【ラン動乱】レベッカ・ダーナ即位
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■ショートシナリオ
担当:一乃瀬守
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 97 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月22日〜05月29日
リプレイ公開日:2008年05月31日
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●オープニング
●──事件の冒頭
「静粛に・・・・」
巨大な議事堂。
その中央で、ラン評議会議事長を務めるエレアザール卿がそう叫ぶ。
ラン国王崩御の後日。
葬式も一通り終り落ち着きを取り戻したラン評議会がまず最初に行なわなくてはならないこと。
それはすなわち『ラン国王選定』。
そのためにまずラン元老院が国王選定を行ない、それを評議会に進言。
評議会は元老院が選定した国王候補が相応しいか、議会で議決を取る。
その結果を元老院に報告し、正式に国王選定が為される。
その後、戴冠式などの儀式を執り行い、霊廟にて新国王の宣誓式を執り行うという流れになっている。
そして現在、費用議会では新国王に、ラン先代国王コンラートの第一王女である『レベッカ・ダーナ』が推薦され、それについての議決が行なわれていた。
義会員120名の中で、レベッカを女王として認めるという意見は93。やはり年が若いという事で反対している者が多かったが、それらについては『五賢老』が補佐に付くという事で概ね合意。
だが、ラン南方ザバ分国王であるジャバナ・ザバ・ボアはレベッカ王女即位に対して全面否定。
彼に付き従う貴族27名と共に、この決議に不服を申し立てると、そのまま退席していった。
その行為により、議会は一時混乱を来したものの、そののちには静けさを取戻し、レベッカ・ダーナ女王の即位が決議した。
●親書を携えて
レベッカ・ダーナ女王の即位が決定した翌日、各国に親善使節が派遣される。
各国の国王宛に送られたその親書にはラン新国王として『レベッカ・ダーナ』が即位すること、そしてその戴冠式の日時などについて記されていた。
それを受けて、各国国王はそれぞれ使節団を派遣し、戴冠式及び宣誓式に参加するということが決定した・・・・。
●ということで
「さて、そろそろラン傭兵騎士団にも仕事をして頂きますかねぇ・・・・」
と呟いているのはラン五賢老にして冒険者ギルド統括責任者であるビリー・アンデルス卿。
「といいますと?」
「ジャグ・バン一味は必ず襲撃に来るでしょう。また彼等にその相手をして頂きたいという事ですよ」
と呟くと、ビリー卿は傭兵騎士団員宛の依頼書を作成し、ウィルに飛ばした。
●その頃の・・・・
「Hey。随分とご機嫌だな・・・・」
とある倉庫。
その中で、ジャグ・バンは鼻歌混じりに目の前に在る巨大なゴーレムを眺めていた。
「ブヒャヒャヒャヒャ・・・・これを手に入れるのには随分とくろうしたんやで」
そう下衆な笑いを浮かべつつ呟くドワーフの商人。
「これを使える奴等は?」
「それも手配してあるで。ゴーレムは3機、全て新品や。乗り手はこちらの『本国』で鍛えたエリートぞろい。どや?」
と呟くと、ジャグは周囲を見渡す。
「ランを潰すには、絶好の機体じゃねーか」
その呟くに、集っていた一同は歓喜の叫びを上げる。
その中で、3機の『漆黒のアザレア』が、静かにたたずんでいた。
●リプレイ本文
●新型ゴーレム、その名は鬼殺しMk?U
──ラン王都ダーナ・傭兵騎士団詰め所
正確には飛空船停泊所。
その一角に停泊している高速艇ロータスの外で、傭兵騎士団一行は色々と作戦会議を行なっていた。
「ビリー卿。対ジャグ・バン戦について御願いがあるのですが」
そう話を切り出したのはセシリア・カータ(ea1643)。
「なんでしょうか?」
「前回、ジャグ・バンと戦って判った事があります‥‥正直、現時点の私の力量では勝てないでしょう。そこで御願いがあるのです。ジャグ・バン対策に弓とか魔法を使える方とか、遠距離攻撃できる方の助力がほしいのですが?」
その進言に、ビリー卿もしばし思考。
「まあいいでしょう。では、ラン精霊魔法学院に助力を仰いでみましょう。間に合うかどうかはわかりませんが、そこそこには期待していてください」
と言うことで。
その言葉に笑みを浮かべると、セシリアは一礼して直にその場から離れていく。
「敵がどうくるかは判らない。いずれにしても、こちらで動かせるゴーレムの数にも限りがある‥‥」
