【ラン動乱】国王崩御

■ショートシナリオ


担当:一乃瀬守

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 97 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月02日〜05月09日

リプレイ公開日:2008年05月10日

●オープニング

──事件の冒頭
 ガラーーーンガラーーーーン
 ラン・王都ダーナ。
 その中央に位置するダーナ城では、今、弔いの鐘が鳴り響いている。
 城門の前には、4体のアザレアが待機し、その手に構えたエレメンタルバスターが空を向いている。
 そしてその周囲には、ズラリと喪服を身に纏った各騎士団が集まり、今、城内から運び出される棺の護衛を務めようとしていた。


 先日。
 ラン国王、コンラート・ダーナが、竜と精霊の御許へと送り出されたのである。
 ラン国民は全て喪に服し、偉大なる国王の師を哀しんでいた。

「ラン国王コンラート・ダーナ‥‥今より精霊廟へと向かう」
 騎士団長のその叫びと同時に、正門がゆっくりと開かれる。
 そして大勢の騎士によって持ち上げられた巨大な棺が、ゆっくりと城門から出てきた。
 静かに町の中を歩き、そして街の外れにアル、代々王家の者の亡骸を納める霊廟へとたどり着く。
「ランを護る偉大なるグラビティードラゴンよ。我が父コンラートを、汝の御許に‥‥」
 レベッカ・ダーナがそう告げると、静かに霊廟の扉が開く。
 そしてその奥にコンラート王の遺体を安置すると、静かに扉が閉じられていった‥‥。



●背後には?
──翌日のダーナ城
「では、若きレベッカ・ダーナをラン女王として即位させることに異論するものはいませんね‥‥」
 ランの政治を支えている元老院が非常招集され、次期国王には誰が相応しいかという論議が行なわれていた。
 その中でも、次期国王にはレベッカ・ダーナが就任、政治などのバックアップには元老院とラン議会がつくということで話は纏まったらしい。
 そして国王崩御の報告は、近隣諸国にも届けられた‥‥。

──その頃のとある場所
「ふふっ。どうやら死んだらしいわね‥‥国王」
 暗い部屋の中。
 ほのかに照らされた明かりが、室内で話をしている男女の姿を映し出す。
「らしいな。ここまでは話にあったとおりだ‥‥そろそろ動かせて貰うか」
 そう告げると、そのカオスニアンの男は、壁に掛けてある巨大な剣を手に取る。
「マヤ、お前もそろそろ覚悟を決めろ。ここから、俺達の愉しいパーティーが始まるんだからな」
 マヤと呼ばれたその女性は、クスリと艶っぽい笑みを浮かべると、全裸にシーツを纏ってベットから起き上がる。
 そして剣を構えた男に寄り添うと、そのたくましい胸許に静かに唇を寄せた。
「ジャグ‥‥このランを、私達がぶっ壊しましょう‥‥」
「ああ。そうだな‥‥仲間たちに連絡を、この隙に、ランをぶっつぶす!!」

●今回の参加者

 ea1643 セシリア・カータ(30歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea3866 七刻 双武(65歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb4097 時雨 蒼威(29歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4248 シャリーア・フォルテライズ(24歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4286 鳳 レオン(40歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4313 草薙 麟太郎(32歳・♂・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●命の価値と、国の価値
──ラン王都・ダーナ
 国王崩御。
 その為、現在のラン王都は厳戒体制が引かれている。
 といっても、自警団や騎士団が市街地の巡回を強化、傭兵団などもそれに従い、国を上げての葬送が行なわれている。
 既に国王の遺体は王家の霊廟に安置されており、今は儀式としての葬送が行なわれている。
 これには、各国から貴賓客が来国しているため空戦騎士団や陸戦騎士団はそちらの警護に重点をおいている。
 そのため、市内巡回などはもっぱら自警団と傭兵団の役目である。

