秀吉といっしょに吉原で投扇興をしよう。

■ショートシナリオ


担当:紺一詠

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月01日〜11月06日

リプレイ公開日:2005年11月08日

●オープニング

「吉原に連れてけ」
 ‥‥ひとりで行けや。そのとき、冒険者ギルドの人々のこころはひとつになった。
 おまえはどこの常連だ、というくらい、ふつうに冒険者ギルドに入ってきて、ふつうに座席へこしかけ、ふつうに手代へはなしかける(すんげぇ胸そらしてるけど)。だいたい五尺九貫と、それだけはけっこう萌え系体格なところがまたびみょうな殺意をそそる、ちっちゃいおっちゃん。
 これでも、関白。いちおう、長崎藩主。藤豊秀吉。
 そういえば、神剣争奪競技の騒動のおり、江戸にはいっていたような気もするが。あんた、まだ江戸にのこっとったんかい。
 話しかけられた手代は無視するわけにはいかず、かといって「はい、そうでっか」と気軽に引き受けることもできず、苦しい立場だ。冷や汗ぬぐいつつ、ここが腕のみせどころの応対、かくかくしかじか。
「いくらここが家康様のふところの江戸だからといって、御家来をまったく連れてきていない、ということはないでしょう。その方たちとおたのしみになってはいかがです?」
「むさい部下ども楽しませても、ちっともわしが楽しくなかろうが。それよりは素人の姐ちゃんと玄人の姐ちゃんのからみを見たほうが、なんぼもマシじゃ」
「すいません。冒険者ギルドは置屋ではありません」
「つまらんことを云うでない。なにも伽まで相手しろ、と云うとるわけではなかろう。ちぃっとばかり、楽しませてくれればいいんじゃ」
「‥‥はぁ」
「それに、わしひとりではしかたがないんじゃ。投扇興でもして、みなで競おうかとおもってな。人数がおったほうが、盛り上がる」
 投扇興はお座敷遊びというか、お座敷「でも」よろこばれる遊興のひとつというか。外国のお方には「和製ダーツ」と説明するのがてっとりばやいかもしれない。「枕」(的台。小さな縦型の木箱)にのった「蝶」(的。数枚の文銭を懐紙でくるみ、蝶のかたちにしたおもし)にむけて「扇」(専用のものが用意されるが、今回は、よほどみょうなものでないかぎり、持ち込みも可とする)を投げつけ、そのあとの「枕」「蝶」「扇」の位置関係で、「銘」(役。花札でいえば、花見酒とか猪鹿蝶とか)が付き、銘に応じた点数があたえられる。
 数回の投擲の結果を足しあわせて、一番点数の多いものが勝ち、と、原理はたんじゅんな遊戯である。しかし、なかなか奥が深い。ただ蝶をたおせばいいというだけでなく、日本人好みの流麗、典雅が要求される。といっても、盤双六なんかとおなじで、基本、賭博なんだけどね。
「勝ったものにはとうぜん褒美をとらせよう。それに‥‥」
「なんです?」
「負けたにしても、わしと吉原にいるあいだは、食べ放題呑み放題寝放題。おやつにかすてぃら付き」
 とまぁ、他人の金で吉原豪遊――しかも出資者はノルマン貿易を一手ににぎる藤豊秀吉――おいしい依頼のはずなんだが、なんでかなぁ、あんまりそうはみえない。
 たぶん、人徳ってやつ。真逆の意味でさ。

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【投扇興・秀吉杯ルール】
1から54までの整数を、5つ指定してください。重複可。順番はあまり意味がないので、めちゃくちゃでいいです。
この数字で投げた際の五回分の「銘」が決定されます。
基本的に、万事、秀吉ルールで進みます。派手好きな彼のおめがねにかなうパフォーマンスには、特別点もプラスされる場合もあるでしょう。マイナスが発生するおそれもありますが。

●今回の参加者

 ea1543 猫目 斑(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6010 黒野 辰(34歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea7739 樋野 春待(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea9616 ジェイド・グリーン(32歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb1415 一條 北嵩(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb1788 華宮 紅之(31歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3064 緋宇美 桜(33歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb3736 城山 瑚月(35歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●サポート参加者