ロータス外、ゴーレム駐騎場でそう集っている面々に話をしているのは『仮面のリリー』ことシャルロット・プラン(eb4219)
今回は式典警備ということもあり、打ち合わせは綿密に行なっている。
ちなみにアザレア1のパイロットが彼女である。
「使用可能なエレメンタルバスターが2基あります。隊長、私はそのうちの一つを使用したいのですが」
そう進言しているのはシャリーア・フォルテライズ(eb4248)。
「近接戦は無理だからな。後方支援に回ってください」
「了解」
ということで、アザレア2はエレメンタルバスターを搭載し、パイロットはシャリーアで確定。
「隊長、僕の機体ですが、アザレア3はどうでしょうか?」
そう告げているのは草薙麟太郎(eb4313)。
「陸戦騎士団から、『陸戦型アザレア』を貸与してもらえるよう進言しています。だが、それがまにあうかどうかはわからないですね」
ちなみに、ラン陸戦騎士団で使用しているのが『陸戦型アザレア』。全部で3機投入。
そしてラン傭兵騎士団で使用しているのが、『空戦型アザレア』というふうに分類されている。
そして空戦型アザレア以外のゴーレムは、空を飛ぶ事が出来ない。
「‥‥では、間に合わなかった場合は?」
「鬼殺しMK?Uでいってください。搬入は終っているそうです」
その言葉に、麟太郎は静かに肯く。
そして夕刻に搬入されたゴーレムは、銀色に輝く新型鎧を装備した『鬼殺しMk?U』。
素体はシルバーゴーレムで作りあげられており、ウィルのキャペルスに匹敵する『傭兵騎士団カスタマイズ』。
「これなら‥‥」
そう告げて静かに鬼殺しMk?Uに乗り込む麟太郎。
到着するまでにアザレア2に搭乗してみたのだが、最終調整を終えたアザレアは、麟太郎では起動すらできない代物に仕上がっていた。
どうやらカーガン・ゴーレムファクトリーで調整を行なったのであろうが、麟太郎では扱う事が出来ない。
だが、パワーは若干下がっても、前回のストーン素体の鬼殺し1号からみれば、かなりのパワーアップである。
静かに機体を起動させると、周囲を見渡す。
『どうです? 動きは?』
制御胞の風信機にシャルロットの声が届く。
「鬼殺し1号とは雲泥の差ですね。こう‥‥意思がよく伝わるっていうのですか?」
『こちらのアザレアも同感です。ファクトリーのメンテナンスがしっかりしていて、いい所ですね?』
アザレア2からもシャリーアの声が届いてくる。
「そうですね。とりあえずそろそろ機体を停止、スタンバイモードに移行します‥‥」
ということで、それぞれが準備を終えると、いよいよ明日の式典の為に身体を休めることにした。
●式典当日・誰がために鐘は鳴る?
──王都ダーナ
正午。
王宮では、レベッカ・ダーナの戴冠式が執り行われている。
その周辺では、陸戦騎士団がしっかりと警護、さらに周辺でも各国からやってきた貴族の御衛士達がしっかりと固めている。
「‥‥で、貴方がですか?」
高速艇ロータスの外で、派遣されてきた魔法士に向かってセシリアがそう告げる。
「ええ。よろしく御願いします。シオン・マードリィです」
がっちりと握手をするセシリアとシオン。
ちなみにシオンの職業は『ラン精霊魔法学院講師』。魔法の腕は確かである。
さらに学院付き御衛士も6名セシリアの指揮下に加わった。
これがセシリアの配下として動く『魔法兵団』である。
対人戦闘については、これでOK。
ゴーレム隊の準備も完了し、あとは静かになにも起こらない事を祈るばかり。
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥッ
と、突然建物が崩れる音が響く。
それは王宮からはかなり離れた、中央街道から西門の方角。
その方向にある城壁が破壊されたようである。
「傭兵騎士団搭乗!!」
シャルロッテの叫びと同時に、一斉にゴーレムに乗り込むシャリーアと麟太郎。
そして素早く機体を起動させると、そのまま現場に向かっていった。
「現場に向かいます。近隣の自警団及び各国御衛士にも連絡を御願いします」
そう傭兵騎士団書記官に告げると、セシリアも近くに止めてあった馬に飛び乗り、現場に向かう。
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥツ
セシリアの上空を二機のアザレアが飛んでいく。
そしてその後方からは、黄金に輝くドラグーンが飛来していった。
「あれは、特務艦グリフィンのイーグルドラグーン‥‥」
そう呟くと、セシリアは急いで西の城壁へと向かっていった。
●互角、それ以上?
