●リプレイ本文
●前哨、ギルドにたむろってる冒険者さん8人にお聞きしました「○○様ってなぁに?」
遠槻霞蓮(ea5007)「女神様ですね」
アオイ・ミコ(ea1462)「はーい、妖精様だと思うの」
田之上志乃(ea3044)「お姫様、お姫様、ぜったいお姫様に決まってるだ!」
山浦とき和(ea3809)「弁天様♪」
御子柴叶(ea3550)「お坊様だと思います〜ゴボウサラダ(何語ですか)はおいしいです〜」
リフィーティア・レリス(ea4927)「いや、ふつうに女王様じゃあ‥‥」
天藤月乃(ea5011)「べつに、なんだっていいよ。景品が出るわけじゃないんでしょ?」
丙鞘継(ea2495)「どこだぁ、我が妹よぉぉぉ!」 ←趣旨、無視してますが
●本題(やっと)
町は不自然な寂寥にしずんでいる。人の乱れた息づかいを縦糸に、好奇や危怖にみちた視線があたりいっぺんをじぐざぐに縫いつける。いくら余所者だからって遠巻きに観察されるのはおもしろくない、だから、アオイはとりあえず冒険者に対する誤解のきっかけを見つけ出してなんとかしたいと思ったのだけれど‥‥。
「うわぁん、みんな話を聞いてくれないよぉっ」
アオイ、4枚の羽を全力ではばたかし、器用にも空中で地団駄を踏む。だって、誰かに話しかけようにも「ごめんください」の「ご」を言い終わらないうちに逃げられてしまう。相手を変えても延々おなじことのくりかえし、アオイの計画はいっとうはじめの段階で頓挫していた。
「しかたがないですよ」
エルフの叶にもちょっとは憶えがある。月道が通じて10年だかそこいらのこの国ではいまだぎゃーじんさんはめずらしいのだ。ジャパンはもともとシフールのいない国だし、アオイのように『まごうことなきシフールっ』な姿形ではすぐに生まれが推察される、そして今、この町で外人さんといえば冒険者がまっさきに思い浮かぶわけで、冒険者といえばごにょごにょむにゃむにゃ。
――だから必要以上に警戒されてもしかたがないのだ、ほんとうに。
「でも〜ちょっとくらい耳を貸してくれたっていいのに〜〜ふぅぅ」
くらり。炎天下にあんまり口惜しがったせいで、飛び眩みを起こしたアオイが渦をえがきながら墜落し、叶の頭上にもふっと不時着。このまま放っておいては、羽根妖精が一名こんがりじゅーっとおいしく焼き上がってしまう。叶はあわててアオイをとりこんだ。
「‥‥そうか、そもそも聞く耳を持たぬか‥‥ここはやはり実力行使で」
と、刀の柄に手を伸ばしかけた鞘継はひとまず置いといて。どれくらい『ひとまず』かというと、大急ぎで袋詰めにして地べたに出荷するくらいの、ひとまず。
『んーんーんーっ(じたばた)』
「まぁいいんじゃない?」
月乃はこの現状をとりたてて気にしてなかった(地面の荷物のこともさして気にしてなかった)。それなりに広いジャパン、たった一カ所の口さがない風説など、うっちゃったって大した痛痒を感じない。もつれた糸はほどこうとすればするほど、こんがらかるものだ。その点に関しては、とき和も別の方向から賛成している。
「そうねぇ、べつだん焦らなくってもかまやしないさね」
こなすべき義務は、それだけではないのだし。一仕事終えてからでもどうにかまにあうだろう。とき和ははだけた着物の襟をかたちだけなおしてから、傍らの仲間に発破をかける。
「そうゆうわけで、出番だよ。志乃ちゃん」
「よーしっ、オラがんばるだよーっ」
そこの店から無理矢理にも調達した(→借りてきた)大槌を両手ににぎりしめ、お姫様になるために!
