【神剣争奪】 海征く宴

■ショートシナリオ


担当:紺一詠

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:09月22日〜09月27日

リプレイ公開日:2005年09月30日

●オープニング

「すまぬ。江戸へおもむく用事のあるものはいるだろうか?」
 毎度おなじみ流浪のばんぐ‥‥ではなく、黒虎部隊隊長・鈴鹿紅葉。暖簾くぐって、ふらりと冒険者ギルドに顔を出す。少々疲労の濃くなった容貌。どこもたいへんなのだな。そう思いつつも、冒険者ギルドの手代、あいての実情に深く踏みいることはしなかった。代わりに触れたのは、別の世評、とんとんとんからり。
「聞きましたよ。平織の殿様、江戸へお出かけになるそうで」
「‥‥うむ。そうだ」
 鈴鹿としちゃあ、黄泉人討伐も佳境という時期にいたって大和追討軍の旗頭の離脱をみとめているようなものだから、頭の痛いところだ。が、だからといって外部や臣下がいさめて聞き入れる御仁でもない。苦労するのだ、彼女も。
 ――‥‥もっとも、ふだんの虎長、それ以上に鈴鹿に苦労させられてるという評判がなきにしもあらず。ずいぶんまえの六月決戦のあとのある日、「とったどー」とかいいながら鱶の活け作りを献上して虎長さまに蹴り出される鈴鹿が目撃された、なんてのはたんなる巷の風聞にすぎませんから。ええ、きっと。
「それでな。本日ここに来たのもそれで‥‥」
「いや、さすがに黒虎部隊の隊長の代役がつとまるとはおもいませんけど」
「そうではない。‥‥いや、まったく異なるかというと、そうでもないが。平織の軍の物資運搬をてつだってほしいのだ」
 平織虎長はこたびの江戸の騒動に、軍をさしむけることを決定した。戦乱ではなく探索を目的とした人員とはいえ、大所帯の移動であることに代わりはない。人手はいくらあっても足りるということを知らず、猫の手も借りたいようないそがしい実情らしい。だからどうせ江戸に行くのなら‥‥というわけ。
「船賃と少ないが小遣いくらいは出そう。それに‥‥どちらかといえばこちらが主旨になるが‥‥。平織の軍の慰撫を頼めないか?」
「いぶ?」
「壮行会といったほうが分かりやすいだろうか。慣れぬ船旅で体調をくずして、士気がおちてはまずいだろう? 宴会芸でもみせてやれば、途中、気が晴れるだろうとおもってな」
「あぁ、はいはい。うち、そういうの、得意なやつが多いですからね」
 武功をねらう各地の冒険者もぞくぞくと江戸へつめかけているようだ。江戸でなにがおこるのだろうな、と他人事のようにかんがえながら、京のギルドの手代は鈴鹿からの依頼に募集をかけた。

●今回の参加者

 ea2751 高槻 笙(36歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6321 竜 太猛(35歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea6534 高遠 聖(26歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ea6656 ラヴィ・クレセント(28歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)
 ea7136 火澄 真緋呂(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea8904 藍 月花(26歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ea9616 ジェイド・グリーン(32歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb1788 華宮 紅之(31歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)

