●リプレイ本文
貴腐妖精は、いる、そこに。村の寄り合い所。かぎりなくあくどいものを期待する瞳きらめかせて。
冒険者らも、来た、そこへ。あるものは胸に堅牢なる決意を、あるものはぎらつく野望を、あるものはなーんにも考えず。
今ここに、冒険者ギルド史上にとってものこしたくない、墨汁で全面ぬりたくったほうがいいような戦いが幕をあける!
おもに、同士討ちで。
●××○
「ウフ、ついにふたりっきりで『なくなりました』ネ」
クロウ・ブラッキーノ(ea0176)、他人は彼を『生ける猥褻物陳列罪』とか『股間がはんまーぷ○いす』とか呼ぶが(や、そこまでいわんかもしれん)、新たな忌み名があたえられよう、『地獄より来たりし、総攻め』と!
「いちおう酒盛りでござるからな。‥‥拙者?」
黒頭巾で正体かくしながらも存外けっこうかいがいしく立ち働く久方歳三(ea6381)、うん、あなた。
べつに歳三でなければいけない、これといった理由は、なんもない。でももしよかったら、次の二択からおえらびください。
1)そこに男がいるから襲う
2)十八禁阻止にうごく歳三が目の上のたんこぶだったから
「せくしぃび〜むなぞ、まだるっこしいことをしていては文字数がたりません。いますぐ私の毒牙にかかってもらいまショウ!」
「ぎゃー! 歳ちゃん死すとも義侠塾死なずー!」
「先輩! まよわず成仏してくれ、壱号生の冠は俺がいただく‥‥じゃなくって、継ごう!」
兄弟の無念は俺が果たす! 百年以内には!
今日の鬼切七十郎(eb3773)は、むさくるしい髭を剃りあげすっきりしたおももちで、それもこれも幻の「神酒『鬼毒酒』」確保にやむをえない所行だったのだが、歳三の雄々しい断末魔(←まだ生きてる)を目の前にしてなお、そのまま平生たもっていられようか。
つか、べつにこのふたり、義侠塾で遭遇してないような気もするんだけど、いいんだよ。魂と魂がつながってれば。
「そうです。見た目なんて、しょせんは皮膚のごまかしです」
この世でもっともたいせつなのは、
「順列・組み合わせ・【長弓「鳴弦の弓」:弦をかき鳴らし<中略>15m内にある放送禁止用語を消音できる(嘘)】なのですよ!」
・腐女子たるもの素直にあれ(「歳三さん、めくるめく快楽に身も心もゆだねましょう!」)
・腐女子たるもの妥協を許すな(「七十郎さん、先輩だからって遠慮しない!」)
・腐女子たるもの見逃すな(「クロウさんのアレがソレで【長弓「鳴弦の弓」再び】なかんじに!」)
「妥当なところで『クロウ×歳三 ← 七十郎@横恋慕』ってところでしょうか」
「三角関係かぁ。でも、きっふぃー@貴腐妖精の名前、なんだかものたりなーい、あと一人二人足して、組んずほぐれつ乱れきってもらわないと」
「ええー? これくらいがちょうどいいですよ、男同士でも、男同士だからこそ、純愛ってたいせつだと思います。七十郎さんの妨害にも負けず、恋の炎をたぎらせる、クロウさんと歳三さん。燃えますねっ」
どこにも愛のみえない光景に、むりやりにでも愛をみる。赤霧連(ea3619)はふつうのお・ん・な・の・こ♪ですから、やっぱり恋だの愛だのに果てない夢を追うおとしごろ。ふつうの女の子は、とっくにこの場を引いてるだろう、という指示はきっこえませーん。
腐女子三箇条覚え書き、噂の貴腐妖精と連、喧々囂々と推敲しながらのやりとり、かしましい。内容はほんのり恐慌だが、単語の一端も知らぬものにはただの暗号のつらなりでしかない。神月倭(ea8151)は、てんで分別つかぬ会話に「女性はやはり神秘の存在ですね」と妥当なオチをつけながら、けれどもおなじく男性だってまったく理解できないときもある。もはや人外に等しいかたちに絡み合う、クロウたちを不思議そうにながめやった。
「木賊様。あれはいったい、どのような遊びなのでしょう?」
「男同士はときに拳をまじえなきゃ、お互いを理解できないんだよ」
「拳以外のものがまざっているようですが?」
「個性だろ」
木賊崔軌(ea0592)がおちょこで呷ったのは、水――のつもりであった。生業柄、繊細な指先はつねに神経をとぎすませとかねばならぬ。姓のとおりの木賊色の瞳、ぼんやりとかすめたあと、それがまるで針でもついたかのようにかっと見開かれる。
「って、倭。なに酒注いでんだ。呑まないって云っておいたろうが」
「いけませんよ、木賊様。口をしめらせるぐらいは、礼儀です。せっかくの酒宴をもよおしてくだすった、村の方に失礼ではありませんか」
でも、冒険者として依頼をこなすためにこの村をおとずれたはずが、どうしていつのまにか、私はおはこびさんをしてるのでしょうか?