「‥‥しかし、随分と物騒ですねぇ‥‥」
 そう呟いているのは、先程高速艇ロータスで到着した『ラン親善傭兵団』のセシリア・カータ(ea1643)。
「ええ。でも、これだけ各国の重鎮クラスの人たちが来ているということは、このランの先国王の人望というものは、かなり厚かったのでしょうね‥‥」
 と草薙麟太郎(eb4313)が告げる。
 二人は、これからの警護についてダーナの自警団と連携を取る為に、自警団本部に向かっているのである。
 すでに他の仲間たちは本部に向かい、色々と打ちあわせの為の準備をしている筈。
 二人も自警団に向かう筈であったが、五賢老であり『ラン親善傭兵団責任者』であるビリー・アンデルス卿から呼び出しがあったので、少し時間が掛かってしまったのである。
 そしてなんとか自警団本部に到着すると、直にダーナ自警団責任者と面会、そのまま細かい打ち合わせを行う事になった。
「このダーナは規模が広い為、自警団でも核エリアごとに分かれて治安維持を行っています。皆さんには、東方のエリアに向かって頂き、外敵からの防衛に務めて頂きたいのですが」
 と告げる自警団長。
 それについては、皆問題はない。
 むしろ、知らない土地での警備となると、指定された場所がもっともベストである。
「その件ですが、一つ御願いがあります」
 と告げるセシリアに、自警団長は肯く。
「どうぞ」
「そのエリアには、私達以外の自警団の方は?」
「元々の担当エリア自警団が15名、それとラン陸戦騎士団登録の傭兵団が20名。そこに貴方たちが加わる形になります」
「では、その傭兵団の指揮権を私達に頂けませんか?」
 と、やんわりと告げるセシリア。
「ほう? それはどうして?」
「騎士として、兵法や指揮については学んできています。お役に立てればと思いまして」
 と協力の申し出をするのだが。
「それには及びません。傭兵団もかなりの強者ぞろい。実践を得ているものたちです。ご安心ください」
 とニコリと笑いつつ断わられる。
「では、そのエリアについては現地で直接。この地図は王都の主要街道を示しています。この細いのが全て枝道、この印には騎士団が待機していますので‥‥」
 と、地図を広げて説明する自警団長。
 そして一行は、担当エリアへと向かうこととなった。



●スタンバイ
──ダーナ東方エリア・グリシーヌ地区
 地区の外側を巨大な城壁によって囲まれている、ダーナ東方の玄関口。
 ここから伸びる街道は、東方各分国に繋がっているので、このグリシーヌ地区はもっとも多く商人達が集まる地域としても有名である。
 この城壁の中に、自警団詰め所はあった。
 そこで自己紹介をすると、一行は城塞外側での警備を任される事になった。
「‥‥この場所がここ。で、ここがこの街道ぢゃな‥‥ここにある大森林とここの川、ここからの襲撃には気を付けたほうがよいのう‥‥」
 外に作られた仮設キャンプ。
 そこの外に在るテーブルの上で、七刻双武(ea3866)はこの城門周辺の地図を広げ、皆に色々と説明を行なっていた。
「しかし‥‥罠を設置したほうがいいと提案したのぢゃが‥‥」
「それは危険だろう? この街道はかなり大勢の人が通っているみたいだしな‥‥森も、そこを生業としている人たちがいるっていう話だし」
 時雨蒼威(eb4097)が双武に告げる。
「うむ。そうじゃな‥‥」
 そんな会話をしているとき。
「あのーー。時雨さん、ゴーレムの調整終りましたか?」
 と、置いてある風信器から声がする。
「あ、いま仕上げる」
 と告げて、近くに置いてある『鬼殺し1号』に登場する時雨。
「こちらアザレア1シャリーア。各機最終調整を開始‥‥」
 今回のゴーレム隊リーダーはシャリーア・フォルテライズ(eb4248)。
 搭乗機体はアザレア1、主要装備は『エレメンタルバスター』。
「了解。こちらアザレア2鳳。最終調整を開始する‥‥」
 同じくアザレア2に搭乗しているのは鳳レオン(eb4286)。主要装備はやはり『エレメンタルバスター』。
「こちら鬼殺し2号。調整完了、待機モードに入ります」
 それは草薙の声。
 主要装備はハルバード一振り。
「こちら鬼殺し1号。隊長、この槍なんだが、ちょっと扱いづらいぜ‥‥」
 と手にした槍をブゥンと振るいつつ、時雨がそう告げる。
「我慢しろ。元々鬼殺しは格闘戦用だ。それに、このランでは、ゴーレムが扱うような大型弓はあまり普及していないらしい」
 それは事実。
 元々ゴーレムでの『弓の取扱』は、手の部分がより人に近いぐらいの精度で動かなければならない。
 いくらゴーレムが人と同じ動きを出来るとはいえ、そこまで精度を求められるとかなりきついらしい。
「こちら鬼殺し1号、了解‥‥とほほ」
 とあきらめ顔で、槍を構えて演舞を始める時雨。
 その動きは、まあ普通。