──ダーナ西方・プリムラ地区
ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォツ
激しい打ち込みあいが起こっている。
「腕は互角ですか。それにしても‥‥かなりのパワーですね」
アザレア1のシャルロッテが、ラージガードカイトシールドを構えつつ敵の漆黒のアザレアの攻撃を必死に受け流している。
「そういう貴殿こそ。いい腕です。ランの鎧騎士にしてはね‥‥」
風信器から聞こえてくる敵の声。
「お誉め頂いて光栄ですね。ですが、ここから先には一歩も進めません!! フォーメーション21っ」
そう告げると同時に、激しい一撃を叩き込むシャルロッテ!!
──ドゴォォォォッ
それを受けて、ブラックアザレア1の機体が後方に下がる!!
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
そして、アザレア1後方でエレメンタルバスターを構えていたシャリーアのアザレア2が、ブラックアザレア1に向かってトリガーを引く!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッン
エレメンタルバスターのバレルから放出される精霊の輝き。
だが、ブラックアザレア1はその一撃を素早く回避した!!
それは一瞬のステップ。
オフシフトと呼ばれる上級テクニック。
それをゴーレムに乗り、さらに致命傷の所を左腕と肩の『消滅』で耐えきったのである。
「まだまだっ!!」
素早くEバスターを放り捨てると、傍らに突き立ててあるハルバードを引抜き構えるアザレア2。
──ガギッドゴッズバッガギッ
その一方では、麟太郎の鬼殺しMk?Uがブラックアザレア3と一騎打ち。
そしてその前方では、イーグルドラグーンとブラックアザレア2の一騎打ちが行なわれていた。
「随分と‥‥いい腕ですね‥‥けれど、こっちも負けていませんっ!!」
もてる技術を駆使しつつも、一進一退の攻防からやや押されぎみになる麟太郎‥‥。
「魔法が使えればまだいける筈なのにっ!!」
そう。
カーガンに提案した魔法術印を組む為のマニュピレーター。
だが、それだけでは魔法は起動しないらしい。
どうやらゴーレムの内部では、魔力はゴーレムを安定作動させる為に吸収されてしまい、制御胞内部での魔法発動ができないとの事。
それでも開発を続けるというカーガンの言葉を信じて、麟太郎はここで戦っている。
「そう‥‥だからこそ‥‥負けられないんです!!」
──ガギィィィィィン
正面から打ち合う麟太郎。
「いい腕だ。けれど、機体の力を生かしきれていない‥‥もっと精進しろ!!」
ブラックアザレア2の制御胞でそう呟く女性鎧騎士。
その声が風信器で麟太郎の耳にも届く。
「あ、貴方は誰です!! どこの国の人ですか!!」
「作戦上それは告げられない。若い鎧騎士よ、死に急ぐな‥‥そしてもっと基礎を高めよ‥‥でなければ」
──バギィィィィィィッ
瞬時に鬼殺しMk?Uの右腕に一撃が叩きこまれる。
それで武器が腕から落ちる。
「大切なものを護る事は出来ない‥‥下がれっ!!」
そう迫力で圧倒してくる敵鎧騎士。
「そうはいきません。まだまける訳にはいかないのですっ!!」
──ダッ!!
素早く機体を制御し、肩口から体当たりをする鬼殺しMk?U。
──ドゴォッ
だが、ブラックアザレア2はカウンターで一撃を叩き込む!!