所所楽 林檎(eb1555

●リプレイ本文

●はじまるよー
緋宇美桜(以降、「桜」)「わーい、わーい。かすていらー♪ わーい、わーい。よしわらー♪ はじめてきたよ、すごーい。あちこち、ぺかぺかしてる。おもしろそー」
黒野辰(以降、「辰」)「やってきました『女の子と一緒にタダ飯とかすてぃらが喰える会』! 依頼で吉原豪遊たぁ、俺がぼんやりしてるあいだに、いい世の中になったもんだね。よっしゃ連れてってもらおうか――あれ? どこ行ったんだ、秀吉のおっさん?」
一條北嵩(以降、「北」)「‥‥(うろうろ)」
ジェイド・グリーン(以降、「ジ」)「一條サン、どうしたの?」
北「うむ‥‥知己が扇を持ってきてくれるはずなのだが‥‥」
猫目斑(以降、「斑」)「そういえば、秀吉様がどこかの素人のお嬢さんをむりやりいざなっていたような‥‥見てただけですけど。だって(おもに秀吉様だけが)楽しそうでしたから」
北「ほぅ。では、さっそく迎えに――‥‥。そういうときは、止めろーーーーっ(ぴゅうっ)」
城山瑚月(以降、「瑚」)「(ぜぃぜぃ)‥‥安心していいぞ、一條殿。所所楽林檎殿は、俺が救出しておいた。さすがにこんなところで、長崎藩主にまちがいをおかさせるわけにはいかんからな」
華宮紅之(以降、「紅」)「‥‥(ぱくぱく)」
あかふん君@本日おめかしさん(紅之の相方。以降、「あ」)『なにごともなくて、よかったねー』
紅「‥‥私もこうしてイギリスの魔法学校の制服を着用してきたのだが‥‥やはり吉原といえば、帯のくるくるほどける和服のほうがよかったのだろうか。いや、この制服でも、やってできないことはないはずだ。たとえば、この風邪をひきそうに短い丈を(ぐりぐり)」
斑「(なんとなく、様子を見に来た人)紅之様、おもしろいことされてますわね。斑も、まぜてください。私は巫女服にですけど、京染めの振り袖も持ってきましたのよ。これをこう、こう、紅之様にかけて、私はかんざしと根付できらきらら〜(いっしょうけんめい)」
瑚「もしもし? そこのお人ら。なんだか、俺の御苦労を増すようなこと考えてない? とゆうか、いちおう俺も男だから、目の前でそういうことはやめようね」
藤豊秀吉(以降、「秀」)「うんうん、よきかな」

 ※

樋野春待(以降、「春」)「私はどうしてこんなところにいるのかしら。生まれては苦界、死しては浄閑寺。見返り柳のほっそりとした枝が、物憂い朝、男たちを送り出しても、女たちは格子戸にとりのこされる。ここはかなしい、ここはつらい、ここはさみしい。まるで‥‥に似て‥‥」
秀「なんじゃ、行かんのか?」
春「‥‥タダ飯とタダ酒とかすてぃらには、罪はないわね」

●一巡目
斑「はぁい。それでは猫目斑、いの一番、本番にそなえてお着替えしてきました。今度は、十二単ですの。京都の投扇興では、皆様、このお召しでされるそうですよ(嘘)。このゆったりと暑苦しい、もとい、愛くるしい生地の軌線でつとめさせていただきます。‥‥のまえに。秀吉様、お手本を見せてくださいまし」
瑚「名案だ。俺も見せてもらいたい(内心→そうだっ。すくなくとも、扇を投げているあいだは、公も悪さをできないはず!)
秀「ふむ。では一度やってみるか。こんなものかの」
ジ「お、たおれた」
秀「『葵』か。調子が悪いの、まぁこんなものじゃ。扇、蝶、枕、の位置関係が珍しかったり美しかったりするほど、点数が高い」
辰「あ、おねがいあるんだけど。俺、いちどきに二個投げてもいい? そしたら、ゆっくり飯たべられるし」
秀「ええぞ、好きにせい」
紅「と云ってるまに、みるみるうちに私の出番か。扇は持参してこなかったので、借り受けよう‥‥では。舞などさしながら」
秀「おぉ、これは。『夢浮橋』だの。ほれ。枕と、枕と蝶のあいだを、扇が橋のようにかかっておるところから、そう呼ばれておる。おみごと」
紅「ふぅむ‥‥『花宴』や『空蝉』、『幻』のほうが吉原の地には似合うと思うのだが‥‥」
瑚「ちょっと待て、そこの最高得点者。先触れが0点だった、俺の立場はどうしてくれる」