って、文章の前半と後半でえらく差異があるのだが。
「○○様といったらお姫様しかないべ。お姫様っつったら、お姫様は打出の小槌で一寸法師をぶんなぐって大きくして、ぶんぶく茶釜をがんがん叩いて楽器にして、たいやひらめの舞い踊り‥‥で、よかったべか?」
「合ってる合ってる。えらいえらい。そうねー、みんなでお姫様になろうね」
勘違い以前の問題をあえて訂正しようとかしないあたり、とき和さんへ座布団二枚ぐらいの心意気。
そして、不思議にやる気のあるのがもう一名、いる。
「くす。楽しみですね♪」
霞蓮。
路上の荷袋(動いている)に、指で小さく○を描く。路上の荷袋(耐えている)を、手裏剣でつつく。「ここが腱っぽいからここをこうして‥‥あ、いや、それとも静脈のほうが‥‥いやそれは美しくありません、やっぱり秘孔ですよ、忍者神拳1800年の歴史の耀きは切腱や流血に勝るのです(※でも、まだ神聖暦999年なんですけど)」路上の荷袋(もがいている)を思わず、はいそうですとも、知らず識らず、まったくの無意識のうちに「あん、じらされると秘孔をうまく突けません☆」しばっていた。ぎゅっ。
リフィーティアは、彼らとは遠く離れた場所から他人のふりをしたがっている。べつに周囲と反対のことをするのが彼なりの流儀だからというわけではなくって、嗜虐も迫害もきらいじゃないが、露悪を嗜好するほどじゃあないというだけであり、
「ま、それはいいんだけど」
『ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛(じたばた)』
「‥‥こっちはほんとに綺麗さっぱり、どうだっていーんだけどー。どうするんだ、肝心の賊が見あたらないぞ?」
「そこらへんのどこかにでもかくれて、私らのことを値踏みしてるつもりじゃないのかい?」
ふふん、ととき和、艶と色をふんだんにまぶした仕草で髪をかきあげ、
「このとき和さまの分を計ろうだなんて、生意気な」
迷いなく言い放ち、それならそれでこちらにも考えがある。とき和は愛用の琵琶をはすにかまえる。たいがいの弦楽器というものはどこかしら女性に似ているものだ、大きくくびれた胴がまろやかな臀部を連想させるし、横に張った弦巻が髪飾りのようにもみえなくない。とき和は高く低く、勇猛と悲壮をめまぐるしくうつろいながら、弦をはじいてうつわを啼かせる。
一、二、三、‥‥、十、もいかなかったろう、間。
「ほれ、来たよ」
うん。
まるで水菓子にたかる働き蟻の群れだ。いったいどこに潜んでいたのやら、わらわらわらわら、あんまし哀れでもない子羊たち@筋肉ぎみなのは仕様です、で狭い路傍はいっせーのせであふれかえる。
「踏んでっ」
「蹴ってっ」
「縛ってっ」
と、まったくおなじみでない、台詞を連呼しながら。
「あぁ、更正の救いをもとめる衆生の方々がこんなにもたくさん、お坊様の存在を求めてらっしゃいます。なんとかせよ、と仏は僕におっしゃられてるのですね、僕、やってみせます(ぐっ)」
「む?」
僧侶としての使命感に突如ぐらりとわきたつ叶(だが、その温度設定はかなりななめってるかもしれない)、その彼の袈裟の袖のなか、ようやくアオイは目を醒ました。最初は自分がどこにいるかすら分からなかったけど、なんだか自分が倒れたらしい記憶はある。してみると、ここは休憩にあてがわれたところなのだろう、とても狭いしかなりどころでなく揺れるけれども。外が賑やかだ、賊があらわれたのだろうか。よーし、ここはいっちょ決めるぞ。そのために、途中で石までひろって縄のはしに結んだのだ。これでぴんぴんっと決めるっ。
そんなで、アオイ、覚悟をあらたに飛び出そうとしたけれど、
「むーむーむーっ」
最初の踏み切りが上手くできなくって、ジタバタする。
いや、そりゃあ、人を傷つけようってくらいの石だもの、それなりの重量はある。これをかかえて直線に飛ぶだけならともかく、くくりつけた縄の一端を振り回しながら飛ぼうとすると――異世界の事物を利用してたとえると『ヘリコプターが、岩を結わえたロープを使って、投げ縄をする』みたいなもので、物理法則として、ちょっと、面倒。
「じゃあ、いいもの。べつにふりまわさなくったって」
アオイ、荷物を放り出して脱出、そこで彼女は初めて自分が今までどこにいたかを知った。
「おはようございます〜」
「あ、ここ、叶さんの服だったんだ(そういえば、ちょっと、抹香の匂いがするなーって思ったんだ)」
「アオイさん、ちょっと手伝ってくれません?」
「なにを?」
「即席で禅道場をつくるんです」
道場――仏道を修行する場――をつくるのに必要なものはなんだろう? とにもかくにも土地は必要だ、それとお坊様に修行者の面々。ここにはささやかながらもすべてある。それらを向上し充実させてやるのも、きっと僧籍の勤め‥‥なのかなぁ。
「修行を求めに来た人を捨てるだなんて、僕できやしませんっ」
燃える。叶、使命感に。
燃える。賊、来る歓びに。
「それにしても、ジャパンの座禅ってはげしいですねぇ。みずから『撲ってっ』って積極的な人が多いですし。おまけに縄をつかうなんて、かなり斬新ですねぇ」