●サポート参加者

藤城 伊織(ea3880)/ 鷹神 紫由莉(eb0524

●リプレイ本文

●ただいまおてつだい
 京都から江戸への航行は、途中、尾張を経由する。尾張は京より江戸にちかいし、平織虎長は尾張の国主であるから、軍資の調達は尾張ですませるほうが都合よろしい。だから、この依頼、荷捌きの中心は尾張となった。
 竜太猛(ea6321)、頑丈な肩へ長持のっけて、掛け板をわたる。口数少なくそうしていると、いくとせも働きづめの海の男のようだ。甲板に出ると、潮の香りがいっそうきわまり、胸いっぱいの深呼吸。さようならとはじめましてが目配せしあう旅の予感。わるくない。平織勢の分まで仕事を請けおった太猛は、蟻のように脇目もふらず、仕事をこなしてゆく。
「これはどこに置くのじゃ」
「船尾ですよ」
 藍月花(ea8904)の指示にしたがい、太猛は荷を抱えなおす。月花は委託の要覧、ざっとながめて、ちょっと物騒な名称もなかにはある。‥‥無用の長物におわることを祈りましょ。自分も体をうごかそうかな、と、月花は行き違いに、掛け板をかろやかに還る。
 華宮紅之(eb1788)も荷を運ぶ。どことなくおぼつかない肢体に見合ったちっぽけな行李が、紅之にとってはさざれいしも同然。とうとうこらえきれず、ごろりと指からすべっていった。
「‥‥あ」
 木箱は、頂点からまっさかさま。しかし、下方にひろがっていたのはたいらかな地表でなく、土よりはふくよか、石よりはあたたか、人間の足の小指だった。
「!!!」
 記号でしかあらわせない劇痛をこらえ、ジェイド・グリーン(ea9616)、打った部分をかかえてころげる。紅之は蛾眉をかたちよく下げた。
「すまぬ」
「かまわないよ。しかたないって、おんなのこには重いだろうし、分かってるよ。でも、すりすりしてくれたり、ふぅふぅしてくれれば、なおりもはやいかも‥‥と思うんだけど‥‥」
 ジェイドの声、だんだんととぎれとぎれ、目線を横へずらしてゆくのは、見られているような気がしたから。勘の虫のいうとおりにすると、たおやめめいだ人影がとがめるようにきつい直視を投げているので、ジェイドはそちらへはしる。女の子がそんなかなしい目をしちゃいけないのだ。
「もちろん弓弦ちゃんがお薬ぬりぬりしてくれるなら、それが最高なんだけど!」
「僕は聖です、京をでるときにいったでしょう」
「‥‥そうだった。ない」
 なにがないんです、と言いさして高遠聖(ea6534)、でもあんまりにもジェイドが真摯にしょぼくれているものだから、抱きついた罪をゆるしてやってもいいかな、とは思った。次のおことばさえ、なければ。
「聖サンが俺のこと、よそよそしくするから、忘れちゃうんだよ。おにいさま、とか、くだけていけない?」
 ‥‥‥‥。
 (聖の思考→)念兄ってことば、知ってる?
「なにを考えてるんですかーーっ!」
「うおっ。えぐるように、ねじこまれてるぅっ?!」
 この場合、ジェイド、二割程度しかわるくないんじゃなかろうか。いいや。男同士の問題を男同士が解決してるように(仮定)、「てつだうよ」紅之の荷を肩代わりしたのは、火澄真緋呂(ea7136)。
「ボクけっこう体力あるんだよ。なんたってね、このまえ、江戸から京都に着いたばかり。それでまた、トンボ返りしてんだから、つくづくボクってじょうぶだよねー」
「うちはトンボさんにもおさかなさんにも負けないデスピョンー!」
 ‥‥はやい。
 ラヴィ・クレセント(ea6656)、ふわふわ根付けをたなびかせ、真緋呂と紅之を追い抜き乗船する。‥‥って、あんた、なにげに、手ぶら。
「よけいなおにもつは、舞にはおじゃまですピョン、しかたないですピョン」
 そっか。しかたないな。
 陸地での作業もそろそろ、ついえる。れからが本格的な海路のはじまりだ。そう考えると、京の友人とわかれたときに置いてきたはずのさみしさが、こぽ、とひとくさりだけ泡を吹く。
 高槻笙(ea2751)は、物憂げにあたりをみやった。‥‥もしここに、伊織さんがいらしたら、とっくに尾張の酒屋にかけこんでいたのでしょうね。くす、と、感傷が頬をやわらかくさせる。出かけに藤城伊織からうばった酒の味が口腔にほのか香り、、土産は江戸の銘酒な、と幻聴、埠頭にのめる波頭にきいたのは、小魚のいたずらか?
「笙さーん、もう船にのってほしいそうですよー」
「今、行きます」
 月花の呼ぶ声に、笙が応える。
 櫓をかき、帆を張り、廻船は北へむけて舳先をすべらせた。

