お た か ら
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■ショートシナリオ
担当:一条もえる
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:12人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月08日〜09月13日
リプレイ公開日:2004年09月21日
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●オープニング
「‥‥なるほど。あなた方の言うとおり、確かに生活は楽ではなさそうですね」
やってきた役人は、家々の状況を逐一調べて台帳に書き込むと、眉を寄せた。
この村では以前、凶作で苦しんだことがあった。その際、領主は「貸し」という形で税の徴収を待ち、特に困窮している村人には実際に金を貸して援助したのである。
が、明くる年になってもまだ、返済が終わっていない。
もっとも、村人も悪意があって払わないのではない。調べてみたところ、昨年の収穫も豊かとは言い難く、貧しい者では利子さえ払えそうにない。
「そういう状況なら、仕方ないですね。ふむ‥‥」
「はぁ。どうも申し訳ありません‥‥」
税が徴収できなければ、領主の生活も困窮してしまう。困り果てて渋面を作る役人に、村人は深々と頭を下げた。
そんなやりとりがあった、数日後。
場末の酒場には場違いな、しかし冒険者の酒場ではときおり見受けられる、礼服を着た男が急ぎ足でやってきた。親父に声をかけ、依頼書が張り出される間さえもどかしげに、手近な冒険者達に声をかける。
「村人が、『宝探し』といって出かけてしまったのです!」
役人を見送った村人達は、腕を組み、額を寄せ合って話し合ったのだ。
『ありがたいことに、領主様はまだ待ってくださるということだ』
『だけどよぉ、それに甘えててもいいのか?』
疑問を投げかけたのは、強硬に返済に反対していた若者である。はじめ彼が村全体を「返済反対」に引きずり込んでいたのであるが、領主が思いも寄らない寛大な姿勢を見せたため、態度が改まった。恩を感じたのだ。それだけに、心苦しい。
『領主様だって、ここからの税がなくちゃあやっていけないんじゃないか』
『そりゃそうだが。そうは言ってもな‥‥どうすれば』
『それさ。昔、このあたりに盗賊がいたって話があっただろう? で、あの森の中に洞窟がある』
『確かに、そこがねぐらだったという噂はあるが‥‥まさか』
『あぁ。俺達でそれを取りに行くのさ!』
若者がそう言うと、皆は口々に、驚きの声を上げる。
『危険すぎる! なんなら、冒険者を雇って‥‥』
『信憑性はないでもないが‥‥やはり噂じゃないか!』
『冒険者を雇う金があれば苦労もしないだろ!? 噂だろうとなんだろうと、他にあてはないじゃないか! 大丈夫、どうせもう盗賊はいないんだから』
それなら、一安心か。そもそも、他に返済の当てがあるわけでもない。そういう事情で、十数人の村人達は思い切って森へ踏み込んでいったのだ。
「それを危ぶんだ村人から通報を受けたのは、つい先ほどです。心意気は買いますが‥‥無謀すぎる!」
森の奥にある洞窟が、怪しいとされている場所だ。その内部は『入り組んでいる』ということが確認されてはいるが、中を詳しく知る者はいない。もっともやっかいな状況なのだ。
「それだけならまだしも。村人が知らないのも無理はないですが、つい先日、コボルドの群が確認されたばかりなのですよ、そこは!!」
それは、一大事だ!