●強襲
──ダーナ東方エリア・グリシーヌ地区外
 1日後。
 早朝に、それは起こった。
 城門の見張りに付いている警備兵から、緊急の通信が入った!!
「城門正面に敵襲!! 各員戦闘態勢に!!」
 その声と同時に、一行は全員戦闘態勢に入る
「ゴーレム隊は敵の恐獣を迎撃!! 七刻双武達は地上からの敵を潰しにまわってくれ!!」
 シャリーアの激が風信器越しに飛ぶ!!
 その声に合わせて、全てのゴーレムが起動。
 街道を走ってくるのは二体の恐獣。
 頭部に3対の角を持つ角竜型。
 その背中には、カオスニアンがそれぞれ搭乗しており、うまく角竜を操っている。
「距離が近い。エレメンタルバスターは駄目か‥‥」
 そう告げると、アザレア2の鳳はエレメンタルバスターを置きハルバードに換装。
 同じくシャリーアも装備を整えているさ中、素早く突撃していった鬼殺し1号2号は角竜の正面で武器を構えた!!
「何処まで時間を稼げるか‥‥」
 時雨は敵の襲撃と同時に狼煙を上げ、そして早馬を王城に走らせた。
 あとはどこまで時間を稼げるか。
──シュンッ!!
 素早く槍を角竜に向かって投げる。
 それは角竜の胴部に突き刺さったが、なおも興奮した角竜は突進してくる!!
 そしてその横では、麟太郎もハルバードを腰溜めに構えた。
──ブゥンッ!!
 相手の突進にタイミングをあわせる。
 本来ならばカウンター狙いという所だろうが、麟太郎にはその技術はない。
 とりあえずブチ当てるという所だろうが!!

──ドッゴォォォォォォッ

 角竜はハルバードの一撃を躱わしつつも鬼殺し1号に突撃!!
 そのまま胴部を貫き、制御胞にまで貫通する。
 その横では、やはり時雨の載っていた2号機も角竜のチャージをもろに受けて、そのまま後方に吹き飛ばされた!!
 胴部制御胞のハッチが吹き飛び、時雨の姿が剥き出しになる。
「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。ふざけるなよっ!!」
 瞬時に機体の損傷をチェックし、再び立上がる鬼殺し2号。
 だが、その近くでは鬼殺し1号はただじっと身動きが取れないまま、角竜の頭の一振りで横に吹き飛ばされてしまった。
「麟太郎‥‥よくも‥‥」
 そのまま突進してくる角竜の正面で、鳳とシャリーアのアザレアが楯を構えて立ちはばかる。
「麟太郎は無事だ‥‥とりあえずここを死守する!!」
 そのシャリーアの言葉と同時に、麟太郎の1号機がゆっくりと立上がった。
「‥‥あと少しズレていたから即死ですよ‥‥」
 と呟きつつも、麟太郎は再びハルバードを構えた。