●しっとり調ここまで
「『たいへん長らくお待たせいたしました。冒険者の面々によるお楽しみ興行の開催です!』」
「‥‥太猛さん、どうされました。熱でも出ましたか?」
「‥‥いや、芸をしないならと、鈴鹿殿にいわれたのじゃが」
「鈴鹿さんからの書状にも、ちゃんとあります。ト書きだ‥‥」
 月花の確認するそれ、最後のあたり、鈴鹿がちろちろ付け足してたらしい。日銭もらってる身分だからときまじめにやらかした自分を、讃えるべきか腐すべきか、見極められないでいる太猛はおいといて、順番は公平に、超絶素敵絶対無敵、
「『あみだくじじゃー!』」
 と宣言とちょうど、とびあがってラヴィ、しゅたりと降り立つ、人々つどう船板のまなか、
「ラヴィ・クレセント、神楽舞おどるのですピョン」
 身をつつむ真白い巫女服ひるがえしながら、ラヴィはしずしずと舞への一歩を踏み出した。ジャパンでならったという神遊びを、生まれの中近東の構成で編み直した、かなで。鈴も鼓もないが、それこそがただしい、というふうにしずまりかえる観衆の粛々掬い上げるしぐさで手をあそばせる。ラヴィは照れくさそうに、えへ、とあごをかいた。
「大和でもおどったですピョン、評判よかったですピョン」
「あ、知ってる」
「おぼえてるですピョンかー? では、とっておきのご奉仕いきますピョン」
 ラヴィはとりはらう。潔癖の衣装をすっからかんにして、あとにのこったのは素肌があらわになっている部分のほうが多い、あまり生地くっつけただけか、ってぐらいのもの。膝の屈伸しゃかりきしゃりきのうさぎダンスを、ちらり、
「ありがとうー、これでラヴィはふつうの巫女さんにもどりますピョーン」
「‥‥閑寂から萌えへの見事な逆転。これは強敵ですね」
 二番、笙が冷静に指摘するとおり、ラヴィは初手をすっかりあたためた。というよか、燃やし=萌やしすぎた。笙は鈴鹿紅葉の名を組み込んだ折句を披露したが、正調だけでたちうちするのはむずかしい。
「これだけではひっくりかえせませんか‥‥」
 涼やかに 加茂川渡る 百声の 道行き仰ぐ 十五夜の月――とこんなかんじ、他に手当たり次第といっちゃことばは悪いが、その場にいるものの名をはじから順に借りて句へあてたが、ラヴィののこした熱き血潮はなかなかぬぐえずにいた。
「‥‥ふむ、まだノリが悪い。しかたありませんね、ではこうなったら。嵐よここに来たれ、私に怪魚をさずけたまえ!」
 来ませんでした。
「‥‥いえ、ちょっとした旅の恥はかきすて的おちゃめですよ。ほんとうにやろうとしたのは、こっちです」
 昼飯のためのまるの鮮魚、のうちいっとう大きな一尾を、ででん、と板場におく。ほぅ、と興味の吐息があがったが、残念ながらこの魚は笙の調達したものではないことを誰かが指摘した。そのとおり。しかしそんなことはたいした障害ではない。
 笙は魚と距離をとる。船の横幅いっぱいに。なにごと、と、目を見張る人前で、笙はみじかい気合いとともに、すすきの葉のような風刃を飛ばす。真空の爪はあやまたず、魚をまっぷたつに裂いた。
「おもしろい使い方だな」
 平織虎長は志士の頂点にたつ、それゆえ、平織の軍にも精霊魔法をみなれたものはおおい。生半可な見せ方では感動はおこせなかったろう、が、「『水の霊の象徴ともいえる魚を風韻でぶったぎる、斬新さ、ありえない!』‥‥なんでこんなところまで細かく書いてあるのだ、鈴鹿殿」(太猛)なところが、彼らの気持ちをうごかした。やったね。