その直撃で制御胞のハッチが吹き飛び、麟太郎の姿が剥き出しになる。
──ガギィッ
そしてその正面でロングソードを構え、制御胞の中の麟太郎に向ける。
「ここまでだな‥‥抵抗するのなら殺す‥‥」
「了解です。抵抗はしません‥‥」
そう告げると、麟太郎は機体から速やかに下りた。
騎士道を護る鎧騎士として、ゴーレムから下りた鎧騎士には攻撃をしない。
その暗黙のルールを敵鎧騎士は護っていた。
「若い鎧騎士よ、より精進しろ‥‥」
と告げると、ブラックアザレア2はブラックアザレア1と合流する為に、前線に走っていった。
──その頃
キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
後方で次々と発動する精霊魔法。
セシリアと魔法兵団は城塞に向かってやってくるジャグ・バン一味に向かって、賢明に魔法と弓による牽制を続けていた。
その攻撃で、敵下っ端カオスニアンは次々と後方に撤退。
だが、その向うから巨大な馬に跨った本陣が姿を表わす。
「ほう。この前のお嬢さんかよ。まだやる気なのか?」
そう告げるジャグ・バンに向かって、セシリアはスッと剣を構えた。
「この前の借りは返させて頂きます‥‥覚悟!!」
全身をオーラボディに包み、さらにオーラパワーとオーラエリベイションも発動。
セシリアはいっきに勝負をたたみみ込もうとした。
さらに後方では、ジャグ・バンの配下に向かって魔法と弓による牽制も続く。
──ガギィィィィンガギィィィィン
激しく繰り広げられる剣戟。
両手で巨大な武器を叩きつけてくるジャグ・バンに対して、防戦一方のセシリア。
「加勢します!!」
シオンが印を組み韻を紡ぐ。
「一騎打ちに手を出すのがランの騎士道かよっ!!」
そう叫ぶジャグ・バンに、魔法兵団の手が緩む。
「一騎打ちをかさにするとは卑怯な‥‥」
「卑怯? とんでもない。俺がやられたらここから撤退させて貰う。ただそれだけだ。それにあんたは騎士、挑まれた一騎打ちを受けずに数でくるのか? それがランの、あんたの騎士道なのか?」
──ガギガギカギガギッ
その呟きと同時に激しい連撃を浴びせてくるジャグ・バン。
セシリアはその攻撃を受け流しつつ後方に下がり体勢を整えた。
「いいでしょう‥‥」
そのままセシリアは1度武器を腰に下げ、そして再び構えを取る。
「いい度胸だ。それに別嬪だな‥‥」
舌なめずりをしつつも、ジャグ・バンは武器を構える。
「一撃勝負だ‥‥それでいいな?」
そのジャグ・バンの言葉に肯くと、セシリアは呼吸を整える。
(相手の動きを見て‥‥)
叩き込む技は、素早くステップからのカウンター。
──ヒュンッ!!
一瞬二人が動く。
そしてすれ違い様に一撃を叩き込みあうと、セシリアはそのまま後方に下がる。
「‥‥いい腕だ‥‥度胸もある‥‥」
セシリアの一撃はジャグ・バンの右目を突き刺し、かれの瞳から光を奪い去った。
だが、ジャグ・バンの一撃は、セシリアの腰部に深々と入り込み、そのまま左脚の付け根から足をもぎ落とした。
「ジャグっ!!」
慌てて駆け寄るマヤ。
「この女っ!!」
すかさずナイフを構えてセシリアに飛び掛かりそうになるマヤを、ジャグが手で制する。
「撤収だな‥‥ゴーレム兵団の分が悪い‥‥まあ、生きていたらまた会おうな、お嬢ちゃん‥‥」
と告げて、ジャグ・バンは撤収。
さらにゴーレム兵団も後方に下がるのを確認すると、アザレアも周辺警護に切替えた。
●無事に終りを告げる鐘
──ラン王都・ダーナ
無事に戴冠式も終り、王城のベランダからラン新女王であるレベッカ・ダーナが姿を表わす。
「‥‥まあ、無事に戴冠式も終ったようですし、これで万事解決‥‥とはいきませんか」
ビリー卿がそうロータスに帰還した一行に告げる。
ちなみにゴーレムの被害はというと、鬼殺しMk?Uの制御胞ハッチが破損した以外は、アザレア1、2共に楯と武器、外装甲の傷程度。
そして敵も又同じ程度の損傷ということで、敵鎧騎士とこちらの腕はまったくの互角という所である。
「けれど、次は勝てます‥‥」
と麟太郎が告げる。
「ほう? どういう訳ですか?」
「敵アザレアは『陸戦型』ですから、空中と地上とのマルチ作戦を使えれば‥‥いけるはずですね」
シャルロットがそう告げると、シャリーアも肯く。
「イーグルドラグーンはかなり押していたようですから、いけるとは思いますけれど‥‥」
「でも、地上部隊、親玉を叩かないと‥‥」
治療を終えたセシリアがそう告げる。
これでジャグ・バンとの戦いは二敗。
以前よりも相手の動きが見えてきたものの、まだまだ腕に差が出ている。
「まあ、今は生きている事を喜びましょう。次の戦いについては、これからまた考えればいいのですよ‥‥」
と告げるビリー卿。
いずれにしても、敵はまだまだ強い‥‥。
──Fin