「かなりの数がいると思われます。領主様も、兵を派遣するよう支度を始められましたが‥‥みなさんのお力添えも!」
●リプレイ本文
●冒険者は森をゆく
「まったく‥‥そなたらは、領主殿にどれほど心労をかけたら気が済むのだ?」
ヒカル・サザンテンプル(ea1884)は渋面を作ったが、いまさら言ったところで仕方がない。
「あたし達なら大丈夫。それより、村の人の方が心配だわ」
ヘヴンズゲート・ラ・シエル(ea5992)は領主の兵を待たず、自分たちだけで先行することを主張した。他に目立った意見はなく、なし崩し的に12名の冒険者達はどうやら独力で村人を救うことにしたらしい。
「いた! あそこに人が!」
空を飛ぶリゼライド・スターシス(ea4664)が指し示す向こうには、確かに村人らしき姿。それと、亜人の姿。
「危ない!」
ウィリアム・ファオ(ea3111)の『ミストフィールド』が、錆びついた剣で村人に斬りかかろうとするコボルドの視界を遮る。
狼狽してあたりを見渡すコボルドがこちらに気づくより早く、ジェシカ・ロペス(ea6386)とフレイア・ヴォルフ(ea6557)は矢をつがえ、放った。矢を受けて悶絶するコボルドの中に天草乱馬(ea6082)は忍者刀を構えて飛び込むと、一太刀も振るわせることなく切り倒した。
「なんじゃ。我が輩の出番は無しか」
ギリアム・フォレス(ea5444)は不服そうにしながらも、村人に駆け寄って様子を見る。幸い、腰が抜けただけで怪我はないようだ。
「まったくもう‥‥。一環千金なんて甘い話、やっぱりあるもんじゃないよ?」
「す、すいません‥‥」
キリク・アキリ(ea1519)が口をとがらせると、村人は先刻の恐怖が忘れられないのか震えつつ、身をすくませて頭を下げた。
「確かに無謀よ、無謀。しかし、その心意気はかってやらねばなるまいよ。気に入ったわい」
ギリアムはひとしきり哄笑したのち、表情を改めて村人から話を聞いた。
やはり、村人達はコボルドがいることを知らなかった。途中で遭遇した1匹はなんとか一斉に取り囲んで倒すことが出来たものの、中にはこの男のように気後れした者も現れた。仲間達は彼を残し、森の奥へと向かったのだが‥‥村に戻ろうとした彼が、逆に襲われてしまったということだ。
リゼライドが、顔をしかめる。
「領主様のためにそこまでするなんて‥‥気持ちは分かるけど、やっぱり無茶だわ!」
「まったくだ! さっさとあきらめて逃げ帰ればいいものを‥‥!」
憤然としながらも、ヒカルは一番に、村人の指し示した道を足早に歩いていった。
●これもまた、遺産
『敵は、いない』
ウィル・エイブル(ea3277)が身振りで示すと、仲間達が洞窟の入り口に集まってきた。
「ロープが足りるかな? 奥は‥‥見えないが」
カナデ・クオン(ea0292)が洞窟をのぞき込みながら、呟いた。入り組んだ洞窟も、それを頼りに進めば怖くないが。
「それで足りるくらいの洞窟なら、いいんだがな」
フレイアも奥をのぞき込みながら、首を振る。どれだけ輪にしてまとめても、何十メートルもの縄ともなれば相当の重さとなり、なによりかさばってしょうがない。そして、何十メートルかで行き着いてしまう洞窟なら、迷う心配もなかろう。
「布きれを巻いた小枝でも目印にして、行くとしよう」
「‥‥そうね。やっぱりみんなこの奥に入っていったみたいね」
ヘブンズゲートが気のない返事を返したのは、足下を見つめていたからだ。
「見て。やっぱりこれ、コボルドの足跡みたいよ」
「本当だな。やはり、ここは奴らの巣でもあるのか。そうとわかっていれば、村人達も入ったりしなかったろうに‥‥」
カナデは嘆息したが。仕方がない。村人達にそれだけの観察眼を求めるのも無理というものだ。
ともかく、のんびりはしていられない。
注意深く進む乱馬を先頭に、一行は目印を残しつつ、奥へと進む。ランタンの覆いから漏れる微かな光だけが、行く先を照らす。
洞窟の中は、罠だらけだった。この道を村人が通ったのかどうか確証はないが、1つ1つを注意深く避けていく。
しかし。
「‥‥ッ!!」
突然、前を行く乱馬とウィルの姿が視界から消えた。板張りになっていた通路の下には、闇が口をあけて待ちかまえていたのだ。
ほんの一歩の差でしかなかったジェシカはなにやら叫び、下をのぞき込む。
幸いに、本当に幸いなことに、2人は必死に穴の縁に手をかけて落下を免れていた。カナデは急いでロープを結びつけ、全員で引っ張り上げる。