●二巡目
秀「なんじゃ。みんな、おとなしくまとまっとるの。こう、派手に行かんかい」
桜「はーい、では、桜。御期待にこたえてー。こう、かまえてですね。九字をとなえましてですね、じゃーん、なんと、種も仕掛けもなかったはずの手ぬぐいから花が! ‥‥ダメ? ベタ? あ、あ、そんじゃもっととっておきがありますっ。しばらく時間をください(がさごそ)」
春「(←見ているうちに負けん気が刺激されたが、隠し芸のネタがない)」
春「(←考え中)」
春「(←とりあえず、あまったかすてぃらで積み木をはじめる)」
春「(←楽しい)」
春「(←いきおいにのって、天守閣を建築した)
春「(←けっこう上手にできたので、満足)
辰「(さっきで一度に二回投げたので、暇な人)おーい。もう、酒たりねぇぞ? かすてぃらも、もっとじゃんじゃん持ってこーい。あ、こんなとこにあるじゃん。もーらいっ(ひょい、ぱく)。‥‥ん? どこからともなく、妖気がただよってくるような」
春「‥‥私は負けるのは、嫌い。いっしょうけんめいがんばって作ったものを、食べられるのも嫌いなの」
辰「あら。もしかしなくても、とっても険呑? ――‥‥」
桜「お待たせです。あたらしいの、用意できましたー。って、なんか人体の不思議がころがってるや、じゃまー(蹴りころがし)」
斑「転がしなら、おまかせくださいませ。食後の運動ですわ(ごろごろごろごろ)」
桜「場所もあいたし、いきますよ。口から火炎放射ーーっ(ごぉっ)。火遁の術の応用‥‥ってうわぁ、痛い痛い、口のほうにも飛んで来ちゃったーー水ーーーーー!」
紅「(ばしゃ)これでいいか?」
桜「ん‥‥って、似てるけどこれはお酒、燃えるーーー(わたわたわた)」

●三巡目
北「うーん‥‥思ったより点数がのびないな。このままでは、甘い林檎さんをおいしくいただく――いや、そりゃおっさんだろう――林檎さんと甘いものをおいしくいただく、という、俺の大望がはたせんではないか。しかたない‥‥ここは出る杭打たせてもらうってことで‥‥な、ジェイドさん」
ジ「なにー?」
北「いいこと教えてやるよ。実はな、投げる時の掛け声で特別加算!ってきまりがあるんだぜ。投げる時に『とぉ!せん!きょぉ!』と掛け声をかけ、最後の『きょう』の声質で点数が変化すんだ。だまされたと思って(だましてるんだけど)、一回やってみ」
ジ「ほんと? じゃ、やってみる。よぉし。ジェイド行っきまーす!」
ジ「では、トゥ!(蝶のように舞い!)」
ジ「セン!(蜂のように刺す!)」
ジ「キョウ!(そして、尺取り虫のように‥‥)何やればいいんだよ、尺取り虫なんてー! 分かんないからとにかく投げちゃえ(ぽいっ)(かたっ)」
秀「ほぅ。おみごと。『御法』じゃな。『夢浮橋』にはおよばんが、その次に尊い銘とされる。95点」
ジ「おっしゃあ! 北嵩サン、おかげでやったよ。ありがとうっ!」
北「なん、です、とぉっ?!」