 三番、月花。
「ラヴィさんも笙さんもすごいなぁ。ううんっ、気後れしてはかえって迷惑かけてしまいますね」
 と、月花、もちこみの木板、五枚があわせて七寸ほどもあるのをかかえて、めずらしくも緊張気味。いつもは考えるまえに体をうごかす彼女が、舞台代わりのひらべったな箱にのるまで、右手と右足が同時に出る奇妙な歩き方をしていた。
「わ、私は僭越ながら、板割りをさせていただきますね」
 月花は作法に添った呼吸をする。十二形意拳、虎の型で板を一気に割った。修練をおもいだして少しおちついてきたが、好奇しんしんな人目に、またおちつかなくなってくる。
 そう、こんなときこそ、おまもりが。鷹神紫由莉が、さみしくなったらこれで心をなぐさめなさい、と旅立ちに贈ってくれた液体を、とっくりからのどへながしこむ。炎によく似た流動は、腑でさらなる高みに沸騰する。ひっくっ。あがる熱気が、月花に小さなおくびをこぼさせた。
「おらおらおらおらおら外人がめずらしいからってじろじろこっちを見てんじゃねぇだいたいあのあほ狸は海で好き勝手やらかしてたったのに私は遠洋どまんなかで野郎どものなぐさみもの(語弊)かぁいっ」
「まずい。ハーフエルフの怒り上戸かぁっ!」
 月花はハーフエルフ ⇒ ハーフエルフは怒りで狂化する ⇒ お酒を呑んで狂化したから ⇒ 月花は怒り上戸な図式
 ‥‥それって‥‥最悪の酒癖じゃあ。しかも、なんて、あっというまに酔ってるのだろう。
「あー、仲間の面倒は仲間で始末せねばならんのぅ」
 演芸大会棄権させてもらったわりには、意外にやすめない太猛、月花をずるずる回収する。おつかれさまー。
 四番ジェイドは、そんな月花に芯から同情する。
「ありゃ。けっこう、たまってたのかな。かわいそうに、俺に云ってくれれば、なぐさめたげたのに」
 抱きしめたり、あたまやさしくなでたげたり、あまつさえもっといいことしたげたのに‥‥と、云おうとして、気付いたまーた聖がこっちを見てる。今度こそいいとこ見せて、聖の姉の絵姿を獲得するのだ。
「そんじゃ、つかみで物まねでもひとつ。冒険者ギルドの総元締めやります、『依頼だフゥー!』」
 が、反応にぶい。
 さっきもいったとおり、このたびの観衆のほとんどは平織勢だから、いまいち、ぴんとくるものがなかったらしい。状況にあわせた人選が必要だろう――では‥‥。
「じゃあ、ネタを変えて、平織虎長やりまーす。『鈴鹿、ちょっくら大和行ってこい』(おみ足けりだし)フゥーー!」
 ざわ。ざわざわ。
「(虎長様だったな今の)」
「(しかも、けっこううまかった)」
「(あれは例示がないとできまい。ということは、虎長様はハー○ゲイだったのかっ?!)」
「ジェイドさん、あなたってやっぱりそういう人だったんですねーーっ!」
 仲間の面倒は、仲間の手で始末をつける。
 ――そんな冒険者の流儀があったかどうかは知らんが、五番の聖が、ジェイドが本番にとっておいた弓矢をつがえるまえに、「黒の僧侶だからこそなせる、悟りへの試練です」な速攻で、ジェイドをつきとばす。あわれ、ジェイドは捨てられた樽のように「今度は、天と地がじゅんぐりにさかさまにーっ」と、どこか近くへまわっていった。
「やれやれ。またひとつ、悪をほろぼしてしまいました。‥‥うん?」
 見られてる、ものすごく見られてるよ。聖はあわてて、虫一つ殺せぬおすましがお、
