葉っぱと貝がら、海の月。

■ショートシナリオ


担当:紺一詠

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 0 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月19日〜08月24日

リプレイ公開日:2004年08月27日

●オープニング

「もーいーくつねーるーと♪」
 江戸でおっきなお祭りがある。おまつりにはごちそうがつきもの。食材、調達してこなきゃいけないよね。捕獲と輸送の人出がたりなくなったので、冒険者ギルドにもおはちがまわってきた。今回のまとはこりこりきゅっな口当たりがたまらないクラゲさま。
 おや。っつうことは海に行けるじゃん。
 ん? (おもにうしろの異次元の方角にむかって)「でもジ・アースには‥‥がないからつまんない」だと? ばかやろう(と、ぐー拳炸裂)(いや、深く考えるな)、そんな情けないこというな。あっさりあきらめちゃうなんて、おいちゃんあんたをみそこなったぜっ。なければあるものを利用すればよいだけじゃないか。幸いにして、ジャパンは自然豊かな四季の国。素材にはあれこれ困らない。
 葉っぱが1枚あれば、野郎の場合、隠さなきゃいけないものはほとんど隠せる(推定その1)!
 女性の場合、それに貝がら2枚でもつけくわえてやればまったくの無問題だ(推定その2)!

 と、いうわけで。

 男どもよ、葉っぱを競え。
 女どもよ、貝がらを比べろ。
 ついでのついでに、ざかざかクラゲも倒してこい! ←注:あくまでもこれが主目的です

●今回の参加者

 ea0062 シャラ・ルーシャラ(13歳・♀・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea0639 菊川 響(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea1317 マケドニア・マクスウェル(65歳・♂・ウィザード・シフール・イスパニア王国)
 ea1543 猫目 斑(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea1956 ニキ・ラージャンヌ(28歳・♂・僧侶・人間・インドゥーラ国)
 ea2233 不破 恭華(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea3192 山内 峰城(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6010 黒野 辰(34歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 夏の終わりの海。
 どぱーん、ざざーん、じゃっぱーん(ジャパン)。

『エチゴヤで褌が売り切れてたのは、オレの陰謀じゃねえええ!』

「あ、変な声」
「はなしますか?」
 話す、とシャラ・ルーシャラ(ea0062)がいっているのは、月の精霊魔法サウンドワードのことだ。しかし菊川響(ea0639)はやんわりと首をふる。
「やるだけムダだから。それよりシャラ殿」
「はい?」
「シャラ殿は‥‥その‥‥胸」
 なんだかいろいろな、そう、いろいろイロモノそれだけ、な理由により最先端かつ前衛的、誇れジャパンの侘びと寂びと萌え☆な恰好で海辺を闊歩することになった冒険者たち。が、シャラときたら、上半身はそのままだから相手が10歳だろうとつるぺただろうと、響としては目のやりばがなくってしかたがない。はじめシャラは響の云いたいことが分からなかったけど、あ、と気付いてほほえんだ。
「シャラはぺったんこだから上はかくさなくっていいんです」
 ほら、こんなにぺったんこ。不破恭華(ea2233)の隣に並んでみせて、たゆんたゆん、するシャラ。
「恭華さんだと小さくみえる貝がらも、シャラだとこんなにおっきく」
「わーわーわーっ」
 童女の無邪気、少女の特権、シャラは恭華の貝がらを『ちょいと拝借』すなわち『一時的になんにもなくなる』結論『見えてしまうではないか、見えたら嬉しいものが』! 貞操観念のかたい恭華もまさか年下の女の子に剥がれるとは思っていなかったから、油断があった、そしてその隙にはいりこんだ器用な肉体。
「‥‥手」
「はっ」
 だけどもろ見えしてしまったら、表に出せなくなりますから! 残念! 響、思わず手を伸ばして隠そうとしたら、そこはとってもやわらかくってあったかいの。恭華の眉がひくっと硬く釣り上がり、危機と鬼気とびみょうな嬉々がそこらを色のない霧のようにただよう。

「破廉恥野郎、今すぐ仏の御許へ送ってやらぁー!(ガシガシガシ)」
「誤解だ、いやたしかにちょっとはつかんだかなーってうわあああ!」
 ―― ただいま 年齢制限の必要な暴力描写が画面のむこうでくりひろげられております ――
 ―― しばらくのあいだ 風にじゃぶじゃぶながされるシフールな錬金術師 マケドニア・マクスウェル(ea1317)様でお楽しみください ――
「認めたくないものだな、若さ故の過ちとは」
 ―― ひきつづき『葉っぱと貝がら、海の月。』をお楽しみくださいませ ――