●四巡目
瑚「しかし北嵩殿じゃないが、俺もいいところ、少ないよな。俺も、忍びのはしくれ。めだつのは好かんが、かっこよく決まらないのもなんだか。まぁ、『点数ではなく印象を』ということばもあるけれど‥‥」
桜「次。順番だよ」
瑚「ほい、ほい。よっ。‥‥あの、これ。なんかぜんぶ、ばらんばらんになってしまったんですが」
秀「『野分』じゃな。逆の意味で、すごいぞ。唯一の減点銘じゃ」
瑚「たしか、そうですよね‥‥しかも50点も引かれるんですよね‥‥ははは‥‥ははははははははははははは」
紅「‥‥ん? この風は? (じー)秀吉殿の頭頂のはかない毛髪が、東にむかってなびいている。なるほど、瑚月殿が明日にむかって暴走した風か‥‥最大風力11、暴風警報発令が発令できるな」
あ『豆知識。風力の最大値は12だよー(かくかく)』
春「とゆうか。この時代に、最大風力なんて概念、あったかしら?」

●五巡目
斑「あっというまに、最後ですわね。さきほどは『花散里(0点)』でしたし、ここで一発逆転☆めざしちゃいます。そーれっ」
全員「あ」
斑「‥‥またも、『野分』ですわね‥‥瑚月様につづいて‥‥。瑚月様。こちらに、いらしてください」
瑚「はいよ?」
斑「瑚月様が、瑚月様が、『野分』なんて呪いをのこされるからー! えーん、瑚月様のバカー! いけずー! 晴明ー!」
瑚「い、いや、お、おちついて。俺は呪いなんて、できないから。というか、最後のは、さりげなくマジでやばいぞ。きっと」
辰「と、このすきに。ずっと忘れ去られていた、黒野辰、黄泉のふちよりふっかーつっ! ‥‥あれ? もう五巡目なの? 俺、二回しか投げてねぇっての。よぉし、今度は三つ同時に投げちゃる。準備よろしくー。そんでは黒野辰、ここで決めてお姉ちゃんお持ちかえるぜ。見返りの姿勢から、とわわっ‥‥あ、なんか、とっても普通」
春「私も、最後。――‥‥。なかなか上手くいかないものね。‥‥でも、減点を出してないだけ、マシかしら」
斑・瑚「(ぐさっ)(←←心に矢を打ち込まれた音)」
ジ「とぉ! せん! きょお! うーん、最後はちょっと決まんなかったな」
北「いかん。このままではジェイド殿にかっさわれる‥‥あの、でたらめはもしかして、瓢箪から駒、だったのだろうか。一條北嵩、いざ参る! とぉ! せん! きょお!」
ジ「お、北嵩さん、なんかかっこいいぞ。頭の差した四種類の扇、皆紅・萩・彩絵檜・越後屋扇子、をいっきょに乱れ打ち!」
秀「あんまりにも自棄があけすけすぎるから、減点」
北「うわああああ」
紅「(無言で折り詰め作成中)」

●投扇興・結果詳細
 処理の過程は、以下のとおり。
 その数字が奇数ならば、各人固有の処理数を足し、偶数ならば逆に減ずる。ただし、54を超えた場合はもとめられた数字から54を引き、0以下となったときは54をくわえる。
 この数字を源氏物語の巻にそれぞれあてはめる。1ならば「桐壷」2ならば「帚木」といった具合である。なお他の修正は「初級:10点」「専門:20点」。秀吉点は100点が上限。

 結果、

猫目斑(ea1543) 処理数3
「9、2、12、14、25」⇒「12:須磨(10点)」「53:手習(1点)」「9:葵(5点)」「11:花散里(0点)」「28:野分(−50点)」
「基本射撃術:専門(20点)」「隠密行動万能:専門(「手品」と「優良視力」をふくむので40点)」
「秀吉(80点)(かわいかったから)」
計:104点 

黒野辰(ea6010) 処理数0
「9、6、52、42、11」⇒「9:葵(5点)」「6:末摘花(2点)」「52:蜉蝣(40点)」「42:匂宮(5点)」「11:花散里(0点)」
「優良視力:初級(10点)」
「秀吉(60点)(おもしろかった)」
計:72点

樋野春待(ea7739) 処理数9
「31、46、11、3、34」⇒「40:幻(20点)」「37:鈴虫(8点)」「20:朝顔(8点)」「12:須磨(10点)」「25:蛍(5点)」
「秀吉(60点)(負けず嫌いはいいことだと思います)」
計:121点

