたちにも再び喜悦はあたえられる。誤謬であろうと傲慢であろうと信仰せずにはいられない――それが人だろう。
 笙が顔を下ろすと、待ち受けていたような伊織と目があった。
「‥‥ま、物思いにふけるのもいいんだけどな。あっちのほうも思いやっとくれ」
 あっちとさされたのは石榴、待ちきれずぷーとむくれる。
「なー。そろそろ本当に宴会やろうよ」
「えぇ、朝になってしまうまえにぜひとも。楽があるならば舞いたいのですが‥‥」
「はぁい。シャラはバードですからおうたうたえます」
 シャラと顔を合わせて微笑むリラ。唄はもちろん、うさぎと十五夜お月さん。シャラに誘われ、おずおずと声を重ねる朱緋を、咲き初めた野花菖蒲がこうべをふって助ける。

 そして、死よりも等しくすべての民に朝が来る。
 冒険者たちに栄光と勝利と、輝くばかりの尊き明日があらんことを。
 彼らの過ぎたところに、誰かのこぼしたみどりの酒の露、しかしてじきに朝日へわだかまっていった。
「それじゃ、また、元気で逢おう」

●ピンナップ

高槻 笙(ea2751


PCツインピンナップ
Illusted by いつき愁