 ふだん冷静なお人がきれると怖い。でも殺すわけにはいかないので、そこまでにしておいてね♪
「シャラ殿の云いたいことはよく分かった。が、ダメだ。なにがあぶないって」
 ようよう生還。生きているってすばらしい=ちみっとばかりいっそ殺せ状態。
 本気と書いてマジと読む。菊川響と書いてカモネギと読む。幼女趣味と書いて‥‥気にするな。響はかつてないほど真剣なおももちで、シャラの両肩をつかみ、低音の説得。
「さっきの幻の声の持ち主が、いちばん、あぶない」
 そのとおりだっ! わーはっははははははは‥‥(略

 ―― ただいま 報告書に出なくてもいいものが出たことを深くお詫びいたします ――
「ここは目の保養になるものを代わりにお見せしなければいけなかろう」
 して、策はあるのか。マケマケことマケドニア・マクスウェル、響からゆずられたという松葉の蓑を腰にまき、ただそれだけを、つまり他にはなんにもないまったくない♪
「まかせろ伊達に59年(シフール時間=実質119年)生きてはおらぬ」
 ふぁさり、涼しげな風がマケマケの下半身を掬う。
「オーモーレツぅ☆」
 ―― ひきつづきお楽しみ‥‥って見棄てるなそこ閉じるなそこ! ――

 響は己の荷袋をあさり、両脇から紐をたらした一枚の布をとりだす。
「シャラ殿。なんなら、これを胸に巻いたらどうだろう」
「‥‥えと‥‥」
「あぁ、俺の予備の六尺ふんど」
「(速攻)ごめんなさいです」
「いいなー」
 あなたほんとうは高速詠唱を修得していませんか?な瞬速度合いで深々とあたまをさげるシャラ。そのうしろからにょっきりと、黒野辰(ea6010)が割ってはいる。
「俺が買おうとしたときには、もう売り切れてたんだぜ。しゃーねーから、いわれたとおりにしたけどよ。ほら」
「いやぁっ。みせないでくださいっ」
 辰が突きだそう(何を)とするほんのいっしゅんてまえ、たしかそこらの岩陰で葉っぱの恐怖にふるえていたはずの猫目斑(ea1543)が、逆に辰を突き飛ばす。こーゆーときのお約束、より被害がでっかいほうへ、つまるところはクラゲのただよう波打ち際へ辰くんろくな準備もしないままでごろんごろん。さすが黒野辰、初の依頼をこれだけで一巻の終わりなんざ、おれたちにできないことを平然とやってのける! そこにシビれる(辰が)! あこがれるうゥ!
 っていますぐ助けりゃすむ話なんだけどさ。
「しかたありまへんな」
 素手でさわるのがよっぽどイヤだったのだろう。足蹴。回転する辰を、ニキ・ラージャンヌ(ea1956)は踵で抑止する。あと1回しぼれば立派なぼろ雑巾になる物体を、氷河よりも冷たく、風呂上がりの兄貴の体温よりなまあたたかく、ちょっと涙目で見守った。
「ジャパンの人ってほんまよう分からへんわぁ」
「俺は明日生きられるかどうか、分からない」
 辰、息、絶え絶えだから、ってわけだけでもなく。
「やだぁ」
 泣きだす寸前の斑の声。キリキリキリキリっと極限までたゆむ空気の音。思考回路はショートボウ寸前で、斑の標的は、そこはかとなく緑の染み。
「こっち来ないでくださぁい、ぜったい!」
「うん。行かないから、それ、しまって」
「そちらこそ、それをしまってください!」
 ええい、指示語ばっかじゃ話がすすまんわい。ぶっちゃけちまえ。辰よ「転がったいきおいのせいではげかけてますよ、葉っぱが。だから見えかけてますよ、漢のだいじな一部分」って。ゴスッ。
「あ。せっかく新しいの持ってきましたんに」
「どれ」
 山内峰城(ea3192)はニキの持つ葉っぱを手に取り、太陽に眺めすがめつ、
「こ、これは」
 ぐわああんっ。魔法をつかってもいないのに、黄金の衝撃が放射状となって峰城の背後からたちのぼる。
「これはあの幻の、おーどりーじゅにあどっこいわらび!」
「いえ、そこにあったユウガオどすけど」
 果肉を干して味を付けると干瓢になる、あのユウガオ。わりとどこにでもみられる種。山や野によくよく採集にでかける、ニキがまちがうわけがない。ってゆうかどうみたってワラビはないだろう、ワラビは。ドッコイにいたってはどっから来たんだ。
「‥‥今日からこれは、おーどりーじゅにあ(略)ってダメでしょうか」
「ええっと。さすがに、親しまれた名称を改変するのはどないや思いますが(汗)」
「けっこうかわゆい名前だとは思うんですけどね」
「って斑はん? 出てきてよかったん?」
「矢がもったいなかったもので」
 辰のはいざとなりゃ2つあるけど、矢は有料だもんね。限りあるジ・アースの資源をたいせつに。冒険者ギルドからのおねがいです。