倭のまぎれもなく無垢な疑問に、崔軌は答えられようもない。「ごきげんななめの貴腐妖精をなぐさめる」以上の説明をしていなかったのは、崔軌なのだから。
しかし、崔軌にしろ倭にしろ、この狂宴に参加するつもりはなかった。酒造技術でも学びながらそれなりにごまかそうとしていたのだが、まずは歓迎の宴だと村人総出で狭苦しい場所に冒険者ら一同おしこめられ――畢竟、ばっちり生け贄をこなしてからにしてくれ、と――いうわけで、やんややんや。
修羅場に近い、面倒と悶着。七十郎ようよう、場をぬけだしたが、こんなもんにずらずらと参加している場合ではないとはた気付いて、
「今日の俺は、野性的で危険な魅力の溢れる美形だったではないか。さぁ、貴腐妖精よ、俺のうつくしい胸板と生々しい実体験とくとおがんでもらおうか! あの熱い日の夜‥‥」
「夜なぞ待たなくてもいいデス! こうなったらば、アナタも私のすとりーむに平伏してもらいまショウ!」
「そう、こうなれば毒くらわば皿まで、でござる。秘技・歳三最終奥義・刻よ止まれ拙者はうつくしい・『隣の家に囲いが出来たってねぇ』『へぇ、かっこいい!』」
【長弓「鳴弦の弓」三度】
すこし酒精のまじる、崔軌は己のおくびに顔をしかめながら、諸行無常に思いをはせた。
「木賊様、ほら、ぼんやりしてるから。こぼしてるじゃありませんか」
倭は崔軌が散りばめた水滴のひとつひとつを丁重にぬぐう。崔軌、器用なわりには具合のいい粗忽さもあわせもつ性格だったのか、それはきみょうに広範囲にわたっている。裾、帯、襟、もちろん口辺も、倭は厭な顔ひとつ見せずにそれらを拭き取っていった。生地をささえる小指が崔軌の唇の端についっと触れる。横切る感触は、なぜか甘い。
――‥‥見られている。
いろんな人から見られている。きっふぃー、連はともかくとして、男性陣からも、そのなかの一人とは、トマス・ウェスト(ea8714)、けひゃひゃひゃ、と、不気味な喝采で、
「合わせ技とは、君たちもやるね〜。しか〜し、鬼毒酒は私がいただくよ〜?」
と、一方的な敵対心のすえ、彼は貴腐妖精にむきなおった。
「彼らはしょせんは、ジャパ〜ン人(崔軌「いや、俺、いちおう華国出身」)。む、だが、イギリス出身の我が輩の目新しさにはかなうまいね〜(「‥‥負けていいよ、俺」)? ところで、君のおかずになりそうなおもしろい話があるのだが、聞きたくないかね〜?」
聞きたいな、と、いうふうに耳をすませる貴腐妖精に、トマスは流々かたりだす。彼の施療院をおとずれるというエルフの美少年のことを。さながら高級な砂糖菓子の少年が、さながら揚羽のように真摯にはたらく様子を語って聞かせた。
「‥‥さ〜て、満足していただけただろうか〜? では私に鬼毒酒と、植物についてのとっておきの秘技を〜」
なぜかいきなり態度を小さくしだしたトマス、が、そこにやどる小さなはざまを、連の赤い瞳が射竦める!