──一方その頃
「さて‥‥敵の姿はあの二つだけ。どうみる?」
 双武がセシリアにそう呟く。
「陽動ね。本部隊は側面から。でも、十分破壊力のある陽動よね‥‥北門にいきましょう。あそこが一番森に近いわ」
 ということで、二人は東門から離れ、来た門に向かう。
 と、ちょうど到着したとき、森の向うから大量の騎馬隊が走ってくるのを確認した!!
「ここでくいとめるとするか‥‥」
「そうね‥‥」
 と二人で北門を死守する構え。
 その二人の後方からは傭兵部隊の援護もやってくる。
 大体2分間、ここをおさえればいい。

──ガギィィィィィィィン

 と、戦闘を走る眼帯を付けたカオスニアンが、その手に構えた巨大な剣をセシリアに向けて振り落とした!!
 それを間一髪受け止めたものの、その圧倒的な力に、セシリアのライトシールドが真っ二つに砕かれ、後方に弾かれた。
「Yaaaaa。イッツ・ショーターイム!!」
 そう叫ぶと、男は馬から飛び降りてすぐさまセシリアに切りかかる。
「こりゃいかん!!」
 と双武が援護に向かおうとするが、すぐさま双武の元にも敵がやってくる。
「悪いわね。ジャグの戦いの邪魔はさせないわよ!!」
 そう告げると、カオスニアンの女は手にした鞭を振るい、双武を牽制する。
 それをどうにか躱わしつつも、双武はパリーイングダガーと太刀の二刀流で女を牽制、
 お互いに一歩も動けない状態となっていた。
「ほほう。お主いい腕じゃな。名をなんという?」
 素早い連撃を繰り出しつつ双武が問い掛ける。
 それを躱わしつつ、女は静かに口許に笑みを浮かべつつ呟いた。
「マヤと呼んでもらって結構よ‥‥生き残っていればの話だけれどね?」
 すかさず反撃に出るマヤ。
 鋭い鞭裁きが双武の動きを牽制し、その場から動けなくしていた。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 と、突然のセシリアの絶叫。
 ジャグ・バンの大剣がセシリアの右腿を掠め、そのまま分断していた!!
「おおっと。殺し損ねたか。まあ、それで身動きも取れないだろうさ!!」
 そう呟くと、ジャグは、返す刀でセシリアの右肩に一撃を叩き込む!!
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 大量の血飛沫が吹きだし、大地をセシリアの血が染める。
 右肩から腕をおとされ、すでにセシリアは意識を失っていた。
「セシリア!!」
 そう叫ぶ双武だが、その場から動く事が出来ない。
「マヤ、そろそろそっちも終らせ‥‥と?」
 ジャグがセシリアを蹴り飛ばした直後、北門に傭兵団が集まってくるのを確認した。
「時間稼がれすぎだ。撤退!!」
 そう叫ぶと、ジャグは馬に跨がって双武に向かって走り出し、剣を構えた。
「ほう。ついでに一撃叩き込んでいくか?」
「いや、悪いなじじい。首を貰う!!」
 そう告げると、双武とジャグはすれ違い様に激しい一撃を叩き込む。
──ガギガギィィィィィィィィィッ
 そのままマヤもジャグの後ろに飛び乗り撤退。
 傭兵団が到着すると、セシリアは急ぎ救護班に運ばれていった‥‥。


●そして
──東門自警団詰め所
 セシリアの命に別状はない。
 素早い治療で切断された部分を結合、あとは回復を待つばかり。
 麟太郎もかすり傷程度、その他のメンバーは無傷。
 鬼殺し1号弐号は装甲の修復でファクトリー送りとなり、この地域の戦力は半減以下となった‥‥。
 それでも残った戦力で期間内の任務を務めると、一行はそのままウィルへと帰還していった。

 敵の戦力強大なれど、対処方法はある。
 ゴーレムと陸戦の連携が、今まで異常に必要だと一行はさとった。
 そしてセシリアは、敗北を噛み締めつつ帰還する。
「ジャグ・バン‥‥次にあったら必ず‥‥」

──Fin