「なーんだ座禅だったんだ。私てっきり、○○○○な変態が攻めてきたかと思っちゃった」
「まっさかぁ。みなさん、すなおなよい人ですよ。あ、そこ縛ってください」
「は〜い。ちょうどいいや、私ロープ持ってきてるよ」
書き手の悲しみ:ツッコミがいねぇ!(爆)
「‥‥いいんじゃない? 本人たちは楽しそうなんだもの」
あくまで月乃は己の分を守って行動している。拾った木ぎれをピシッパシッと打ち鳴らし、賊の肌をかすめ、彼らの歓びのまじった悲鳴を聞いていると、こんな仕事かったるいと思っていた月乃も興趣がのってくる。ちょっとだけばつが悪いかも、と廻りをみわたしてみる。
心配なさそうだ。
「ほんとみんな楽しそうだなぁ」
「うわぁい、こんなにも実験台さんがいっぱい♪」
特に、荒縄の天使な霞蓮(ふぁさっ ←効果音)、嬉々として揚々として、止めようがない。
忍者神拳――それは完成のあかつきをみたあかつきには、無類の破壊力をほこり、指先一つで世紀末の救世主がどーとかこーとか七つの星とか。
完成すれば、な。
「えーと、ちょっと待っててくださいね。たぶん、ここをこうして」
「ふんぎゃあ」
「ありゃ。まちがえちゃいました? んじゃ、ここ」
「あぁっ、いいっ♪」
「よいですか? じゃ、ここなんてどうです?」
「すっごく♪」
「わぁ、まったくのでたらめだったんですけど、正解でした? 私って天才かも♪」
「あ、なんかすこし羨ましい」
そろそろ木をピシピシやるだけに飽きかけていた月乃、霞蓮のやるようにもやってみる。
まぁ、若いものは若いものにまかせまして。とき和「ちょっとお待ち。私が若くないとでもいうの?」いや、でも、今回の集まりのなかで他はみんな10代だもの「‥‥ふっ。縛ったりぶったりは、他にやらなきゃいけないものがいるようだね」きゃっ♪
「とき和どーん、異次元にむかって何してんだべ。お姫様は?」
「うーん、私はお姫様よりどっちかってぇと弁天様なんだけどねぇ。あ、それよか志乃ちゃん、私はいそがしいからひとりでやってくれる?」
「分かっただ」
そして、志乃は打出の大槌をふりきる姫になり、とき和は必殺仕事人、ではなかった、琵琶の弦をつまびいて世界をあんあんいわせましょ♪
――って愉しんでる場合じゃあないやい。そういえば、ひとり忘れていたかも。
捨ておかれた荷物がごそごそ動く。そのうえべっとりと足跡くっきり、これはあきらかに人の足裏。荷、三分四分ほどの
「いったい誰だ俺を踏みつけたのはぁ!」
この人 → リフィーティア「だって、あんまりうるさいんだもんなぁ。踏む練習につかっただけだよ」、けれど鞘継がそれを知るわけはない。
「あいつらだよ」
リフィーティア、賊を指さしながら、天使のようにかわいくうっとりの笑みで、にっこり。そうか、と納得、鞘継。日頃はおとなしい(?)彼だって、荷物にされりゃあ鬱憤がたまる。すなおに賊をなんとかしようと動きかけ‥‥でもちょっとひきかえし。
「リフィーティア」
「ん?」
「今しばらく、俺のことを『お兄様』と呼んでもらえないだろうか(ぽ)」
「踏む、踏む、そんなに踏まれたきゃ踏みつけてやる!(げしがしげしごし)」
で、この収集のつけようのないくらい冒険者の奮迅の結果、みごと賊は去ったわけで、のこされた冒険者に対する評価はどうなったかと申しますと。
●その後(お約束的に、蛇足的に)
甲(けっきょく名前なかったな)「えーと、向こうの町から手紙がとどいたんたが。『冒険者って落書き魔の座禅魔のことだったんですか?』‥‥おまえらいったい何をしてきた?」
志乃「いっしょうけんめい張り紙――できるほどの予算がなかったから(紙、高くって)直接あちこちに描いてきただっ。こうゆうのを」
甲「ほうほう、こりゃあ犬と猿が喧嘩してる図か」
志乃「んにゃ。犬鬼を冒険者がこらしめてるところ」
甲「‥‥‥‥」
叶「僕はちゃんと座禅を布教してきましたよ。ほら、感謝のお手紙も届いてるじゃないですか(おもに賊から)♪」
甲「‥‥‥‥今日のところは、すなおに帰れ。おまえら」
●今更気にする人もいないだろうけど、ところで最初の問いの答えは、いったい何?
リフィーティア「やっぱり女王様じゃあないのか?」
月乃「だから、この国には、女王さまなんてトレンディでメルヘンでキュート(←外国語にはいまいちうとい)な制度はないんだってば。巫女王なら大昔にはいたけどね。だから姫様っておよび、姫様って。ほれほれ忍者神拳やったげるから(ワクワク♪)」
リフィーティア「‥‥や、俺は遠慮しとくし。おまえ癖になってるだろ?」
霞蓮「はぁ、真の忍者神拳を極める道はまだまだ遠いです‥‥なんか布教には成功したみたいですけど」
鞘継「妹への道もまだまだ遠いようだ‥‥。何処だ義妹よ、兄は悲しいぞぉぉぉ。どこかでお見かけした方は、今すぐおしらせ(ぐわんっ)」
志乃「あ、すまねだ。手がすべっただよ」 ←まだまだ打出の小槌
鞘継「わ、わが、い、いもうと‥‥(がっくり)」
というわけで、答えは「いもうと様」になった。って文字数からしてちがうやないかぁっ!