 ―― いまだにクラゲのクの字の出番もない 進行のおくれをお詫びいたします ――
 ―― それでも懲りずに 向かい風に立ち向かう シフールな錬金術師様でお楽しみください ―― 
「しかたがない奥の手を出そう」
 再びの風に、再びの挙動、しかし今度のマケマケはひと味ちがうっ。
「いやぁん、まいっちんぐ☆」
 ―― ‥‥んっと ――

 やっと船出となる。青い海原はるばると。海人な響、久々の感触をなつかしみつつ、えっちらおっちらと櫓をこぐ。先行するマケマケに海面の様子をたずねた。
「このへんでいいだろ。マケマケ殿、(クラゲは)見えるか?」
「なに、(クラゲ以外のものを)見たいのか?」
「隠せ」
「あの、私が代わりに見てきますさかい、雰囲気わるぅせんといて」
 使用済みふんどしの冷めない距離(つか、貸し借りするな)に住むご近所さんたちが険悪になってしまっては、今後にさしつかえる。ミミクリー、not変態、変体の魔法。翼ある生き物に姿を変え、ニキはしばし上空を旋回する。
「ここらがちょうどええ具合やおもいます。ほな」
「‥‥待った。どうしてまた飛ぼうとするんだ? というか、もしかすると、デティクトライフフォースで調べたほうが効率がいいんじゃあ」
「え? ほ、ほら、海ではなにがあるか分かりましまへんし。『鳥になっとけば、葉っぱもふんどしもつけへんでもええの☆』とか、けしてそんなことやありまへん。ほんまにで」
「響あにさま、はやくあみをなげましょう」
 幼い好奇心が漁業への興味をかきたてるのだろう。シャラが響の葉っぱをひいて(!!!)気をひこうとしたすきに、ニキはふたたび空へと逃げてゆく。響の追求は立ち消えになった。
 それに、わくどきしてたのは、シャラだけではない。
「ウニいねーかな」
 辰は舟のへりから半身をのりだす。波打った平面の下は濃厚な蒼が鬱蒼としげり、ところどころクラゲのものとおぼしき白の浮遊のほかは、茫洋として何とも知れない。磯の香りと葉っぱが気持ちだいたんにさせたのだろうか、さらに身をのりだそうとした辰の肩をうしろから、峰城がとんとたたく。
「もっと岩場のほうがいいですよ。ウニは岩にはえる海藻を餌にしますから」
 とぼんっ。
 キラキラと、天を衝くいきおいで海中から水柱が噴き上がる。そして、その代償だというふうに、舟から影がひとつ消えた。
「は?(汗)」
 まぶたをこすっても、景色が変化するわけがない。
 見たとおり、辰が落下した。大小の泡をのこしつつ、それもやがて全部なくなる。イヤンな汗、峰城の額といわず背といわず、つーっ。
「すんまへん、ちょお辰君たすけに行ってきますわ」
「ひとりでだいじょうぶか?」
「だいじょうぶ。こうゆうときのために航海術も星読みもなろうとったし、水陸両用衣まで用意しとったんや」
 航海術は水泳技術に関係なさそうだし、今は昼間だし、なによりその衣がすっげえ怪しげなんですが。忠告がとどくまえに、峰城は辰のあとを追う。とすると、舟のうえに残ったのは‥‥。
「きぃさぁまぁかぁ」
 男性:響、女性:シャラ、斑、恭華。
 乙女を死守するためには、建前の冷静などよそってはいられなかった。恭華は真剣の殺意をこめ、懐刀を響の喉元につきつける。
「俺に近づいたら、ぶっ殺す」
「わ、分かった。でも、網をひくのだけは手伝ってくれ」
「はぁい。シャラがんばります☆」
 いや、そもそものはじめにシャラさんがやったから、などという画面外のツッコミ無視された。えーん。
「斑殿も‥‥斑殿?」
「あ、申し訳ございません。海のうつくしさに見蕩れておりました」
 ふりかえり、色のちがう瞳をほそくにじませる斑。それとおなじ表情で、さっきまで「ガバゴボガブ」いって海底沈下する峰城を見ていなかったかしら、とか、細かいことは気にしちゃやーよ☆