「あはは、海のうえの蜃気楼ってときどきすごく真実味にあふれてますよね。では、僕もひとさし舞わせていただきます」
 ‥‥いまさらとりつくろっても、やっちまってるって。それに、順番も悪かった。ラヴィの舞踏が、もともとの伎倆の高さだけでなく、構成も演出もかんぜんにそろえたものであっただけに、笙の謡をくわえても、あとの聖はかなわなかったのである。
「高槻さん、ごめいわくおかけしてしまいましたね」
「どういたしまして。私は聖さんのおどり、好きですよ」
 六番、真緋呂。
 真緋呂は荷袋から火打ち石をとりだすと、カチリとすりあわせた。ぱ、と、砂粒のような火花を紙にうつして簡易たいまつがぼぅぼぅ焦げる。
「はーい、『炎絵』いっきまーす。はじめは小鳥さん、ぱたぱたぱた‥‥」
 真緋呂の掛け声『ぱたぱたぱた』と同時に、松明から炎の羽が空へ舞った。次いで、柴わんこ、馬、兎など。元が普通の炎を魔力でうごかしているだけなので、精密な造型はムリだが、「これはそれ」と云いきってしまえばそうかもしれない、というふうな輪郭はたもっている。「フカをかかげる紅葉ちゃんーっ」とキメを終わらせたが、観衆、おもったより盛り上がっていない、つかどんびき。気の毒そうに太猛、皆を代表して心情をうちあけた。
「ここは海のうえじゃぞ」
 海洋。逃げ場がないだけに、ふつう、船舶は火気厳禁だ。それをこんだけ大袈裟にやってしまって‥‥。
「ごめんなさーい!」
「‥‥真緋呂殿、こっちに来んか」
「なぁに?」
 太猛に云われるがまま、帆柱のそばに立ちつくす真緋呂、太猛がぱん、とてのひらうつと、ゴツン、金属の器がどこからともなく落ちてきて真緋呂の頭頂をしたたか打つ。
「いったーい!」
「儂なりの芸、伝統の『たらい罠』。反省のしるし代わりじゃ」
「くすん」
 トリは紅之。
「‥‥ん?」
 このまとめようのない騒動の中、紙のように爆睡していた、とても大人物。
 紅之は潮風にかわいたくちびるをぬぐおうとして、それがたまたま携帯していた赤ふんどしであったことを知る。口にやる気にはならなかったから、それをまとめる、背嚢から身代わり人形とりだしてかぶせたのを、皆の前にさしだした。
「相方だ。ほらご挨拶」
「ウン僕『赤ふん君』ヨロシクネ(かくかく)」
 ――‥‥。
 斬新。それだけじゃないけど。
「オ姉サン、芸ッテ何ヤルノ?』
「そうだな、舞ながらの天気予報など」
「ガンバッテ――僕モヤルノ!?」
 先鋭的。それだけじゃないけど。
 紅之、云ったことはきちんと実行した。明日も晴れるでしょう、と、謡の独特の調子で語りながら、陰陽師の反閇で板をする光景は、まこと、超現実。それだけじゃないけど。
 こ、これはまったく分からない。度を超えた理解不能度が、ラヴィの完璧を陵駕しそうだ。いったい誰がもってくのかっ?!

 士気を向上したか、となると、いちじるしく不詳だが、そのわけのわからなさが妙な説得力をもっていたせいか、優勝をさらっていったのは紅之。贈呈された品は『鉢金+1』。「敢闘賞」とゆうか「お船のこと考えま賞」で『船乗りのお守り』も、真緋呂にわたされた。
「ご褒美はもらえなかったけど、たのしかったですピョン!」
 江戸。まっさきにラヴィが飛び降りる。これから江戸でなにがおきるのだろうか、みなで唄い踊った船に多少の名残を残しつつ、他の冒険者たちも苦笑しながらそれぞれのちょうしであとにつづいた。