盗賊達の罠は時を経てもなお、役目を捨てていなかった。もちろん、冒険者達もそれを予見してはいたものの、「罠があったら避けば」、あるいは「外してしまえばいい」という程度で問題ないと思っていたのだが。
もう少し、はっきりとした方策を立てておいた方がよかったかもしれない。
「参った。盗賊の奴ら、相当に意地が悪いよ」
相手の立場に立ってみれば、罠の予測もある程度つくけれども。人への殺意がこもっているだけに、たちが悪い。フレイアは苦虫を噛み潰したような表情になってしまう。
「やっかいなことあるな‥‥」
闇に閉ざされた洞窟の中には、潤いの欠片もない。
ウィリアムはため息をついた。
●手にした宝
しかし、こんな事で怯むわけにはいかない。冒険者達はなおも、歩を進める。
すると、今度は悲鳴が聞こえてきた。反響してわかりづらいが、この道の向こうからだ。
「あれ、何人もいるわよ!?」
リゼライドの言うとおり、その声は1人や2人の声ではない。
冒険者がそちらに駆けつけると、闇の奥から数人の人影が姿を現した。冒険者が身構えたのもほんの数瞬。それは必死の形相の村人達だった。
「どうしたんじゃ!?」
「あ‥‥あぁ! 仲間が、罠に、それでコボルドが‥‥!!」
村人の話は要領を得ないが、大体の事情は容易に察することが出来る。
「今度ばかりは我が輩の出番じゃな!」
とギリアムは叫び、駆けだしていく。
果たして、その向こうにはコボルドの群がいた。今にもとどめをささんと、うずくまる村人に剣を振り下ろそうとしている。
「巣穴に飛び込んでしまったらしいな!」
コボルドの武器には鈍い輝きがある。毒が怖い。ヒカルは盾を構え、村の中に飛び込んでいった。命知らずな行為だが、奴らを分断する策が無いのでは仕方がない。
「戦いは避けたかったんだけどね!」
もはや、そうも言っていられない。キリクもまた剣を抜き、戦いに加わった。
カナデがすぐさまランタンの覆いを外すと、リゼライドは『ライト』で明かりを生み出した。洞窟の中が、2つの光源に照らされる。
コボルドもすでに倒れた男など気にしてはおれず、その点では幸いに乱戦となる。
たいして広くもない洞窟のこと、大きく動き回って戦うことは出来ない。後ろに控えるレンジャー達の飛び道具も、急所を狙って一撃でしとめることが出来ればそれに越したことはないが、そうそう都合よくそこに命中するはずもなく。
真っ向からの叩き合いになってしまう。
「望むどころじゃ! さぁ、今のうちに村人を!」
「わかったわ!」
ヘヴンズゲートはその隙に村人に駆け寄ると、肩を貸そうとしゃがみ込んだ。
だが。青年の顔色が悪い。出血がひどいためではない。毒だ。
可能性を信じて、ヘヴンズゲートは傍らに倒れ伏していたコボルドの死体をあさる。
「あったぞ、これだ!」
見つけたのはフレイアだった。これが、解毒剤に違いない。これを飲ませ、後は逃げ出すのみだ。
「ま、待ってくれ。た、宝を見つけださないと‥‥。お願いだ。宝を、探してくれ。俺のことより‥‥!」
だが若者は、弱々しい声で懇願した。
「宝が欲しいんなら後で探してあげるわ。だけど今は、あんたのことが先! 死んで、領主さんにどんな申し開きするつもりなのよ!」
ヘヴンズゲートは有無を言わせず、その口に解毒剤をねじ込んだ。
コボルドの追っ手を振り払いつつ、命からがらで洞窟を脱出することに成功した直後、領主率いる兵が到着した。
怪我の功名と言うべきか、コボルドどもは洞窟に集まっている。領主は迷うことなく命令を下し、冒険者は彼らとともに再び地の底に潜り、コボルドを散々に追い払った。途中、あるいは逃走中に怪我を負った者もいたが、入手した解毒剤のおかげで大事にも至らなかった。
そして、洞窟の奥で一行は宝を見つけた。
村の若者達はヒカルをはじめ冒険者や領主に、こってりと油を絞られた。さすがに、こんな真似はもうしないだろう。
見つけた宝は正直なところ、村の税とするには物足りず、『宝』という名には位負けしているような代物だったが。領主はそのほとんどを村人に渡し、彼らや冒険者、兵士達をねぎらって宴を開いた。
「それで大丈夫なのか?」
と問うてきた冒険者に領主は、
「金には換えがたいことなので」
と答えたとか。
今も彼は、冒険者達に振る舞った豪勢な物とは似ても似つかぬ、わびしい食膳を前にする毎日だという。