「まいっちんぐ、もあまり評判はよくなかったようだな。大衆は要求が厳しい」
 ―― あのぅ 今は呼んでませんが ――
「気にすることはない、ここは俺が錬金術で創製した空間であるから、俺が好きにしていいことになっている」
 ―― つくるなつくるな ってか 錬金術はそんな能力じゃねーぞーっ ――

 波打ち際。悲劇はしずしずと幕をあげる。寄せる海水のまなかで横たわる辰、号泣する峰城。
 おおかたの予想をうらぎることなく、おぼれた峰城、彼をたすけたのは意外にも助けにいったはずの辰だった。
「(一時的にむくっ)や、俺、ウニをさがしに自分からもぐりに行っただけだし」
 それならそうと、ややこしい状況つくるな。こら。と終わったことはおいといて。先程からもいっているように、海はクラゲがいっぱいだった。そしていってなかったけど、毒海月は触手をめいっぱいのばすと6尺半ちかくもあったんだなこれが。増えるワカメ状態の峰城を片腕に抱え、辰はめいっぱい奮闘した。下手に舟にひきあげてもらうより安全だ、と陸をめざした。が、最後の最後、あと一歩で安全圏というところで毒の針につかまってしまった。
 そしてこうなる。死屍累々のくらげとともに、しびれっぱなしの辰。
「すみません、俺のために」
「気にするな。それより、俺をクラゲといっしょに回収(がくっ)」
「分かった。さいわいクラゲだけはけっこうあるんやっ」
 峰城の妙な服の胸元に。こっちはふつうの、ちょっとちっちゃめのクラゲ。
 それから、ざくざくざく、と波に似た、それよりすこしばかり拍のはげしい音が砂の下から響いた。
「(やっぱり一時的にむっくり)『クラゲといっしょに回収』と『クラゲといっしょに埋葬』、はちょーっと意味合いがちがうんじゃないかなぁ?」
「つい、うっかり」

「なお、海月の毒は一時間も放っておけば、勝手に解毒される。俺の解毒剤の出番は(もったいないから)必要ないな」
 ―― 分かった 分かったから 向こうをてつだってください ――

『シャラ・ルーシャラの日記』を一部、漢字を使用してお送りします。

 今日は響あにさまや他の皆さんと、海に行ってくらげさんを退治してきました。舟では恭華さまが短刀をふるってくらげをざんばらりしてかっこよかったです。シャラもおてつだいしました。えいっと響あにさまから葉っぱをお借りして投げつけたのです、そしたら響あにさまは真っ赤になって海に飛び込んでしまいました。葉っぱを探しに行ったんだと思うんですが、ちゃんとシャラは代わりのを舟に入れておいたですのに。
 響あにさまが舟にあがろうとしたら、恭華さまは短刀を海にぶすぶすさしてました。海ではこうやって遊ぶものだそうです。響あにさまも「だから誤解だって、事故だって!」とたのしそうでした。
 ぜんぶ終わったあとで響あにさまと斑さまがくらげをお料理してくださいました。おいしかったです。
 ニキさまもつくってくださいました。保存食から抜き取った秘密の香辛料いっぱいつかってあって、からかったです。みー。
「つか、俺のかいがらびじょーっ!」
 って辰さまがさけんでいたので、斑さまが「代わりにこれをどうぞ」と貝がら汁をさしだしていました。辰さまは一口すすってばったり倒れてました。きっと気絶するほどおいしかったんだとおもいます。なんだか毒海月そっくりのしょくしゅがみえたのは、まぼろしだとおもいます。

    葉っぱの月の葉月に♪

●ピンナップ

不破 恭華(ea2233


PCシングルピンナップ
Illusted by 綺人