「甘いですよ、トマスさん」
「ちが〜う。我が輩のことは『ドクター』と呼びたまえ〜」
「トマスさん、トマスさん、トマスさん! たしかに、普通の貴腐妖精ならばおはなしを聞くのが大好きですし、おおよそのお嬢さんは物語の要素だけでも満足してしまうことでしょう。でも、しかし」
羚羊(かもしか)し、
「それだけでは物足りないから、私たち冒険者をやとったとゆうこと、お忘れですか!? てなもんや、実地研修いっちゃってください、善知鳥さん」
「あぁ、俺を呼んだか?」
烏丸善知鳥(eb3239)、ふわりと欠伸をかみ殺した。これも世を知る修行の一環とはいえ、場外においやられて観戦するのも飽きてきたところ。たしかに陰陽寮ではおよびもつかない阿鼻叫喚を怒濤のようにみせつけられたが、はっきりいってこれからの、これがなんの役に立つのやら。
「烏丸、およばずながら手を貸そう。そこな影よ、主を縫い止めよ。‥‥こんなものでいいのだろうか?」
「おじょうずです、善知鳥さん」
シャドウバインディング。凍り付いたトマスを、連はクロウたちの方向に投げ飛ばす。
「あたらしい獲物が来ましたよー。がんばってください、あぁ、なに乱暴にあつかってるんですか。重要なのは愛ですってば」
あなたがいちばん乱暴者っぽいんだが、というツッコミはやっぱり聞こえず、連はきっふぃーを力強いなかにも愛情あるふうに抱き寄せて、
「こういうふうにするんです! 『俺以外に靡くなよ』って、きゃ、ちょっと気障すぎたかな。‥‥ん?」
連は我に返る、と、そのとなりでは男どもに投げるより熱い視線を、貴腐妖精は彼女に投げかけていた。
●○○×
連「よくわかんないけど、鬼毒酒、もらっちゃいました。ぶい☆」
クロウ「ふ、よかったヨ(すっぱー、紫煙)」
歳「うっうっ。けがされちゃったでござる。帰ったならば、我が友・こんとーちゃんに清めてもらって‥‥(昏倒←だじゃれ)」
倭「お酒といえば、酒造り、もうてつだってもいいそうですよ。木賊様、行ってみましょう。きっふぃー様もてつだってくださるそうですから」
崔「え゛。それってただの働き損‥‥いや、ちょっと待て、ひきずるな倭、うれしそうに衝いてくるな、貴腐妖精!」
七「あの日、俺と先輩はたしかな熱い絆でむすばれていた‥‥そう、『義侠塾』!(本編でしゃべれなかったので、今、しゃべってみる)」
ト「けひゃひゃひゃ、我が輩のことは『ドクター』と呼びたまえ〜」←錯乱
善「うぅむ、やっと最期に出番がまわってきたと思ったら、影縛りしかさせてもらえぬとは。これもまだ、俺の修行が足らぬという証しか。叔父上のいうとおりだ。この世は多様な人々で満ちあふれているし、雑多な事象がしきつめられている。ぐずぐずしていては、あっというまに影も同然の存在になってしまうのだな。そもそも俺は酒がどうやってできるのかも、知らなかった。未熟なこと、恥ずかしいばかりだ。これを機にますます精進をかさね、いつかは叔父上のような立派な男性に‥‥」←今、出番をもらっていることにきづいていない
【長弓「鳴弦の弓」】の律高らかに、こんなところでぐっばい☆