ジェイド・グリーン(ea9616) 処理数6
「15、24、33、42、51」⇒「21:少女(65点)」「18:松風(4点)」「39:御法(95点)」「36:横笛(55点)」「3:空蝉(15点)」
「基本射撃術:専門(20点)」「隠密行動万能:専門(40点)」
「秀吉(70点)(勢いがある)」
計:304点

一條北嵩(eb1415) 処理数5
「13、14、21、21、41」⇒「18:松風(4点)」「9:葵(5点)」「26:常夏(5点)」「26:常夏(5点)」「46:椎ヶ本(15点)」
「基本射撃術:初級(10点)」
「秀吉(-5点)(‥‥まぁ、甘いものはいつでも食べられるよ)」
計:39点

華宮紅之(eb1788) 処理数8
「8、24、22、3、40」⇒「54:夢浮橋(100点)」「16:関屋(1点)」「14:澪標(55点)」「11:花散里(0点)」「32:梅ヶ枝(4点)」
「優良視力:専門(20点)」「占星術万能:初級(10点)」
「秀吉(80点)(後述)」
計:270点

緋宇美桜(eb3064) 処理数4
「6、8、24、31、49」⇒「2:帚木(80点)」「4:夕顔(8点)」「20:朝顔(8点)」「35:柏木(7点)」「53:手習(1点)」
「基本射撃術:初級(10点)」「隠密行動万能:初級(20点)」
「秀吉(100点)(後述)」
計:234点

城山瑚月(eb3736) 処理数6
「5、7、13、34、50」⇒「11:花散里(0点)」「13:明石(20点)」「19:薄雲(2点)」「28:野分(−50点)」「44:竹河(15点)」
「隠密行動万能:初級(10点)」
「秀吉(40点)(がんばりは認めます)」
計:37点

 よって勝者、ジェイド・グリーン!

春「14へ行け。‥‥なんとなく云わなくちゃいけないような気がしたから。深く考えてはいけないの」

●総評・全体的に読みにくくてごめんなさい
ジ「一位! 吉原っていいところだなぁ。呑んで食って遊んで、おみやげまでもらっちゃって。今度、弓弦ちゃんといっしょに来ようっと。おとまりするんだー♪」
瑚「最下位か‥‥(心が、ぐさぐさ)」
斑「えい、えい(縄ひょうを瑚月に、ぐさぐさ)」
春「勝てなかったわね。悔しいわ(あむあむ)」
辰「だいじょうぶ、あなた、飲食の量だとぶっちぎりみたいですから。俺なんかずっと気絶してたうえに、吉原のはじまで転がされて、たいして飲み食いできなかったんだぞ。こんちくしょーう」
桜「はぁ。一時はほんとうに死を覚悟しちゃったよ。お医者さん読んでもらえたから、いいけど」
北「ううう。林檎さん、ごめんなさい。勝てませんでした」
紅「(すぅすぅ)(食べ疲れ、呑み疲れ、投げ疲れ)(秀吉によっかかってる)」

 ※

秀「こりゃまた、意外に、かたよったものだ。安定して高得点をかせいだジェイド殿が、圧倒的すぎたわな。桜殿の火噴き芸もよかったんだが、高得点とれたのが最初の一回ではちょっとまにあわなかったようだ」
桜「なんで、俺なんです? 秀吉様って火遊び好き?」
秀「きらいではないな。しかし、江戸の炎はちと絢爛すぎる。‥‥おぬしは意図してのことではなかろうが、無邪気のなせる先読みというのは、それはそれで得難いものぞ。大事にするがよい。それから、そっちの」
桜「ふぇ?」
紅「‥‥(寝てる)(空眠りかもしれない)」

 ※

 桜と紅之がなんとなく秀吉のことばを理解したのは、秀吉が江戸を去って数日後、十日の菊の日である。その日、江戸の各所において謎の火の手があいついで報告され、陽も高いうちから東国の天空は、節句の毛氈のごとき、焦点を痛くする真っ赤に染められた。